「電遊道」~Way of the Gamer~ ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ

ジョン・カミナリの楽しいゲームライフ【第28幕】

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 「電遊道」は、RPGのようにレベルアップする。これまでの「一刀両断」や「イタヲタのレトロなゲームライフ」などの人気コーナーを提供しつつ、新しいコーナーをスタート!「みんなのGAME SHOP」では毎月、イタリアのゲームショップの1日を体験していく。期待作が発売された日のお客さんの反応とは?イタリア人の買い物を覗いたり、店長のコメントを訊きながら、ゲームショップの1日を密着取材!

 そして、「BORN TO BE GAMER」(和訳:ゲーマーになる為に生まれた)では、日本のゲームを愛するイタリア人ゲーマーを紹介していきたいと思う。ゲームとのファーストコンタクトは?日本のゲームを愛する理由とは?その人物像を掘り下げたいと思う!これからも「電遊道」はレベルアップしていく。サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:
イタリア
年齢:
37才
職業:
俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:
テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:
銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)
ブログ:
ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
Twitter:
https://twitter.com/John_Kaminari
Facebook:
http://www.facebook.com/johnkaminari

 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること。


一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

話題のゲームニュースや注目のゲームイベントをピックアップして、僕の正直な感想を述べたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイディアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に!

 1月23日に放送されたニンテンドーダイレクトで岩田社長が、Wii Uの今後について語った。僕も先月の記事で疑問に思っていたシステムの不安定さ、特にソフトの起動やメニュー復帰の高速化という課題が、春と夏に予定される更新で克服されるという朗報があった。

 さらに、バーチャルコンソールのサービスが春にスタートし、しかも、Wii U GamePad単体でファミコンやスーパーファミコンの名作が遊べるという情報もとても嬉しかった。岩田社長が言ったように、システムやソフトの品質向上を果たす為には少し時間がかかるが、3月以降は新しいタイトルが定期的に供給されるようになり、環境が少しずつ理想に近づいていくということになる。

 岩田社長のユーザーに対しての低姿勢は、僕だけでなく、欧米ユーザーも絶賛しているようだ。ニンテンドーダイレクトは単なる“新情報を発信する番組”ではなく、ユーザーと任天堂の間の信頼関係をより一層強くする為の重要なイベントだと思っている。僕も毎回、ユーザーたちのニーズに任天堂側が瞬時に応えるということに対して好印象を持っている。

今回のニンテンドーダイレクトのテーマは任天堂の今後のWii U用新作の新情報公開だった
Wii Uのネックの1つであるソフト起動やメニューへの復帰時間が、今後の本体高背品で短縮されることになる
Wii Uのバーチャルコンソールの最も大きな進歩は、GamePadの画面で過去の名作が遊べるということだと思う。新ゲーム機の参入もこれから注目されるだろう
キュートなキャラクター満載の新作も大歓迎だが、欧米ゲーマーを喜ばせるようなアダルトな雰囲気のゲーム制作も望まれていると思う

 今回のニンテンドーダイレクトで最も注目が集まったのは、後半で紹介されたこれから発売される新作の初公開映像の部分だと思う。ここで、発表されたタイトルについて1つひとつコメントしていきたいと思う。

 まず、任天堂のタイトルから。今年のE3で「スマッシュブラザーズ」最新作の映像が初公開されるそうだし、Wii U用の3Dマリオも、「スーパーマリオギャラクシー」などを手がけた東京の開発チームによって開発中だという情報が明らかにされた。

 さらに、僕の大好きな作品「毛糸のカービィ」を手がけたチームが、ヨッシーを主人公にしたアクションゲームを開発中であることも発表された。そして、定番の「マリオカート」シリーズも、Wii U用の新作が開発中であることがわかった。

 ここで1つ、任天堂に送りたいメッセージがある。2012年10月にローマでオープンしたゲーム博物館の館長も、実は任天堂作品の熱烈なファンで、彼とは過去にイタリアの同じ出版社で働いたこともあり、ゲーム話や意見交換を今でもよくしている。館長も僕も同じく、強く感じていることがある。それは、任天堂に「マリオ」、「ゼルダ」、「メトロイド」以外の新シリーズの開発、制作に取りかかって欲しいという強い願望だ。

 現在のゲームマーケットの厳しさが、新シリーズの開発を妨げていると思う。先の見えない新シリーズ、新キャラクターよりも、安定した結果が望める定番シリーズの続編のほうがメーカーにとってリスクを伴わない当然の選択だといえる。

 しかし、僕たちゲーマーはやはり、任天堂の新キャラクター、新シリーズを「是非観たい、是非遊びたい」という気持ちが共通していると思う。もちろん、今回公開されたWii U用の定番タイトルを楽しみにしているが、それと同時に任天堂による、全く新しいゲームヒーローの誕生も期待している。

完全新作「ゼルダ」の公開、発売までは、まだ時間がかかりそうだが、その間に名作「ゼルダの伝説 風のタクト」のHDバージョンがリリースされることがとても嬉しかった。個人的に、僕にとっての3Dリンクはデフォルメされたほうがいいと思う

 今回のニンテンドーダイレクトでは、「ゼルダ」の今後についても重要な情報が発信された。今後の制作方針として選ばれたキーワードは「『ゼルダ』のアタリマエを見直す」ということだ。ダンジョンを攻略する楽しさや、1人で黙々遊ぶというやり込み要素を大切にしつつ、原点回帰を果たしながら、現代のユーザーに合った新鮮さをあわせもつ新作の制作が鍵になっている。

 僕が言うまでもなく、それに強く同感している。Wii U GamePadを生かせば、全く新しい操作方法が実現できるだろう。しかし、やりすぎると、「ゼルダ」の大きな特徴である遊びやすさを損ねてしまうことになる。ポイントはバランスだと思う。伝統と進化の丁度いいバランスを保つことが、過去の名作を普遍的にする第1条件だと確信している。Wii U用の新作ゼルダの映像が公開されるのはずっと先になるそうだが、続報をとても楽しみにしている。

 その間に、ゲームキューブ用の名作「ゼルダの伝説 風のタクト」がWii U用にリファインされることになった。グラフィックスがHD化され、全く違うゲームに見えるほど、比較できないほど美麗になったと思う。僕も原作を遊び尽くしたが、こんなに美麗になると、再び遊んでみたいという気持ちが強い。

クロスオーバー作品の最も難しいところは、お互いのゲームシリーズのファン達を納得させるような、矛盾のない世界観の構築だと思う

 さらに今回、アトラスの「新・女神転生」と「ファイアーエムブレム」のコラボタイトルが初公開された。正直に言うと、基本的に僕はコラボタイトルのファンではないが、世界観やゲームルールの全く異なるこの2つのシリーズが合体すると、どういうゲームが生まれるのだろうかといろいろ想像してみた。

 結局まだイメージが思い浮かばないが、期待感が膨らむのは確かだ。コラボタイトルの制作は非常にデリケートな作業で、1歩踏み外すと、せっかくの秀逸なお互いの世界観が台無しになる恐れもある。RPGの分野で確固たる信頼度を持つアトラスと任天堂のIntelligent Systemsが絡んでいるからこそ、失敗はないと思いたいが、今後の発表に大注目だ。

「ベヨネッタ2」は重要な独占タイトルだが、人気ジャンルだけに、他社からもそのようなゲームの定期的な供給がポイントになる
アメリカのCGアニメ映画を思わせるようなキャラクターや世界観に、プラチナゲームスらしいアイデンティティを加えた新作、「The Wonderful 101」。躍動感あふれる新映像には圧倒された!

 Wii Uには任天堂らしいキュートなゲームだけでなく、やはり、欧米で注目される強烈な内容のゲームの提供も大切だ。それに関しては、欧米で大人気のプラチナゲームスとのタッグが必要不可欠だといえる。

 今回のニンテンドーダイレクトでは制作現場の映像しか観ることができなかったが、Wii U用の独占タイトル「ベヨネッタ2」のすごさは感じ取れたと思う。特に動画の最後に登場するベヨネッタのセクシーな後ろ姿や歩き方が見所だった。「You want to touch me?」(あたしを触りたい?)という台詞から、ベヨネッタの背徳的、挑発的な態度が感じ取れた。

 やはり欧米人は任天堂のゲーム機で“良い子ちゃん”だけでなく、時にはベヨネッタのように強烈で、背徳的なキャラクターも操作してみたいと思う。これからは、任天堂のイメージを損なわないように、バランスの取れたラインナップを提供することがとても重要だと思う。僕は2つの“アイデンティティ”の共存が問題なく実現できると確信している。

 プラチナゲームスも、Wii Uでは2つのアイデンティティを持ちたいと思う。何故かというと、もう1つのWii U用新作「The Wonderful 101」は、「ベヨネッタ」とは正反対の雰囲気を醸し出しているからだ。

 今回公開された映像には良い意味で言葉を失ってしまった。アメリカのヒーローを連想させる主人公達は世界のどこでも高い人気を受けられると強く感じた。バイオレンス表現に頼らなくても、ゲーマーの遊び心をくすぐるような、普遍的な魅力を持つゲームが開発できることを再認識した。「ピクミン」的なゲーム性に、プラチナゲームスによるユニークなゲームビジョンが加わり、本当に素晴らしいゲームが誕生すると予感した。

 今回のニンテンドーダイレクトの切り札は、番組の最後に紹介された。それは、僕たちRPG好きが最も待ち望んでいるといえるゲーム、モノリスソフトによる「ゼノブレイド」シリーズのWii U用RPGだ。正確なタイトルはまだ未定だが、公開された動画では「ゼノギアス」のロゴを思わせる赤く塗られたXが目立っている。

 1分程度の動画を観た上で、次のような印象を持った。まず、フィールドが前作のように広大であることが確認できた。またWii U向けのソフトということで、グラフィックス表現が豊かになったことも主張できる。特に水面などのエフェクトが美麗になり、そのおかげでファンタジーの世界を縦横無尽に歩き回るという楽しさと没入感が圧倒的に増すだろう。

 前作の「ゼノブレイド」もHDではなかったにしても、Wiiのハードを最大限に生かし、奇跡のような広大さと自由度を実現していたが、Wii Uという高性能なハードを活用すれば、想像もできないような壮大さを持った冒険が繰り広げられることになると思う。

 戦闘システムに関しては情報が公開されなかったが、動画を観る限り、前作のようなMMORPG的な形を受け継いでいると思われる。フィールドを徘徊しているモンスターもサイズが多種多様で、攻撃的なクリーチャーもいれば、こちら側が攻撃を仕掛けないかぎり、反応してこない生き物も存在するようだ。それも前作と同じフィーリングを持っていると思われる。

 ただ1つ、前作と大きく違う要素がある。それは乗り物の存在だ。動画の後半では主人公が巨大なロボットに乗り、フィールドの上空を飛行したり、水面の上を疾走したりするシーンが確認できた。さらに、ロボットに搭乗したまま、敵達に攻撃を仕掛ける場面も見られた。それは言うまでもなく、高橋哲哉氏が手がけた不朽の名作「ゼノギアス」に近いイメージになってきたと思う。

 結局、今回の動画を観て「もっと情報を知りたい!早く遊んでみたい!」という気持ちになった。グラフィックスは開発中なので、これからはもっとすごいものに進化すると思うが、この段階でも既に傑作のオーラが伝わってきた。

 あえて1つだけ指摘するなら、動画の最後に映し出された主人公と思われるキャラクターの顔のモデリングが、Wii Uにしてはまだ荒く、その表情も人形っぽく感じた。Wii Uになったからこそ、キャラクターモデリングや演技といった要素により一層力を入れるべきだと思う。それに関しては、開発側がもう言い逃れできないような高性能なゲーム機が実現したので、これから、キャラクターデザインなどに磨きをかけていくべきだと思っている。

このロゴを目の前にして「えっ?『ゼノギアス』の続編!?」と感じたゲーマーは少なくないだろう
画面下部を見るかぎり、コマンドを選ぶインターフェイスも前作のスタイルを受け継いでいると思われる
広大なワールドを自由に探索するという要素は、RPGファンにとって最も大切だといえる。ロボットに搭乗したままの飛行探索パートは格別な爽快感を感じられるだろう

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