インタビュー
【ChinaJoy 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー
PS4版「新生FFXIV」は中国で出るのか? その超えるべきハードルとは!?
(2014/8/12 00:00)
PS4版「新生FFXIV」は中国で出るのか? その超えるべきハードルとは!?
――今年中国でコンソールゲームが解禁になりますけれど、それがもたらす影響、効果を吉田さんはどう捉えていらっしゃるのかということと、それが「新生FFXIV」にとってはどう影響するのか教えて下さい。
吉田氏: 中国はコンソールゲーム市場ではなく、オンラインゲーム市場なので、少なくともXbox OneとPS4もオンラインゲームハードでなければ絶対にいけない。シングルプレイのゲームは、爆発的には売れないと思います。そのためには、中国の各ゲーム企業さんときちんとしたパートナーシップをそれぞれのハードメーカーさんが組まないといけないと思っています。しかし、これまでのハードメーカーさんは、ライセンスフィーをベースとしたビジネスをしてらっしゃいます。そのハード向けにゲームを作る場合、ライセンスフィーが開発側の負担になるわけです。
ハードメーカーさん自身が、自社のハードウェアでコミュニティを抱えているなら、そのコミュニティに商品を販売させていただくために、そのライセンスフィーをお支払いする、という考えも納得できます。しかし、そもそも中国の場合は、中国のゲーム会社さんがすでにインフラやコミュニティをお持ちです。これから市場を作る立場にある、コンソールゲームハード派後輩にあたるわけです。その場合、中国のゲーム会社さんは「なぜ僕らがお金を払ってゲームを作らなくてはいけないの?」とこのスキームが理解しにくいだろうと予測しています。ですので、パートナーシップが重要で、双方が儲かるビジネススキームがちゃんとできて、ゲームがそもそもきちんと発売されていくかどうか、その点がとても重要だろうと考えています。ですので、そう簡単には一気に広がったりしない気がしています。
――それではPS4版についてはまだ時期尚早という考え方ですか?
吉田氏: それもパートナーシップ次第だと思います。PS4版のサーバーを誰が持つのという問題が出たりもします。だから超えなくてはいけないハードルは非常に多く、実はハードが出せるようになったからといって、簡単にたくさんのゲームが発売されるかどうかといえば、そうではないかもしれない、と思っているわけです。
――ソニーさんとしては当然PS4版「新生FFXIV」を出したいと考えていると思いますが、スクエニさん、吉田さんとしてはそんなに単純な話ではないだろうと?
吉田氏: 出せるのでしたら、もちろんすぐにでも出したいです。しかし、先ほども言ったように超えなくてはいけないビジネス上の壁がまだまだ多いのかなと思っていて。ゲームなので、選択肢は1つでも多い方がいいし、「新生FFXIV」だけではなくて、やはり中国のプレーヤーの方にもグローバルで面白いゲームがいっぱいありますので、もっともっとプレイしてもらって、もっと国の垣根がなくなってくれた方が僕は嬉しいです。そのためには各社利害を1回捨ててでも、「ゲーム文化を広げる」という意識が前面に出ないと、そんなに上手くは、なかなか進まないのではないかというのがあります。
やはりグローバルビジネスを長くやっていると、グローバルというもののルールや、決めたレギュレーションというものを、そう簡単に覆せないということもあります。中国ではすべてが新規参入なのですが……。「新生FFXIV」も中国でPS4版を! いう場合には、グローバルと同じで、クロスプラットフォームに是非したいので、やはりShandaさんとSCEさんとの協業という形も考えていただかないといけない。別々は絶対にあり得ないと思うのです。すぐにでも中国でPS4版を展開したい。でも焦ってはいない、というのが僕の心境です。
――ずばり中国展開での目標を教えて下さい。ユーザー数が出せるのが1番いいのですが、どのような絵を描いているのか教えてください。
吉田氏: まず最低100万は……。早めに達成したいという感じではあります。
――初速で行きそうな勢いですか?
吉田氏: どうでしょう……。ただ、難しいのが、先ほどもお話したように、今回の戦略は「ロイヤルユーザーさんをきちんと作ってから上積みしていこう」という考え方ですので、最近中国で例えば「ブレイドアンドソウル」が始まりましたが、ああいった形でとにかく誰にでもクライアントを渡して、とにかくたくさん来てもらってというやり方をしないので、数字の印象は違ってくると思います。「ブレイドアンドソウル」も初速はすごかったのですが、一気に落ちましたよね。
――でもそこが中国市場の特徴ですよね。
吉田氏: ええ。最近は特に顕著です。同接80万から、一気に20万まで落ちるということもよくありますし。だから今、韓国でも中国でも、大型MMOを作るのをためらうという時期でもありますね。
――パッケージでコレクターズエディションなどは出しますか?
吉田氏: コレクターズエディションは検討しています。それはどちらかというと、完全にファンアイテムです。
――内容はグローバルと同じ?
吉田氏: いいえ。グローバル版と内容は異なる予定ですが、現在も細かく調整中です。
――サントラとかアートブックとか日本と同じような内容ですか?
吉田氏: 同じになるものもあります。
――8月にサービスインする割にはまだふわっとした話なんですね(笑)。
吉田氏: 中国の方のお仕事は、どうも直前にバーッと決める、ということが多いようで……。
――コレクターズエディションは8月に発売するのですか?
吉田氏: やはりコレクターものなので、クライアントを売るという感覚ではありません。流通網もあるわけではないので、それはどちらかというと、ストア専売でコレクターアイテムとして数限定して売るというパターンです。ですので、OBTに合わせて発売、というよりはサービスインして、1番盛り上がっている所で発売するという手法でいきたいと、Shandaさんからは聞いています。
――8月中旬に発表会があるということですが、このほかになにかイベントというか、キャンペーンのようなものを中国でする予定はありますか?
吉田氏: 8月25日OBT開始というアナウンスの後、様々なコラボ系だったり、ネット上での展開が一気に始まります。僕らも感覚をすりあわせるまで時間がかかった部分なのですが、グローバルの場合、例えば1年前、リリースから逆算して2回前のE3で1回発表して、次のE3でプレイアブルだったり大々的なプロモーションをして、その年のホリデーシーズンに発売予定、といったイメージが定番です。
でも中国のオンライン市場の流れだと、パッケージを売るという感覚も流通という考え方もないので、OBTがすべてなのです。いきなりプレイできる。だからその直前直後にものすごいPRを行なうのが一般的だそうです。だから「ブレイドアンドソウル」も約1年βテストをやってきて、調整をかけてその間はまったくPRはせずに、「OBTが決まりましたこの日からです!」という日から、少女時代を入れてPRがドドンと始まって、一気にバイドゥ指数が上がって……というパターンでした。そういう意味だと「新生FFXIV」も同じです。今中国銀行のデビットカードが「新生FFXIV」デザインになるなど、大がかりなコラボも進んでいますし、後は中国のNVIDIAさんだったり、アライアンスメーカーさんとの協業も進んでいますので、それらは全部OBTに合わせてはじまります。
――日本やグローバルで導入されているワンタイムパスワードや、スマホアプリの導入予定はありますか?
吉田氏: そちらはShandaさんにお任せしています。なぜならアカウントシステムはすべてShandaさんのものになるからです。僕らはロビーサーバーとShanda認証システムとの繋ぎ込みを担当しています。中国でプレイされるかたはShandaさんのアカウントを取って、Shandaさんのアカウントでログインします。あと中国版のランチャーを作っているのもShandaさんなので、そこはお任せしています。
あとはスマホアプリに関してやるかどうかもShandaさん任せにしています。僕らが作ることはしないです。APIはお渡ししますので、お好きなように、お好きなデザインで開発してください、という方針になっています。
――中国サービスはパッチ2.16からということですが、その後のアップデートサイクルはグローバルと同じですか? それともそこも変えていくのですか?
吉田氏: まだShandaさんと協議中です。出そうとおもえばすぐに出せますが、それこそプレーヤーのみなさんのアイテムレベルの上昇率を見て検討というのがベースにあります。もちろん矢継ぎ早にパッチが出た方が安心感があるというのは間違いないので、3カ月あけずに、2カ月目にパッチ2.2を出してしまうという可能性はなきにしもあらずです。Shandaさんに運営を任せているからこそ、できるだけShandaさんの意見を尊重しようと思っています。僕はどちらかというと、焦らないようにブレーキをかける側なので、Shandaさんはイケイケでパッチを早く出したいと思うでしょう。でもゲームの本質を崩してしまってはいけないので、僕はどちらかというとブレーキ役です(笑)。
――どんどんアップデートするのは簡単ですが、それだとやはり息切れしてしまいますよね。最終的には1年ぐらい経過した後にはグローバル版と同じバージョンで遊べるようなイメージでしょうか?
吉田氏: どうなんでしょう……。それも考え方だと思っていて、月額課金でもやはりサーバーダウンはお客様にとって、最大のストレスですので、できるだけそれを避ける運営にすべく努力しています。ですが、中国版が従量課金である以上、サーバーが落ちてしまうことがさらにビジネスにとっても致命的なので、Shandaさんの本音で言えば、グローバル版が安定してから、その安定度の高いパッチを入れたいと考えていらっしゃると思います。でもプレーヤーの方は、できるだけグローバル版と近いほうがいいとおっしゃる。
――そこはジレンマですね。
吉田氏: そこはShandaさんの運営が、どういうリクエストを出してくるか次第になります。
――まったく落としたくないわけですね。中国的には。
吉田氏: そうですね。そこは間違いなくそうですね。
――グローバルの間隔だと、アップデート直後のログインエラーは少しお祭り的な部分があるじゃないですか。「みんな遊びたいんだから、まあしょうがないか」みたいな。中国ではそれが許されない?
吉田氏: F2Pのゲームはある程度「無料だから仕方がないか」という感覚があります。ただ、今回は、久々の従量課金制なので、Shandaさんとしては、とても慎重になっていらっしゃいます。
――仮に落ちたりすると保障しなきゃいけないとか?
吉田氏: それはないです。前払いではないので、その日の売り上げが下がるだけです。ただ、それが厳しいと思います。
――とはいえ、従量課金というビジネスモデルはかなりのチャンスですね。
吉田氏: そうですね。中国の古いMMORPGで、同接200万を達成したゲームなどは、実はほとんど従量課金制です。その頃のゲームは今でも運営されていて、現在でも同接30万、40万は普通にあるゲームです。
今回弊社でも「クロスゲート」を10年前にリリースしたものを、またスマホ版でリリースしました。やはり懐かしいと言って、今またすごい勢いでプレイしてくださる方もたくさんいらっしゃいます。最近出ているゲームの方が、ファストフード的になってしまっているというところはあって、だからこそShandaさんは昔のようにきちんとゲームを大切にして遊んでくれる人を、大切にしたいですということを今回プレーヤーに向けてPRしているそうです。Shandaさんの印象も少し変わったとおっしゃってました。
――ちゃんとゲームを愛して欲しいと?
吉田氏: そうですね。でも経営的には相当難しい判断をしていただいたと思っています。当然初期スタートで、パーッとプレーヤーを増やしてしまいたい……でも、大切にする、という方針を貫いていただけたと思います。
――中国ではPvPコンテンツが好まれる傾向があります。PvPフロントラインはグローバル版でも最近入ったばかりですが、フロントラインの実装時期は中国だけちょっと早めたりすることはあるのですか?
吉田氏: 「新生FFXIV」の場合、特定コンテンツを実際のパッチより前に切り出して先に入れるのは絶対に不可能なのです。すべてのシステムは、そのコンテンツを導入するために開発されているいくつものシステムと連結されています。そのコンテンツとそれに紐づくシステムだけを前に倒して実装しようとした場合、予期しないバグが大量に発生すると思います。そのためのデバッグと調整をやっていると、結局パッチ2.3をそのまま出した方が早かったね、という話になってしまいます。ですので、パッチの順番はグローバル版と同じになります。
――「PvPフロントライン」は先日の講演でも早速紹介されていましたが、実装についてはちょっとお待ちくださいということですか?
吉田氏: はい。大規模PvPであるフロントラインが実装されることは、グローバル版の流れから確定しています。それに最初PvEでやることが山ほどあり、少なくともウルヴズジェイルはあります。それをプレイして頂いている間に、パッチ2.2が、そしてパッチ2.3がリリースされていき、グローバル版ほどの間を置かずに、フロントラインが遊べるようになると思います。
――今後のワールドワイドの展開は?
吉田氏: 中国とは別に、近々何か発表できるかなとは思います。今月中には次の展開が発表できると思います。
――それは韓国とか台湾とか?
吉田氏: そうですね。次のリージョン展開をお話できると思います。
――楽しみですね。
吉田氏: そうですね。やることが多すぎではありますが……(苦笑)。ただ、やるからにはがんばりたいです。基本グローバル版はグローバル版、中国版は中国版と、同じ考え方でこれからもリージョンは増やしていきたいです。ただ、次がアジアとは限らないですよね、急に南米って言い出すかもしれないですし(笑)。
――南米はさすがにないでしょう。本当に吉田さんが「新生FFXIV」の南米展開を発表したら、私は丸坊主にしますよ(笑)。
吉田氏: そう言われたので、ちょっとやりたくなってきました(笑)。でも本当に次の展開もまもなくお話できるかなと思います。