インタビュー

【ChinaJoy 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー

グローバル版と中国版のゲームバランスに違いは付けない

グローバル版と中国版のゲームバランスに違いは付けない

CGDCで講演する吉田氏。吉田氏の見立てによると、グローバルも中国もユーザーの傾向に大きな違いはないという
試遊台でプレイする中国のユーザー。ブースにはゲームパッドは用意されていなかったが、ゲームパッドを求めるユーザーもいたという

――今後「新生FFXIV」は5言語対応のMMORPGになるわけですが、グローバル版でも中文で表示できたりするのですか?

吉田氏: できません。クライアントが別ですし、サーバー構成も異なるからです。

――サーバーが違うということは、中国市場でのニーズが、かなりグローバル版と変わってきた時に、中国版のゲームバランスはそちらに合わせて調整していくことになるのですか?

吉田氏: そこは慎重にお話ししなければならない部分だと思いますが、まずコンテンツの違いを作るつもりはありません。今までにもお話している通り、ゲーム体験の差を生みたくないというところが大きいです。ただポイントは2つあると思っていて、シーズナルイベントに関しては、グローバルと中国の旧正月とか労働節を考えても内容も時期も違うものですので、季節イベントに関しては、実施時期だったり専用のものというのが中国版に入る可能性は高いと思っています。

 あともう1つはゲームバランスです。これはそれぞれ進行しているパッチのバージョンが違いますし、先程もお話したように正式サービスのスタート地点が違うので、ゲーム内の各数値については、しばらくはそれぞれに最適な値を用意します。

 これは中国のメディアの方にも聞かれるのです。「中国ならではのニーズがありますよね?」と。でも、僕としては、これまでたくさんの中国プレーヤーの方、欧米プレーヤーの方と接してみて、やはりそういった極端な差はないと感じています。どのくらい長時間プレイされるかとか、習慣的な差はもちろんありますが、ゲームが好きか嫌いか、楽しいか楽しくないかの違いに差はないと思います。PvPが大好きだとか、日本はあまりPvPを好まないとか、そういう好き嫌いはありますが、それでも日本にだってPvP好きはたくさんいて、そういった方にいただくPvPに対するフィードバックと、中国の方が出してくるPvPのフィードバックにそれほどの違いがあるかというと、そんなことはないと思います。どうしても中国メディアの方は、国で語りたがる傾向があるのかなあ、と。

――中国のメディアやユーザーから、中国はグローバルとは違うから、こういうコンテンツがほしいんだという意見はほとんどない?

吉田氏: 具体的にこれが!というご要望はないです。強いて言えば「アートマの出現確率は、もう少し上がりませんか?」と、プレーヤーとして言われるぐらいです。グローバル版にVPN接続してプレイしている中国の方もいらっしゃるので(笑)。僕はIP制限をかけているので、普通には中国から繋げないのですが、VPNを使ってプレイする濃いプレーヤーの方もいらっしゃいます。でも、そういう方は本当にまじめにプレイされる方ばかりで、そういう方とグローバル版の「FF」ファンの皆さんに、やっぱり違いはないのです。

――「ファイナルファンタジー」というIPは中国ではどうなのですか?

吉田氏: 本当のことを言えば正式発売は1度もしたことがなくて、今回が初の中国進出です。皆さん本当なら「FF」のことを知らないはずなのですが……、相当お詳しいです(笑)。ChinaJoy初日のステージで「新生FFXIV」と「FF」シリーズに関するクイズを皆さんに出したのですが、「“モーグリ”が初登場したシリーズはどれですか?」って質問を即答されてしまいました(笑)。皆さんお詳しいですし、本当に世界中のファンの皆さんは、何ひとつ違いがないと思った良い例です。

――それでは今後プロデューサーレターLIVEみたいなものを中国でやったりするのでしょうか?

吉田氏: 中国のメディアの方にも「FF」ファンの方が多いので、ぜひメディアとタイアップして中国版のレターLIVEみたいなものをやりませんか、というお話はいただいています。時期がきたらアリかなと思っています。中国の方にも言われたのですが、やはり直接プレーヤーとコミュニケーションをとる上層部はそうはいないというお話をされていて、ゲームをプレイしていて仕様の話などをキチンとできるというところは、中国のプレーヤーも吉田さんに対して信頼感を持ってもらえるでしょう、ということでした。

――ChinaJoyでの来場者のプレイの仕方を見ていて何か感想はありますか?

吉田氏: 昨日アルテマウェポンチャレンジを実施していたのですが、「ゲームパッドを用意してありますか?」と聞かれたのがおもしろかったですね。「新生FFXIV」はゲームパッドでもきっちり遊べるように作ってあるので、中国でこれから「新生FFXIV」をプレイする方にも、もしかしたら「ゲームパッドで」という方も増えるのかなと思っています。

――吉田さん自身もかつて仰っていたように、中国のユーザーはコンテンツの消費スピードが早いのではないかというところがあります。実際に進出してみて吉田さんは実際にどう感じていて、グローバル版と中国版で差はつけないということでしたが、そこに対してどう対処していくつもりですか?

吉田氏: 皆さんそうおっしゃいますね。本当にそうなのかどうか、きちんと見たいと思っているのが1つと、やはりまだファーミング系のゲームと同じように認識されているのではないか? というのがもう1つです。やはりストーンだったり、クリスタルタワーのアイテム確保のフラグだったり、大迷宮バハムートのフラグ制御だったりを考えると、どんなに時間をかけても超えられないラインがありますので、消費スピード、という概念が何を指すのか、正確に知ろうと考えています。

 仮に中国の方が4日間ぶっ通しでやろうとも、1週間にアラガントームストーン:神話は300個以上は貯まらないので、その点は消費スピードには関係がありません。モブハントのようなコンテンツが中国版に入った時、どれくらい皆さんのアイテムレベルが進んでいるかを見たうえで、まだ中国版で“神話装備”を同盟記章の交換装備に入れるのは早いのではないかとなったら、そこは調整すると思います。これは消費が早いかどうかではなく、ゲームバランスの問題です。だからコンテンツで調整するつもりは無くて、そのしきい値を最適にするだけです。トップと離れすぎても萎えるのがMMOなので、そこも踏まえながら。そここそは、僕はコンテンツやバランスではなく運営だと思っています。

 消費スピードが問題視されたのは第一世代のMMOで、ひたすらドロップレートに張り付いてゲームをする形です。その場合には、プレイ時間がコンテンツ消費速度に比例するため、そのような減少になりがちです。ただ、「新生FFXIV」はそういったデザインでは内ので、その点はあまり心配していません。ただ、グローバル版の攻略動画を見ることができるので、攻略していくスピード自体が速くなることはあると思います。よって、グローバル版のパッチバージョンと同じように超える力をかけるかどうかは、やはり運営上で検討していくべきだと考えています。

 グローバル版の「新生FFXIV」をパッチ2.3から始めると、色々なものをショートカットしようと思えばできます。極蛮神も行かなくても良くなっている。でも本当だったら体験してもらった方が面白いハズなので、そういったところはもちろん運営で調整はしていきます。

――中国では、初めて他社運営になりますが、メリットやデメリットは?

吉田氏: やはりわれわれは日本の企業なので、中国文化を表面上は分かったつもりになっていても、そうではありません。中国のゲーマーに向けてPRしたり、お客様に対してコメントを出していく意味では、絶対に中国がわかっている会社さんにやっていただいたほうが間違いなく良いとは思っているのです。そこは絶対的なメリットだと思います。あとはShandaさん自体がオンラインゲームで成長してきた会社さんなので、運営だったり数字だったりGM分析だったり、その辺の体制作りが素晴らしいと思いました。そもそもShandaさんがお持ちのユーザーコミュニティもものすごく強力なので、そこにそのまま「新生FFXIV」を持ってこれて、その人たちに訴求して、かつ親密なサポートをしていけるというのは、計り知れないメリットだと考えています。

――そのShandaさんのノウハウがフィードバックされて、それが「新生FFXIV」の運営にも生かされることはありますか?

吉田氏: そうですね。今までもShandaさんを見学していいなと思ったところは普通に取り入れたりはしています。

――例えばどんなところですか?

吉田氏: 例えば数字分析はやはり一日の長は中国の方が強いなと思いました。ツールにしてもそうですし。その数字をそうひっかけて持ってくのかと。後はやはり日本というか、今グローバルで運営されているMMOより、どの国よりもインゲームのライブイベントが多いですね。人件費の値段の違いというのももちろんあるのでしょうが、尋常ではない人数のGMさんを使って、全ワールドでイベントをやったりというのはすごいと思います。グローバル版の場合、全60ワールドでインゲームイベントをやろうと思ったら、尋常ではない人件費になってしまいます。その辺りはすごいなと思いましたね。

――中国って物理的に非常に広いわけですが、極タイタンをさくさくクリアできるようなレーテンシを中国全土で確保できたのでしょうか?

吉田氏: データセンターの数がグローバル版とは違います。中国全土に徐々に広げていく形で、地域ごとにデータセンターがあります。キャラクターを作る際に、接続先への接続状況が表示されますので、高速なデータセンターを使っていただければ、優秀な回線速度でプレイ可能です。

――なるほど。ワールドごとにデータセンターがわかれているイメージですね。

吉田氏: データセンターを選択し、それからワールドを選択するということです。

――中国ではDCごとにワールドグループが構成されるイメージですか?

吉田氏: 大規模なDCでは、そのDC内でも複数のワールドグループにわかれている場合もあります。

――ちなみに新疆ウイグル自治区とか、チベットみたいな中国の辺境でも「新生FFXIV」はプレイできるのですか?

吉田氏: 計測テストは行なっており、速度的にはまったく問題ないという結果が出ています。あとはShandaさんの運営ポリシー次第です(笑)。

――なるほど。いわゆる1級都市、2級都市はしっかりカバーする感じですね。

吉田氏: そうですね。ただ昨日も僕中国のサーバーでアルテマウェポンチャレンジをやっていましたけれど、回線超速かったですね。

(中村聖司)