インタビュー

松山洋氏が熱く語る「.hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK/WHITE」

「.hack//G.U.」プロデューサー・原田氏と10年越しに生み出したフィギュアの秘密

2018年4月発送予定

価格:各7,020円(税込)

プレミアムバンダイ「魂ウェブ商店」にて受注中

 バンダイコレクターズ事業部より発売されるフィギュア「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK」と、「フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE」は、2006年に発売されたプレイステーション2用RPG「.hack//G.U.」3部作の主人公ハセヲをモチーフとしたフィギュアだ。現在、プレミアムバンダイで受注中である。

 10年前のゲームのキャラクターが今なぜ立体化されたか? それは「.hack」シリーズ15周年を記念し、HDリマスター版であるプレイステーション4/Windows用RPG「.hack//G.U. Last Recode」が発売されるからであり、この発売に合わせて開発元であるサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏が、コレクターズ事業部デピュティゼネラルマネージャーの原田真史氏に強い想いをぶつけて実現したのだという。

 今回は松山氏と原田氏、そしてフィギュアを担当したコレクターズ事業部の林佳奈子氏に商品の、そして「.hack//G.U.」、主人公ハセヲへの想いを聞いた。松山氏ならではの熱い語り口、そして松山氏の思いを受け止める原田氏の想い、この2人からのエネルギーを林氏がどうフィギュアへと“結実”したかをレポートしたい。

フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム BLACK
フィギュアーツ ZERO .hack//Figuarts ハセヲ3rdフォーム WHITE

「.hack//G.U.」を生み出した松山氏、原田氏のコンビが生み出す10年越しの夢

 最初に聞いたのは、松山氏の「.hack//G.U.」への思いだ。「.hack//G.U.」とはどのようなものであり、松山氏にとってどのような意味を持っているかを聞いた。筆者の目の前で、ゲームファンにはおなじみの「松山節」が炸裂した、やはり松山さんはスゴイ。作品への熱い情熱、キャラクターへの思い入れを正面で聞くと本当に圧倒された。

サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏
今回、松山氏の想いを受け止め、フィギュア化を実現させたコレクターズ事業部の原田真史氏。10年前、「.hack//G.U.」の2代目プロデューサーを務めた人物だ
フィギュアを担当したコレクターズ事業部の林佳奈子氏

 「.hack」シリーズそのものは15周年となる。MMORPG「The World」を舞台に、様々な人々のドラマを描いていくシリーズは、2006年から“カイト”を主人公にスタートした。「.hack//G.U.」は“ハセヲ”を主人公にした言わば“セカンドシーズン”にあたる。

 15年前の「.hack//」は当時発売元であるバンダイにとっても“発明”だったと松山氏は語る。「それまでのバンダイのRPGとは全く違う、新しいインパクトのあるRPGをつくらなくてはダメだ」という大号令の元、“お客さんに振り向いてもらうRPG”を目指して「.hack//」はスタートした。

 「.hack//」は伊藤和典氏、貞本義行氏という有名クリエイターを起用し、ゲーム、アニメ、コミックス、小説などメディアミックスを行ない展開し、多くのファンを獲得した。その成功を受けてセカンドシーズンである「.hack//G.U.」は“前作とは違うことをしよう”という目標の下に制作された。

 「『.hack//』の主人公カイトはプレーヤー自身。つまり、自分がカイトだと思って冒険をしていきます。そのためカイトはゲーム中でもあまり多くを語らず、自己主張をしない。一方で、『.hack//G.U.』のハセヲはいわゆる“劇場型”の主人公です。プレーヤーはハセヲの“復讐”のドラマ、そして彼がむき出しにする感情を“追いかけていく”ことになる。『.hack//G.U.』に関しては、“ゲームを売る”という目的に加えて、“キャラクターを売る”ということを大きな目的としました」と松山氏は語った。

 その具体的なイメージは「コミケで取り上げられるような、思い入れが生まれるキャラクターにしよう」というもので、この狙いはうまくいき、「.hack//G.U.」では同人作家が前作以上に取り上げた。松山氏自身、イベントでそれらの同人誌を購入したという。

 「『.hack//G.U.』は“少年マンガ”なんです」と松山氏は語る。それはサイバーコネクトツーが、そして松山氏自身が最も得意とする“目を離せない主人公”を創造し、ユーザーを強く引き込む。そしてユーザーは全3巻の「次の巻」を心待ちにすることになる。「Vol.1のエンディングは、ハセヲが『アトリーィィィ』って叫んで、“つづく”の文字がバリーンなわけですよ! しかも次回予告! この熱い熱量こそが、当時、プレーヤーさんが4カ月もじもじしながら待ってくれる力になったわけです」と松山氏は力を込めて語った。

 HDリマスターという“リメイク”で今回「.hack//G.U.」が「.hack//G.U. Last Recode」となるのは、従来のファンだけでなく、新しいファンを獲得するためにはこの“熱量”こそが必要だと判断したという。しかも追加エピソードまで加えてある。従来のファンにとっても“新たな物語”が盛り込まれた魅力溢れる作品となるという。

 「『.hack//G.U.』はシリーズの中でも一番“私の性格”が出ている作品だと思っています」と松山氏は語る。復讐劇、“目的を持ち、そこに向かって突き進む人間”こそが、松山氏が好きな人間であり、物語だという。ハセヲは復讐の意思に駆り立てられ突き進んでいく。なりふりかまわない、感情の振れ幅の大きいキャラクターを描きたいその想いがハセヲには、「.hack//G.U.」の物語には込められているという。

 そして「.hack//G.U.」の第1巻のプロデューサーを務めたのが、当時バンダイのゲーム部門に所属していた原田真史氏だ。元々は原田氏はSWAN事業部でワンダースワン関連の開発担当で、そこからコンシューマーゲームを手がけている。ちなみに弊誌ではカード事業部時代にインタビューも行なっている。前作「.hack//」のプロデューサーである内山大輔氏(現バンダイナムコエンターテインメント所属)から原田氏へバトンタッチし、松山氏の「これをやりたい」という想いを受け止め、実現させたのが原田氏なのだという。原田氏と松山氏のコンビは、ゲームに留まらず、アニメ、月刊誌など様々なものへ広がっていった。

 「.hack//G.U.」で松山氏は壮大なチャレンジを行なった。RPGにアクションシューティングの要素を盛り込んだり様々な“挑戦”をしているが、その中でも大胆なのが「ターミナルディスク」という仕掛けだ。「.hack//G.U.」の第1巻、「.hack//G.U. Vol.1 再誕」は本編ディスクに加えターミナルディスクという2枚目のディスクが同梱されていた。

 このターミナルディスクには12個の“断片ファイル”というムービーが隠されており、ゲームのセーブデータに連動して開放されていく。しかし、Vol.1だけでは6つまでしか開放されない。12個全てを開放するにはVol.3までの全ての物語をプレイしなくてはならなかった。

 つまり、ゲーム完成前のVol.1時点でラストまでの物語を作り込み、シナリオやアフレコまでやっておかなくては、このディスクはできなかったのだ。「これをすでに1年前に仕込んでいたの?」とプレーヤーは衝撃を受けることとなる。「.hack//G.U.」はこのように松山氏達サイバーコネクトツーがやりたいことを全て盛り込んだゲームだったのだ。

 「私達が『こういうことがしたいんです』、『これがイケテルじゃないですか』といって話を持っていって、原田さんはNOと言ったことがない。あずかり知らぬところでものすごい苦労を掛けてたと思うんです。すごくのびのびとやらせてもらいました」と松山氏は語る。原田氏は感慨深げに「大変でした」と一言。原田氏の尽力なしにはこのアイディアの詰まった「.hack//G.U.」は形が変わっていたかもしれない。そしてその2人が、“ハセヲ”のフィギュアで、再びタッグを組むのである。

 次ページではいよいよその松山氏が、そしてサイバーコネクトツー社内全体の“夢”であった、フィギュアのディテールに踏み込んでいきたい。

【PS4/STEAM「.hack//G.U. Last Recode」プロモーション映像】
「.hack//G.U. Last Recode」は、11月1日に発売

【プレミアムバンダイで購入】

サイバーコネクトツーのフィギュアへの要望資料と、本インタビューのダイジェストを魂ウェブ内特設ページで掲載!