★ PSPゲームレビュー★
戦乱の時代を生きる若き戦士たちを描いた
“これまでにないテイストの「FF」”
「 FINAL FANTASY 零式」
ジャンル:
  • RPG
発売元:
開発元:
プラットフォーム:
  • PSP
価格:
発売日:
2011年10月27日
プレイ人数:
1人(アドホック通信時:1~3人)
レーティング:
CERO:C(15歳以上対象)



 “零式”という、これまでになかった漢字による型式をつけられた“新たなファイナルファンタジー”「ファイナルファンタジー零式(以下、『FF零式』)」。戦乱を描く戦記物の世界観や、アクション操作のバトル、さらには最大3人でのマルチプレイも可能と、他の「ファイナルファンタジー」シリーズとはテイストが大きく異なる意欲作だ。UMD2枚組という大容量で登場した本作の魅力をレビューしていこう。

― PROLOGUE -序章- ―

人は生まれる時代も世界も選ぶことはできない。
しかし、どう生きるかを決めることはできる。

鴎暦842年 水の月。

ペリシティリウム白虎を擁するミリテス皇国は、
隣国である朱雀領ルブルムへの電撃侵攻を開始。
宣戦布告と同時に国境付近へ集結させていた主力艦隊をルブルム各地へと進め、
ペリシティリウム朱雀への奇襲を敢行した。

魔導アーマーを主戦力とする皇国軍に対し、
ペリシティリウム朱雀は魔法と召喚獣をもってこれに応戦。
召喚獣の圧倒的な力は戦艦をも凌駕し、皇国軍の奇襲は水際で止まるかに見えた──

クリスタルをめぐる熾烈な戦争に投入された若き戦士たちの物語。




■ ストーリー……オリエンスの戦乱を生きる若き14人「0組」の物語

 本作の最も大きなポイントは“東方国家群オリエンスを舞台にした4大国家の戦争を描いている”ことだ。ファンタジーではなく戦記物であり、“零式”というタイトルが象徴しているように、漢字を中心とした表現を多彩に使っている。

 主人公たち「0組(クラスゼロ)」のメンバーは、4大国家のひとつ「朱雀領ルブルム」にある「魔導院ペリシティリウム朱雀」に所属する候補生たち。簡単に言うと“朱雀という国にある学院の中でも特別クラスに所属する学生”のようなものだ。

 朱雀の特徴はクリスタルの力により魔法を使えることにあり、中でもプレーヤーキャラである0組のメンバーはクリスタルからの魔力供給を絶たれても魔法を使えるという、他の候補生とは違う特徴を持っている。なお4大国家は、朱雀のほかに白虎、玄武、蒼龍があり、四神の名を冠している。

 「FF零式」の物語は、この魔導院ペリシティリウム朱雀に、ペリシティリウム白虎を擁する「ミリテス皇国」が攻め込んだところから始まる。元帥シドが国政を担うミリテス皇国は、魔導アーマーという乗り物や銃器など、いわゆる“兵器”を中心に兵力を動員している。クリスタルの力とは違って誰にでも扱える兵器だけに、大量の兵力を動員して攻め寄せる。

 ミリテス皇国の奇襲に対し、クリスタルによる魔法と召喚獣で応戦する朱雀。だが、ミリテス皇国が展開したクリスタルジャマーという特殊戦略兵器によってクリスタルの力の供給を絶たれた朱雀は魔法が使えなくなり、一方的に虐殺されていった。

 この圧倒的に不利な戦局を覆すため、それまで存在も隠されていた特殊クラス、朱のマントを身につけることが許された候補生0組が出撃していく。


クリスタルジャマーにより魔法が使えなくなった朱雀兵は一方的に白虎に惨殺されていく。殺し合いや流血の描写など従来の「FF」にはないシリアスで生々しい様子も描かれている

左の男性は、「マキナ・クナギリ(CV:神谷浩史)」、右の女性は「レム・トキミヤ(CV:白石涼子)」。2人はミリテス皇国の侵攻を機に、幻とされていた0組へ入る
レムを守ることを第1に考えているマキナ。「FF零式」は、半分はレムとマキナの物語であり、もう半分は0組のオリジナルメンバーの物語と言える

 「FF零式」で描かれる物語は大陸全土で繰り広げられる国家間の戦争であり、その描写は生々しい血みどろの戦いも描いている。他の「FF」にはなかったテイストをしている。

 この戦争に動員され、そして翻弄されていくのは朱雀の若者たち。朱雀の戦力が若者中心なのには理由があって、魔法の力は年を取るごとに衰えていくからであり、そのため候補生はみな若いのだ。

 こうしたところからも、魔導院という場所全体は学校テイストな場所になっている。候補生はみな若く、そのやり取りのテイストも学生ノリ。受け持つ作戦行動の性質別でクラス分けがされていて、それぞれの教室があり、そこでは授業も行なわれている。

 プレーヤーキャラクターであり物語の中心となる0組のメンバーは、素性が謎に包まれているオリジナルメンバーが12人。そこにマキナとレムという元は他クラスに所属していた2人が「ミリテス皇国」の侵攻を機に新たに0組へ加わってきて、全部で14人になる。

 14人もいると名前の覚えられないキャラクターが1人ぐらいいそうなものだが、これが意外にすんなりと頭に入ってくる。豪華な声優陣を起用し、各キャラの個性も多少過剰に思えるぐらいハッキリとついていてわかりやすいからだろう。0組のメンバーはもちろんとして主要なキャラクターにもボイスがふんだんに使われており、イベントシーンも非常に豪華。演出面の良さとグラフィックスのクオリティの高さは、PSPタイトルでも屈指といっていい。


エース -Ace-
(CV:梶裕貴)
一見クールそうに見えるが、実は無鉄砲な一面がある。根は優しい
デュース -Deuce-
(CV:花澤香奈)
温厚で真面目な頑張り屋。心優しく言葉遣いも丁寧だが、その口調に似合わず頑固な一面も
トレイ -Trey-
(CV:中村悠一)
冷静沈着に振る舞い、あまり隙を見せない
ケイト -Cater-
(CV:茅原実里)
自信家で直情的。真っ直ぐで裏表のないわかりやすい性格をしている
シンク -Cinque-
(CV:豊崎愛生)
ふわふわとした喋り方をする少女。何をしでかすかわからず、時々鋭く確信を突いて周りを驚かせることも
サイス -Sice-
(CV:沢城みゆき)
言葉遣いが悪く、思っていることをはっきりと言い切るきつい部分がある
セブン -Seven-
(CV:青木まゆこ)
無口で冷たい印象を受けるが、実際は面倒見がよく同性の下級生に人気がある
エイト -Eight-
(CV:入野自由)
素早く冷静に状況を判断する能力に長けており、自身の感情を抑えることができる。実は負けず嫌い
ナイン -Nine-
(CV:小野大輔)
直情的で一本気。常に白黒はっきりさせないと気がすまない。言葉づかいが荒い
ジャック -Jack-
(CV:鈴村健一)
0組で1番のお調子者。いつも笑顔でポジティブ思考
クイーン -Queen-
(CV:小清水亜美)
清廉潔白で聡明。扱う剣のようにまっすぐな性格で、不正を許さない委員長タイプ
キング -King-
(CV:杉田智和)
思考の切り替えが早く、無駄が嫌いで口数が少なくクールな印象を持たれる

独特なキーワードのひとつ「ペリシティリウム」。クリスタルを守り、管理し、共存するための組織の名称だ
クリスタルに使命を与えられ、それを果たすために生き続ける「ルシ」。特別な力を得るが、使命を果たすとクリスタルに昇華してしまうところも「ファイナルファンタジーXIII」のルシと同様。「ファブラ ノヴァ クリスタリス」作品として、同じ神話を元にしているならではのポイントだ

 本作のテイストを理解するのに重要な固有のキーワードが3つある。“ルシ”、“ペリシティリウム”、“アギト”だ。

 そもそも本作は「ファブラ ノヴァ クリスタリス ファイナルファンタジー」という「ファイナルファンタジー XIII」と同じ神話を元にして展開される作品群のひとつ。最も色濃くそれを感じさせるのは「ルシ」の存在だ。クリスタルに使命を与えられ、人を越えた存在であり、本作では4国家の4つのクリスタルにそれぞれ、甲型ルシ(攻撃に特化した能力を持つルシ)、乙型ルシ(特殊な能力を有したルシ)が存在している。

 国家名についている「ペリシティリウム」とはそれぞれクリスタルを守り、管理し、共存するための組織の名称。4国それぞれにペリティシリウムがあるが、政治的な位置づけは国によって異なっている。朱雀でのペリシティリウムは候補生を育成し、軍部や国の機関とも近い中心的な存在だ。

 では候補生とはなんの候補なのか。これは、「アギト」と呼ばれる存在になるための候補だ。オリエンスには「フィニス訪れし時、クリスタルは世界を平定するもの“アギト”を導く」という口伝がある。人々はフィニスを滅びの災厄、アギトを救世主として捉えており、フィニスが訪れた時アギトが輩出されるよう修練を重ねているのが候補生というわけだ。その優秀な若者が戦争に動員されていく。

 戦記物として、戦時における様々な想いを描いている本作だが、その一方で伝説とも言える口伝やクリスタルとルシという存在、魔法が存在している。ストーリーとしてもこのシビアな面とファンタジーな面のふたつが混じり合っているところがあって、それがまた単なる戦記物ではない独特な世界観を作り上げている。



■ 朱雀内やワールドマップ……次の作戦までの時間を使って行動する独特なスタイル

作戦終了後は自由時間。画面の右下のように「作戦時間まで」が表示され、その時間がなくなるまで行動できる。ワールドマップに出ていくことも可能だ
次の作戦まですぐに時間を進めることもできる。ワールドマップの探索などいろいろしたければできるし、ストーリーだけを重視してすぐに進めることもできるという作りだ。次の作戦にレベルが不足している時は、ワールドマップのエンカウント戦闘などでレベル上げだ

 プレイの流れは独特なものがある。おおまかに言うと本作では、

「作戦(戦闘パート)」
    ↓
「自由時間(RPG的な探索などのパート)」
    ↓
「次の作戦」

 という流れでゲームが進行していく。作戦中は任務地で戦闘を展開し、それが済むと魔導院へと帰還していく。これを繰り返して章が進んでいくという形式だ。

 自由時間では魔導院内はもちろんとして、ワールドマップにも行けるが、そこには「次の作戦時間まで」という表示が現われる。時間はなにかイベントのある人物との会話では2時間、授業(経験値獲得やステータスアップ)でも2時間、ワールドマップへ出ると6時間、魔導院の外で展開される実戦演習に参加すると12時間が経過する。こうして時間が経過して次の作戦当日になっていくというわけだ。

 魔導院には候補生や各クラスを補佐するモーグリ、軍部の人間や局の人物など、たくさんの人が行き交っている。特別な会話やイベントのある人物や、クエストを依頼してくる人物もいて、自由時間での探索もしっかりとある。

 もちろんワールドマップの外では、作戦によって解放すれば街に入れるようになるし、ダンジョンもある。そうしたところにもイベントや隠された要素があり、こちらの探索も欠かせない。ワールドマップでは敵とのエンカウントや、ダンジョンでの戦闘でレベル上げもできる。いろいろなことができるが、作戦日までの時間制限があるので、限られた行動時間をどう使うおうかと考えるような遊び方になる。

 主人公たちの行動はあくまで魔導院が中心となり、ワールドマップのどこか遠くへ移動していくようなものではないのも独特だ。あくまで世界には探索要素が広がっているというスタンスであり、軍令部で作戦当日まで時間を進めてスピーディーにストーリーだけを楽しんでいくということもできる。割り切った作りになっていて、オーソドックスなRPGとは異なるプレイ感だ。


様々な施設が魔方陣で繋がっている魔導院内部。授業を受けると経験値がもらえたりステータスがアップすることも。依頼したい話がある人や、イベントがある人の頭上には、ひと目でわかるようにシンボルが表示される
魔導院内にはチョコボ牧場も。ここでチョコボを育成すれば、ワールドマップを移動するときに呼び出して乗って移動することもできる。チョコボにもいろんな種類がいて、繁殖すると新しい種類がたまに生まれる
こちらはワールドマップ。ランダムエンカウントで敵とのバトルも起こる。戦時中なので他国の領地には入れないが、作戦で領地を開放すれば入れるようになる。街もたくさんあって、そこに住む人から依頼をされたり、そこでしか売っていないアイテムなどもある
ワールドマップにはダンジョンもある。中に入ると作戦行動中のように戦闘状態で奥へと進んでいくことになる。ダンジョンは基本的に敵のレベルが高めで、ストーリー進行と難易度が揃えてあるということもない。入ってみたもののレベル差がすごくて1撃でやられてしまう、ということもあるので、無理せず慎重に探っていこう
「FF」シリーズと言えばやはり飛行艇も欠かせない。飛空艇発着場から料金を支払って乗れるサービスがあるが、世界のどこかには隠された飛行艇も存在する。その飛行艇を手に入れれば、自由に好きなところへ飛んでいける

 ゲーム全体の構造についてだが、こちらも独特。詳しくはネタバレになるので伏せるが、“一通り遊びこんでからが本番”と言えるところがあって、プレイ当初は正直いろんな違和感を感じるかもしれない。メインシナリオでも、シナリオのテンポが良いと言うより、ちょっと飛ばしすぎ? といった印象があり、何が起きているのかを把握しづらい場面もあった。だがそれらは、遊びこんでいくことで少しずつ理解できるようになっていくという、特殊な手法が採用されている。

 全体を通して見てみると、ボリュームはもちろんあり、探索要素、育成要素、マルチプレイもできる。ストレートにシナリオを楽しむこともできるが、やりこみもたっぷりできるようになっていて、長く楽しめる作品になっている。



■ バトル……敵の攻撃を避け、こちらの攻撃をタイミングよく狙うアクションスタイル

戦闘は完全なアクション操作。0組メンバーのうち3人が戦闘に出て、プレーヤーは操作キャラを、残りの2人はCPUが動かす

 戦闘はアクションスタイル。武器によるアタック、魔法、アビリティを駆使して攻撃しつつ、敵の攻撃を回避し戦うという、「FF」の要素をふんだんに使いつつのアクションになっている。

 操作はデフォルト設定(タイプA)だと、アナログスティックで移動、Rボタンで敵をロックオン、△ボタンで攻撃、□ボタンと○ボタンはアビリティか魔法、×ボタン(固定)は回避や防御、その場長押しで防御・回復系の魔法となっている。方向キーはロックオンの切り替えで、Lボタンを押しながらでサブコマンド(操作キャラクターの切り替えなど)になる。セレクトボタンで装備しているアイテムの使用もできる。

 少々複雑なところがあるが、おおまかに書くとRボタンで敵をロックオンしつつ、□、△、○、×ボタンで攻撃と回避を駆使し戦闘に勝つというもので、把握しやすく慣れるのにもそれほど苦労はなかった。操作のレイアウトもよく考えられていてスムーズに各種操作ができるようになっている。

 ただ、デフォルト設定(タイプA)だと通常攻撃が△ボタン、防御コマンドが×ボタンと配置的に縦にならんでしまっていて、瞬間的に回避しつつ攻撃するという操作がしづらいと感じたところがあった。タイトル画面にあるシステムのキーコンフィグにタイプA/B/Cのレイアウトパターンがあるので、1度自分が操作しやすいものを試してみるのがオススメだ。


敵をロックオンして攻撃を回避しつつ、通常攻撃、魔法、アビリティで敵にダメージを与えていく。豪華なエフェクトやモーションのかっこよさなど、クオリティの高さには「FF」らしさを感じさせる

0組メンバーはそれぞれ扱う武器が異なるので、誰を操作するかで戦い方も変わってくる。画像はレムで、2本の短刀で戦うリーチが短めのキャラだ
こちらは笛の音で攻撃したり特殊な効果を起こすデュース。音の攻撃には追尾性があり、遠距離に届く
魔法は「FF」シリーズでおなじみのものがたくさんあるが、攻撃魔法にはまっすぐ飛んでいくライフル、前方近くに広がるショットガン、周囲に広がる爆弾など、同じ属性でもいろいろなタイプがある。画像はブリザドBOM(爆弾)だ

 プレーヤーキャラクターである0組のメンバーは、14人それぞれが異なる武器を使うところがポイントで、操作するキャラクター次第でアクションの手触りも大きく変わってくる。エースならカードを飛ばしての攻撃、クイーンなら細身の剣、レムは2刀のダガー、キングは2丁拳銃というように、それぞれ得意な距離も異なる。

 魔法も種類が豊富。魔法はボタンを押せばすぐに発動するスタイルで、押している時間が詠唱時間となる。ファイア、ブリザド、サンダーといったおなじみのものも、詠唱時間を長くすることでファイラやファイガといった上位のものになっていく。

 また、ひとつの属性の魔法でも、敵へまっすぐ飛んでいくRF(ライフル)、遠距離に拡散するSHG(ショットガン)、自分の周囲に広がるBOM(爆弾)、ターゲットを狙い発射するROK(ロケットランチャー)、といった様々な種類がある。

 14人分の異なる武器と異なる攻撃モーション、さらには魔法やアビリティも種類がたくさんある中から、攻撃系の魔法やアビリティは各キャラに2つ、防御・回復系は1つを装備できるようになっていて、いろいろな組み合わせを楽しめる。

 操作キャラクターには14人から好きなキャラクターを使えばいい、と言いたいところなのだが、本作では遠距離攻撃が重要なところがあり、そこがプレイしていて少し気になったところでもある。例えば敵が飛行するタイプで空中にいたり建物の上にいたりすると、近接攻撃が届かず、キャラによっては何もできなくなるというシチュエーションがけっこうあった。

 また、作戦中にキャラクターが死亡した場合は控えのメンバーと交代するのだが、交代してしまうとその作戦中は死亡したキャラが使えなくなる。死亡直後すぐにセットしてあった蘇生アイテムなりレイズなりで蘇生すればいいが、それが無い場合は作戦終了までそのキャラクターは使えない。そのため、遠距離攻撃のキャラがやられてしまって蘇生できなかった場合、遠距離攻撃が必要な敵に対処できなくなり、作戦を最初からやり直すほかなくなるということも起こる。

 こうしたところから、飛び道具による遠距離攻撃ができるエース、キング、デュース、トレイ、ケイトは戦闘における重要度が高くなるわけだ。


敵に表示されている黄色いマークが「ブレイクサイト」。この表示が出ている時に攻撃が当たれば大ダメージを与えられる。赤いマークなら即死になる「キルサイト」だ

 戦闘のポイントになるのは、「ブレイクサイト」と「キルサイト」という、敵の隙を突いて大ダメージを与えるという要素。敵をロックオンしていると、敵の攻撃の出がかりや攻撃後に丸いマークが音と共に表示されることがある。黄色いマークがブレイクサイトで、表示中に攻撃すれば大ダメージ、赤いマークはキルサイトで即死させられる。

 ブレイクサイトは大ダメージを与えられるが、逆に言うと通常攻撃はよほどレベルが低い相手でないとまともなダメージを与えられない。雑魚には通常攻撃で、ボスクラスの強敵には積極的にブレイクサイトを狙っていくことになる。

 独特なシステムだが、慣れてくると回避を押しっぱなしで連続回避しつつ攻撃を誘い、相手の動きを観察してどのタイミングでサイトが出るのかを掴み、ここぞというところを刺すように攻撃するというプレイになってくる。ブレイクサイト表示中の攻撃がうまく決まると、「ガシャーン!」と砕けたような音と共に大ダメージが出て気持ちいい。通常攻撃と回避はボタン押しっぱなしで連打状態になってくれるのも、うまく考えられている。


ブレイクサイト表示中に攻撃を当てて大ダメージ。逆に、通常攻撃のダメージはかなり控えめになっていて、ブレイクサイトを積極的に狙っていくべきバランスになっている

 敵を倒したあとは「ファントマ」という素材アイテムのようなものを回収する。L/Rボタンを押しっぱなしにしていると死亡した敵の体が浮き上がり、ボタンを押すと爆発してファントマが吸い込まれてくる。体験版ではリズムが崩れがちな要素だったが、製品版では敵が浮き上がるまで1秒程度、1回で複数のファントマを回収できるように改善された。

 このファントマ回収時の爆発には攻撃判定もあって、近くの敵に大きなダメージを与えられる。敵を倒し、その間に近寄ってきた他の敵をファントマ回収の爆発でさらに倒す、そしてまたファントマを回収するというようなプレイが可能だ。独特だがコツを掴めると面白い戦闘になっている。

 追い込まれた時の最後の切り札となるのが「軍神」こと召喚獣だ。軍神は△ボタンと○ボタン同時押しで召喚するもので、“操作キャラクターの命を代償にすることで”一定時間召喚できる。蘇生させない限りは、その戦闘中または作戦中にはそのキャラクターが使えなくなってしまう。その代わり、軍神の戦闘能力は高く、多数の敵に囲まれていようとも一掃できるほどの威力がある。


倒した敵をロックオンし続けるとファントマを回収できる。回収時の爆発には攻撃判定があり、このダメージはかなり大きめ。うまくすれば、敵を倒しファントマ回収で他の敵も倒す、それを繰り返して戦闘終了までもっていくような、連鎖的に倒すプレイもできる
操作キャラの命と引き替えに呼び出す「召喚獣」。召喚後は自分で操作する。呼び出していられる時間には制限があるが、その力は強大だ

ブレイクサイト・キルサイトを攻撃するとき、こちらの攻撃判定が出るまでわずかながらモーションがあって遅いのに対し、敵の攻撃判定はできっているという場合があって、攻撃しようとすると逆にダメージを喰らってしまうなんていうことも。攻撃の発生と当たり判定、サイトが出現するタイミングが、敵にもよるがうまく合っていないと感じたところがあった
視点操作のカメラの挙動にも厳しい印象を受けた。視点の動きが加速度のないデジタルな動きで、戦闘スピードの速さと合わさって、かなり激しく動いてしまう。視点の動きがガクガクと見えてしまっている。また、画像のようにロックオン時の角度が水平すぎて前が見えないというところも気になった

 独特なテイストを感じさせる戦闘だが、操作の感触にはかなりクセがあり、気になるところもちらほら。モーションはとても細かく作り込まれていて見栄えもよい。だが、動作とスピードの兼ね合いか、結果的に動きがスムーズに見えないところがあった。

 キルサイト・ブレイクサイトはサイトの表示を見てから攻撃したのでは間に合わず、サイトが出る直前に先に攻撃を置いておくようなプレイになる。これはサイトの表示時間の短さとタイミングに対して、こちらの攻撃発生がどれも若干遅いためだ。攻撃モーションの発生時間がシステムとかみ合っていない印象があり、プレイ当初ストレスを感じさせる。慣れてくれば攻撃を先に置いておくプレイがうまくできるようになっていくものの、それでもちょっとクセのある遊ばせ方と感じる。

 敵が倒れてからファントマ回収できるようになるまでのリズムが崩れがちなところもあった。倒すとすぐにファントマ回収できる敵もいれば、皇国の兵士の一部には倒れてから絶命するまでに苦しむ様子の動きが入っていて、それが終わらないとファントマ回収に入れないものもいた。敵を倒してからファントマ回収へと続く操作のリズムが一定ではなく、テンポが変わるのは気になった。

 こうした個々の問題は、敵によって異なっているところを覚えてしまえば、または慣れてしまえば気にならなくなってくる。とはいえ、そこに至るまでは結構な時間がかかったのが正直なところだ。

 このゲームだけではないが、3Dならではのカメラワークも、デジタル的な動きで、滑らかなではない。特にターゲットロックしたことで大きくカメラが動く際、瞬時に切り替わって位置がわかりづらくなってしまう。また、ターゲットロックしたときの視点が水平に近すぎることで、自キャラクターが大きく映って視界を遮ってしまったり、敵や味方が密集している時には姿が重なって何が起きているのかわからなくなったこともあった。ロック時はほんの少し上から見下ろすような視点だったら、と思う。

 バトルシステム自体は特徴もあって面白いのだが、操作のリズムや感触を重視したチューニングに関して、「もう一声!」と言いたいところだ。



■ 制圧戦……ワールドマップで繰り広げられる軍のぶつかりあい。シミュレーションゲーム的な戦闘が繰り広げられる

制圧戦では、他の国が制圧している街や要塞を攻め、0組が潜入できるようにするのが目的。軍の部隊同士がリアルタイムに動き、戦っていく

 作戦によってはワールドマップでシミュレーションゲーム的な戦闘になる「制圧戦」も行なわれる。互いの軍が出撃して要所でぶつかりあい、拠点や街を攻め落とす、防衛する、というものだ。プレーヤーは0組として介入していき、ワールドマップ上ではあるが、戦闘時と同じように通常攻撃、攻撃系魔法、回避が可能。プレーヤーが攻撃参加することで前線を進められるというわけだ。

 制圧戦は簡易のアクション兼リアルタイムストラテジーのようになっていて、アクション要素は通常の戦闘より控えめ。敵部隊に攻撃すると反撃されるが、これはほとんど回避できない。反撃を喰らうことを前提に回復アイテムを装備し、その残量を見つつ手を出すような感じ。これも慣れると「そういうものか」と理解できる。

 味方拠点への指示権を得れば、味方のどの部隊をどの拠点へ攻めさせるかを指示できる。進軍先の拠点から出撃してくるのが兵士ならこちらは炎部隊を出撃させ、機械兵器なら雷部隊させるのが良かったりと相性もある。とはいえ、あくまで手軽なものになっていて、攻略のポイントを探るパズルゲーム的な要素もあるだろうか。

 通常の戦闘同様、空を飛んでいる艦隊などを攻撃する時は、遠距離攻撃できるキャラクターが重要になる。


出撃する部隊に指示を出し、敵部隊を押し戻して街を包囲。防御を崩したところで、0組が街中へと潜入していく。場面はワールドマップそのまま、操作感は戦闘中と同様だが、その中身は独特なものになっている



■ 育成や装備……取得したアビリティや、武器やアクセサリーで細かにカスタマイズ

武器・アクセサリーや魔法、アビリティはそれぞれ個別に装着できる。14人もいるので把握するのはなかなか大変だが、お気に入りのキャラクターを戦い方に合わせて細かにカスタマイズできるのは嬉しい
APを使ってアビリティを修得。キャラクターごとにアビリティの数は豊富で、その内容も様々なものがある

 レベル上げ等の育成要素や、装備品によるカスタマイズといったあたりはRPGらしさが存分に出ている。戦闘で経験値を稼ぎレベルアップしていくことで、戦闘は格段に楽になっていく。アクションスタイルな戦闘だが、レベル差の影響が強く出るバランスになっている。

 レベルが上がるとステータス値のアップ以外に、AP(アギトポイント)が手に入る。このポイントを使ってアビリティを取得していく。アビリティは各キャラそれぞれに特殊なものが多くあって、どれかを取得することでさらに新しいアビリティが出現していく。アビリティの効果を高める項目も含めると、かなりの数だ。

 レベルによる能力アップももちろんだが、新たなアビリティを駆使することでも戦闘の手応えはかなり変わってくる。移動スピードがアップしたり、連続攻撃から魔法へキャンセルして繋げるようになるアビリティもある。数が多いが、いろいろと試しているうちにキャラクターの操作も馴染んでいくだろう。

 0組のメンバー以外でも、ファントマを使って魔法を強化したり、軍神のレベルアップやアビリティ取得も可能。軍神は呼び出す機会というのが条件が条件だけに多くはないが、適度に使って育成しておきたい。

 アイテムや装備の面では、まず14人分の武器があり、街などで購入できるもののほかに特殊な条件で入手できる隠された武器も存在する。また、アクセサリは各キャラクターが2個装備できるようになっていて、ステータスアップや特殊な効果を持っているものなど豊富。こちらも武器同様に購入できるもの以外に依頼をクリアしたり特殊な条件で手に入るものもある。


武器・防具はショップにて購入する。朱雀だけでなく街にもお店があり、そこでしか売っていない装備やアイテムもたくさんある。独特な構造のゲームではあるが、こうしたところは“RPGらしさ”を感じる
魔導院内の施設「アルトクリスタリウム」。ファントマを使って魔法のパラメーターを強化できるところだ。強化は、一方を上げると一方が下がったり、同じ項目でも何度か選ぶうちに必要な素材と上昇値が変化したりと、ここもちょっと独特な作りになっている



■ マルチプレイ……ホストプレーヤーのゲームに“乱入”する独特で面白い仕組み

マルチプレイで乱入する時の、部隊選択画面。画像でも2つの部隊が表示されているが、これはホストが2人いて、どちらにでも乱入できるという状態。1ゲームは最大3人だが、複数のホストに好きに乱入するようにすればもっと多くの人数でも楽しめる。遊び方に縛りのない作りだ
マルチプレイでは、ジョイント補正というステータスアップの効果が加わる。乱入した側はSPPというマルチプレイだけで手に入るポイントがもらえ、SPPでアイテムを購入することができる

 マルチプレイは最大3人でのプレイが可能で、ホストのプレーヤーに参加する側は「乱入」という格闘ゲーム的な表現を使っているのがポイントだ。

 マルチプレイができるのは、ストーリー本編中の作戦や、タイトル画面の「作戦」からプレイできる各作戦(本編でクリアした作戦がリストに追加される)。それがホストのプレーヤーで、そこに参加する側はタイトル画面の「乱入」から、ホストの作戦へと参加していくようになっている。

 本作のマルチプレイの特徴は、参加する側がホストがプレイ中の作戦へと、まさに乱入するところ。ホストのプレーヤーは作戦開始時にユーザーの参加を許可しておけばいい。参加する側は操作キャラクターを1人選び、ユーザー参加が許可されているプレーヤーの作戦に入ればいい。参加するタイミングはイベント中や乱入禁止なシーン以外ならいつでもできる。

 マルチプレイになると、ホストプレーヤーの戦闘参加している3人のメンバーのうち、CPUが操作しているキャラクターが他のユーザーと入れ替わる。そこからは一緒に作戦完了を目指していくというわけだ。乱入プレーヤーはプレイに時間制限があり、その間だけ協力できるようになっている。一時的にホストのゲームへ乱入し、活躍して帰って行くことになる。

 こうした作りなので、最大3人とは言うものの、交代しつつやれば4人でも5人でも遊べる。例えばプレーヤーが5人いるとしたら、2人がホストになり、3人は好きなほうに乱入していけばいい。乱入時間が過ぎて参加画面に戻ったら、もう1人のホストの方へ参加すればいい。

 実際、PS3の「アドホック・パーティー」で本作のマルチプレイを遊んでみたのだが、8人が参加できるルームで、ホストが何名か、残りはそこに好きに参加するという遊び方をしていた。特に難しいやり取りも必要なく、乱入側で適した作戦がなければ、自分がホストをしてみるといった遊び方だ。この気軽に多人数で交代しつつ楽しめる作りは面白い。

 敵を倒したりファントマ回収を手伝う(ファントマはホストプレーヤーに渡される)などすると、SPPというマルチプレイだけで手に入るポイントが手に入る。SPPショップで特殊なアイテムを購入できたり、SPPを一定以上貯めるという依頼も本編中にあったりする。

 ただ、良くできているマルチプレイの仕組みだけに、マルチプレイに特化した作戦が少なかったのはちょっと残念。基本的に作戦は本編中のものと同様で、シングルプレイでもクリアできるようになっているものが中心のため、マルチプレイならではというものが少ない。もう一工夫、マルチプレイ専用作戦などが欲しかったところだ。


黒い影になっているキャラクターが乱入したプレーヤーだ。乱入していられる時間にはタイムリミットがあって、SPPを稼ぐと延長されたりもするが、作戦の最初から最後までというのは難しい。まさに一時的に乱入というスタイルなわけだ

1人でも楽しめる擬似的なマルチプレイと言える「魔導院の支援」。NPCのキャラクターが次々に乱入してくる

 マルチプレイでは、1人でプレイしている時には疑似マルチプレイと言える遊びができる。作戦開始時に「魔導院の支援」を選ぶと、「FF零式」に起用されている声優陣、開発スタッフ、主題歌を歌うBUMP OF CHICKENのメンバーのキャラクターが乱入してくるのだ。

 支援キャラクターとのプレイの様子はマルチプレイで複数人数で遊んでいる時とほぼ同じ。支援キャラクターはプレーヤーよりもレベルが高いことが多く、さらに彼らがやられてしまってもプレーヤーキャラクターの人数は減らない。0組メンバーが残り1人というときでも支援キャラが来てくれるため、難易度が緩和されるイメージだ。

 ただその代わり、支援メンバーがいるとその分プレーヤーキャラクタが戦闘に参加しない時間ができるゆえに、経験値が入らない。経験値を重視するなら支援なしでプレイするほうがいいだろう。


「魔導院の支援」で乱入してくるユーザー名は、「FF零式」に起用されている声優さんや、開発スタッフの方の名前だったりと様々。その中には、スクウェア・エニックスでプレジデントと呼ばれる人と言えば? というあの人も

 最後に、「スクウェア・エニックスメンバーズとの連動機能」について。スクウェア・エニックスが運営するWebサービス「スクウェア・エニックスメンバーズ」の、「FF零式 メンバーズサイト」では、ゲーム内のコードを送信して連動させると、メンバーズサイトのイベントに参加したり、メンバーズサイトで交換したアイテムをゲーム側へ送信することもできる。交換できるアイテムは順次替わっていくようだが、体験版「ナツビ」で手に入った0組メンバーの夏服なんかも引き替えられるようになっている。よりどっぷりと本作を楽しむなら、ぜひチェックしてもらいたい。



■ 異端児とも思える独特さを持った、新たな「ファイナルファンタジー」

「FF」シリーズのパーツをふんだんに使いながらも、ファンタジー世界での戦争というものを描いた「零式」。その独特さはストーリー展開も相まって、独特なものを感じさせる。アクション要素の手触りが多少気になったが、やりこみ要素も豊富で、マルチプレイも楽しめるなど、長く遊びこめるタイトルになっている。いろんな意味でクセの強い作品だ

 クリスタルを中心に発展した国同士の戦争と、そこに生きる特殊な運命を持った若者の物語を描いた、新たな「ファイナルファンタジー」。ファンタジー世界の下地を持ちながらも、漢字表記を中心にした軍事的なやり取りや、血みどろの描写、絶命していく兵士の生々しいセリフなど、従来の「FF」にはなかったテイストをふんだんに用いている。

 ストーリーでは“ファンタジー”と“戦争”という両極端な面を併せ持ち、ゲーム性としても“RPG要素”と“アクション要素”の2つをぎっしり詰め込んでいる。それだけにプレイの印象も独特だ。一方で、BGMの多くに「FF」シリーズのアレンジ曲が使われていたりと、なじみある要素も取り入れている。

 グラフィックスのクオリティの高さや、イベントシーンの豪華さはPSPの限界に挑んでいると思える仕上がり。読み込みについても、本作はデータインストールに対応していて、DISC1では554MBか865MB、DISC2では651MBか1,242MBと、インストール容量を2つから選べる。データ量の多い方をインストールすれば、ムービーシーン以外の読み込みは無くなる。メモリースティックDUOから読み込む時間は多少あるもののUMDからの読み込みよりもはるかに高速で快適。携帯機の手軽にプレイできる良さに快適さがうまくハマっていて、ついつい長く遊びこんでしまう良さがあった。

 ただ一方で、良くも悪くも個性的なゲームに感じる。ワールドマップの作りや探索、街での会話、育成や装備、アビリティのカスタマイズなど、RPG的な要素についてのデキの良さは感じるが、アクションの操作感はアクの強さを感じる。慣れてしまえば気にならなくなっていくし、存分に楽しめるものの、もっと操作のリズムや手触りの良さが重視されていたら……と考えると、“惜しい”という気持ちも湧いてくる。

 また、やりこみプレイの領域に入ってくると、難易度の上昇が極端なところがあり、バランス調整にざっくりしたものを感じた。

 良い意味でも悪い意味でも独特さとクセのあるタイトルという感想になったが、いずれも水準以上のクオリティなのは確かで、やりこみ要素も豊富で楽しめるタイトルといっていいだろう。

(C)2011 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
CHARACTER DESIGN:TETSUYA NOMURA

Amazonで購入