インタビュー

待ちに待った! 「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」インタビュー

打越鋼太郎氏の作風に迫る! 発想の秘密は「オカルト好き」にあり

6月30日 発売

価格:5,800円(税別)

CEROレーティング:D (17歳以上対象)

プレイ人数:1人

 6月30日発売予定のPlayStation Vita/ニンテンドー3DS/Windows(Steam)用アドベンチャー×脱出ゲーム「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」。2009年に発売した「極限脱出 9時間9人9の扉」を第1作とし、2012年にはシリーズ第2作「極限脱出ADV 善人シボウデス」が発売され、今回の「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」がいよいよ「極限脱出シリーズ」の完結編となる。

 一時は第3作目の開発ストップが案内されたこともあり、ファンは「極限脱出シリーズは未完のまま終わるのか」という不安も抱えていたが、その不安がようやく解消されることとなる。そこで今回は、「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」を含む「極限脱出シリーズ」すべてのディレクター、シナリオを担当してきた打越鋼太郎氏にお話を伺ってきた。

 「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」発売に至る経緯から打越氏独特のシナリオ発想術まで聞いてきたので、ご覧いただきたい。

【PS Vita/3DS ZERO ESCAPE ゲーム紹介トレーラー】

「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」開発はファンの後押しがきっかけに

「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」ディレクター、シナリオを務める打越鋼太郎氏
「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」キーアート

――まず本題に入る前に、打越さん自身のプロフィールを教えていただけますか?

打越氏:この業界には、1998年にKIDという会社に企画として入りました。最初に携わったのはアクションゲームで、「モデリングが足りない」と言われて。そこで樽や岩を作っていました。

 それまではPC向けゲームの家庭用ゲーム機への移植が多かったのですが、自社でオリジナルのタイトルをやるということになって、そこでライターを始めました。「メモリーズオフ」(1999年)や「Infinity」シリーズの「Ever17 -the out of infinity-」(2002年)がそれにあたります。

 それからフリーで5年を過ごした後、チュンソフトに入って最初に作ったのが「極限脱出 9時間9人9の扉」、続編の「極限脱出ADV 善人シボウデス」を作って、今に至ります。

――シリーズ発端の「極限脱出 9時間9人9の扉」ですが、当初の構想では単発の作品だったのでしょうか?

打越氏:はい、これは単発の作品として作りました。それが国内と国外でも評判が良かったので、続編を作りましょうと。

 最初は続編の2作目、3作目を同時に作ることでコストダウンを図ろうという計画で、それが承認されてスタートしたのですが、その時ちょうどニンテンドー3DSとPlayStation Vitaが発表されました。

 時期的にそれ以上遅れると同時発売が間に合わないタイミングでしたので、両方で発売することを決断したのですが、それで予算が合わなくなったんですね。そこでとりあえず2作目を出して、改めて3作目を出すことにしようと。

――ところが、2作目「善人シボウデス」から4年が経過することになります。3作目、つまり今回の「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」に至るタイトルは、一時制作が止まってしまったんですよね。

打越氏:「善人シボウデス」は国外では調子が良かったんです。ですが国内は、評判は良かったけど本数にはさほど結びつきませんでした。

 それで1度続編の制作は見合わせていて、そのことをアナウンスしたところ、海外のファンから「何やっているんだ」と。「作ってくれなきゃ困る」という意見が会社だけでなく、翻訳を担当する方にまで多く寄せられました。そこまで反響があるなら、ということで再スタートとなったんです。それが2014年の春くらいでしょうか。

――ファンの後押しがきっかけにあったのは熱いですね。その後の経緯はいかがでしょう?

打越氏:夏くらいからプロットを書き始めて、それが3カ月。本執筆は半年ほどかけて、トータルで1年くらいかかりましたね。

 そこからは他のスタッフが入って、2015年の年始あたりから素材作りなど一気に開発が始まりました。それで、合計1年3カ月ほどかけてデバッグ諸々含めて完成に至った、というのが経緯です。

プレーヤーに編集権。「リニューアル」を図る新システム

完結編にしてビジュアル面を刷新。新導入の「シネマパート」も楽しみだ

――今回まず見た目の点で、イラストが西村キヌさんから友野るいさんへと変更になりました。この意図を教えていただけますか?

打越氏:西村さんの絵は評判が良かったですし、僕自身も気に入ってはいましたが、今作では「リニューアルさせる」というのがひとつのコンセプトでした。前作は評判は良かったものの、色々な人にやってもらうためにも“リニューアルしたぞ感”を出したかったのです。

 それと今回は演技とセリフで会話シーンを表現する「シネマパート」があって、海外ドラマ風の雰囲気も出したいと思いました。そういったことを考慮して、友野さんの絵がふさわしいなとなった、ということです。

――新規のプレーヤーも大きく意識していると。

打越氏:根本的にはファンのために作り始めたものなので、そこは大切にしたいですし、前作をやっていた方が深く楽しめる部分はあります。

 ただ話としては、今作から始めても入り込めるようになっています。今回は登場する3チームにそれぞれ主人公がいて、それが前作、前々作には登場していないカルロス、ダイアナ、Qというキャラクターです。

 彼らは未来や過去に何が起こったか知らないので、例えばカルロスと同チームの淳平と茜(「9時間9人9の扉」の主人公格キャラクター)は、カルロスが聞けば、過去に何があったかを教えてくれます。またダイアナと同チームのシグマとファイ(「善人シボウデス」の主人公格キャラクター)も同様です。

――その「シネマパート」ですが、なぜ演出方法を変えたのでしょうか?

打越氏:「善人シボウデス」を例に出すと、これを「面白い」と思ってくれた人が周りに勧めた時に、プレイしてくれる人が少ないんじゃないかと。その敷居になっているのが、「テキストアドベンチャーであること」が大きいのではないか思うのです。

 テキストアドベンチャーにはテキストアドベンチャー独自の味わいや面白さがあるのですが、勧められた人がプレイするには、見た目のとっつきやすさが大事ではないか、ということです。まずは見て面白そうと思ってもらえるように、選択したのが「シネマパート」の演出でした。

――「シネマパート」にしてみて、いかがでした?

打越氏:見ていて楽ですね。ドラマやアニメを見ている感覚と一緒なので、プレーヤーにとっても楽だと思います。

――今作からのシステムで斬新だなと思ったのが、時系列順にプレイするとは限らない「フローティング・フラグメント・システム」です。「物語の断片」を1つずつ遊んでいくのはアドベンチャーゲームとしても新しいですが、このシステムの狙いは?

打越氏:1つの物語があった時に、時系列を入れ替えても作品自体の面白さは変わらないのではないかと考えました。

 このシステムは、いわばプレーヤーに編集権を与えたものだと思っています。100人いたら100通りのプレイ順があるので、人によってプレイ感が違うものになります。たとえば、誰かが死んだ場面があったとして、時系列を遡ってここにたどり着くか、先にこの場面を見てからその後の流れを見ていくかで、受け取る感覚が異なるのではないかと。いわば映画監督が100人いるというイメージです。それって面白いかなと思って。

 正直上手くいくかどうかはわからない、冒険ではあります(笑)。全部プレーヤーに委ねようというスタイルですから。ただ社内などの評判は良いので、大丈夫だとは思っています。

――断片ごとに飛べるので、いちいちストーリーを繰り返す必要がないというのもポイントだと思います。

打越氏:確かにそういう煩わしさもないですね。また「断片のどこをプレイしても面白い」という点で言うと、3作目から始めた人が、1作目と2作目をやってもアリだと思っています。3作目でオチを見てから、過去には何があったのか見てもいいですし、時系列的には2作目の方が今作より後なので、歴史の延長線上で楽しむのも良いですね。

――「極限脱出」シリーズは、終盤で伏線を一気に回収していくカタルシスが爽快なシリーズだと考えています。そういう味わいは今作もありますか?

打越氏:はい、色々なところに伏線を張っていますが、プレイ時は断片ごとの話に集中すると思います。プレイによってストーリー全体を埋めていって、そして最後にはゲーム内に散りばめられていたものが「なるほどね」という感じで繋がっていきます。

――2013年のGDCで講演されたときは、「かまいたちの夜」から受け継ぐストーリーテリングの手法として、「プレーヤーの脳内にフラグを埋め込む」というお話をしていました。その話がとても印象的だったのですが、今作でもその仕掛けはあるんでしょうか?

打越氏:それも仕込んでいます。中盤くらいにパスワードを入れろという指示があるのですが、ここはフラグはまったく仕込んでいません。プレーヤーの脳内にあるメモリからその言葉を入れることで、解放されます。

――この仕掛けは自分で覚えておかないといけないので、プレイしていて必死さが出てくるんですよね。

打越氏:そのために、ゲーム内にメモ帳機能を入れています。もちろん手書きでもいいですし、最近良く聞くのはスマホで撮影して、スクリーンショット代わりにする、という方が結構いるようです。

――シナリオで苦労した点はありましたか?

打越氏:先程もお話しましたが、「ZERO ESCAPE 刻のジレンマ」では「9時間9人9の扉」と「善人シボウデス」の主人公格キャラクターが4人もいて、戦隊ヒーローじゃないですけど、ヒーロー大集合みたいになっていて、それぞれのキャラクターを立てるのが非常に大変でした。

 全員がヒーローだという感じになっているので、たとえばわざと淳平をやさぐれさせています。僕がシナリオを書く場合、敬語を喋る女性は普段は1人しか置かないのですが、今回はダイアナと茜の2人が敬語になってしまったり、ほかにもカルロスと淳平の言葉遣いが一緒のような感じになってしまったり、そこは大変でした。

――ネタバレになるので言えませんが、淳平はあんなことになりますからね。

打越氏:それを考えると、今回の変化も一応繋がっているとは思います。

「単館上映の監督でいいわ!」という開き直り

「僕の作品って、売れないんですね」と語り出す打越氏

――「9時間9人9の扉」の2009年から数えると7年ほど経過するわけですが、作品ごとに変化してきたものはありますか?

打越氏:作品を追うごとに、徐々に大人向けになってきているかなと思います。

 僕の作品って、売れないんですね(笑)。ウチにも小高(和剛氏。「ダンガンロンパ」シリーズの企画&シナリオを担当)という売れっ子がいますが、彼などとの違いを考えた時に、自分は何のためにいるのかということは、結構考えるんです。

 存在が無意味なのかなと思わないこともないんですが、あえて存在意義があるとすれば、僕の作品は映画で言うと単館映画みたいな位置づけなんだろうと。

 映画は、ハリウッドの大作ばかりだと絶対つまらないですし、業界自体が縮小していくと思います。でも実際は、単館でかかるような、コアなファンがついている映画もいっぱいある。みんなが楽しめる映画とマニアックな映画が両方あるからいいんじゃないかと。

 僕は大作映画の方には行けないので……。今までにメジャーを目指したこともあったんですが、自分には向いてないのかもと思って。そこで吹っ切れて、「単館上映の監督でいいわ!」と。諦めというか開き直りというか、そういう部分が作品にも徐々に現われているのかなと思います。

――GDC 2013では「善人シボウデス」が「Game Developers Choice Awards」のNarrative部門にノミネートされていて、日本の作品としてもアドベンチャーゲームとしても快挙だったと思います。そこは自信になりませんか?

打越氏:それがまさに「単館映画」なんです。映画でも「カンヌ受賞作」みたいなのがあったとして、その映画が日本でウケて、お客さんがいっぱい入るとは限りませんよね。オシャレな映画館ではかかっても、シネマコンプレックスではやってない……というような。

 おそらくですが、特にゲーム業界の方たちにはウケが良いので、そういう点では僕が作品を作る意味はあるとは思っています。

――海外で評価されたポイントを考えることはありますか?

打越氏:これは毎回聞かれるのですが、それがわからないんですよ。海外でこれだけ評価されているのに、日本での熱狂的なファンは、海外ほど多くはないんです。なぜ海外で評価が高いかというよりは、なぜ日本で売り上げに繋がらないか不思議……という。日本の方、もっと買ってください! と書いておいてください(笑)。

――書いておきます(笑)。「STEINS;GATE」などもありますから、ジャンル自体に勢いがないわけではないですよね。

打越氏:なんとなく匂いが違うような気がしないでもないです。作風というか。上手く言語化できないのですが。

――それが「大人向け」ということなのかもしれません。

打越氏:そうかもしれない。それがしっくり来るように思います。

――先日元CINGチームが中心になって制作した「-CHASE- 未解決事件捜査課 ~遠い記憶~」のインタビューを行なったのですが、共通する部分があるように思います。あちらは同じ「大人向け」でも“ハードボイルド”がテーマになっていますが。

打越氏:ああ、CINGさん! 「ウィッシュルーム 天使の記憶」など当時のCING作品はすごく好きです。目指している方向性で言うと、僕もCINGさん寄りに近いかもしれません。

嘘つきっぷりを面白がる「オカルトを楽しむ」発想法

ゲームがループしていることを「主人公が自覚しているかどうか」が打越作品ではキーになる

――打越さんはゲーム以外にも「パンチライン」アニメ版やリアルイベント「アイドルは100万回死ぬ」のシナリオ執筆もしています。ゲーム以外に活動の場を広げているのはなぜでしょうか?

打越氏:これは、弊社が合併したタイミングもあって、社内が他の場所で仕事をしてもいいよという感じがあったんです。状況的に許されてもいましたし、前からやりたかったので。

 それと自分自身が生き残るためかな(笑)。僕みたいな売れないライターは、何かあった時のために色々手を伸ばしておかないと、何が起こるかわかりませんからね。経験や人脈など、いろいろな意味があります。

――「アイドルは100万回死ぬ」は“リアルタイムループゲーム”と題された、いわゆるリアル脱出ゲームに近いものですが、携わってみていかがでした?

打越氏:デジタルのものとは違って、ナマの反応がわかるのは新鮮でした。筋は変わらないのですが、お客さんはある意味演者さんとして、毎回起こることやドラマが変わるので、そこが新鮮でした。

――「パンチライン」でもそうでしたが、打越さんの作品は「ループすること」を深く追求していると思います。「ループすること」に対するこだわりのようなものがあるのでしょうか?

打越氏:ループものは比較的好きなほうですし、やっているし、経験もあるので得意ではあると思います。だからといって、ループものだけをやりたいとは思っていないんですね。ただなぜか、どうしてもそうなってしまうんです。

 ゲームは、それが自体がセーブしてやり直すものなので、アクションゲームだろうとなんだろうと、実はすべてのゲームがタイムリープしていて、それを主人公が自覚しているかどうかの違いがあるだけなんです。アドベンチャーで「主人公が自覚しているもの」を作っていくと自然とタイムリープものになっていくのですが、それをやったのが「9時間9人9の扉」や「善人シボウデス」の極限脱出シリーズです。

 「パンチライン」は元々ゲームのシナリオですが、当初はループものではありませんでした。しかしプロットを書いているあいだに、「やっぱり過去に戻らないと成り立たない」というポイントがあって、気づいたら自然とそうなっていたと。

 「アイドルは100万回死ぬ」は、「ループものといえば」という加藤さん(加藤隆生氏。「リアル脱出ゲーム」などを手掛けるSCRAP代表取締役社長)の指名があって、イシイジロウさん経由で紹介を受けました。なので、これは自分から言い出したわけではないんです。

 ループものがやりたくてというよりは、自然な流れで全部そうなってしまっているんですよ。

――「キャラクターが自覚しているかどうか」は打越作品を語る上で大事な要素になりそうです。

打越氏:より深く自覚するというか。単純に過去に遡るというよりは、別の歴史に飛んでいるという自覚もあります。

――「自覚させない」ことを選択する手段もあると思うのですが、自覚させてしまうのはなぜでしょうか。

打越氏:プレーヤーと主人公の情報量を等しくしたい、というのがあります。例えば1つの分岐点があって、片方を選んだら死んで終わってしまったという時、この部分をやり直すことになりますが、プレーヤーは片方が死ぬということを知っていて、主人公はこれを知らないとなると、プレーヤーとキャラクターの間に距離感を生んでしまうように思います。一方の選択は死ぬという情報は、キャラクターにもなるべく知っていてもらいたいんです。

――なるほど。そこまでいくと、それはもう作風ですね。

打越氏:一言で言うとそうですね(笑)。

――今まで打越さんのアウトプットについて伺ってきましたが、作品を作るためのインプットは、普段はどうされていますか?

打越氏:基本的にはネットを見ています。オカルトサイトを見て、「面白いな」と。「20年間飲まず食わずの男? 本当かよ」とか言って(笑)。オカルトを楽しむ派なんです。

――映画などは見られますか?

打越氏:映画も見ますよ。去年は年間100本に挑戦したんです。というのは、小島秀夫さんが何かのインタビューで「年間100本見ている」と書いてあって。チャレンジしたのですが、結局65本くらいでした。無理でしたね。今年はチャレンジしていないので、そんなに見ていません。

――となってくると、シナリオの発想はどこからやってくるのでしょうか?

打越氏:たとえばネットでオカルトだったり、科学的な記事を見ていて、気になったキーワードがあると、そのページ自体をブックマークしておきます。それで関連するサイトのリンクを辿ったり、詳細な記事だと、参考書籍が書いてることもあるので、今度はそれを読むんです。

 そうするとわからない言葉が出てくるので、そこからさらに調べて……と、どんどん辿っていく感じですね。書籍でも読みながらドッグイアーしておいて、最後に使えそうなものをリストアップして、さらにそこから選んで、ネタにできそうなものをまとめていきます。

――では「ネットを見ている」とおっしゃってましたが、そこから深いところまで広がっていくんですね。

打越氏:散歩していて突然思いつく、とかではないです(笑)。ネタを集めてから、あれとあれを繋げよう、というのはありますが、0から1を生み出すときは、見ていて「面白そう」と思うものの集まりで膨らんでいきます。

――集める書籍の系統はどういうものになっていくのでしょうか?

打越氏:擬似オカルトみたいなものもありますし、エセ科学みたいなものもある。そういうのがすごい好きなんですよ、嘘つきっぷりが(笑)。一方で、ちゃんとした、今回の「ディシジョンパート」で出てくるような、ゲーム理論、統計学、確率の話などをまとめた本もあります。そういうのを読んでいます。

アドベンチャーゲームは「スマホ」、「VR」に可能性?

スマホやVR向け作品も構想中だという。そちらも楽しみだ

――今回で完結を迎えますが、この極限脱出シリーズは打越さんにとってどういうシリーズになりましたか?

打越氏:最初に作り出したのが2008年なので、全体として関わっていた時間は1番長いことになります。なので、代表作にはなるんでしょうね。

――思い入れはありますか?

打越氏:もちろんありますが、うーん……。

――終わったらさっぱりというか、手離れが良いのでしょうか。

打越氏:基本的には、だいたい手離れは良いです。書き終わって、ユーザーさんが遊びだしたらそれはユーザーさんのものだと思うんですね。

 なので、発売した後はユーザーさんの質問にも本当はなるべく答えたくないんです。「ここ、どうなってるんですか?」と言われることがありますが、「それは考えてください」と。僕が言ってしまうと答えになってしまうので、それでは面白くありません。中で描かれていることがすべてですし、色々な考察を楽しむのも1つの遊びですから。

――アドベンチャーゲームの行先について、今後はどういう方向に向かうと思いますか?

打越氏:1つは、スマホのテキストアドベンチャーですね。スマホとアドベンチャーゲームは、とても親和性が高いはずなんです。デバイスとしては相性は抜群ですが、マネタイズの面を考えると、スマホとアドベンチャーほど相性の合わないものはない。

 アドベンチャーゲーム的なお話は、1回きりで終わりですから、課金ポイントが少ないんです。スマホでアドベンチャーは、1番作りやすい反面、お金に結びつけるのが難しい。恋人としては最高だけど、結婚相手としては両親に反対されそう、みたいな……。ここが上手く解決されたら、スマホをプラットフォームとしたアドベンチャーゲームはもっと伸びていくと思います。

 可能性としては、週刊少年ジャンプや週刊少年マガジンのように、色々な作家の話が入っていて、毎週更新される、などのようなフォーマットだったらあり得るかなと思っています。アドベンチャーゲームの作家を集めて、月額料金でいくらという感じで。

 メジャーな作品から、ギャルゲー系、BL系、ハードボイルド系まで、いろんなジャンルのゲームが詰め込まれたイメージです。

――アドベンチャーゲームのポータルサイトといったところですね。それは見てみたいです。

打越氏:それと構想段階ではありますが、もう1つはVRを使ったアドベンチャーをやってみたいと考えています。

――スマホとVRで楽しむ打越作品、どちらも楽しみです。それでは最後にメッセージをお願いします。

打越氏:極限脱出シリーズをプレイしてくれた方は、今までの謎が解決されたり、新たな事実が判明したり、より作品の世界を知っていただけるものになっています。

 またシリーズをプレイしていない方でも、今作で起こる事件は今作で完結しているので、ここから入っても楽しめます。そこから遡って過去作をプレイするのも面白いと思うので、ぜひプレイしてみてください。

――ちなみに、今作で新たに謎が残ったりするんでしょうか……?

打越氏:それは残ります(笑)。

――やはりそうですか(笑)! その謎も含めて楽しみにしています。ありがとうございました。