インタビュー

「SILENT HILL: Townfall」開発者インタビュー

新要素のCRTVやシリーズ初の舞台となるスコットランドについても語られた

【SILENT HILL: Townfall】
9月24日 発売予定
価格:
7,480円(スタンダードエディション)
8,580円(デラックスエディション)

 コナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が9月24日に発売を予定しているプレイステーション 5/PC用サイコロジカルホラー「SILENT HILL: Townfall(サイレントヒル タウンフォール)」。

 シリーズとしては数少ない一人称視点を採用し、これまでのタイトルとはまた違った形の「SILENT HILL(以下、サイレントヒル)」となっている本作を試遊し、その様子は別稿にてくわしく紹介している。この試遊会に合わせて、本作の開発者であるKONAMIの「SILENT HILL」シリーズプロデューサー・岡本 基氏と、Screen Burnのライター兼ディレクター・Jon McKellan氏にインタビューを行うことができた。気になる質問を伺ったので、シリーズのファンの方は最後までぜひ読んでもらいたい。

「サイレントヒル」シリーズプロデューサーの岡本 基氏
Screen Burn ライター&ディレクターのJon McKellan氏

一人称視点を採用した「SILENT HILL: Townfall」

――「サイレントヒル」の過去作とは異なり一人称視点を採用していますがどういった理由からでしょうか?

McKellan氏:「SILENT HILL: Townfall」で一人称視点を選んだのは実はいくつかの判断に基づいており、主な理由は2つあります。1つはサイコロジカルホラー体験が重要だと考えていたからです。部屋が狭く、通りも非常に窮屈なこの密閉された環境では、そうした特徴を活かすためにこの視点が適切だと感じたのです。

 そして2つ目は、CRTVのゲームプレイがアイデンティティに関する多くの問いを掘り下げることに焦点を当てているからです。そのため、キャラクターが見えない一人称視点にすることで、物語の曖昧さを少し高め、ゲームのテーマ性をより際立たせることができると考えました。

【SILENT HILL: Townfall | 発売日発表トレーラー】

――長編としては初の主観視点の「サイレントヒル」ですが、「SILENT HILL: The Short Message」で培われたノウハウなどはありましたか? また、どういった部分で「サイレントヒル」らしさを出そうと考えたのか教えてください。

岡本氏:開発会社が違うことと開発の時期も異なるため直接的にノウハウをやり取りしたということはなく、たまたま偶然「主観視点で作ってみよう」という発想に至った作品が、「SILENT HILL: The Short Message」と「SILENT HILL: Townfall」の2本あったというところです。

McKellan氏:「SILENT HILL: The Short Message」と「SILENT HILL: Townfall」に直接的な接点はなかったため、Screen Burnのチーム全員、皆さんと同じ新鮮な気持ちで(「SILENT HILL: The Short Message」を)プレイしていました。

 今作の主観視点についてですが、主観でないとできない要素としては、CRTVというデバイスのゲーム性かと思います。この使い方は主観視点でなければ実現しえない機能であったと感じております。

 それ以外についてですが、主観視点になるとゲーム性において変わったところが出てくるかと思いますが、シリーズ作品らしい雰囲気だったり、演出だったりというところを心がけていますので、「サイレントヒル」らしい作品に仕上がっているのではないかと考えております。

本作の一人称視点は、サイコロジカルホラー体験とCRTVのシステムの両方に適した作りになっているようだ

――本作の初報は2022年10月頃だったかと思いますが、開発はいつ頃から動いていたのかについてと、初期から大きく変わった点などがあれば教えてください。

岡本氏:開発期間に関しては具体的に申し上げられないですが、2022年より前だったとお考えください。

 初期から変わったことというと、本当の初期の段階ではCRTVがなかったので、初期のプロトタイプの段階でScreen BurnとKONAMIでゲームを評価する中で新しいアイデアとして生まれてきたということです。

McKellan氏:おっしゃる通り、2022年に発表された作品ではありますが、当初KONAMIのチームに提案したプロジェクトの内容から大きく変更しておりません。むしろ、どういった作品を作ろうとしていたか、どういった物語を描こうとしていたかを基本的な指標として常に心に留めており、開発が進む中で当初1番最初にKONAMIのチームに共有した内容から大きく変わってしまっていないか、逸脱していないかを常に注視しながら開発を続けておりました。

開発初期から大きな変更点はなかったようだが、最初期はCRTVは無かったのだそうだ

――「SILENT HILL 2」のリメイク版や「SILENT HILL f」とそれぞれ全く違う作品になっていますが、岡本さんが考える「サイレントヒル」シリーズのコンセプトを教えてください。

岡本氏:「サイレントヒル」を新しく制作するにあたって、場所ではなくて、現象であったり、ストーリーのコアの価値などを「サイレントヒル」として定義付けています。サイコロジカルなストーリーということが共通点で、それ以外のゲームプレイ要素であったり、場所・ロケーションは変えても問題ないだろうというのが私のプロジェクトの考え方になります。

タイトルによって作風がガラリと違うのも特徴的だった。画面は上から「SILENT HILL: The Short Message」、「SILENT HILL 2」、「SILENT HILL f」
「サイレントヒル」の定義を明確にしつつ、様々な切り口で新作をプロデュースしてきた岡本氏。今後も1年に1本程度を目標に複数のチームと組んで作っていきたいともコメント

新要素の「CRTV」など本作ならではの要素について

――戦闘をしてみて、これまでの作品よりもクリーチャーが手強いと感じましたが、今作は敵を倒して進むというよりはステルス重視のゲームバランスになっているのでしょうか?

McKellan氏:本作はプレーヤーの取れる行動や手段が複数あるかと思いますが、その中の1つとしてステルスだけではなく、直接近接武器で戦ったり、他の武器を使ったりと様々な選択肢が与えられているかと思います。

 例えばステルスの場合はもう少し注意深く観察しながら立ち回るということも可能になるかとは思います。様々な選択肢がある中でプレーヤーがその状況にもっとも効果的である手段をゲームの中で模索しながら、どうすればこの局面をうまく切り抜けられるかを色々試していただければと考えております。

正面から戦うか、ステルスで戦闘を回避するか、状況に応じて最善の選択をとるのが大事になりそうだ

――今回、ラジオがCRTVに変わった狙いについて教えてください。着想を得たきっかけも伺えますでしょうか。

McKellan氏:開発の最初期は通常のラジオで、この段階では実際にダイヤルを回してチューニングしたりという機能は存在していました。しかし、Screen Burnの命題としては“いかにラジオというものを受動的なものではなく、積極的に活用できるものにするか”という課題を掲げておりました。このため単に音が出るだけでなく、映像を見る視覚的な「CRTV」というデバイスにすることによりストーリー上の演出での使い方や、ゲーム性への組み込みなど、様々な可能性が爆発的に増えたというように感じております。

 これに加えてナラティブだったりステルスだったり、様々なゲーム性に積極的に活用できるようになったと考えております。

 また、Screen Burnが手掛けた過去の作品にも垣間見えているかと思いますが、古いアナログ技術を扱うことがあり、VHSのような一昔前の技術をこうして扱ってみると、チームとして1番性に合っているように感じました。

――CRTVで新しい遊びが増えているとのことですが、CRTVでなければ絶対に成立しなかったというようなシーンを1つ伺えますか?

McKellan氏:CRTVの存在自体はかなり初期の段階から構想があったため、本作のあらゆる演出やゲーム性はCRTVの機能を前提に作っているところがかなり多いかと思います。そのためCRTVでなければできないものという意識というよりは、このデバイスをどのように活用できるかという観点から見ていることが多かったと考えております。

クリーチャーの位置の確認や謎解きのヒントを得られたりと、あらゆる場面で活躍するCRTV

――古いガジェットにこだわりを感じますが、それはなぜかというのと、それが「サイレントヒル」とどういう相乗効果を生むと考えていましたか?

McKellan氏:Screen Burnチーム一同にとってアナログの少し古いガジェットや技術というのはかなり大事で思い入れのあるものではあるんですが、こういったものを採用していくのは、ノスタルジーという部分と絡んでくるんです。ノスタルジーとか古いものは、自分が昔触れてきたものだから懐かしい気持ちが芽生えると思うんです。チームとしては懐かしさやノスタルジーでユーザーの心を掴んだ上で、その気持ちをあえて逆手に取るような演出を心がけております。

 作品の中ではアナログ技術って今の感覚だとちょっと不安定でイマイチ信用しきれない、頼りないところがあると思いますが、そんなアナログな機械にすがることしかできないという状況を作ろうと考えておりました。

CRTVでは敵のいる方角が確認できるのみで、距離や向いている方向までは分からない。このちょっと不便な部分も恐怖を演出している

――本作は赤と黒が印象的に使われていますが、こちらの色を選んだ理由はあるのでしょうか?

McKellan氏:赤と黒という2色をなぜ使ったかというと、もちろんこの色が1番良い色だからという理由はもちろんあるんですけど、ゲームを進めていくとサイモンにとってこの2つの色が象徴的でかなり重要であるということがナラティブの中で繰り広げられていきます。物語を進めればなぜこの2色が象徴的に描かれているのかは自ずと見えてくると思います。

本作の裏世界は、赤と黒に染まった不気味な世界となっている
試遊会の会場も、本作の裏世界を見事に再現していた

スコットランドという舞台は「サイレントヒル」に非常に適した環境だった

――本作の舞台がスコットランドになった理由を教えてください。

岡本氏:「サイレントヒル」は様々なディベロッパーと仕事をすることが多いと思うんですけど、世界各地のチームと仕事することでいろんな地域の文化やカルチャーが混ざった新しいサイコロジカルホラー体験を提供できると思っています。

McKellan氏:スコットランドは生まれ育った土地で、自分たちがもっとも馴染み深く描きやすい環境です。そのため、より緻密に納得のできる仕上がりになりました。そして、プレーヤーから見た際に説得力のある舞台設定を作るため、自分たちが最も慣れ親しんで熟知している環境であることが大事だと考えておりました。馴染みのない土地を作ろうとするよりは、プレーヤーに事細かく見せたいものを見せられるような環境を作るために、スコットランドを選ばせていただきました。

――馴染みのあるスコットランドを凄惨な「サイレントヒル」の舞台にすることに対して、物語を描く上で意識したことはありますか?

McKellan氏:皆さんご存知かどうか分からないですが、スコットランド周辺は霧が深くて、そういう日に実際に外で写真を撮ると「今我々がいるのは『サイレントヒル』だな」という気持ちになることが度々あります。なので霧の中でクリーチャーが跋扈している「サイレントヒル」に非常に適した環境であったというように考えております。

――霧が濃いのがスコットランドの特徴とのお話ですが、作中で他にもスコットランドらしさが出ている部分はありますか?

McKellan氏:実は結構いろいろな要素を散りばめておりまして、例えば本作の序盤にあったゾーイの家の謎解きで良い例があります。当時スコットランドでは、電力はチャージ式のカードを使わないと電力が供給できませんでした。やや古い要素なので、若いチームメンバーからすると「本当にそうだったの?」ってピンとこないようなものもいくつか取り入れております。

 他にも家屋の中の様子、台所のレイアウトやデザイン、家具の大きさだったり、屋内の様々な部分も含めてスコットランドらしい光景をかなり細かいところまで散りばめています。

霧に包まれた景色や家の中など、随所にスコットランドのリアルが散りばめられている

――今回はUFOエンディングがあるのかについてと、マルチエンディングに対するゲームデザインのスタンスを伺えますでしょうか。

McKellan氏:UFOエンドがあるかについてはこの場では回答は控えさせていただきますが、本作では確かに隠しエンドがあります。具体的にどういうエンディングなのかは是非ゲーム本編で到達したときの楽しみと捉えておいていただければと思います。

 エンディングの到達についての補足なのですが、単純な2択で決まるものではなく、それまでのプレーヤーの行動の集大成によってどのエンディングに到達するのかが影響します。自分のたどってきたゲーム体験にふさわしい腑に落ちるような結末になるように自由度を設けています。

岡本氏:メインのエンディングに関しては1周目からどのエンディングでも到達可能になっています。隠しエンディングはニューゲームプラスで到達できるようになっているので、どちらかというと従来の「SILENT HILL」や「SILENT HILL 2」などに近い構造です。そのため「SILENT HILL f」のようにメインのエンディングを全部見るためには2周も3周もしなければいけないというゲームではありません。

ゲーム全体を通して、プレーヤーの選択が結末に影響するようだ

――Screen Burnはこれまで中小規模のゲームを手がけてきたと思いますが、その知見やノウハウが「サイレントヒル」という世界的な人気のあるIPにもたらした視点や影響などがあれば教えてください。

McKellan氏:Screen Burnの過去11年間にわたるスタジオの経歴を考えると、例えば「Stories Untold」(2017年発売のアドベンチャーゲーム)などでは物語性とゲームプレイをうまく融合させるというのをずっと意識していましたが、これが最も本作に影響を与えたのではないかと考えております。

 過去の作品においても、何かが起きた場合は必然的にナラティブに関連するように制作していますので、ただゲームを進行するための仕掛け、ゲームの進行上の障害という単純なものではなく、ゲーム内で描かれるもの・演出されるものは全てそのナラティブと直結しているという構造を心がけてきました。おそらくこの部分が本作においても非常に大きな知見になったのではないかと考えております。

Screen Burnが得意とするノスタルジックな雰囲気は本作にも盛り込まれている

――「SILENT HILL 2」にあった自身に向き合うようなストーリーと、初代「SILENT HILL」にあったような町に隠された真実に迫るような話があるなと感じましたが、本作に込めた想いをお聞かせください。

McKellan氏:本作を実際にプレイしていただいて感じてほしいのは、実際に自分がサイモンの立場に置かれた場合はどうするか、自分であればこの状況下に置かれて何を感じるのか、実際に自分はどういう行動をとるのかという部分を強く意識していただければと考えております。

――ありがとうございました。