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【Tankfest 2017】ボービントン戦車博物館の特別展示「The Tiger Collection」レポート

希代の名戦車ティーガーシリーズをコンプした魅惑のコレクションに密着!

6月24、25日開催

会場:ボービントン戦車博物館

 既報のように、現在、Tankfest 2017の取材で英国のボービントン戦車博物館を訪れている。2017年4月からスタートした特別展示「The Tiger Collection」を観覧することができたのでレポートをお届けしたい。なお、常設展示については昨年のレポートを参照いただきたい。

多くの来場者でごった返す「The Tiger Collection」フロア
エレファントはアメリカから運ばれている

 「The Tiger Collection」は、ボービントン戦車博物館が世界に誇る、唯一稼働するTiger 131および、2種類のティーガーII、そしてティーガーIIの派生形であるヤークトティーガーという自前のコレクションを中核に、エレファントとシュトルムティーガーを加え、扇状にズラリと並べるという、ユニークな展示で世界のティーガーファンを誘う特別展示。スポンサーは「Tankfest 2017」と同様、Wargaming.netが単独で担っている。展示期間は2017年4月から2年間と、特別展示としては異例の長期間にわたる。

 エレファントは、アメリカのアーミーヘリテージセンターからのレンタルで、ヴァージニアのフォートリーから船で約8,700kmの距離を35日間掛けて運ばれたもので、Wargamingはこのサポートも行なっている。

 シュトルムティーガーについては、ボービントンには砲身しか残っていないため、こちらもドイツからレンタルする予定だったが、トラブルで借りられなくなったため、AR展示を行なっている。このARコンテンツの作成もWargamingが担っており、まさに両社の共同企画と言える特別展示となっている。

 展示は左から順番に、ティーガーII(ポルシェ砲塔)、ヤークトティーガー、ティーガーII(ヘンシェル砲塔)、エレファント、ティーガー131、シュトルムティーガーの並びで、特別展示フロアの中央手前に設けられた高台から見た光景はまさに壮観だ。ただ、戦車との距離はかなり近いため、全景を写しきるには魚眼レンズが必要だ。

 戦車の他にも、燃料タンクやレンジファインダー、ジャッキ、キャタピラ、砲弾などなど、ティーガーシリーズのアイテムが「Tiger Kit」として集められており知識欲を満たしてくれる。

【「The Tiger Collection」展示車両】
左よりティーガーII(ポルシェ砲塔)、ヤークトティーガー、ティーガーII(ヘンシェル砲塔)
エレファント、ティーガー131、シュトルムティーガー(砲身のみ)

【「The Tiger Collection」パノラマ風景】
展望台から「The Tiger Collection」をパノラマ撮影してみた

【写真と解説で見るティーガーシリーズ】
貴重なTiger 131の搭乗員の写真
名戦車乗りオットー・カリウスのコメントも引用されている
ティーガーシリーズの派生と、泣けてくるほど少ないティーガーシリーズの生産数
生存するティーガー搭乗員
ティーガー搭乗員の教育に関する情報
ボービントンで新しい役割を与えられたティーガー131
ティーガーIの設計図
エレファントの設計図
ティーガーIIの砲塔の設計図
ティーガーを恐れる当時の英国戦車乗りを風刺したイラスト
ティーガーはあまりに扱いが難しいため、気難しい女性になぞらえてその扱い方を解く伝説の教本「Tigerfibel」もこっそりポスター展示されていた

【TigerKit】
ガラスケースで展示されたTigerKit
ドラム缶。ティーガーはドラム缶3つ分、534リットルを入れることができた
ティーガーIIの車輪
ティーガー131のオリジナルエンジン
ティーガーIIのレンジファインダー
ティーガーIで使用されたジャッキ
ティーガーIのキャタピラ。鉄道等での輸送に合わせて2種類が存在する
ティーガー131のトーションバー
ティーガーIのシュノーケル
ティーガーシリーズの主砲弾。左からティーガーIの徹甲弾、ティーガーIIの徹甲弾、ティーガーIの榴弾
「World of Tanks」では“カニ眼鏡”の愛称で知られる双眼鏡

全車両を入れるとこんな感じになる

 それでは、各車輌を見ていこう。まず、中央に鎮座するティーガーII(ヘンシェル砲塔)は、世界の戦車ファンに愛されているツインメリットコーティングを施した迷彩のまま展示されており、圧倒的な存在感を放っている。

 その左側に鎮座するティーガーII(ポルシェ砲塔)とヤークトティーガーは、昨年までの塗装が迷彩や車体番号含めてカーキ色単色に塗りつぶされてしまっている。新たな塗装を施す予備段階なのか、今回のコレクションをカーキ系のカラーに統一したかったのか、理由はちょっとよくわからなかったが、前の塗装が気に入っていた人にとっては残念な感じだ。ただ、これら3輌は、車体はまったく同じティーガーIIで、砲塔まわりが異なるだけのまさに3兄弟といった感じで、見ていて非常に楽しい。

【ティーガーII(ヘンシェル砲塔)】
英国ではキングタイガーの愛称で知られるティーガーII。ボービントンのコレクションの中でももっとも人気の車輌だ

【ティーガーII(ポルシェ砲塔)】
プリプロダクションモデルのポルシェ砲塔を採用したティーガーII。個人的には昨年までの塗装の方が良かったように思うが、今後どうなるのか注目したい

【ヤークトティーガー】
12.8cm砲を搭載し、第二次世界大戦では最強を誇ったヤークトティーガー。実際には故障が多く、その真価を発揮することはできなかった。ティーガーII(ポルシェ砲塔)と比較するとその主砲の大きさがわかる

【昨年までの塗装】
参考までにティーガーII(ポルシェ砲塔)とヤークトティーガーの昨年までの塗装を紹介。こちらのほうが良かったように思うが……

 ティーガーII(ヘンシェル砲塔)の右側にあるエレファントは、ティーガーIIでも、ティーガーでもなく、ポルシェティーガーからの改良型で、世界には現存しないポルシェティーガーの姿を現在に伝えてくれる。戦闘室の設計は、同じ駆逐戦車のヤークトティーガーと比較すると、継ぎ接ぎが目立ち、いかにも急ごしらえの印象だが、ドイツの駆逐戦車としては指折りの戦果を挙げ、連合軍に強い印象を残している1台だ。

 そしてコレクションのレアリティとしては群を抜いているティーガー131。チュニジアに投入された砂漠戦仕様の単色塗装で、所々弾痕があり、70年数年前の戦闘直後の状態のまま保存されている。繰り返し述べているように、世界で唯一稼働可能な状態で保存されており、年に数回実施されるTiger Dayで走行展示される。

 ちなみに「World of Tanks」では、コンソール版に2016年に初登場し、PC版にも今月実装されたばかり。コンソール版はTier VII重戦車Tiger Iに準ずる性能になっているのに対し、PC版はTier IVとひとつ下げての実装となる。塗装はPC版のほうがオリジナルに近い状態で、コンソール版は耐熱シートやカモフラージュ用の枝が添えられた状態で実装されている。ティーガーファンならぜひ押さえておきたい車輌だ。

【エレファント】
アメリカから遠路はるばる運ばれてきたエレファント。塗装含めて保存状態は極めて良い

【ティーガー131】
稼働状態にさせるため一度完全に解体されてオーバーホールされているため、レストアされた戦車というより、現役車輌そのものといっていいティーガー131。戦車ファンならぜひ一度その目で見て欲しい車輌だ

【ティーガーとポルシェティーガーは全然似てない】
初めてティーガーとポルシェティーガー(の車体を使ったエレファント)を並べて見ることができたが、製造しているメーカーが異なるため、同じ名前を冠しながらティーガーとティーガーII以上に類似性がない
ポルシェティーガーの200mmを誇る装甲厚(左)は、無骨なボルト留めされた増加装甲板によって実現されている。ティーガーには増加装甲板がない(右)

 最後にシュトルムティーガーは、実車がレンタルできず、ARでの実装となっているが、これがなかなかよくできている。シュトルムティーガーが地面に描かれたティーガー131の隣の空きスペースに専用のAR端末をかざすと、モニター内にシュトルムティーガーが現われる。今後はこういった最新テクノロジーによって、様々な不可能を可能にする展示が増えていきそうだ。

【シュトルムティーガー(AR)】
この空きスペースがシュトルムティーガーの展示エリア
地面に描かれたシュトルムティーガー。適度にデフォルメされていて可愛い
順番を待つ間に、通常のモニターでARのデモを見ることができる
メディア向けにはMicrosoft Hololens版も公開されたが、視界が狭く一覧性が悪かった。このARはGoogle Tango版のほうが良かった
モニター内に現われたシュトルムティーガー
音声解説に従って内部構造が見えたり、テキスト解説がポップアップしたりする
位置を正確に把握しており、あたかもその場にいるような臨場感で見せてくれる
発射映像も用意されており、砲身周囲の小穴から発射煙が吐き出される様子がわかる

【シュトルムティーガー(クビンカ戦車博物館)】
5月に取材で訪れたクビンカ戦車博物館に展示されているシュトルムティーガー。世界に2台しか存在しないうちの1台となる。AR版シュトルムティーガーの再現性の高さがわかる。ティーガーIをベースに、突然変異したようなユーモラスなデザインをしている