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【特別企画】「ガルパン劇場版」のラスボス「センチュリオンMk.I」に会いに世界最大の戦車博物館に行ってきた

ようやく対面できたセンチュリオン Mk.Iは、とてもシンプルでスマートな戦車だった

ようやく巡り逢えたセンチュリオン Mk.I
こちらはポーランド軍事博物館に展示されているセンチュリオン Mk.5
センチュリオンシリーズの歴史が学べるタンクファクトリー。手前のセンチュリオンはチョバムアーマー搭載の最終モデルMk.13
歴代のセンチュリオン

 というわけで、お目当てのセンチュリオンMk.Iは、第二次世界大戦コーナーの隅に展示されていた。遭遇して初めて「ああ、そうだ、これを見に来たんだった!」と本来の目的を思い出すぐらい夢中になって戦車鑑賞を愉しんでしまった。

 センチュリオン自体は、昨年と今年、ポーランド軍事博物館で遭遇しており、シリーズとしては都合三度目。ただ、ポーランドにあるのは、完全に戦後型のMk.5で、車輌こそ同じものの、砲塔デザインをはじめ、主砲(58.3口径17ポンド砲→スタビライザー付き66.7口径20ポンド砲)、機銃(20mm ポールステン機関砲→M1919A4 7.62mm機関銃)など、かなりの進化を遂げている。このポーランドのものと劇中のものが別物だと教えてくれたのが、ポーランド最強の“ガルパンおじさん”として知られるオペちゃんで、「愛里寿のセンチュリオンはMk.Iで、それはボービントンとエジプトにしかないぞ」と教えてくれ、それが今回ここに来ようと思った大きなモチベーションになっている。

 初遭遇のセンチュリオンMk.Iのファーストインプレッションは、「長い!」というものだ。すぐ側にある“スーパーチャーチル”こと最期の歩兵戦車ブラックプリンスや、M26パーシングの後継モデルM46パットンよりも長い。それでいて車高はそれほど高くないため、そのトレードマークである両側面に装着された装甲スカートの存在も相まって非常にシャープでスマートな印象を受ける。それまでの英国戦車は何だったんだと思えるぐらいカッコイイ。レストアも完璧でツヤツヤしており、今にも全速で超信地旋回を始めそうだ。

 主砲は英国自慢の76.2mmの58.3口径17ポンド砲で、APDS(徹甲弾)との組み合わせにより、ティーガーに勝るとも劣らない打撃力を持っていたとされる。ただ、58.3口径17ポンド砲を搭載したMk.IとMk.IIは一度も交戦記録がなく、センチュリオンの名声のほとんどは20ポンド砲を搭載したMk.3以降のモデルで確立されたもので、Mk.Iの真の実力は永遠に未知数だ。

 ちなみにこのMk.Iはプロトタイプとして十数輛が製造され、10輛が戦中に完成した20mmポールステン機関砲搭載モデル、残り数輌が戦後になって完成した7.92mmベサ機関銃搭載モデルで、戦車博物館に展示されているMk.Iは最初期型のポールステン機関砲搭載モデルで、劇中のセンチュリオンは7.92mmベサ機関銃で、微妙に異なることがわかった。

 センチュリオンMk.Iは世界にわずか2台しか現存しておらず、1台はここ戦車博物館、もう1台はエジプロカイロにある国立軍事博物館にしかない。エジプロのセンチュリオンMk.Iには劇中と同型の7.92mmベサ機関銃搭載モデルが展示されているが、残念ながら機関銃が取り外されてしまっている。つまり、島田愛里寿搭乗車とまったく同一のモデルはもう世界に存在しないようだ。そして7.92mmベサ機関銃のセンチュリオンMk.Iが製造されたのは戦後のことで、島田愛里寿搭乗のセンチュリオン Mk.Iは「ガルパン」のレギュレーション的にちょっとズルいということになる。

 その奥にはタンクファクトリーと名付けられた戦車工場のような空間があり、ここには、最終モデルとなるチョバムアーマー搭載のセンチュリオン Mk.13をはじめ、歴代センチュリオンの実機や設計図、そして世界に一台しかない真っ二つに切断したセンチュリオンなど、センチュリオンの不滅の功績を世界に伝えるエリアになっている。ここまで大量かつ多様なセンチュリオンを見られるのは世界でここだけということで、センチュリオンファンはぜひ足を運びたい博物館だ。

【センチュリオン Mk.1(ポールステン機関砲搭載モデル)】
従来の英国戦車の面影がほとんどない。車高も低くスマートだ
トレードマークの装甲スカート
英国戦車らしからぬ格好良さ
砲塔は非常にコンパクト
独特の形状をしたボンネット
操縦手用の可倒式風防

【センチュリオンのバリエーション】
センチュリオン Mk.3
センチュリオン Mk.10
センチュリオン Mk.13
センチュリオン Mk.IIの設計図
センチュリオン Mk.7の設計図

【真っ二つにされたセンチュリオン】
戦車博物館では世界に唯一の真っ二つにしたセンチュリオンが展示されており、中の構造を真横から眺めることができる