インタビュー

「FFXIV」東京ファンフェスの「THE PRIMALS」ステージレポート

祖堅正慶氏率いるメンバーへのミニインタビューも併せて紹介

12月25日 開催

広い会場がサイリウムに埋め尽くされた

 スクウェア・エニックスは「ファイナルファンタジーXIV(以下、FFXIV)」のファンイベント「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2016 in TOKYO」を12月24日・25日に東京ビッグサイトで開催した。

 第1回目のファンフェス以来、イベントの最後は「FFXIV」のサウンドディレクター祖堅正慶氏が中心メンバーとして結成しているバンド「THE PRIMALS」のロックライブでしめるのが恒例になっている。直前のステージが終わると、観客席はすべて取り払われ会場はオールスタンディングのライブホールに姿を変えた。

 オフィシャルグッズのサイリウムは夕方ごろには完売しており、それを手にした数千人のオーディエンスがぎっしりと会場を埋めた。会場前方には、騒ぎたい人のためのクレイジーゾーンが作られ、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏もここで他の観客と一緒にサイリウムを振った。通路を挟んで後方のゾーンもぎっしりと人で埋まり、視界の端から端までがサイリウムで埋まる美しい風景を作っていた。

 1曲目は1枚目のアレンジアルバム「FROM ASTRAL TO UMBRAL」に収録されている「混沌の渦動 〜蛮神リヴァイアサン討滅戦〜」。サイリウムの色が濃紺に統一され、スポットライトと相まって会場全体を海原に変える。

 2曲目は、スクウェア・エニックスのローカライズ部の社員でありながら抜群の歌唱力で女性ボーカルとして活躍している、村田あゆみ氏が歌う「忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜」。

 そしてマイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏が登場。祖堅氏が、「昨日のピアノライブでは怪しいアシエンがラーヴァナの前半を演奏してましたが、後半がまだですね」というと、会場のサイリウムがすぐさま赤く変わる。祖堅氏が「わかってるね! 真っ赤だね。ラーヴァナいくぜ!」と指さすと、会場からは「耐えて見せよ!」とラーヴァナの決め台詞が飛びまくった。そんなやり取り後、12月6日に発売したばかりの新譜「DUALITY」からの3曲目、「曲がらぬ刃 〜蛮神ラーヴァナ討滅戦〜」をフォックス氏が熱唱した。

 4曲目は、「ニーズヘッグ征竜戦」の後半に流れるBGMのアレンジインストゥメンタルバージョン。ニーズヘッグとの死闘の最中に流れる勇壮な曲が、静と動を組み合わせたドラマチックなアレンジで演奏された。

 「僕ら2曲やったら休まないと演奏できないの。年だから」とトークを挟み「お互い頑張りましょう」と観客席で見ている吉田氏に言うと、会場からは吉田コールが沸き起こった。

 「次はペンの色が緑で」と告げた後の5曲目は、フォックス氏がボーカルの「魔神 〜魔神セフィロト討滅戦〜」。さらに、THE PRIMALSの中でも屈指の人気を誇る名曲「過重圧殺!〜蛮神タイタン討伐戦〜」が続いた。観客も「Under the Weighit!」と叫びながらステージと一緒に盛り上がった。

 タイタン後にバンドメンバーが一度舞台の袖に消えると、すぐにアンコールが沸き起こったが、それがいつしか祖堅さんの愛称「ニーソ」に変わる。数千人の「ニーソ」コールの中、「まさかニーソでくるとは思わなかった」と苦笑を浮かべながら祖堅氏が再登場した。ニコニコの「明日休んでいいよ」というコメントに対して「明日は大事な4.0のボイス収録があるので休めないんですよ」と、開発情報もちょっぴり披露した。

 アンコール曲は「何をやろうかな?」と祖堅氏が聞くと、すぐに「アレキ」の大合唱が起こった。祖堅氏が「DUALITYにも入っていないやつをやります。僕らはまだまだひよっ子の光の戦士なので、まずは起動編あたりからやらせてもらおうかな」と断ると、会場からは「メタル!」の掛け声があり「じゃあメタルをやろう!」ということになった。

 アンコール1曲目は、「機工城アレキサンダー:起動編」の4層BGM「メタル」。大トリは、同じ「起動編」の1層〜3層のボスBGM「ローカス」を演奏した。「起動編」で特に難しく、多くの人が苦戦した「3層」のイメージなのか、会場はライトもサイリウムも水色にそまった。

 会場、ステージ、配信を見ている視聴者が一体となったステージは全8曲で終了した。「もう1回!」の声が絶えなかったが、コミュニティチームの室内氏が無慈悲にも終了を告げた。

THE PRIMALSのメンバーへインタビュー

THE PRIMALSメンバー
祖堅正慶氏(中央)、ドラムスのたちばな哲也氏(左)、マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏(右)
ギターのGUNN氏
ベースのイワイエイキチ氏
ボーカルの村田あゆみ氏

 イベント終了後には、THE PRIMALSメンバーから話を聞くことができた。参加したのは、祖堅氏、フォックス氏、村田氏のほか、ギターのGUNN氏、ベースのイワイエイキチ氏、ドラムスのたちばな哲也氏の7人。

 まだまだ余韻が冷めやらないステージの感想や、次回、ドイツへの意気込みを聞いた。

――オーディエンスはいかがでしたか?

祖堅氏: すごかったですね。全部がクレイジーゾーンみたいで。結局どこも同じじゃんという。

――ラスベガスと比べてどうでしたか?

GUNN氏: 東京のほうがすごかったよね。

――ゴーと地鳴りのような音がして、床が揺れてましたね。

GUNN氏: ラスベガスはホテルで中空だから揺れてもまあおかしくはなかったんだけど、こんな丈夫な建物が揺れるって相当ですよね。

――前説で盛り上げるのは日本独特かと思うんですが、あれの効果が大きかったですか?

祖堅氏: 「ザ・フィースト」があったでしょ。StanSmithさんの実況が刺さっていたのが大きい。もちろん前説もありましたけど。まあでも、リヴァイアサンを始める時の、哲さんのハイハット4打ち。あれがすべてを持っていきましたね。

――2年前よりもお客さんが増えてますよね。

祖堅氏: 増えてますね。倍くらいです。

――参加者7,000人くらいだったそうですが。

祖堅氏: 上から見てる感じ、10万人くらいいましたね(笑)。10万人見たことないから言ってますけど、すごい人でした。

――お客さんはすごく楽しんでおられました。皆さんも楽しんでおられたのかなと。

一同: そうですね。

祖堅氏: 村田はどう?

村田氏: 緊張して吐きそうでした(笑)。でも楽しかったです。記憶がないんですが。真っ白。

祖堅氏: 2、3曲やれれば落ち着けたのにね。ソフィアとか。

村田氏: だめです(笑)。

――前回のイベントの時には「動こう」というテーマでやられたと聞いていますが、今回はどういうキーワードがあったんでしょうか?

祖堅氏: キーワードというか、ロックバンドなのでロックをやろうというのは当然なんですが。ラスベガスの時に1つ反省点があって。観客にどの曲が聞きたいと聞いた時、結構、新曲に対する反響が大きかったんです。だから、羽田空港に着いた時にすぐに作戦会議を始めて、「DUALITY」には入っていないけど、日本のお客さんにはたぶん「メタル」をやらないと許してくれない。納得して帰っていただけないと思うから、申し訳ないけど、1曲追加でお願いしますと皆さんにお願いしました。それは確かにやったほうがいいからやろうと快く了承していただいて。それから練習して、やりました。

――初「メタル」はいかがでしたか?

祖堅氏: 必死だったからわかんない(笑)。

GUNN氏: でもあれがお客さんの聞きたい曲だったんでしょ?

祖堅氏: そうですね。やってよかったと思います。

――おひとりずつ、今日印象的だったシーンを教えてください。

GUNN氏: 「DUALITY」の発売後ということもあるんでしょうが、結構新しい曲も受け入れてもらっているんだなと思って。僕はアレンジにも関わらせていただいているので、結構ドキドキしてて。ユーザーの方々がああやって喜んでくれているのを見るのは、感慨深いものがありますね。嬉しかったです。

村田氏: あの広い会場の端から端までサイリウムが広がっていて、お客様ももちろん端から端までパンパンに詰まっていて、みんな曲に合わせて踊っていて、それだけでもう泣きそうになりました。

GUNN氏: 結構泣く人多いですよね。泣いてる人もいるしね。

祖堅氏: 年寄りが多いですからね(一同爆笑)。

フォックス氏 練習の時は、一生懸命練習するんですが、自分とバンドメンバーしかいない。会場に来て、たくさんお客さんが目の前にいると、調子にのって飛び回ってしまいます。昨日の練習では全然普通に歌えたのに、今日はわーっと動いていると息切れして。昨日は最後までフレーズが歌えたのに。特に「ローカス」でどうしようかと思いました。でも本当にファンから力をもらって、練習でも100%出しているけれど、本番では300%くらい出してやれるのは、本当にファンの力がすごいと思います。

祖堅氏: 僕はやっぱりラスベガスの反省点がすごく引っかかっていて、それを解消するためにこの2カ月結構奔走したので、「メタル」をやったときの、あのわーっとなった感じの時が嬉しかったです。

――かなりニコニコしてましたね。

祖堅氏: あんなに反応していただけたので。あとは「ローカス」ですね。盛り上がりますね。

――あの無敵感はすごいですね。

祖堅氏: みんなすごいぴょんぴょんしていて、びっくりしました。最初にも言ったんですが、暴れるゾーンの人たちだけが暴れているわけではなくて、本当に後ろの方まで暴れているすごい光景を見せてもらいました。1曲目からですからね。

たちばな氏: 印象的なところは、コージくんの帽子が縮んでたってことですね(一同笑)。クリーニングかな?と。でもステージが、ちょっと余裕も出てきて本当にバンドっぽい感じになっていたのがすごく印象的でした。もちろんお客さんもすごかったです。そこが2年前よりも良かったです。

――1番後ろからもサイリウムが見えました?

たちばな氏: バリバリ見えましたよ。工事現場に来たのかと(笑)。楽しかったです。

祖堅氏: 上から見ているとサイリウムはポツポツなんですよ。やっぱりげんこつが多かったです。

イワイ氏: 最後はいうことがないなあ(笑)。僕は2年ぶりで2回目の東京なんです。細かい段取りとか、ここはこう動いてとか、間とか、なにも細かいことを言わなくても、雰囲気でやれました。後は、最高の眺めでしたね。

――今日祖堅さんとGUNNさんが客席に降りてきて演奏しているのを見た時にはかなりびっくりしました。

フォックス氏: 私もびっくりしました。見たらみんないない。言ってくださいよ。

祖堅氏: 直前に、あのくらいで行ってみるというふわっとした打ち合わせをしてて。

イワイ氏: 1人だけ知らなかったんだよね。

フォックス氏: そう。私だけ聞いてなくて。とりあえずイワイさんの近くにいようかなと(笑)。

祖堅氏: 暴れゾーンが満員になって、前に行けなくなっちゃったという人が、開発者交流コーナーで結構おられたんです。行きたかったけど、こっちに並んでいたら、いけないと。これはまずいなと思って。じゃあ行けばいいんじゃない。行けばそこが1番前になるかなと。ただ行くとき結構暗いんでうしょ。後ろからライトを照らされてるから、真っ暗なんですよ。何も見えない。やっぱりああいうのはもうちょっと練習したほうがいいですね。

GUNN氏: そうだよね。いくからねと照明の人に言っておかないと。

フォックス氏: ボーカルにも言ってください。

――ピンスポが当たったりもしていなかったのはそういうことなんですね。

祖堅氏: そうそう。好き勝手やってます。観客の側に行ったら、誰か通路にいるけど誰だろうとざわざわする感じで見たら、「あーー!」みたいな。

――帰りがけ吉田さんと煽り合ってましたね。

祖堅氏: そうですね。いたので、日ごろの鬱憤を(笑)。

――ドイツでも1番前で見るんでしょうか?

祖堅氏: やるんじゃないでしょうかね。ラスベガスでもやってましたし。

――最終的にどの曲を演奏するかは、祖堅さんが決めているのですか?

祖堅氏: そうです。ゲームの中での重要度というか、認知度というか、ゲームコンテンツに紐づいている曲なので、僕が決めています。ただ、できる曲とできない曲があるじゃないですか。そこはバンドメンバーに紹介して、こういう素材があるんですが、バンドでやるにあたってどうですかと聞くと、それはだめだ、それはいいんじゃないのと、すごく皆さん意見を出してくれるので、それに乗っかって。

――ライブで演奏する際、気を付けているところはどこですか?

祖堅氏: インタビューで何度か言ってるんですが、バンドって、僕らの音楽を聴いてくれということでバンドを結成しているわけじゃないですか。でも「THE PRIMALS」は少し特殊で、僕らが主役ではないんですよ。あくまでもプレーヤーさんたちが「FFXIV」をプレイした、その体験が主役なんです。僕らはその体験をロックとして表現して、その思い入れをより昇華させてあげるという立場で、皆さんのゲーム体験を盛り上げる触媒のようなものです。だからコンセプト的に、いつも気を付けてやるようにしています。イワイさんや、たちばなさん、GUNNさんにも、ことあるごとに僕らが主役じゃないんです。ここはちょっと難しいバンドなんですが、よろしくお願いしますと伝えています。でもですね、そんなことを言っても普通はできないんですよ! そんなことができるのは、この人達くらいだと思います。すごいと思います。

――THE PRIMALSを聞く機会は、今後増えませんか?

祖堅氏: 増やしたいですねえ。

――韓国でも「FFXIV」がサービス中で、韓国でも多くのファンがTHE PRIMALSを生で聞きたいと思っています。韓国など他の国でもライブをする可能性はありますか?

一同: 行きたいね。

GUNN氏: 祖堅君がイベントで全国に行っていますが、その中で「THE PRIMALS」のライブをやって欲しいという声がかなりあると聞いていて、それを実現する形を考えていきたいです。いかんせん僕たちだけの気持ちでは難しいですが、実現させたいですね。

祖堅氏: 「FFXIV」には、全国各地を回るイベントがありますよね。あれにくっつけていけたらいいねという案は、バンドの中では出ています。まあを実現するには、あれがね(指でお金の形を作りながら)、あれがあれしてあれじゃないと。

たちばな氏: やっぱりこれ(同じポーズで)か(笑)。

――ドイツではまた曲目を変える予定ですか?

祖堅氏: そうですね。変えようかなと思ってます。同じのというのもアレなので。

――アレキの曲はまた増えていく予定ですか?

祖堅氏: そこは正直言うと、さっきも話してたんですが、この人たち次第です。

フォックス氏: 2つあるじゃないですか。難しい方ですか?

祖堅氏: もちろんそうだ。今皆さんがゲーム内で聞いているコージがワチャワチャやっているやつは、実はコージ自身はそうは歌えてないんです。コージのIKZOラップを、こうして(両手をハサミの形にしつつ)。まあ、どうなることやらという感じです。

――プレーヤーの人も自分が今現在苦労しているところの曲が1番喜びますよね。

祖堅氏: そうですよね。今タイムリーですもんね。

――みなさん新しくIEM(イン・イヤー・モニター)を作ったと思いますが、いかがでしたか?

GUNN氏: 素晴らしい。前のもよかったですが、もうここまでくると全部が素晴らしいです。あとは好みの世界です。今回はこのステージにおいては、自分の聞きたいところがちゃんと聞けるようになっていて素晴らしかったです。

祖堅氏: 僕はライブだけではなくて、マスタリング用の音調整にも使おうかなと思っています。耳の中に突っ込むタイプで、下の音まで聞こえるやつはないんですよ。これは下の下から聞こえて珍しいなと。

――パイッサバージョンを一般発売する可能性はありますか?

祖堅氏: まあ、そこまで大量に作るようなモデルじゃない気もしますが、わかんないですが。僕らが決めることではなく、Ultimate Ears次第なので(笑)。

――パイッサは祖堅さんのオーダーなんですか?

祖堅氏: そうですね。前回と変えてくれと言われたので、最初はスプリガンを出してたんですが、まあパイッサかなと。理由はないです。

――パイッサがものすごく好きというわけではない?

祖堅氏: 全然好きじゃないです(大爆笑)。愛はないです。

――フランクフルトへの意気込みを聞かせてください。

GUNN氏: 海外は行ってみないとわからないところがあります。準備はもちろんしていきますが。2年前にやったやつもそうですし、この前のラスベガスもそうですし、思ったことや気付いたこともいっぱいあるので、それをこの2カ月くらいの間にしっかりと準備して、とにかく行って、もちろんメニューセットリストもしっかりと考えていきたいです。

村田氏: 画面の前から全力で応援したいです。

フォックス氏: 楽しみにしていることといえば、2年前にやってラスベガスでやって、今日やって、やるたびにバンドの一体感が。最初は上手い人が集まってやっている感じがしたんですが、最近だとバンドをやってるなと。本当にすごく楽しくなってきているんです。やるたびにそれが増していくだけなので、フランクフルトは最高なバンド体験をさせてもらえるんじゃないかと。でもここから最高潮になると、喧嘩を始めてみんな会話もしなくなるというのが、バンドってそういうものですよね。とにかく、フランクフルトはまだ上り坂なので大丈夫です。

祖堅氏: フランクフルト楽しみですね、単純に。ドイツはいまいろいろと熱い国らしいので。僕らがもっともっと熱くしてやろうと。ドイツはもともとユーザーさんの熱気が高い国という印象があるので、そこにTHE PRIMALSをぶつけるとどうなるのか楽しみです。

たちばな氏: 個人的にはドイツは初めてなので、国の雰囲気とかリアクションがとても楽しみですね。あとはビールですね。あとはお姉ちゃんですね。

祖堅氏: ロックンローラーですね。

イワイ氏: 僕もヨーロッパ言ったことがないので、何も考えずに飛び込んで頑張ろうと思ってます。

――ありがとうございました!