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「3D ギャラクシーフォースII」インタビュー
AC版リリースから25年、さらに見つかったある事実とは?
(2013/7/24 00:00)
ニンテンドー3DS「3D復刻プロジェクト」第6弾は、「3D スーパーハングオン」以来の久々のアーケードタイトルから選定された「3D ギャラクシーフォースII」(3D GFII)となった。7月24日より配信され、価格は800円。
今回は開発を担当したエムツー(M2)さんにお邪魔し、堀井直樹氏と、セガのプロデューサーである奥成洋輔氏にインタビューにお応えいただいた。そしてさらに、本シリーズのサウンド担当として、エムツーの並木学氏をゲストとしてお迎えし、さらに1歩踏み込んだ形のインタビューを行なうことができた。アーケード版のリリースから25年の時を経て、新たに見つかった事実とは!?
【ギャラクシーフォースII】
1988年稼動した「ギャラクシーフォース」。「アフターバーナー」で前後、左右の2軸で動作する「ダブルクレイドル」筐体が実現されたが、本作では左右方向に300度以上、さらに上下にも可動する「スーパーデラックス」筐体と、コンパクト化し可動域を抑えた「デラックス」筐体の2種がリリースされた。
「スーパーDX」はその分販売価格も上昇、筐体も大型化し、安全対策上周囲をチェーンで囲うなどしたため設置面積もかなり大きく、小規模で運営されていた店舗が多かった当時、全国に広く出回ったとはいえなかった。また、メインボードも「Yボード」へと進化。CPUにはMC68000を3つ搭載、BG面をカットしているが、ハードウェアでの拡大回転縮小機能を持つスプライトの表示枚数は増加させており、音源にはYM2151(FM音源)+PCMという豪華なものになっている。表示解像度は320×224。
左手側に自機・TRY-Zのスピードをコントロールするスロットル、右手側に自機を上下左右に移動させるスティックコントローラーを装備。初代「ギャラクシーフォース」は4面で終了だったが、いくつかの問題を解決、ステージを追加し6ステージとし、スタートステージを選択式に変更した「II」が約2カ月後にリリースされた。ほぼすべての稼動版が「II」にコンバートされたため、初代は貴重な存在となった。
移植版はマスターシステム版(海外発売)以外「II」をベースとしたものがリリースされ、メガドライブ、FM-TOWNS、セガサターン版などがリリースされた後、2007年にプレイステーション 2「SEGA AGES 2500」シリーズで「スペシャル エクステンデッド エディション」がリリース(エムツーが開発を担当)。アーケード版の移植だけでなく、メガドライブ版、マスターシステム版を収録、アーケード版をワイド画面、高解像度オブジェクト、半透明機能に対応させた「ネオクラシック」版も収録してある。PS2版はPS2アーカイブス版が先日リリースされたばかり。
※PS2版のリリース時に行なわれたインタビューはこちら。
「このままだと動きません」、「だったら、どうやったら動くの?」
――まずは、久々のアーケードからのタイトル選定となった経緯からお話をお伺いします。前回のインタビューのラストにコメントを頂きましたが、「スペースハリアー」、「スーパーハングオン」から一気に「ギャラクシーフォースII」とは、移植難易度が格段に跳ね上がったと思うのですが?
奥成氏:まず、「3D復刻プロジェクト」のラインナップを決定するときに、アーケードゲームの中で3D立体視化して1番抜けがいい、効果的なゲーム……最初に「スペハリ」を3Dにしたい、という想いがあって、「スペハリ」を3Dにした後、「1番恩恵を受けそうなゲームはなんだろう?」といったときに……。
堀井氏:「サンダーブレード」じゃないの?
奥成氏:「GFII」しかないだろうと。
堀井氏:軽くスルーしてますよ!
――(笑)。
奥成氏:やっぱり、プレイステーション 2の「SEGA AGES 2500」シリーズを作ったときに、「ネオクラシック」でグラフィックス的な部分が改善されて(オブジェクト解像度を4倍に、半透明機能に対応、ワイド画面対応)、今風の「GFII」ができた、という実感があったので、3DSのプロジェクトを立ち上げるにあたって、今度は3D立体視に対応させたら、洞窟に入った時のわかりにくさがきっと解消されるだろうから、そこをチャレンジしよう、という話を最初の頃にしました。
そうすると、エムツーさんからは、そもそも(先に手がける)「スペハリ」でも苦労することがわかっていたので、「『GFII』はもってのほかである」と。Yボードは「スペハリ」の1.5倍ぐらい大変だという話があって。ただ、PS2版の時に2年かけて解析もしたし、ある程度エムツーさんも自分のものにしているから、「きっと大丈夫だよ!」と言って制作に入ってもらいました。
堀井氏:僕は、PS2版ができてすぐに、「これを持ち歩きたい」と思って、その当時PSPに持っていこうと思ったんです。PSPは静止画ビューワーにもなるので、ワイド画面の「GFII」の画像を作って表示させてみたら、それが超よかった。動くかどうかの前に、「いいかどうか」を検証しなければならないですから。
そこで当時、仮に作ってみようとしたんですが、誰1人としてPSPで動かすことができなかった。今だったら動かすことができるかもしれないんですけれども。それでも、「どこかでワイド画面の『GFII』を携帯機で出したい」と思っていたら、奥成さんが「3DSをやりたい」、と言ってきたんですね。それで渡りに船、ということでやってみたんですが、よく考えてみたらPSPで動かない時点で、3DSでも大変な思いをするのに気付くべきでしたね。気付く前に「機会が来た! 万歳!」って思っちゃうのが僕の頭の中なんで。
――(笑)。
奥成氏:困る人たちがこの上のフロアにいるんですよね。
――それにしても、1度移植をやっていて、ハードウェアの解析も終わっているから大丈夫、という目算って……移植先のことはあまり考えていない段階の話なんですよね?
堀井氏:そうです。
――そのとき、エムツーさん側で3DSに持っていく段になって、68000が2つだった「スペハリ」だけでなく、3つ搭載されている「GFII」っていうのは……。
堀井氏:まだ「スペハリ」にも着手していない段階ですね。
奥成氏:マイルストーン的に「スペハリ」をやろう、うまくいったらその先はここまで行こう、という中に「GFII」が入っていたんですね。「スペハリ」はこれができないと始まらないから、頑張ろうと。「スーパーハングオン」は、「プレイステーション 3やXbox 360版で、せっかく立体視に対応したんだから出そう」と。そして「次に立体視に対応させるならこれだよね」という考えで選ばれて。
――実際、開発期間中はアーケード移植3タイトルが併走していた時期はほとんどない、ということなんですね? 1つ1つ完成させていったという感じですか?
堀井氏:そうですね。ただ、技術のフィードバックは行なわれているので、「スペハリ」が進むと「これ、『GFII』は絶対無理かも」なんていう話が出たりもするわけですよ。
奥成氏:「3D スペースハリアー」もリリースの直前まで1イント(描画1/60フレーム)で回らなかった。「スペハリ」でそんなに苦労したのに、「3D スーパーハングオン」もジャイロを入れたりなんだりで、リリースの1カ月前ぐらいまで1イントで動かなかった、という状況で。「GFII」を動かす、となったときに「いつできる?」という話をしたら、「無理!」という話が結構出ていて。「このままだと動きません」、「だったら、どうやったら動くの?」という会議をみんなでしました。
堀井氏:「『スペハリ』の延長線上のやり方ではではできないだろう」という話が出てましたね。「描画周りを全然別の方式を考えてやるしかない」ということで、そのためだけにプログラマーが1人立って、「GFII」の絵作り、Yボードに対して専用の描画ルーチンを組む、ということをやりました。
3DSの上画面で「GFII」を動かして、下画面に絵のキャッシュのデータを出しながら、最適化していく、みたいな。なるべく速度の低下が起きないようなキャッシュの仕方を計算していったりとか、ちまちまやってようやく、ですね。
――「スペハリ」で苦労した方法論は「もう、使えない」というところからスタートしてたんですね。
堀井氏:もう1段ステップアップしたやり方ですね。
奥成氏:単純にCPU1つ分は確実に処理が増えるわけですから。CPU2個でギリギリだったゲームが3個になって、どうするかと。
――それだけの負担が3DSにかかるということだし、CPUだけでなく、業務用ボードはスプライトの表示枚数もパワーアップしていて……当時、新しいボードが出るたびに能力が倍々ゲームになっていたような……。スプライトのハードウェアによる拡大回転縮小機能とかもありましたよね。
堀井氏:はい。大幅に(パワーアップしてました)。本当に、倍々ゲームなんですよね。「GFII」の基板を見ていると、68000がバン、バン、バンと並んでいて、ROMがずらっと並んでいて……それを見ると「うーん」って腕組みするしかなくなっちゃいますよね(笑)。
――せっかく最適化しても、Yボードになって進化してパワーアップした部分があって、相殺以上の性能差ということですよね。
堀井氏:もちろん、最適化だけでその分が埋まるかといえばどうにもならないので、その辺はいろいろ(計算コストやリソースを)かき集めるしかなくて。描画も最適化するし、68000側のコードも最適化するし、本当にもう、雨水のしずくをかき集めていくとコップ1杯分になる、という感じで。幸い、最適化がえらい勢いで進んだので、最終的には今回あきらめた「サウンドエミュレーションもいけるんじゃね?」ぐらいまでの効率化ができましたね。
結果、途中でつまづいたりして、ゲーム全体を60フレームで描画するのはしんどいかもしれない、なんて話になったりしたこともあったので、そんなに簡単なことではなかったんですが……。
――今までの2タイトルは、BGMも内蔵音源を使ってエミュレーションで出力されていたはずですが、今回はストリームによる出力になってるんですか?
奥成氏:エミュレーションからストリーミングにすれば、少し処理が稼げることもあって。開発当初からしばらくは、音を鳴らさずに作っていました。エミュレーションで鳴らしていた時期もあったんでしたっけ?
堀井氏:今回はなかったはずです。
奥成氏:ある時、ようやく、ほぼ30フレームで、ときどき20フレームぐらいの状態の「GFII」を見せてもらったんですね。
堀井氏:まず、エミュレーションエンジンを載せてみようということで載っけて、グラフィックスの最適化も何もしない状態だった当時のものがこれです(と3DSを見せる)。
――おぉぉー。たしかにレートは落ちてますが動いてます。スプライトがキチンと表示されてませんが、どこにいるかはもうわかりますね。洞窟の中ですね。
堀井氏:これでももう、「やれたらいいですよね」というレベルになっているのはわかると思います。スローがかかっているように見えますが、倍の速度で動けばなんとかなるだろう、というレベルです。この時点ではまだ、オブジェクトがメモリに載せ切れるかどうかまだわからない状態で。でも、この時点で高速化のことを考えていたので、アーケードのROMをそのまま載せるのではなくて、3DSにいい形にしてガシガシ載せていこう、ということはすでに考えていて。
――その時点でもうすでに「3D スペハリ」の時とは別の考え方で、新規に1本作っていこうという感じでした?
堀井氏:「3D スペハリ」のときは、今回よりも試行錯誤の工数は少なめでしたね。データも載せやすかったし。
――「3D スペハリ」の時は、載せた後の高速化で追い込む部分がきつかったと。
堀井氏:長かった。60フレームで大体動くようにするところがきつかったですね。アーケード基板でも処理が落ちる所となどは残りましたが……。
奥成氏:この頃は、「まだこんな状態ですから、完成は全然先です」という話で。でも、そこはエムツーさんなので、処理を軽くして軽くして、なんとか動くところまで持ってきて、20~30フレームぐらいでグラフィックスが動いて。これで後もう少し高速化を頑張ればいけるだろう、と私は勝手に安心してました(笑)。
堀井氏:そうなんですけれど、奥成さんはうちと仕事をしているからわかると思うんですが、「いやーゲームギアの通信、つらいっすわー」とか、「メガドラのアドホック、無理ですわー」って言っているところで「GFII」を動かすんだから、なんかおかしいですよね(笑)。なんで動くんだろう?
――(笑)。