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【ChinaJoy 2014】「新生FFXIV」吉田Pが中国で語ったMMORPGのゲームデザイン論

圧倒的なコンテンツボリュームをアピール。「新生FFXIV」のバトルシステムがシンプルな理由とは!?

7月31日〜8月3日開催(現地時間)



会場:上海新国際博覧中心(Shanghai New International Expo Centre)

 ChinaJoyの併設イベントのひとつCGDC(China Game Developers Conference)が8月1日、ChinaJoy会場に隣接するケリーホテルにおいて開幕した。CGDCは、中国のゲーム関係者を対象にしたカンファレンスで、中国の経営者や開発者のみならず、欧米、日本、韓国など、ゲーム産業が盛んな地域から経営者やクリエイターを招待し、2日間に渡って講演を行なう。本稿では、その最初の講演を飾った「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー吉田直樹氏の講演の模様をお伝えしたい。

「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
毎度お馴染み吉田氏の自己紹介
「新生FFXIV」のこれまでの歴史。いよいよ夏よりオープンβテストがスタートする

 GDC自社カンファレンスなど、多くの場で「新生FFXIV」関連の講演を行なっている吉田氏だが、今回のテーマはチームマネジメントとゲームデザインポリシーの2点。これまでの講演と多少被る部分はあったものの、より掘り下げてより具体的な形で紹介が行なわれた。

 まず吉田氏は簡単な自己紹介を終えた後、「新生FFXIV」の紹介から行なった。中国では「新生FFXIV」はようやくβテストがスタートしたばかりであり、まだゲーム関係者の中でも知名度が低いためだ。

 「新生FFXIV」は2013年8月27日に、日米独仏の4カ国語でグローバルリリースし、最新の獲得ユーザー数は230万人。中国の水準で見ると、この数字は決して多くはないが、吉田氏は「中国抜きでこの数字は非常に好調と言えるのでは無いか」と補足を入れ、中国市場を含めることでさらなる高みを目指していることをアピール。

 そして正式サービス開始後も、現在までの約10カ月の間に、3度のメジャーアップデートをリリース。吉田氏は「それぞれゲーム1本分に相当するボリューム」と胸を張り、新規ダンジョンだけで12に及ぶことをアピール。その間にも6度に及ぶマイナーアップデートを実施し、バグの少ないゲームではありながらも254回に及ぶバグフィクスやバランス調整を実施していると報告した。

 ジョブに関してはバトルクラスは9、クラフターは11職業、ギャザラーが3職業、全23職業でサービスを開始。次回の大型アップデートであるパッチ2.4では、ローグ(双剣士)と忍者という2つのクラス/ジョブを追加することも明らかにした。

 バトルコンテンツに関しては、インスタンスダンジョンが26、バトルのみのコンテンツが20、フィールドで発生するFull Active Time Event(F.A.T.E.)はなんと396にも達するという。エンドコンテンツは24人向けのレイドダンジョンが2つ(クリスタルタワー)、8人で挑むレイドが3つ(大迷宮バハムート)用意され、メジャーアップデートの度に、交互に追加されていることを明らかにした。

 次に吉田氏は「そのほかにも皆さんが楽しみにしているPvPコンテンツがある」と中国の参加者に切り出し、4対4のコロセウム、3つの勢力に分かれて戦う72人の大規模PvP「フロントライン」を紹介。ハウジングシステムについても規模の大きなものが実装されていると語り、期待を煽った。吉田氏はまとめとして「新生FFXIV」がいかに巨大なMMORPGで、いかに速いスピードで大型のアップデートを繰り返しているかをアピール。その上で次に、このアップデートをどのような組織マネジメントで実現しているかを語っていった。

【「新生FFXIV」の圧倒的なコンテンツボリューム】
メジャーアップデート
マイナーアップデートとホットフィックス
バトルコンテンツ
クラス/ジョブ
エンドコンテンツ
PvPコンテンツ/ハウジング

組織マネジメントを語る吉田氏
スタッフは250人にも達する!
「新生FFXIV」開発チームの組織図

 組織マネジメントについては、まず驚かされたのがスタッフ数だ。「新生FFXIV」に関わるスタッフの数は“250人以上”にも達するという。

 開発チームの組織図としては、トップにプロデューサー兼ディレクターの吉田氏がいて、その下に、シナリオ、バトル、生活系、リードデザイナー、グラフィックスなどのエキスパートを集めた開発コアチーム、そしてマネジメントのみを行なっているマネジメントチームが存在する。その下にいわゆる一般スタッフとなる開発チーム、QAチーム、コミュニティチーム、WEB/Appチームが存在する。

 マネジメントチームだけで10名以上いて、これでもまだ足りないということで、国内はもちろんのこと、世界的に見ても未曾有の規模で開発が進められていることが明らかにされた。

 組織図を見ると形としては典型的なトップダウンのスタイルだが、実際はそうではなく、スクラム型の運営スタイルになっているという。たとえば、吉田氏が特定のコンテンツに対してスケジュールを提示したとすると、開発コアチームとマネジメントチームで共有して、徹底的に問題の精査やスケジュール/タスクの確認を行なうという。その上で、その検討結果を吉田氏と含めて協議し、計画の全体調整を先に行なう。場合によっては計画の練り直しを吉田氏に打診することもあるという。これは拡張パックやPS4版の発売といった大きな話だけではなく、メジャー/マイナーアップデートでも同じプロセスで調整を図るという。

 吉田氏は、「意識の共有を行なうことを大切に考えており、トップが無茶な計画をしないことが一番肝心で、開発運営をしているのは僕では無く、現場のスタッフ。現場の意見・意思を尊重することが大切」と語った。

 次に運営については、デイリーとウィークリーの2つの尺度で運営していることを明らかにした。デイリーの運営は、毎朝、コミュニティチームからのフィードバック、GMからのレポートを受けてコミュニティチームが内容を確認してその場で対応を決めていく。基本的に吉田氏はこのプロセスには絡まず、最終判断のレポートが共有されるだけで、これによってスピーディーな運営を実現している。

 ウィークリーの運営は、週に2回、1週間に3時間の定例会議を、吉田氏と開発コア、マネジメントチームの間で行なう。パッチや拡張パックの開発状況の確認から、プレーヤーのプレイ状況の分析、今回の中国や将来目標としての韓国などの地域展開の話題など、幅広い話題をここで協議する。これにより、プロジェクト全体が抱えているリスクの早期発見ができ、おかしい場合はその都度軌道修正が行なわれる。

 吉田氏はこのマネジメントスタイルのポイントについて、ほぼすべての案件を吉田氏が把握し、なおかつ開発チームと情報・状況をシェアしながら、決断決定を最速化して、開発チームが中心となる運営スタイルを築いている。これを実現するためには、吉田氏自身がすべての事象に対して精通する必要があり、なおかつ専用のマネジメントチームが必要不可欠となる。通常はスピードを優先させるためであったり、開発スケジュールに追われてできないことだが、このスタイルを貫くことは重要だと考えているという。

【2種類の運営アプローチ】
デイリー運営
ウィークリー運営

「新生FFXIV」のゲームデザインコンセプトは、「アップデートをし易い作りにすること」
プレーヤーが要求するMMORPGの最低水準。これは死んじゃうよということで自己紹介の写真に繋がる。これは日米、そして中国、必ず笑いが取れる部分だ
「WOW」と比較される「新生FFXIV」
だったらアップデートしやすくして対応していくしかない。その体制作りが重要
講演終了後のお馴染みの光景。中国にも早くも吉田氏のファンがいる!

 続いて吉田氏は、「新生FFXIV」のゲームデザインコンセプトについて言及した。この話題はすでにGDCでも取り上げられているが、中国のユーザーの為によりかみ砕いて説明が行なわれた。

 吉田氏が語る「新生FFXIV」のゲームデザインコンセプトは「アップデートをし易い作りにすること」。なぜならMMORPGは、プレーヤーが要求する最低水準が恐ろしく高いゲームジャンルであり、“できて当たり前”ばかりで構成されている分野だからだ。

 MMORPGなら「World of Warcraft」と比較することから逃げられず、常に対決の構図で見られてしまう。このため、コンテンツボリューム、コンテンツアップデート計画、その量産体制の構築は必要不可欠であり、そのための予算と人員が確保できているかどうか大きなポイントになる。

 そして吉田氏がはじめて語った要素として、バトルシステムに対する考え方がある。「新生FFXIV」のバトルシステムは、世間一般でよく言われるように非常にシンプルな内容になっているが、これは意図的なものだという。理由は「シンプルなほうがバトルコンテンツを量産しやすいから」。MMORPGは、見た目の派手さ、キャッチーさ、PRのしやすさなどを考えて、アクション性にこだわるゲームが増えているが、吉田氏の持論では、それよりも安定してコンテンツを供給できる体制を整えることが重要だと考えているようだ。

 実際に吉田氏は中国メディアのインタビューで「アクション主体のMMORPGが増えているがどう思いますか」と聞かれるという。吉田氏の回答は、「ゲームデザインは選択の問題なのであまり気にしていない。確かにアクション性は見栄えの良さや差別化をしやすいところがあるが、すべてのMMORPGがその方向に進んでしまうと、ついていけないユーザーが増えてしまう。そうなると結局MMORPGというジャンルに新規ユーザーが増えず、MMORPGそのものが衰退しかねないと考えている」ということだ。かなり深い考えに基づいて意図的にシンプルさを貫いていることがわかる。

 その具体的な実践例として「新生FFXIV」は、バトルシステムをシンプルにすることで、はじめてMMORPGを遊ぶ人を含め、誰もがある程度遊べるということを大切にしているという。ユーザーの「あれもこれも欲しい」というニーズに応えるための、継続的なアップデート体勢の構築、時にはバトルシステムのように、あえてシンプルさを貫く決断。吉田氏は「これが『新生FFXIV』のゲームデザインコンセプトです」と結んだ。

 最後に吉田氏は、まもなく中国でもオープンβテストが始まることをアピール。「ぜひ触ってみて下さい」と呼びかけ講演を終えた。中国のユーザーは「新生FFXIV」をどう評価するのか、オープンβテストの開幕が楽しみだ。

【「新生FFXIV」はビギナーでも遊べるMMORPGに】
「新生FFXIV」では、ビギナーの参入障壁を下げるために過度なアクション性の採用を控え、シンプルなバトルシステムを採用することで、MMORPGとしての拡張性を確保している

(中村聖司)