インタビュー

「関ジャニ∞」CMで話題「キャンディーソーダ」レベルデザイナーインタビュー

ステージ作りは2人体制! 「まだぜんぜんアイディアはある」

5月 収録

「キャンディークラッシュソーダ」レベルデザイン担当のダミル・ブチョー氏

 ジャニーズ事務所のアイドルグループ「関ジャニ∞」をCMに起用し話題の「キャンディークラッシュソーダ」(キャンディーソーダ)。ステージごとに設定された目標をクリアしていくタイプのスマホ用3マッチパズルで、見た目のかわいさもさることながら、ステージごとに変化に富んだギミックがプレイの継続を促すカジュアルゲームである。

 用意されたステージは複数がまとまって1つの「エピソード」となっているのだが、配信後も新エピソードが2週間毎にどんどん追加されていく。配信元のキング・デジタル・エンターテインメントはほかに姉妹作の「キャンディークラッシュ」や「バブルウィッチ」、「ファームヒーロー」などを配信しており、いずれのタイトルでも基本2週間で新ステージ追加というハイペースなアップデートが実施されている。

 次から次に新しいステージが登場するので実質的にプレイに終わりがないし、どのステージも凝っているため飽きずにプレイが続けられる。かねてからこうしたレベルデザインがキングタイトルの肝だなとは思っていたのだが、今回「キャンディーソーダ」のレベルデザインを担当するダミル・ブチョー氏に話を聞く機会を得たので、「キャンディーソーダ」をはじめとしたステージ作りの過程や方法論、そして日本の印象などについて伺ってきた。

2週間、15ステージ追加のペースは2人チームで実現

「キャンディーソーダ」の画面。同じ要素でありながら、それぞれ異なった特徴のステージが続々と待ち受ける

 ダミル氏は、約4年前からキングに在籍し、「Bubble Witch Saga」(日本未配信)や「キャンディークラッシュ」のレベルデザインを経て、現在「キャンディーソーダ」を担当。本作ではレベルデザインをメインに、ゲームデザインも兼務している。

 改めてレベルデザインとゲームデザインの違いを明確にしておくと、レベルデザインは1つステージの具体的な構成を決めていく作業で、ゲームデザインはステージごとのルールや目的、ギミックなど“レベルデザインに必要な要素”を作っていく作業を意味している。つまりダミル氏は「氷を割って『キャンディーベア』を救出させる」などといったゲームのルールも作るし、具体的に1つ1つのステージも作る開発者、ということになる。

 レベルデザインは社内のツールを使って調整していくそうで、作ったものを実際に遊んでみて、実際にクリアして楽しかったものが加わっていく流れとなる。ゲーム序盤は馴染んでもらうため簡単にしてあり、エピソード9を越えた辺りからは1つのエピソードに簡単なものや難しいものがバラけて配置されている。難しいステージのあとには簡単なものがあって息抜きできる、といったようなバランスにしてある。

 難しいステージは当然プレイが行き詰まりやすいため、ゲームが有利になるアイテムを購入してもらえるポイントにもなるのだが、一方で難しすぎるとそこで辞めてしまう可能性もある。そのあたりのバランスはどうなのかと聞くと、どんなに難しくてもクリアまでの平均プレイ回数がある一定に収まるようにしている。ちなみに筆者は詰まったステージでクリアまで100回くらいプレイした記憶もあるのだが、実際はそれ以下なのだという。

 1つのエピソードにはそれぞれ15個のステージが用意されており、これが2週間に1つのペースで追加されていくのでいったい何人でレベルデザインをしているのかというと、ダミル氏を含めてなんと2人なのだという。もう1人はレベルデザインの専門スタッフで、ダミル氏と専門スタッフの2人チームでステージを作っている。

 筆者のイメージとしてはせめて5、6人のチームかなと思っていたので、この小規模体制には少し驚いた。2人しかいないのに上記のようなペースで大変なのではないかと心配になるが、「キャンディーソーダ」はスタートしたばかりのため「まだぜんぜん新しいアイディアはある」とまったく問題ない様子。ただかつて2,000ステージ作った(!)という「Bubble Witch Saga」はさすがに辛かったというし、「キャンディークラッシュ」でもアップデートがかからない時期もあったので、今後は状況次第な部分もあるようだ。

日本ユーザーは「1つのゲームに思い入れを持つ」イメージ

奥さんが日本人という日本贔屓のダミル氏がステージを作っていると思うと感慨深い

 今回ダミル氏が来日したのは、日本のゲーム市場の状況を実際に見て回り、それを本社で共有することが目的だという。実際に、「キャンディークラッシュ」のデイリーアクティブユーザーは日本が4番目に多いことが過去にデータとして出ていて、それほどキングにとって日本は重要な市場であると考えられている。

 実はダミル氏は来日経験があり、何を隠そう奥さんは日本人。話を聞けばその出会いは日本のSNSを通じてだというし、チェーン店で牛丼もすらすら頼める日本通だった。そんな来歴も今回の来日に繋がっているのだが、改めて日本の印象を尋ねると「どこへ行くにしても楽しいことが待っている感じが良い」という。「(キングがある)スウェーデンでは18時を越えるとどの店舗も閉まってしまうので(笑)」というのも、その理由の1つだそうだ。

 ある意味で大の日本贔屓であるダミル氏は、日本のユーザーには「1つのゲームに対する思い入れが強く、そのためにはお金を使うこともいとわない」ようなイメージがあるという。これはキングCEOのリカルド・ザッコーニ氏も似たような感想があるそうで、リカルド氏が来日して講演した際、来場者が集まって熱心に聞いてくれる姿を見て「日本はなんてゲームに対するモチベーションが高いんだ」と感動したそうだ。

 日本のスマートフォン用ゲームについては、「欧米に比べて複雑で深く、情報も多いように感じる」という印象があると語った。欧米のゲームはもっとカジュアルで、「スタートしてからすぐにゲーム画面になる」ようなゲームが主流なのだという。

 今回の来日で様々な日本のゲームメーカーを見て回ったというダミル氏にキングと日本の企業の違いを尋ねてみると、特に「オープンさ」が異なるという。キングは社長に気軽に話しにいけるような状況で、リラックスしたムードの中で仕事ができるのだという。

 来日して得た知識と経験が今後どのようにゲーム作りに影響が出るかは未知数だそうだが、楽しそうにインタビューに応えてくれるダミル氏を見る限り、良い刺激になっているようだった。試しに「『キャンディーソーダ』に日本をイメージしたエピソードを加えてみては?」と提案してみると、「約束はできないけど、良いですね」と前向きな意見が返ってきた。

 最初に挙げた関ジャニ∞起用のCMでは、若めのユーザーがプレイを始める効果が出てきているという。日本は日本で独自のプロモーションが展開しているし、本作がどのような成長を見せていくのか、ダミル氏のレベルデザインと共に注目していきたい。

iTunesで購入

(安田俊亮)