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【GDC 2014】「新生FFXIV」吉田Pが、「旧FFXIV」が失敗した理由を余さず語る

グラフィックス偏重、MMOへの不勉強、安易なファンへの寄りかかり。全否定から生まれた「新生FFXIV」

3月17日〜3月21日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

講演前にリラックスする吉田氏

 GDCでは、伝統的にMMORPG関連のセッションは少ない。オンラインに特化したGDC「GDC Online」がテキサスオースティンで開催されていることや、そもそもの絶対数が少ないことが理由として挙げられる。北米産MMORPGすら限られるのに、日本産となると稀だ。これはやはり、それだけ北米で日本産のMMORPGがいかに成功できてないかという証左だろう。国産では、2006年の「ファイナルファンタジーXI」以来、講演は行なわれていない。

 GDC 2014では、既報の通り、「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏が登壇し、「旧FFXIV」の失敗から、いかに新生させたかが語られた。

 スクウェア・エニックスでは実は同じネタで2012年に講演を行なっているが、そこはサービス精神旺盛の吉田氏、新ネタをたっぷり盛り込んで、ネタを盛り込みすぎて駆け足になってしまったぐらい、最後まで飽きさせない内容になっていた。さっそく紹介しよう。

「旧FFXIV」の失敗は、「FFXI」の成功体験が足かせになっていた

講演を行なう「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
5つのテーマを駆け足で語っていった
ズタズタに失敗した「旧FFXIV」
それは「FFXI」の成功体験が足かせになっていたようだ
「旧FFXIV」が失敗した3つの理由

 吉田氏は、話のきっかけとして自己紹介を行ない、自身「FF」シリーズのファンであり、「FFIII」と「FFVII」が好きで、「FFXIV」でも黒魔道士を使っていることなどを披露し、「FF」ファンの心を掴んでいた。

 吉田氏はさっそく本題である「旧FFXIV」が失敗した理由について切り込んだ。吉田氏が「旧FFXIV」失敗の要因として語ったのは、「FFXI」の大きな成功体験ではないかと切り出した。「旧FFXIV」ローンチ当時から「FFXI」は8年前のタイトルであり、その間、Blizzard Entertainmentの「World of Warcraft」のグローバルでの成功により、ユーザーニーズ、心理、求められるUIに変化が生まれており、グラフィックスにこだわるスクウェア・エニックスはこの流れに気づけなかったという。

 吉田氏は、「成功したMMOの続編を作るのはとてつもなく難しいこと」と擁護しつつ、その後、「旧FFXIV」を全否定する。「旧FFXIV」は、「WOW」をターゲットとして設定しながら、プレイ体験で差別化を図る方針だったにも関わらず、とにかくグラフィックスにこだわってしまったことが間違いであることを強調した。

 吉田氏は一例として、街に置かれるフラワーポット1つに、1,000ポリゴン、150ラインのシェーダーコードが使われていたことを明かし、「これはキャラクターと同じ処理負荷、PCの表示数を20人に制限するという判断が行なわれていた」と信じられないという雰囲気で語った。

 PS2時代、スクウェア・エニックスはこの手法を全タイトルに適用し、他社を寄せ付けない、繊細なグラフィックスで成功していた。アーティストは刀匠であり、彼ら職人を多数擁して、クオリティの高いアセットを生み出してきたが、「旧FFXIV」では、際限なく存在する無数のアセットに対してまで1つ1つ作り込んでしまい、アセットの表示を維持するために、MMORPGの命であるキャラクターの表示数に制限を掛けるという愚策を採用してしまう。これも吉田氏によれば成功体験を変えることの難しさだという。

 また吉田氏は、日本のMMORPG開発事情にも視点を移し、日本でAAAクラスのMMORPGが作られなくなった結果、日本のMMORPGプレーヤーが減り、MMOの本質を知っているクリエイターがいなくなるという悪循環が生まれてしまったのではないかという。「旧FFXIV」もその例外では無く、「FFXI」から「旧FFXIV」までに発生したMMORPGのトレンドの変化、市場ニーズを掴めず、それが「旧FFXIV」という形になって表われたということだ。

 まとめとして吉田氏は、「旧FFXIV」の失敗の理由として3つを挙げた。ひとつはグラフィックスクオリティに固執しすぎたことで、大事なのはゲーム体験であるべきだとした。2点目にMMORPGという難しい開発に対して、ひたすら不勉強だったこと。そして「FFXI」の運営経験から、多少の不手際があっても「FFXIV」でもついてきてくれるという、ブランドやファンに寄りかかった安直な気持ち。吉田氏は「旧FFXIV」プロジェクトをまさにズタズタに否定し、その上で「新生FFXIV」は、ビジネスより信頼を取り戻すことを大切にしようと決め、前例のない同名によるタイトルの作り直しを決断したという。

【フラワーポットに1,000ポリゴン!?】
グラフィックスを偏重しすぎるあまり、開発におかしなところが生まれていた

「新生FFXIV」の開発体制について、1つのチームを2つのゲームに行き来させたのが1番の工夫

「新生FFXIV」の開発工程
ユーザーとのコミュニケーションを大事に
新旧比較では旧のテンポの悪さに笑いが起こっていた

 続いて吉田氏は「新生FFXIV」の開発について話を移した。これについて吉田氏は、とにかく時間との戦いだったという。「FFXIV」そもそもの寿命、PS3版の存在、「旧FFXIV」のアップデートなどを理由として挙げながら、通常MMORPGの開発は4〜5年、長くて7年かけるものを2年8カ月でのリリースに成功した。

 「新生FFXIV」はいくつかのフェーズに分けて行なわれたが、まず設計フェーズでは吉田氏自身がゲームの骨組みとなる基本要素について400程度のデザインを行なったという。それを信頼できるスタッフに託し、上がってきたものをチェックする。この際の吉田氏の基本方針は新しさや新機軸を狙うよりも、MMORPGとして当たり前に必要なものを整えることを最重視し、他タイトルの良いところも徹底的に研究し、リスク回避を図ったという。このフェーズは2カ月掛かり、スタッフは全体のわずか0.5%ほど。

 次にプログラマーの設計フェーズでは、採用するミドルウェアの検証に時間を費やし、設計意図を知り、理解してもらうことに注力し、コードを書いてはいけないという決まりを作った。理由は中途半端なまま設計に入ってしまうと、イテレーション(反復開発)コストが高くなるリスクがあるからだという。この間も設計担当者以外は「旧FFXIV」のアップデートに回し、無駄な人員を出さないようにした。

 コードを書かせないという基本方針について吉田氏は、MMO開発経験者が少ないため、それを育成することが大事で、コアデザインチームやスタッフには、他社のMMORPGを徹底してプレイしてもらったという。

 「旧FFXIV」のアップデートを同時平行して行なったことについては、「新生FFXIV」の開発を、「旧FFXIV」に盛り込むことで、デザインの共有化や、作業のワークフローの把握など、来たるべき「新生FFXIV」のリスクを下げるのが狙いだったという。吉田氏は、この1つの開発チームが2つのゲームを行ったり来たりさせたのが1番の工夫だったのではないかと振り返った。

 レベルデザインについては、吉田氏はたびたびインタビューで語っているように、冒険がそこにありそうな雰囲気が作れてるかどうかを重視したという。シームレスマップからゾーン制に変え、紙で描いてのシミュレーション、モックアップチェックなどを細かく行っていった。その方角に何が見えるのか、移動が楽しいと思えるかどうかをチェックした上で製作に入り、製作そのものは複数のレベルデザインチームに別々のレベルデザインを担当させることで競って良いマップを作ろうとしてくれたことも良く作用したという。

 2011年10月14日の「新生FFXIV」発表以降は、プロデューサーレターや、プロデューサーレターLIVEも開始した。当時代表取締役社長だった和田洋一会長を引っ張り出したことなどについて触れながら、これからは情報を発信するだけではダメで、双方向である必要があるという。開発状況をオープンにするのはマネジメントの面でリスクがあるが、同じような施策を他社も行なっていて、効果は実証済み。沈黙して理解されないよりは健全なことではないかとし、これからも続けていく方針を明らかにした。

 吉田氏は、上記の話は全体のほんの一部であり、来年のGDCで各セクションについてお話しできればと思うと、来年も参加する方針であることを明らかにした。

 ここで吉田氏は「旧FFXIV」と「新生FFXIV」の比較映像を見せた。「新生FFXIV」ローンチ時に公開されたもので、どのエリアもグラフィックスは綺麗だが、それだけであり、何もなくモンスターすら見えない。バトルについてはバトルスピードがまったく異なり、総じてグラフィックスにこだわりすぎた結果、大事なゲームエクスペリエンスが損なわれていたと断罪した。

 その一方で、吉田氏が担当した以降の「旧FFXIV」については、アップデートを重ねて課金を開始したところ、課金者が前の3倍になったことを披露。MMORPGはギブアップせずにアップデートすることがプレーヤーにしっかり届くという好例だと思う。「旧FFXIV」は良い終わり方ができたのではないかと自画自賛した。

最終的にはゲーム体験がすべて。それゆえのアップデートのしやすさの重要性

F2P vs Subscription
アップデートしやすさが大事
大型タイトルとの比較は避けられない
本日のまとめ
セッション修了後も、多くのファンが列を作った

 続いて「F2P vs Subscription」では、インタビューでの予告通り文字の上に大きなバツを描き、「毎回メディアに聞かれ、毎回長い回答をしているが、結論からいうと、この対立軸は争うものではなく、選択するものだと思っている。メリットデメリットがあり、色んな状況を踏まえた上で設定すべきものであり、混在していて構わない」と語った上で、「結局ゲームがおもしろければプレイしてくれるし、つまらなければビジネスモデルに関わらずプレイして貰えない。最終的にはゲーム体験がすべて」と持論に導いた。

 最後に大型MMORPGの未来についても言及した。吉田氏は、「WOW」をルガディンに、「新生FFXIV」をララフェルとした寸劇を見せながら、大型MMORPGを成功させる上で重要なことは、「アップデートをしやすくすること」とシンプルに述べた。なぜならMMORPGはゲームとして必要となる最低要件が非常に多く、「WOW」のようなメジャータイトルと直接比較されることからも逃げられない。でもそれはユーザーからすれば当然の話であり、クリエイターとしては、他のゲームに無い要素を確保しつつ、アップデートしやすい環境を作るというのが近道だと思うと述べた

 また、プレーヤーとのコミュニケーションの大事さも解いた。吉田氏によれば、MMORPGは国家の運営に似ており、プレーヤーは国民、住民であり、打ち出す政策に満足しているうちは沢山集まってくれるが、納得できなければいなくなる。「運営側の方針が独善的であった場合、それは独裁者」としながら、本当に危機を迎えたMMOは、何も言わずに辞めてしまうとし、彼らと対話して、彼らが何を望んでいて、何が用意できるのかをキチンとコミュニケーションすることが大事と持論を展開した。

 さらに、自分のゲームをしっかり遊ぶことも大事とし、先の大阪イベントのように
プレーヤーに囲まれてプレイしてもミスしないぐらいコアゲーマーである必要があるとし、開発とユーザーは視点が異なり、とりわけコンテンツの寿命に対する考え方は相容れないが、だからといって言葉を交わさないのは間違っていると言い切った。

 その上で「FF」シリーズは、多くのファンに支えられているフランチャイズであり、ゲーム体験に涙してくれたユーザーを敵に回すべきでは無いと、再三ユーザーとのコミュニケーションの重要性について解いた。

 最後に吉田氏は「新生FFXIV」はまだヒナチョコボぐらいの存在であり、「跳んだり跳ねたり太ったり、海を泳いだり、空を飛んだりしながら、全力で育っていこうと思っています」と述べ、大きな拍手を集めた。

(中村聖司)