オーバーウォッチ
ジャンル: シューティング
発売元: スクウェア・エニックス
開発元: Blizzard Entertainment
プラットフォーム: PS4
WIN
価格: 8,424円
発売日: 5月24日

遂に正式サービススタート! ヒーローシューティングの決定版

 Blizzardがゲームを開発、スクウェア・エニックスが日本語ローカライズ及び販売を行なったPS4/Windows版「オーバーウォッチ」が発売され、1週間が経過した。皆さんはもう本作をプレイしただろうか?

 「オーバーウォッチ」は、21人の特別な力を持ったヒーローが6対6のチーム戦を繰り広げる、オンラインプレイに特化したFPSとして製作された本作。5月初頭には、参加者約970万人という大規模なオープンβテスト(以下、OBT)も行なわれ、本作の新しい感触を体感した人も多いのではないだろうか。

 本稿はPS4版の製品版のレビューとなる。弊誌ではゲームのルールやヒーロー21人の能力など基本的な部分の解説に関しては、筆者が担当したOBTレポートで詳しく取り上げている。今回は正式サービス時からのユーザー達の闘いの風景と、遊んでみた上でのより深い感触を語っていきたい。

【オーバーウォッチ: シネマティックトレーラー総集編】

【オープニングムービー】
オープニングムービーも導入。ヒーローたちが以前活躍していた姿も描かれている

1人プレイはチュートリアルや練習モードのみ。徹底したマルチプレイ仕様

 製品版「オーバーウォッチ」のプレイモードは、OBTと同じ内容であった。1人プレイ用のモードは「トレーニング」のチュートリアルや練習場、あるいは「カスタム・ゲーム」でAIと対戦する設定にするなどの手段のみとなっている。

今回プレイしたDL版は、ゲームのインストールに2時間ほどかかったが、その間トレーニングモードがプレイできるようになっていた
「ウィークリーバトル」は、週替わりの特別ルールのもとでプレイするモードだ

 FPSというと1人プレイ向けのキャンペーンモードが用意されているタイトルも多いが、本作の場合、敵を撃って倒すだけのゲームではなく、選ぶヒーローによってまったくゲーム内容が変わってしまうため、キャンペーンのゲームシステムを構築するのはなかなか難しいかと思う。ただゲームを楽しむ上で、自分が使うヒーローたちのバックボーンを知りたくなるのはプレーヤーの常で、それがゲーム中であまり語られないのは少々残念ではあった。

 その一方で、マルチプレイに特化された内容であることで、プレーヤーのほぼ全員がその参加者となり、プレイする相手には事欠かないのは大きな利点だ。さらにOBTで多くのプレーヤーが事前にゲームに触れる機会が設けられていて、これによってゲーム発売日当日から白熱の対戦が繰り広げられている状況も見逃せない点だ。

 個人的にひとつ気に入っているのが、「カスタム・ゲーム」における観戦ができる仕様だ。このモードはロビーを作った自分やフレンド、AIを6枠ずつのチームに設定して対戦を行なうモードなわけだが、バトルを行なう12枠のほかに「観戦者」の枠が6枠設けられていて、そこで設定したプレーヤーのバトルを観戦することができるのだ。

 観戦者はドローンカメラのようにステージの地上から空中までいたるところを移動して観戦することができ、これを見るのがなかなか面白い。ゲーム中は主観視点で見ているヒーローたちの様子を客観視点で見られることで、そのアクションや持っているアビリティの挙動や効果範囲などを、目で見て確認することができるはず。

 フレンド同士での対戦・観戦はもちろん、今後行なわれるであろう公式のゲーム大会などでもこのモードは重宝するのではないだろうか。プレイ中の任意のフィールドに飛び込んで観戦できるようになればさらに白熱できそうなので、アップデートなどで対応してくれれば嬉しいのだが。

【観戦モード】
観戦時はカメラを自由に移動できる。また画面上部のデータで両チームの状況を見られる

ヒーローを複数使えるようになると、ゲームの楽しさが格段に向上する

 バトルは6対6のチーム戦。「攻撃」と「防衛」に分かれコントロールポイントや移動するペイロードを巡る攻防を繰り広げるルールや、攻防の概念のない状態でコントロールポイントを一定時間占有するというルールの戦いが展開していく。

「チーム用ヒント」の表示がなくなることで、バランスのいいチームということになる
リスポーンエリア内またはリスポーン中は、ヒーローの変更はいつでも可能。ただしアルティメットアビリティのゲージは0になってしまう

 それぞれのルールはステージごとに決まっている、というよりも、ステージ自体がそれぞれのルールに合わせて設計されているとのこと。一部のステージについては、攻撃側と防衛側において地形的にかなり有利不利が出ているという声もあり、筆者も実際にそれを感じたことはある。そこを各自の腕やチームワークによって突破する達成感を味わう楽しみもあるが、できればアップデートなどでバランス調整を行なってもらいたいところである。

 プレーヤーキャラクターとなるヒーローは全部で21人、オフェンス、ディフェンス、タンク、サポートの4つのロールがあり、それぞれ持っている能力やアビリティなども全て異なっている。これだけの人数がいるのに、全員がほとんど被ることないキャラクター性能を持っているのはさすがの設計だ。またどのロールにも扱いやすいバランスタイプと、ややニッチながら強力なタイプが揃っていて、プレーヤーのニーズも満たしている。

 ヒーローの選択は、チームのバランスを考えて選ぶのが基本となるが、そうでなくてもゲームは成立するので、好きなヒーローや同じヒーローを選んでしまっても一向にかまわない。本作はバトル中でも互いのリスポーンエリアでヒーローを選び直せる仕様なので、チームのバランスや戦況などによってヒーローを選び直すことも戦術のひとつとして成立している。そういう意味では各ロールで2人ぐらいずつ使えるヒーローがいると、ゲームの面白さが格段に上がるかと思う。

【マップを覚えよう】
攻防どちらに回るかで、大きな有利不利を実感するステージは確かに存在している

ロール別の主観的ヒーローチェックをしてみた

 21人のヒーローについては、OBTレポートで、その特徴や操作感覚などについて触れているので、ここでは各ロールで筆者が好んで使っているヒーローについて、主観を交えてチェックしてみたいと思う。あくまで筆者個人としてのプレイスタイルに合わせた楽しみ方となるが、参考にしていただければ幸いだ。

【オフェンス】

攻撃をいかにしてヒットさせるかを、アビリティや仲間との連携を絡めて考える

 一口にオフェンス=攻撃タイプといっても、該当のヒーロー6人の攻撃手段は様々で、さらに移動スピードや持っているアビリティなどもまったく異なっている。また力でごり押しできるようなゲームデザインではないので、タンクやサポート系ヒーローとの連携も重要となる。

 その扱いやすさではやはり「ソルジャー76」が群を抜いている。連射と高威力の2種の武器を持ち、回復役としてもチームに貢献できる。サイティング(照準に捉える)が苦手でも、アルティメットアビリティ(以下、アルティメット)の「タクティカル・バイザー」で百発百中の命中率を味わえる。ゲーム中も見かけることが多く、筆者も好んで使っている。

 また正確なサイティングが苦手な筆者にとっては、ショットガンを持った「リーパー」も選ぶことが多い。距離を詰めないと威力を発揮できない武器ではあるが、移動に関するアビリティが揃っているので、敵の裏取りや一撃離脱の戦い方も得意としている。ともに操作に関する難易度は低く設定されたヒーローなので、これからプレイするという人にもオススメだ。

 また筆者は現在「マクリー」を修行中だ。武器が弾幕を張るようなタイプではないので、射撃の腕がないと扱うのは難しいヒーローではあるが、L2での全弾発射や、アルティメットの「デッド・アイ」など、早撃ちが決まったときの爽快さは格別で、上手いプレーヤーのマクリーが味方になると本当に頼もしい。彼を使ってキルを取れる腕になるのが、現在の筆者のオフェンスにおける目標でもある。

【オフェンス】
戦いやすさではナンバー1といえるソルジャー76。初心者から上級者まで、幅広く扱えるはず
マクリーは「フラッシュバン」で敵をスタンさせてから全弾命中させられれば、ほとんどのライフを奪える

【ディフェンス】

防衛的な攻撃手段を持ちつつ、味方との連携次第でオフェンスにもなれる存在

 ディフェンスといっても、「防御」という役割はタンクが担っていて、彼らは防衛に向いた攻撃が得意という立ち位置にある。持っているアビリティの性質などから、最前線で戦うタイプではないものの、武器などに長い射程を持つヒーローが多いので、タンクとコンビネーションを取ることで、前線でも十分に戦えるようになる。

 自身が固定砲台になる「セントリー・モード」でその火力の高さを見せつける「バスティオン」や、特に防衛時のタレット設置で抜群の信頼度を得る「トールビョーン」などが人気を見せる中、筆者はOBTのときと同様に「メイ」の使用率がかなり高めだ。敵を凍らせながらダメージを与える武器「凍結ブラスター」は見た目以上に攻撃力があり、L2で撃てばスナイパー的な遠距離攻撃も可能だ。敵を凍らせて動けなくしたあと、さらに攻撃を続けるか、味方に攻撃を任せるかといった、選択肢のある戦況を容易に作り出せるのも面白いところだった。

 「ウィドウメイカー」や「ハンゾー」はスナイパーであり、動いている敵のヘッドショットなどを狙ってキルを取っていくためにはそれなりの腕が必要だ。ただし本作ではタレットのような設置武器もあり、遠距離からこれらを潰していくという重要な役目も持っている。特にウィドウメイカーの武器は、R2でアサルトライフルとして近距離の敵にも対応できるので、武器を連射できないハンゾーよりは扱いやすいはずだ。またそのハンゾーも、アルティメットの「龍撃波」を使えば、壁の向こうのタレットなどを破壊することができる。「鳴響矢水」であらかじめその位置を確認してから「龍撃波」を発動することで、より確実に安全な状況を作り出せるというわけである。

【ディフェンス】
メイの「アイス・ウォール」は設置前にもう1度R1を押すことで設置する向きを変えられる
タレットの射程はかなり長いので、遠距離から狙う場合でも十分な注意が必要だ

【タンク】

仲間に代わって全てのダメージを受ける壁となる役目を最優先する

 最前線の壁となる存在であり、敵にダメージを与えることよりも、敵からの攻撃をいかにして防ぐか、ということを意識して戦うと、チームへの貢献度が一気にアップする。それを象徴するヒーローが「ラインハルト」だ。L2で自分の前方に展開する「バリア・フィールド」を正しい向きに出しているだけで、1度で最大2,000ダメージ分の攻撃を防ぐことができるのだ。HPも500あり、トールビョーンの「アーマー・パック」やサポート系ヒーローによる回復を絡めれば、攻撃もできる壁としての役割を十分に果たすことができるだろう。

 他の4人は、ラインハルトと比べると攻撃面でも優れていて、その中でもザリアは、自分や味方に張ったバリアが防いだダメージを一定時間自分の武器の攻撃力に還元できるという独自のパッシブアビリティを持っている。攻撃を防ぐタンクとしての存在感を相手に意識させつつ、前線突破しに来た敵を上昇した攻撃力で返り討ちにする、という爽快な戦い方がなかなか気持ちよかった。

【タンク】
「バリア・フィールド」展開中は客観視点となり、周囲の様子が把握しやすくなる
ザリアの上昇した攻撃力は、レティクルの下に数値で表示されている

【サポート】

敵よりも味方の状況を常に意識して戦うことが重要

 「シンメトラ」以外の全員が味方を回復させるアビリティを持っていて、チームに1人は入っていてほしい存在だ。敵よりも味方の様子を意識することになるので、敵を撃って倒すのが苦手なプレーヤーでもチームに貢献できるのが最大のポイントだ。

 発売以降、予想以上に人気が高かったのは「ルシオ」で、存在するだけで周囲の味方を回復できる「ヒーリング・ブースト」の効果は絶大だ。また武器の「ソニック・アンプリファイア」も弾幕を張って敵のライフをじわじわ削れる使いやすい武器で、自分にも効果のある「ヒーリング・ブースト」を併用しながら前線の少し手前あたりでうろうろしているだけで、敵にとってはかなり鬱陶しい存在となれるのだ。

 筆者はルシオのほか、「マーシー」を選ぶことも多く、こちらは攻撃は基本的に考えなくていいヒーローであり、いかに味方の状況を把握できるかにかかっている。ライフが大きく減っている味方には「クリティカル」のアイコン表示され、味方をその場に蘇生させるアルティメット「リザレクト」を使えるときは、その効果範囲内で現在何人がリスポーン待ちなのかがわかるようになっているので、1人でも多く回復・蘇生させられるような状況把握を心がけたい。また彼女が味方にいるときは、リスポーンを待たずに戦場に復帰できる可能性もあるので、気を抜かずに待ちたいところだ。

【サポート】
ルシオはライフは高くないものの、「ヒーリング・ブースト」中は常に回復した状態でいられるので、粘り強くステージに残れる
マーシーの「リザレクト」は、倒れた味方が範囲内にいないと効果がない。使われた味方はその場に復活する

ゲームシステムや日本語ローカライズなど、間口の広さが最大の売り

レベルアップ時に入手できる「トレジャー・ボックス」には、ヒーローのスキンやスプレー(ゲーム中に方向キー↑で床や壁に掛ける)、勝利ポーズなどのコレクションが入っている
この「トレジャー・ボックス」は、PS Storeで購入が可能だ。ゲーム進行には直接影響はないものなので、欲しい人だけ購入しよう

 発売後のユーザーの反応を見ていると、OBT時に配信されたバージョンが製品版に近い仕様だったことで、製品版ではすんなりとプレイに入っていけた筆者だったが、製品版とほぼ変わらないという超大盤振る舞いだったため逆に期待が大きくなりすぎ、OBT参加者の中には若干物足りないと感じた人も存在したようだ。とはいえ、これから始めるという人には基本的に関係のないことなので、気にしないでいいかと思う。

 1つ製品版で気付いたのは、特定のヒーローがチームを組むことで、ゲーム開始時の待機時間に特別な会話が挟まる点だ。ゲーム中で述べられるヒーローたちのバックボーンに関連する数少ない要素であり、それを日本語+プロの声優陣の演技で聞けるのは嬉しいところだった。冒頭でも述べたが、ヒーローたちへより感情移入したい人に向けて、今後何かしらの展開にも期待したいところである。

 見た目はFPSながら、撃つことが全てではない斬新な設計が施された、アクションゲームとしての要素も強い本作。マルチプレイゲームとしての間口は広く、登場するヒーロー21人も個性的かつ魅力があり、カジュアルさと奥深さを持ち合わせた、Wii Uの「スプラトゥーン」などにも近い内容が、本作の最大のセールスポイントと言えるだろう。主観視点のゲームシステムに抵抗がなければ、ぜひこの新しいマルチプレイ対戦に飛び込んでみてほしい。