レビュー

不可解極まりない状況から始まる「SILENT HILL: Townfall」レビュー

武器の制限で生まれるハラハラ感。ステルス要素が加わった「サイレントヒル」シリーズの新たな恐怖を味わった

【SILENT HILL: Townfall】
9月24日 発売予定
価格:
7,480円(スタンダードエディション)
8,580円(デラックスエディション)

 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)は、プレイステーション 5/PC用サイコロジカルホラー「SILENT HILL: Townfall(サイレントヒル タウンフォール)」を9月24日に発売する。スタンダードエディションの価格は7,480円より。

 本作は一人称視点を採用した「SILENT HILL(サイレントヒル)」の外伝作品。シリーズ作品の多くが三人称視点を採用しているが、全編一人称視点を採用し、さらにはステルス要素をメインとした、これまでの「SILENT HILL」シリーズにはない新たな形の恐怖に満ちた作品となっている。開発はスコットランドを拠点とするScreen Burnが手掛ける。

 そんな本作の製品版を先行でプレイする機会を得た。ストーリーのネタバレなどは無しで、本作ならではのゲーム性や恐怖演出など、気になるポイントを紹介していこう。なお、本レビューではプレイステーション 5版のプレイとなっている。

【SILENT HILL: Townfall | 発売日発表トレーラー】

クリーチャーと対峙する恐怖から“隠れる恐怖”へ

 不条理で歪んだ世界観は「SILENT HILL」シリーズの味ともいえる部分だが、今作の歪み具合は近年の作品の中では群を抜いている。

 シリーズの人気作である「SILENT HILL 2」は亡くなったはずの妻から届いた手紙をきっかけにサイレントヒルの町を訪れ、「SILENT HILL f」では家族との口論をきっかけに家を飛び出し、次第に不気味な霧や異変に巻き込まれていくという、どちらもストーリーの導入自体はそれほどの不条理さは感じられない。

 しかし本作は、主人公の「サイモン」が冷たい海に浮かぶ孤島へ漂着したシーンから始まる。サイモンの頭の中には「リチャード」という男の声が響き渡り、「状況を正す」よう告げられる。

 異質といえる状況だが、サイモンはその状況に特に違和感も持たず、言われるがままに行動していく。リチャードとは何者なのか、サイモンとリチャードがどういった関係性なのか全くの不明。

 サイモン自身も、腕には病院の患者用リストバンドと点滴のチューブが繋がっているという、まるで病棟から抜け出してきたかのような格好をしている。腕の点滴を見て「何だこれは!?」と驚いた様子を見せているのも不可解極まりない。状況が全く読めない何とも不気味な展開からゲームが始まる。

深い霧のかかった孤島・セントアメリアに漂着するサイモン
患者用リストバンドと点滴を付けているサイモン。主人公すらも謎が多い
町で初めてリチャードと出会うシーンでは、空から垂れている謎の管から何かを飲まされている。一体どういう状況なんだ……

 今作では主人公が生き抜くための重要アイテムとして「CRTV」というポケットテレビが登場。これまでのシリーズのラジオに代わって活躍する。

 ストーリーを進める上でも必須のアイテムで、特定の場所で流れている電波をチューニングしてキャッチすることで、次に進む場所のヒントやメッセージを受け取ることができる。次に行く場所などはメッセージとしてハッキリとは明記されず、CRTVの映像から読み取る必要があるという近年のゲームでは珍しい硬派なゲーム性となっている。

チューニングに成功すると、断片的に次に行く場所が映し出される

 CRTVの映像には、クリニックに勤める看護師の「ゾーイ」という女性の映像が流れてくる。その映像の中では、サイモンをどこかへ呼び戻すよう語り掛けてくる。

 普通の精神ならば、映像の中から自分に向けて話しかけてくるなんて不気味でしかないが、リチャードのときと同様に何の疑問も持たずサイモンはその言葉に導かれていく。すべての登場人物の言動に違和感しかないが、まるで当たり前のことのように話が進んでいくので、筆者の感覚が狂っているのかという謎の錯覚に陥りそうになる。このプレーヤーを平気で置いていくこの“謎に満ちた世界観を一体自分はいつ理解できるのか?”と、気が付けば物語にグイグイと引き込まれていた。

映像のゾーイに言われるがまま行動するサイモン。主人公すらもどこか不気味である

 ゲーム進行のヒントや謎解きなど様々な場面で活躍するCRTVだが、クリーチャーに対して索敵を行う際にもっとも活躍する。

 CRTVにノイズが入る場所の周辺にはクリーチャーが闊歩している。本作のクリーチャーは これまでの作品のように、どこかに潜んで姿を隠しているといった感じではなく、町の中を堂々と走り回っているのだ。

 そういったクリーチャーが近くにいる場面でCRTVを確認すると敵のいる方角がモニターに映し出され、さらに敵に近づくとシルエットまで認識可能。敵が今どの方向を向いているかなどの細かな情報まで把握できるのだ。

距離が離れていると敵のいる方角しか分からないが、接近するとシルエットが表示。シルエットは障害物越しでも見えるので安全な場所で確認できる

 CRTVを駆使して如何にクリーチャーに見つからずに進んで行くかがこのゲームの肝の部分だ。

 ステルス系のゲーム性ということもあり、クリーチャーたちの徘徊ルートや行動パターンはある程度規則性があったりする。物陰からクリーチャーの行動を観察して、包囲網を切り抜けるルートを自分で見つけ出すのが醍醐味である。

 物陰から敵の動きを観察できるなら簡単そうに思えるかもしれないが今作のクリーチャーは動きが結構速い。そのため、遠くに行ったと油断しているとすぐさま戻ってきて鉢合わせるという最悪な場面に何度も遭遇した。

 一度発見されたらどこまでも執拗に追いかけてくる恐ろしさに加え、過去作のクリーチャーと比べて強さも段違い。通常の敵に発見された瞬間に死がよぎるという、かつてないレベルの恐怖が待っているのだ。

動きを観察しているときに近くまで巡回してきたときの恐怖
こっちまで来ないでくれと祈るも――
絶望

 そんなクリーチャーに発見されないための様々なアクションが用意されており、中でも「のぞき見る」というアクションは必要不可欠。

 これらのアクションは場所は移動せずに姿勢だけを変えることができ、曲がり角から顔だけ出して安全に敵の状況を確認出来たり、下方向にのぞき込むことで通常のしゃがみ状態よりもさらに低姿勢で敵の視界から身を隠すことができるのだ。

 操作に慣れる前は覗き込むつもりが普通に移動してしまい、敵の目の前に堂々と姿を晒すというミスもあったが、これらのアクションを使いこなすことで生存率はもちろん、ステルスの面白さが格段にアップする。

 クリーチャーの隙をついて物陰から物陰へと移動する瞬間はとてつもない緊張が走るが、包囲網を切り抜けられたときはこれまでの「SILENT HILL」にはない気持ち良さを味わうことができる。

のぞき見ると物陰に身を隠しながら首の動きだけで視界を広げることができる
しゃがんでも完全に身を隠せない場所では下方向へののぞき込みが有効
敵が背中を向けたらその隙に次の物陰へすぐに移動。途中で振り向かれたら終了という緊張感が手に汗握る

 敵に発見されてしまった場合にもその場を切り抜ける手段はしっかりある。まずは鍵が付いている建物の中に逃げ込み、鍵をかけて敵を外に締め出すという方法。非常に大事なテクニックだが、扉を閉めてからドアの鍵を閉めるというアクションを敵に追われながら行うのは本当に心臓に悪い。

 そしてもう1つがクローゼットなどの身を隠せる場所の中に入るという方法。先の敵を締め出す方法よりも有用性が高く、目の前まで敵が迫って来ていても滑り込みで身を隠せれば、クリーチャーはこっちには手出しが一切できないのだ。このため、逃げ込める場所を事前に把握しておくのも本作で生き抜くために重要なポイントだ。

扉の鍵さえ閉めてしまえば中には入ってこられないので安心
大量のクリーチャーに襲われるという絶望的な状況でも逃げ込めればセーフ
ちょっとズルいが、セーブポイントの電話ボックスに逃げ込んでも敵を撒くことができるので覚えておこう

 ステルスとコンバット体験を売りにしていることもあり、戦闘でクリーチャーを対処することもできる。木材や鉄パイプといった近接武器と、ピストルといった遠距離武器が用意されている。

 メインとなる近距離での戦闘は、攻撃とガードの2つのアクションを駆使してクリーチャーに対抗していく。過去作のように敵を一発殴ったらそのままハメ殺せるといったバランスではなく、敵はこちらが攻撃を食らわせても怯むことなく反撃をしてくるので、攻撃とガードを適宜使い分けないと1体のクリーチャーを倒すのすら難しい。

攻撃とガードという非常にシンプルな攻防だが、敵が手強いのでヒリヒリとした緊張感が味わえる

 敵を倒せるならそれほどステルスにこだわらなくてもいいように思えるかもしれないが、本作は「SILENT HILL f」同様に武器に耐久度が設定されている。さらに、近接武器は1つまでしか所持できないので、予備で武器をストックしておくことも不可能。

 体感的には、1体のクリーチャーを倒すのに耐久度は5~6割程は失われてしまう。そのため、これまでの作品のようにすべての敵を駆逐して駆逐して進むというのは現実的ではなく、やむをえない場面にクリーチャーと戦うといったゲームバランスになっている。

耐久度マックスの状態でも、1体のクリーチャーを倒す頃にはゲージが赤くなっている
2体連続で相手をしたらまず耐久度が持たない

 本作はプレイステーション 5のDualSenseに搭載しているアダプティブトリガーにも対応しており、木材を振る際やピストルの引き金を引くときのトリガーの重さがゲームの没入感をさらに高めてくれる。プレイステーション 5版だけではなく、Steam版でも対応しているので、DualSenseを持っている人ならこの臨場感をぜひ体験してもらいたい。

アダプティブトリガーが有ると無しでは、ゲーム体験が大幅に変わる
肉で出来た謎の扉にメスを入れる場面では、肉の反発感が自分の指にダイレクトに伝わってくる

捕まったら即終了!? 裏世界ではクリーチャーの恐怖が加速する

 プレーヤーが操作できるのは実はサイモンだけではなく、CRTVの中でサイモンを呼んでいたゾーイを操作するパートも存在する。

 ゾーイの自宅シーンから始まり、そこで流れるラジオ放送からは「活動」、「物資」、「支援」といったワードが飛び交っており、具体的なことは分からないがセントアメリアで緊急の事態が起こっていそうな様子が伺える。

 診療所からの要請で患者宅へ往診に向かうゾーイ。そこに居たのは人ではない異形のクリーチャーであった。そんなものを見たら普通の人なら半狂乱になってもおかしくはないが、叫び声一つ上げず、割と冷静な立ち回りでその場から逃走する。

患者宅のベッドに腰を掛けていたのは、明らかに人間ではない
患者宅から脱出してからの一言。精神が強すぎる

 ゾーイはサイモンと違いCRTVを所持していないため、敵の位置などはポケットベルか目視で確認しなければならない。さらに序盤は武器を一切持っていないので、ステルスでクリーチャーを回避して進む必要がある。

 そういった設計な分、敵の注意を引き付けるレンガや空きビンなどのアイテムが手に入る場面が多い。敵の聴覚は敏感なので、進行ルートの道を塞いでいるクリーチャーなどがいた場合は別の方向にビンを投げて音を立て、音に釣られていなくなった隙に進むといった奥深いステルスアクションが楽しめる。

空きビンやレンガはそれぞれ1つずつしか所持できないので、使いどころが重要

 環境ギミックとしてラジオなどが設置されており、これも空きビンなどと同様にラジオのスイッチを入れることでクリーチャーを誘導することができる。邪魔な敵を狙い通りに動かしていく感覚は、まるでパズルゲームのような面白さを感じられる。

 メディカルセンターに搬送された重篤患者の対応を医師のリモートのもと看護師のゾーイ1人で行うという場面も。電話越しの医師は指示通りにやるだけでいいと言うが、説明不足が過ぎるので治療室内のPCや資料を確認しながら措置を進めていく。

 計器のチェックからレントゲン撮影までもプレーヤーの手で行っていく。薬剤の投与などは患者の体重に合わせて量を決めるといったところまで妙にリアルに作り込まれている。

医療業務をしていくという、新しい謎解きの形だ
手順を間違えると医師からの叱責とともに何故かダメージを受ける

 的確な措置を行うとバイタルが回復し、重篤だったはずの患者が突然目を覚ます。息を吹き返したその人物はなんと“主人公であるサイモン”であった。ゾーイ編のエピソードは恐らく本編よりも過去の物語を描いており、サイモンとゾーイがどういう関係性なのか、ここから本編にどう繋がっていくのか、2つの視点と異なる時間軸から物語が紐解かれていくという形式は非常に面白い見せ方である。

ゲーム冒頭では全くの不明だった、サイモンとゾーイの関係性も明らかになっていくことだろう

 全体的に難易度が高めに設定されている本作だが、シリーズ定番の「裏世界」に突入するゲーム中盤あたりからクリーチャーはさらに凶悪な強さになっている。

 ここまでのクリーチャーはこちらに近づいてきて頭突きや殴りといった攻撃だけだったのだが、裏世界のクリーチャーなど後半の敵は胸から点滴の管のようなものを伸ばして遠距離攻撃を仕掛けてくるため非常に厄介だ。

 攻撃力や体力も格段に高くなっているので、裏世界ではより敵に見つからないようなムーブが重要になりそうだ。

裏世界は真っ赤に染まっており、不気味さに拍車がかかっている
攻撃力が高く、一撃食らっただけで体力の3割は消し飛んでしまう

 裏世界ではいろいろなクリーチャーに苦しめられたが中でも本当にトラウマ級だったのが、変異したメディカルセンターに現れる「ウェイト」だ。他のクリーチャーと比べるとかなりの巨体で、強力なピストルの銃弾すらものともしないタフさを誇っている。

 こいつのヤバイところは、捕まってしまうと“体力に関係なく一撃で殺されてしまう”という凶悪な性能をしている。さらに行動パターンも不規則で全く動きが読めない。そんなクリーチャーが駆け回っているエリアを探索するのは気が重いとしか言いようがない。

ウェイトの見た目のインパクトもさることながら、一撃死の攻撃を見たときは言葉が出なかった
無敵なのかは分からないが、温存していた銃弾を全弾ぶち込んでもピンピンしていた

 先に、クローゼットなどのエリアに逃げ込めば安全だと述べたが裏世界ではそのルールが通用せず、隠れる瞬間を見られたり、察しが良く開けられてしまったら容赦なく引きずり出されてしまう。当然、ウェイトに隠れているのがバレたら一発アウトだ。

 変異したメディカルセンターは極限の緊張とハラハラ感とゲームオーバーの連発で何度も嫌な気分になった。この鬱屈とするモヤモヤ感はホラーゲームファンなら1度味わってもらいたい。

逃げ込めば安全と余裕をこいていたときに扉をガラリと開けられて絶望した。裏世界に安息の地は無いようだ

ゲーム性は異なるが不条理で引き込まれる世界観は健在の新作「SILENT HILL」

 一人称視点に、2.35:1という特殊な画面比率も相まって、没入感と恐怖レベルが非常に高い作品となっていた。

 これまでのシリーズではクリーチャーは急に目の前に現れてプレーヤーを驚かせてきたが、それは瞬間的な怖さなだけでほとんどは近接武器による殴りで全て解決できた。しかし本作は武器の制限などもあり、力だけで切り開くことはできないゲーム性となっており、敵に見つからないように身を隠すハラハラ感と、敵の包囲を突破できたときの解放感。この緩急はこれまでのシリーズでは味わうことができなかった魅力である。

 筆者がステルスゲームがそれほど得意ではないというのもあり、かなり手強いゲームに感じた。しかし難易度設定も用意されており、下げることで敵の数が減り、敵の視界が狭くなり、性能も弱体化するのでストーリーだけをサクサク進めることもできる。

 ゲーム性は過去作とは大きく違えど「SILENT HILL」シリーズが持つ不条理で引き込まれる世界観は健在なので、ステルスゲームに苦手意識がある人や、いつもと違うゲーム性に不安を抱えている人にもプレイしてもらいたい1本だ。