(2016/5/31 00:00)
ついに、ついに待ち望んだ日がやってきた。「スーパーロボット超合金 ジャイアントロボ THE ANIMATION VERSION」の発売である。開発者から“商品化の可能性がある”と聞かされ、イベントで試作品を見て指折り数えて待っていた「ロボを手にする日」がついにやってきたのだ!
本商品は1992年から1998年まで全7巻で販売されたOVA(オリジナルビデオアニメ)「ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日」の主役ロボ「ジャイアントロボ」をモチーフとしている。球体を組み合わせたようなデザイン、頭の小さな極端なプロポーションはアニメ作品を知らない人には奇妙に映るかもしれないが、思い入れを持つ筆者達から見れば、ものすごくカッコイイのだ。そのロボが“超合金”となった。これは“夢が叶った”といっても決して過言ではない。
今回は購入したこの商品の魅力、そして「ジャイアントロボ」への思い入れをたっぷり語りたい。ジャイアントロボを手にして、遊んで語ることができる。これは、本当に幸せなことだ。
20年以上の時を経て、無敵のロボが超合金に!
来たるべき近未来……。人類は、第3のエネルギー革命「シズマドライブ」の発明により、かつてない繁栄の時を迎えていた。だが、その、輝かしい平和の影で激しくぶつかり合う2つの力があった。
世界征服を策謀する秘密結社「BF団」。かたや、彼らに対抗すべく世界各国から集められた正義のエキスパートたち「国際警察機構」。そしてその中に、地上最強のロボット“ジャイアントロボ”を操縦する1人の少年の姿があった。名を、草間大作。「砕け! ジャイアントロボ!!」。
この口上と共に始まる全7巻のアニメーション。それがOVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日」である。本作は横山光輝氏原作の「ジャイアントロボ」の設定を受け継ぎながらも、1970年代のレトロな感じの近未来像、そして「水滸伝」や「三国志」、「鉄人28号」、「バビル2世」、「仮面の忍者赤影」……などなど横山氏のマンガのキャラクターが総出演するユニークな作品だ。
アニメはとにかく空前にして絶後とも言える豪華な作品となった。一流のスタッフ、洋画吹き替えのベテラン声優を多数起用し、音楽はワルシャワフィルハーモニーオーケストラ……その豪華さが作品としてきちんと結実しているところもすごい。しかしOVAのため“知る人ぞ知る”作品なのも確かである。流行とは違うキャラクターデザインや、渋い作風、そして20年以上も前の作品であり、見逃している人も人も多いと思うが、ぜひ、ぜひ見てもらいたい。アニメ史に大きな足跡を残している名作である。
名作でありながら間違いなく“異色作”でもあるOVA「ジャイアントロボ THE ANIMATION-地球が静止する日」の主役ロボ・ジャイアントロボはその姿も異形だ。スフィンクスをイメージした原作版のジャイアントロボから、大きなアレンジをなされている。飾りの少ない鉄の塊のような姿は、リベットやシャッターなどが目立つようになっており、軍艦や戦車のような雰囲気もある。球体を組み合わせたような上半身、大きな拳や足を体と繋ぐ上腕や太ももは棒のように細く体型はとても特徴的だ。メカデザイナーは小林誠氏。「機動戦士Zガンダム」の「ジ・O」や、「機動戦士ガンダムZZ」の主役機「ZZガンダム」などマッシブなロボットのデザインで知られている。
OVA版ジャイアントロボは、やはりそのデザインが面白い。今回撮影するために編集部で眺めていたら、原作を知らない人たちから「頭小さすぎ」、「体型が面白い」というツッコミを受け、かなり“色物ロボット”扱いをされてしまった。その後、アニメを知っている人と「ロボのカッコ良さがわからんのか!」と盛り上がったが、冷静になってみれば昨今のガンダムやスタイリッシュな格好良さを持つロボットのデザインとはかけ離れているのは認めざるを得ない。ちょっと泥臭く、ある意味古いアニメの悪役ロボのようなデザインである。しかし、だからこそ、このデザインは“圧倒的な力”を具象化したような迫力があり、強い魅力を放っているのである。
「スーパーロボット超合金 ジャイアントロボ」は、原作のロボが持つマッシブなデザインをきちんと再現している。筆者はこれまでもツクダホビーの巨大サイズのフィギュアや、海洋堂のリボルテックなどでジャイアントロボの商品を持っているが、どれもが微妙に違っていて面白い。他の商品と比べてみると、バンダイの今作はちょっと腕が長く感じるバランスで、上半身も大きい。元となるアニメでもジャイアントロボはカットごとに体のバランスがわずかに異なる。このように様々な商品で色々な“味”が楽しめるのも、アニメ商品の魅力といえるだろう。
「スーパーロボット超合金」シリーズはアクション、ポーズに特化した超合金シリーズであり、可動とスタイリングを重視しているためか、“合金パーツ”は「超合金」や「超合金魂」よりも少なめである。「スーパーロボット超合金 ジャイアントロボ」の場合も合成樹脂が多用されており、金属パーツは手足と胸と腰の赤い部分、ロケットエンジンのノズル部分で使われているのが確認できる。発売前に想像していたよりも金属パーツが少ないとも感じたが、よく見れば関節部分にも使用されており、心地よい重さがもあって、手に持ったときの満足感は高い。ただ、背部のロケットエンジンの大きさや金属パーツの重みもあって、立たせておくにはちょっとバランスが取りにくい部分もある。背中にはフィギュアスタンド「魂ステージ」シリーズをつけられるジョイントパーツをつけられるので、今回の撮影は背中に支柱をつけている。
OVA版ジャイアントロボは、やはりパンチの姿がカッコイイ。その巨大な重量、圧倒的なパワーを拳でたたきつけるその姿。表情を変えないその顔だからこそ感じられるこちらをぞっとさせるような“破壊の意思”。「スーパーロボット超合金 ジャイアントロボ」は原作ファン、超合金ファンである筆者の思い入れに充分答えてくれる商品だ。原作の登場から20年以上、ちょっとマイナーな素材ではあるが、ファンにはぜひ手にとって欲しいし、そうでない人もバンダイチャンネルなどで配信されているので、まず原作を見て欲しい。
劇中の印象的なポーズも可能な可動域。驚きの武装ギミックも再現
それでは、「スーパーロボット超合金 ジャイアントロボ」の各ギミックを見ていこう。可動範囲は広く、様々なポーズが取れる。デザイン上腰の折れ曲がりは大きくないが、肩は前後にも大きく動き、さらに軸可動、そして上腕部のボールジョイント接続もあって、パンチのポーズの微妙な表情付けができるようになっている。
首は二重関節で引き出し機能もあり、体に首が埋まった感じから、上を見上げるポーズまでできる。ロボ自体が重量があるため支柱の強度が心配ではあるが、飛行ポーズで飾ることも可能だ。各関節にはカバーパーツが取り付けられて関節を隠しているので、原作のロボの雰囲気を再現するのに大きく役立っている。
足の付け根は軸が前後に移動する。パンチなど力の入ったポーズ、仁王立ち、飛行ポーズの時など、状況に合わせて軸を動かすとポーズがグッと締まる。腰の「スポンソン砲」も基部がボールジョイントなので4門それぞれが可動する。ロケットエンジンは角度がつけられるだけでなく、7巻で印象的だった基部の回転も可能だ。グリグリ色々なところを動かしていると、劇中の様々なポーズを再現できるポテンシャルを持っているのが確認できる。手首は拳と開き手、そしてロケットバズーカを支える手と必要最小限だが、充分とも感じる。
そして「ジャイアントロボ」のもう1つの魅力と言えば武器である。一見徒手空拳で戦うようなデザインでありながら体の中から様々な秘密武器が出てくるのがロボの魅力だ。本作では肩のシャッターが開き大型ミサイルが露出するギミックと表現しているのと、大型武器「ロケットバズーカ」の展開ギミックが用意されている。
特にロケットバズーカのギミックは圧巻だ。背部の大型のロケットがそのままバズーカになるギミックは楽しい。右上部のカバーを外し、原作通りにロケットを上にスライドさせると砲身が出てくる。それをさらに引き出し、ロケットの基部に内部を再現したメカパーツを取り付ける。そして右胸の赤いパーツを外し、砲身を支える支柱パーツで胸とロケットを接続すれば変形完了だ。
ロケットバズーカを丸ごと別パーツで用意するのではなく、アニメならではの“トンデモ変形”をある程度ギミックで再現しようという開発者の心意気がうれしい。ロケットをスライドさせ、ロボに構えさせる中で、脳内でアニメの名場面がBGMと共に再生されるのが楽しくてたまらない。
贅沢を言わせてもらえれば、せっかく左右の胸パーツが外れるのだからそこからミサイルポッドが出てくる武装も再現して欲しかったところだ。左の胸パーツも外れるので、充分再現可能だったはずである。例えばプレミアムバンダイで“武器セット”が出てそこで補完されるのだろうか? あるいは全身にシズマドライブからエネルギーを受けるためのパイプを接続した“最終決戦仕様”で搭載するのかも? などの想像も膨らんでしまう。
あえて繰り返すが、アニメ好き、ロボット好きの人にはアニメ史に輝く原作OVAを1度見て欲しいし、このロボを手にとって欲しい。“超合金”ブランドでOVA版ジャイアントロボが出たことを祝いたい。ポーズを取らせて机の上に置いて、眺めて、つい笑みを浮かべてしまう。造形、ギミック、塗装のクオリティなど、どれもが満足をもたらす商品であり、ファンにはぜひ注目して欲しい。開発者の強い思い入れも確かに感じる作品だ。
(C)光プロ/ショウゲート