インタビュー

【GDC 2014】「新生FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏GDC特別インタビュー

サブスクリプションモデルと、コンテンツドリブン型MMOの開発にこだわる理由を聞いた

3月17日〜3月21日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Convention Center

 GDC 2014では、既報のように「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏の講演「Behind the Realm Reborn」が予定されている。

 講演の基本的な内容は、日本で2012年11月に行なわれた「スクウェア・エニックス オープンカンファレンス 2012」での講演のアップデートバージョンとなる予定で、「旧FFXIV」の失敗の理由にはじまり、これまでの経緯、そして本題である「どうやって世界を新生させたのか」などが語られる予定となっている。

 GDC 2014 2日目の午後、講演に先立ちメディア合同インタビューが実施されたので、その模様をお届けしたい。合同インタビューなので、話があちこちに飛んでしまっているが、筆者としてはゲーム製作の方法論が語られるGDCという機会に、MMORPG開発では欠かせない論点となっている「F2P vs サブスクリプション」に対する吉田氏の見解、そしてMMORPG業界に一石を投じたSony Online Entertainment President John Smedley氏の「コンテンツ主導型のMMORPGは持続不可能」を要旨とするブログ記事に対する吉田氏の見解、この2つはぜひ聞いておきたいと思っていた。

 また、インタビューの途中、注目のレリック強化システム「ゾディアックウェポンシステム」や、アラガントームストーン:哲学の廃止など、パッチ2.2のこぼれ話もいくつか聞くことができたので、「新生FFXIV」ユーザーもぜひご注目頂きたい。なお、明日は改めて吉田氏の講演の模様をお届けするのでそちらもどうぞお楽しみに。

GDC参加の感想、PS4版βテストの手応えについて

「ファイナルファンタジーXIV:新生エオルゼア」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏

――今回GDCに参加された経緯について聞かせて下さい

吉田直樹氏:GDCにデベロッパーとして参加してワークショップに参加してってこと8年ぐらい前から4年連続でやってて、「FFXIV」を担当してから忙しくなって来れなくなったという状態です。スクエニの中では1番来てる方です。

――8年前から4年連続というと、河本さんや「旧FFXIV」を制作していたメンバーも参加していた頃ですよね。

吉田氏:そうです。河本だけじゃなくて、皆川、井、鈴木など今のコアメンバーはみんな来てますよね。

――久々にGDCに参加してみていかですか?

吉田氏:GDCの本番は明日からじゃないですか? 昨日と今日はまだチュートリアルとワークショップなので。だからまだ参加したという感じでもないです。ただ、僕は開発者には行った方がいいという話を常日頃からしているんですが、世界中でこんなに真剣にゲーム作っている人たちがいて、自分たちがいかに島国でゲームを作っているのかということを知ってもらいたいと。こんなにゲームを作っている人がいて、成功も失敗も赤裸々に語られて、もっと良いゲームを作って行こうという雰囲気をもっと感じてもらいたいと思ってます。僕も最初に来たときにびっくりして、開発者なら1度は参加しておいた方がいいと思っています。

――今年は「新生FFXIV」開発チームから何人参加してるんですか?

吉田氏:僕1人です(笑)。本当は、来年のGDCを「FFXIV」で埋め尽くしたいと思っていたんです。「FFXIV」は色んな体験をしたタイトルなので、マネジメント、プロデュース、グラフィックス、プログラミング、サウンド、グラフィックスエンジン、タスク管理みたいに1日中「FFXIV」のセッションが開かれるみたいな。今年は中国のローンチも控えて、中国ローンチの結果も踏まえて乗り込むつもりだったんです。MMOはローンチだけではスタートに過ぎなくて、今年はまだ早いと思っていたんです。そしたら急にGDC側から依頼が来て、社長と会長に話して断りますねと伝えたら「いやいや、行ってくれ」と言われて、結果スケジュールがめちゃくちゃになって、でもそれは光栄なことだと思っています。僕自身沢山刺激を受けた場所で、来年やろうと思っていたんですが、僕のセッションだけ先にやってしまおうかなというのが、今回来た理由です。

――PS4版のβテストにおけるユーザーの反応は?

吉田氏:ダウンロード数に関しては数字は出してないので言えませんが、相当な数です。世界中に普及しているPS4の数を踏まえると、何割のユーザーさんがβ1にプレイして頂いているんだというぐらいの割合ではあります。β1をやってみて、皆川も含めて意外だったのは、フルHDになって喜ばしい一方で、小さくて見えないという問題が発生して(笑)。あそこがPS3と同じにしてくださいというフィードバックが来て、純粋に解像度が上がればいいってわけではないんだなというところが結構意外でした。慣れって大きくて、4月4日からβ2をまた開けますが、PS3ど同等のサイズのUIを搭載して、小さくしようと思ったらできるという形にしています。

 β2に関しては、ほとんどのユーザーさんのUIフィードバックの実装を終わったので、そのあたりはまた見て頂ければと思います。ユーザーさんのプレイ環境なども想定して距離感を計り直して、実際に試してみて、皆川とふたりででも俺ら目が悪いしなといいながら(笑)。UIは単純な拡大をするとリソースを別にしないとぼけて眠くなるので、ギリギリの境界線をどこだろうというところを見定めて調整している。ゲームパッド向けのクロスホットバーも別実装しないと小さくなるので、そこも変わります。

――PS4版のUIは個々に修正するのではなく全体を変えたのですか?

吉田氏:全体を「見やすく!」みたいなものを選ぶと一気に見やすくなります。もちろん個別にも調整できます。またβ2を触ってフィードバックをいただければと思います。ギリギリまで粘るつもりです。ただ、マスターアップはしたので、当日パッチでの対応になりますが。

――PS4版のユーザーは、やはりPS3版のユーザーが多い印象ですか?

吉田氏:そうでもないです。PS3からのユーザーばかりではなく、新規ユーザーも多いです。今回はシェア機能があるので、皆川と2人でシェアの映像を開発にある巨大モニターで見ていたら、新規ユーザーさんの動きがおもしろくて「クエストそっち行くか」っていう(笑)。リムサからはじめてアイテムを拾っていくというクエストで、エーテライトまで行くのにアイテムを拾いながら行く奴で、目の前にクエストあるのに何で戻るんだっていう(笑)。ToDoリストに並んでいると、この順番ごとにやったほうがいいのかなって思ってしまうんでしょうね。次々受けるんじゃなくて、1つ受けたら片付けてから次を受けるという。その心理は新鮮だなあと思いながら、かといってもクエストに番号を振ってもやらされてる感が強くなるし、ガイドの光る線も出したくないので。次に序盤の導線を設計するときなどは、このシェア機能は役に立つねという話をしていたところです。でも、楽しそうに新鮮に遊んで頂いたのを見ると、僕らもモチベーションになりました。

――PS4版について、ロジクールのG13、G600といったゲーミングデバイスへの対応は?

吉田氏:僕らがやれる限界があるのでそこはSCEさん次第になります。専用のドライバーが必要なものはNGだと言われています。あとはSCEさんや各メーカーに希望をお寄せ頂いて、PS4推奨ハードとして出して頂けると僕らも対応できます。ボタンさえ認識してくれれば、キーの置き換えで使えるものも多いと思いますが、すべて保証しきれないのでこのあたりは難しい問題です。PS4がローンチしたばかりなので、こういった部分の対応も増えてくると思います。

――明日の講演で、3年間を1時間で語るということですが、この3年間で大切にしたことはなんですか?

吉田氏:1番大切にしてきたのは、状況を正直に説明して、1つ1つやることをお約束して、1つずつこなすということです。PS3版はPC版と同時に出します、PS3の性能を使い切ったものを出すというお約束をして、「FFXIV」を担当した後、できないことは約束できないので、一度発売を延期させて頂きましたが、言ったことをしっかり守るということは大事にしてきたことです。

 また、サブスクリプションで始まったMMOがみんなうまくいってないなかで、「新生FFXIV」がその波をくぐり抜けられたのはホッとしています。ただ、上を見たら、いくらでも上がいるので、今後も努力を継続して世界中にシェアを広げていきたいですし、コンテンツの足りない部分や、ユーザーさんの様々なモチベーションに応えていきたい。割と「良かったね」という空気は抜けてきているので、シビアに見ています。

――これまで吉田さんは日本市場だけで無くて、北米市場を取って世界を取っていきたいと仰っていましたが、「新生FFXIV」は北米市場は取れたと考えて良いのでしょうか? そして北米のユーザーさんの反応は日本と違うところはありますか?

吉田氏:北米は取れたんじゃないですか。フィードバックは日本と大きく違うところはなくて、そういう意味だとむしろむしろ日本の方が慣れてないところがあるかもしれないという気はします。北米には「WOW」があって、「WOW」でできることは「FFXIV」もだいたいできるので、そういった点での突っ込みはあまりありません。

――逆に言うと、北米では常に「WOW」と比較された上で語られてしまうということですか?

吉田氏:ええ、それはもう絶対ですね。北米の方は「WOW」があったので、「新生FFXIV」のシステムに対して慣れているところがあるんですが、日本のユーザーは初めての経験なので、「なんでこうなの?」と疑問に思う方が多い。違いとしてはそこが唯一かもしれないですね。その意味では北米のローンチはスムーズでした。ゲームの難易度に関しては、歓迎する人と、難しすぎるという人が半々ぐらい。ただ、「WOW」は最近難易度下がっているので、逆に難易度高い時代の「WOW」が好きだったという方は「FFXIV」のこの難易度がたまらんみたいな人もいますよね(笑)。

 あとは昔に比べて、北米のユーザーのほうが、サブスクリプションモデルに対して、現実主義なところはあると思います、今はF2Pというモデルがあるので、使ったもの、使う気があるものに対してお金を払う。でもサブスクリプションモデルって来月遊ぶかもしれないものにお金を払うモデルです。これしかなかった時代はこれで受け入れられていたんですが、「今月遊んだぶんだけ払いたい」、「遊んでから払いたい」という意見が多くなっているのは事実だと思います。ストレートに「このアイテム売ってくれ、買うから」っていう意見が北米では凄く多いです(笑)

――その後払いは可能になるのですか?

吉田氏:それは難しい。踏み倒されることもあるので(笑)。ただでさえ、クレジットカードにもリスクがあって踏み倒しの割合が増えると罰金みたいなこともあるぐらいなので。それはできないので、ゲームカードやSteamへの対応など、色んな決済方法に対応していっています。

――PS4版は北米の方が勢いがあるため、PS4版は海外ユーザーのほうが多くなる可能性が高いと思いますが、今後北米と日本のニーズにズレがあった場合、リソースの割き方に変化が出ますか?

吉田氏:ゲームのアップデートってそんなに単純な公式ではなくて、たとえばニーズの違いといっても具体例が思い当たらないぐらいないんですよね。逆に何か思いつきますか?

――わかりやすい例としては季節イベントがあると思います。ひな祭りイベントがあるなら、先日アメリカであったSTパトリックデーも入れてくれみたいな地域毎のニーズの違いはありそうですよね?

吉田氏:そこは日本が開発しているゲームということに、こちらの人は敬意を払ってくれるので、ゲーム内イベントで「ウチの国に関係ないんだけど?」というのは全然無いですよ。でも、僕らもイースター、ハロウィンなどはやっていますし、グローバル運営ということでできるだけ共通にしたいと思っています。逆にアメリカの独立記念日は、フランスではNGだったりするので、そういうときは日付を変えたり、スパンを変えたりして対応しています。中国版はお正月のタイミングがずれていて、国慶節があるので中国版に関してはオリジナルのイベントやったりする可能性があります。

 単純にコンテンツが難しい、簡単ってのは日本でもある話ですし、だからグローバルで「超える力」が適用されます。実は海外、日本ってのはない。ハードコアゲーマーか、MMOコアゲーマーか、カジュアルゲーマーかっていう違いがあるだけ。だからシェアによってリソースの割き方に変化が出るってことはないです。今回のパッチのテーマはカジュアルコンテンツメインにしようということはあっても、それもグローバルで適用されるものですからね。

――中国語版のサービススケジュールと評判は?

吉田氏:αテストがまもなく開始されるという状況です。「旧FFXIV」が大変な状態になって「新生FFXIV」になるまで待っていただいて、ようやくShandaさんのPRが大々的に始まって、中国語版Twitterの反応も来ていて、かなりいいんじゃないかと見ています。

――同接はどれぐらいは想定していますか? 100万とか?

吉田氏:運営はShandaさんなのであまり数字は出せませんが、日本で言ったら「は?」という、そういう数字がぜんぜん冗談じゃないぐらいです。ただ、同接数についてはビジネススキームにもよるでしょうし、中国や韓国はF2Pが多すぎて、無料の期間中だけ、大量にゲームを食い尽くして次へという状態になっているので、あまり同接にこだわりすぎて、F2Pにして間口を広げることの意味なども真剣に議論されています。見た目の瞬間最大値では無く、ゲームの本質を考えた方が良いと言うことは言っています。数を集めればいいという話では無いので、色んなゲームを渡り歩いて無料期間だけひたすら遊ぶという方も相当いるので、ちょっと慎重に検討しています。やっぱり年間できっちりした数字を残すことのほうが大事なので。「ブレード&ソウル」のワッと増えて一気にいなくなるという状況も見ていますので、必ずしも今までのやり方を踏襲すればいいわけではないって話はしています。

――PS4版が始まると、新生前を知らない人も結構出てくると思いますが、新旧ユーザーの手応えに違いはありますか?

吉田氏:「旧FFXIV」ユーザーで、全クラス、全ジョブカンストしているユーザーは、もうちょっとコンテンツが欲しいといいやすいところかなとは思います。「新生FFXIV」はレベリングはそれなりに大変でしたが、「旧FFXIV」では錬成PTに入ったら一気にPLができる状態だったので。新生からスタートした人は、哲学、神話にたどり着く前にまずはレベリングして、途中の装備も手に入れて、ダークライト装備を取ったり、クリタワいったり、レリック取らないととやることが沢山ありましたが、「旧FFXIV」の方は最初からフルレリックだったりしたので(笑)。彼らが望むもっと時間を掛けて挑むコンテンツは、パッチ2.2で入れます。

F2Pとサブスクリプションは対立軸では無い

――今回セッションでお話しする内容と被るところがありますが、MMOでは長年、F2Pかサブスクリプションモデルかという論点があります。吉田さんは以前から一貫してサブスクリプションモデルであるべき、F2Pではダメだという話をされていますが、今もそうなのか、何か新しい考えがあるのかそのあたりを聞かせて下さい。

吉田氏:僕はF2Pがダメだといったことはなくて、“選べばいい派”です。2005年ぐらいからMMOラッシュが続いたんですが、大型に属してるMMORPGはサブスクリプションモデルで始めているのはご存じだと思います。「Warhammer Online」もそうですし、「Lord of The Rings」や「Age of Conan」、「RIFT」、「Star Wars Old Republic」もそうです。「ギルドウォーズ2」だけが違ったんですけど、なぜ皆サブスクリプションなのかというと、安定した開発チームを持ちたいからです。

 サブスクリプションモデルならユーザーが何人いるから毎月いくら入ってくるかが見えます。F2Pだと来月いくら入ってくるか見えず、雇用が不安定になってしまうので、開発者も不安だし、ロードマップが出しにくくなってしまう。MMOを長く楽しんでもらうためには、しっかりとしたコンテンツのアップデートが必要で、そのためにはきちんとした開発チームが必要、そのためには安定な収益がほしいということなんです。僕はMMORPGのプロデューサーはみんな優しいなと思っていて(笑)、極端な儲けより、安定した運営を望む人が多いんです。

 オンラインゲームを続けていただく理由って、アップデートして入ったコンテンツがおもしろいかどうかだけだと思っていて、これがF2Pにしてしまうと、基本無料だからゲームコンテンツではお金が取れなくなって、コンテンツ作りたいのにアイテムばかり作ったり、アイテムを売るためのショップを作ったりすることになってしまいます。でもそれってゲームのおもしろさに繋がらないので。アップデートでは本来100%の力でコンテンツ作りたいのに、お金儲けのためにコストを割かなければならない。「何のために作っているの?」となってしまいますよね。

 世界でのMMORPGの開発は、同じ人がぐるぐる回って作っている状況にありますが、MMOの開発って信じられないほどお金が掛かるので、多くの場合は投資家からお金を出してもらって開発することになります。投資家たちに説明して、サブスクリプションモデルでスタートしてみたものの、投資家に説明していた数字に届かない場合、投資家は危機感を感じてお金を返して欲しいって話になります。そうなるともう突っ張ってサブスクリプションではいけなくなるわけです。お金が止まってしまうとアップデートすらできなくなってしまうので、F2Pに切り替えて、一時的に売上を立てて、投資家にお金を返して……、というのがMMO開発のツライ現実だと思います。

 その一方で、これはMMOではありませんが、「League of Legends」や「World of Tanks」などがそうですが、今のユーザーさんは時間を拘束されるのを嫌うので、気軽にはじめて瞬間的にハイボルテージになって高いゲームエクスペリエンスがあってすぐやめられるゲームが好まれる傾向があります。でも実はトータルのプレイ時間だと、凄く長くプレイしていたりするわけですよね。今のメインストリームはこっちだなと個人的には思っていて、これらはF2Pモデルが向いていますよね。だから何事もチョイスだと思います。だからどっちが優位とか、どっちが劣っているっていうわけではないってことを明日話す予定です(笑)。

 明日使うスライドには、「F2P vs サブスクリプション」って表題に書いてますが、次のページに大きくバツって書いてますからね(笑)。vsではなく、どっちにもメリットデメリットがあると。大事なのはゲームエクスペリエンスであって、ゲームがおもしろいかどうか。ゲームがおもしろければプレーヤーの皆さんはお金を払ってくれるし、つまらなければどっちのビジネスモデルだろうと払わない、当たり前の事です。

 今日も北米メディアのインタビューで「新生FFXIV」は数少ないサブスクリプションの成功例ですが、なぜ「新生FFXIV」だけがうまくいったんですか? っていう質問があって、サブスクリプションが劣っているわけでもないし、ゲームによってチョイスを変えればいいと思うし、ニーズが変わるなら変えていけば良いだけの話です。ただ、それが儲からないから変えるという後ろ向きの話では無くて、ユーザーを増やすために変えるというプラス思考であるべきで、僕自身はサブスクリプションにこだわっているわけでないです。

――それでは先ほどの「アイテム売ってくれよ」という北米のユーザーに対して、吉田さんはどう答えますか?

吉田氏:それがゲームバランスを影響を与えずにARPUを上げるためではなく、ニーズに対して届けられるならそれはありだと思います。

――ニーズの高い、見た目を変える「幻想薬」はバランスに影響を与えませんよね? 販売するとしたらいつからですか?

吉田氏:僕も販売してもいいんじゃないでしょうかという考えです。ユーザーさんからニーズが高いので、プロデューサーレターライブの次の質問に用意してます。時代も変わるんだなと思っていて、リテイナーの追加オプションも始めますしね。今回、リテイナーベンチャーというリテイナーを派遣してアイテムを取ってくる遊びを加えています。倉庫だけでは無くリテイナーの利便性が上がっています。もともと2体までは無料なので、3体目からお金をいただきますという形です。料金については追って正式発表をお待ち下さい。

パッチ2.2から数年先まで考えたコンテンツアップデート。その哲学と覚悟を聞く

――パッチ2.2に関して、ユーザーの反応で特に好評な部分は?

吉田氏:ミラージュプリズム、武具投影は、なぜか「青ネームは投影できない」とかどっから来たのかわからないデマが出回っていて困っています(笑)。某掲示版には「吉田が言ってる」と書いてあって、そんなことはなくて、実際誰もソースを示せていない(笑)。そこで、この間のプロデューサーレターで、やり方を出したら「満額回答じゃねえかよ」って反応があって、なんでそうなったんだろうなと。皆さんの方が斜め上ですよね(笑)。オシャレのために、わざわざ使いにくくはしません。レターライブ向けの質問でも「投影したアイテムは無くなりますか?」とか来てて、無くならないっすよ(笑)。ちなみに、バインドされるので、競売で買ってきてまた売りに出すと言うことができるとクラフターの皆さんが困ってしまうので、それはできないようになっています。クラフターのアイテムはも好評ですが、まだ全部出していないのでお楽しみにっていう。あとはちらっとだけ言ったゾディアックウェポンシステムぐらいですかね。

――ゾディアックウェポンシステムとは何なんですか?

吉田氏:レリック強化です。かなりハードです。ただし、コンテンツ的なハードさではなくて、レアドロップもありますし、時間がかかるタイプです。取得に制限は一切無いですが大変だと思います。今のレリックより大変ですが、段階があるので目標は立てやすいと思います。パッチ2.2で終わるコンテンツでは無く、2.25、2.3と続いていきます。完成までに数パッチ掛かって、最終的には見た目も変化するというものです。僕が昔「エクスカリバー」と呼んでいたシステムです。最終的には自分でパラメータをいじったりもできます。現在、最高アイテムレベルの武器に関して、大迷宮バハムートみたいな最高難易度コンテンツを攻略して得られる武器、アラガントームストーンを集めて得られる武器、この2つの軸だったわけですが、今後はもうひとつの軸ができます。長時間じっくりかけて育てていくという軸ができます。3軸でいって好きな物をチョイスして下さいというものです。

――パッチ2.2でアイテムレベルの引き上げがあるということですが、アイテムレベルのインフレや、現在の哲学が無駄になるのではないかという不安がありますが?

吉田氏:プロデューサーレターライブ前なので答えにくいんですけど、哲学は撤廃になります。余った哲学は神話にトレードして下さい。通貨が増えると最下位はムダになるので哲学はなくして神話に交換する形になります。パッチ2.2以降は手に入れられなくなりますし、ダークライト装備はダンジョンドロップになります。

――たとえばホプリタイ装備が落ちるところで、今後はダークライト装備がドロップするようになるイメージですか?

吉田氏:そのひとつ上のダンジョンでドロップするようになります。ダンジョンで取れる装備のアイテムレベルの上限が70になります。80はクリスタルタワー、90は神話か、「大迷宮バハムート:邂逅編」、その上はもう戦記装備になります。ですのでインフレはしません。

 たぶん、いまの日本のユーザーさんのイメージってレベルキャップが上がるってイメージだと思うんですが、これはレベルのインフレなんですよね。でも僕らはアイテムレベルの成長こそがメインジョブの更なる成長だと考えていて、レベルキャップの開放は下手するとオーバーパワーになりすぎてバランスが取れなくなる。レベルキャップを開放するタイミングはエクスパンションのように、広大なフィールドがまた追加されて、ダンジョンが一気に8つぐらい追加されて、成長要素が入ってはじめて成長が楽しめると思うので、それまではアイテムレベルの向上に留めて、その都度メインジョブの出番が来た、アイテムレベルのてっぺん目指して育てていこうと、それが終わって余裕がある人はセカンドキャラにしてもいいでしょう。先ほどもいったように、その成長要素もまた増やしていきますので、色んなニーズに応えていけたらなと考えています。

――ちなみに戦記装備ってアイテムレベルいくつなんですか?

吉田氏:(にっこり)。あまり言い過ぎると21日のレターライブでいうことが無くなってしまうんですよ(笑)

――吉田さんはどのあたりまで先まで見据えて開発をしているのですか?

吉田氏:3.0と呼んでいるエクスパンションあたりまでは普通に確定しています。ダンジョン名、ダンジョン数などですね。それから大迷宮バハムートの次のエンドコンテンツも、テーマも名前も決まってレベルデザインも始まっています。2年分ぐらいは考えています。いまどっちかというと、開発全体が、2.0の完成まで計画通りにキッチリ遂行してきたので、逆にみんなもっとアドリブを入れないとダメという話はしています。たとえば、何も全部2.3にするんじゃなくて自分たちの判断でもっと手前にしてもいいと。フロントラインも凄い進んでますし、21日のレターライブで進捗もお話しするつもりです。いつの間に作ってんだというぐらい(笑)。3.0については、新しい街のモックアップは終わって、どっちかというと作り込みに入って、フィールドの数、フィールドテーマも決まって、アートも終わってるものは終わっていて、モックアップに入ろうとしているところです。

――それは「FFXIV」を担当したときからずっと数年先まで考えて開発しているのですか?

吉田氏:そうですね。この中で1番長いお付き合いになっている中村さんなどはよくご存じだと思いますが、体制変更直後に言ったことも全部やってきましたし、初期の段階から数年先の構想を練った上でゲームを作っています。開発費を削れと言われない限りはこの体制で作って行きます(笑)。

――いまここに参加しているメディアの人間は、数年先の構想まで聞かされて嬉しい気持ちで一杯なわけですが、その一方で、先日、SOEの社長が、コンテンツドリブンのMMORPGは持続不可能だということを発表されて話題を集めました。Facebookでは和田会長がそれに反応して、その答えが対局にあることはわかってるが、今の段階でユーザーに委ねるのは難しいとコメントしていて、おもしろいなと思ったのですが、吉田さんはこの「コンテンツドリブン型のMMORPGは持続不可能」という意見についてどのような見解をお持ちですか?

吉田氏:そもそもその2人がやり合ってるのがおもしろくて、2人に言いたいことは色々あるんですが(笑)、まず現場はそんなに簡単にものを作っているわけでは無くて、やっぱり極端なのは正しくないと思うんですよね。すべてがコンテンツドリブンなわけじゃないし、すべてをユーザーに委ねてるわけでもなくて、両方あっていいと思うんですね。それこそF2P vs サブスクリプションの話じゃないですが、どっちもあっていいだろうと思います。

 善意に解釈すれば今作っている「EQ Next」に対する援護射撃の発言だと思うのですが、でもMMOを知ってるユーザーからすればコンテンツの数に自信が無いんだねってことになりますし、あれだけ物理を入れてしまうとバランスを取るのは本当に難しいと思います。「KNACK」が良い例だと思いますが、「KNACK」はゲームデザイン的に新しいことは何もないですが、物理をあれだけ入れてしまうと、しっかり枠にはめてしまわないとバランスが無茶苦茶になってしまうんですよ。だから、アクションゲームのレベルデザインとしては凄くオーソドックスに仕上げているんだと思います。ああしないとゲームとしてまとまらないので、だから「EQ Next」は本当に大変だろうなと思いますよね。あのシステムでバランスの取れたバトルシステム作れといわれたらかなりギブアップです。だから逆に「コンテンツドリブンではない」と言いたくなる気持ちもわかりますよね(笑)。

 コンテンツドリブンに関して言えば、すでに成功例が世にあるわけです。僕は「World of Warcraft」の成功理由は途中でギブアップしなかったことだと思っています。9年目を迎えた「WOW」って凄まじい化け物みたいなMMOになっています。コンテンツはめちゃくちゃあるし、クリアしなくてもいい遊びだらけだし、目的を見つければいくらでも遊べるというボリュームになっていますが、スタートからそうだったかというとまったくそんなことはなくて、初期の「WOW」は、30でレベルキャップで、キャップになったからPvPに行ったら、PvPのバランスむちゃくちゃで、「だいじょうぶかBlizzard?」ってレベルで、2カ月でアカウントキャンセルしたぐらいです(笑)。

 でも、彼らは諦めなかったんですよね。Blizzardのスタッフこそが世界一のゲーマーだというプライドでゲームを作ってきた彼らが、ユーザーの声をちゃんと聞かないとダメだと言い出してびっくりしたんです。フォーラム立てて、テストサーバー置いて、体制が整ったところで、テレビCMをはじめてリージョンを増やし、イギリスでは主要4誌にディスク付けて配ることまでやって、すごい努力をして積み上げてああなったんですよね。

 明日の講演では、「WOW」という名のルガディンと「Realm Reborn」という名のララフェルで風刺をするんですけど、実際メディアさんにはことある度に比較対象にされてしまうんです。「WOW」だって当時「EQ」と比較されていろいろ言われましたが、諦めずにコンテンツを作り続けて、僕はあの姿勢こそがMMORPGを生き残らせるための最大にして最後のポイントだと思っています。

 「旧FFXIV」って失敗したんですけど、「新生FFXIV」を作り始めて、課金をはじめてからユーザー3倍なので、コンテンツをアップデートし続けておもしろいものを提供すればお金を払ってくれると思っているので、その実証例が「旧FFXIV」だと思っていて、外にも「WOW」という成功事例がある以上、僕らもできないことはないと思っているので成功を信じてやっていこうと思っています。

――吉田さんの中での最大のロールモデルはやはり「WOW」なんですね。

吉田氏:僕はMMOのNextGenを作っているつもりはないんですよ。現世代の最後でいいやと思っていて、次世代のMMOを作っているには僕らの中で危機感が足りなすぎて、「旧FFXIV」があってそれを盛り返すっていう使命を背負って作っていて、誰も見たことがないようなMMOを作りたくても作れないわけですよ(笑)。僕が決めたのは、日本人が安心して遊べて、今世代の最後のMMORPGになるべく、日本には「WOW」をプレイしていないような人たちも多いですし、目指すというか追いかけてみたいのはまずは「WOW」ですよね。諦めずにやってみたいですね。NextGenはキャッチアップしてからでも遅くないと思いますし、あるいは「新生FFXIV」を作りながら気がついたらNextGenになっているでもいいかなと思っています。「WOW」でやっていないようなチャレンジも当然計画していますし、「FF」らしさを追求していくことで違ったものになってくるはずなので。3.0でもいろいろ仕込んでますし、2.xシリーズのラストに向けてもいろいろ準備していますので楽しみに待っていてください。

――ありがとうございました。

(中村聖司)