レビュー
「ELDEN RING」DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」レビュー
これぞ「エルデン」のDLC! すべての敵が強い、絶望感にシビれる冒険再び
2024年6月18日 23:00
- 【ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE】
- 6月21日 発売予定
- 価格:4,400円~
2023年2月28日に発表された「ELDEN RING」追加コンテンツ「SHADOW OF THE ERDTREE」。ついにそのDLCの発売日が6月21日に差し迫っている。
本稿では、このDLC「SHADOW OF THE ERDTREE」のプレイレビューをお届けする。基本的にネタバレはしないような内容になっているが、まっさらな心で新しい地での冒険を楽しみたい、という人は事前にご注意願いたい。
また、世界観についての一端が知れるフレーバーテキストなどは、本稿では敢えて触れていない。プレーヤー各位で発売日以降に確認してもらえれば幸いだ。
まずはDLC解放条件などの事前情報をおさらい
内容の紹介に入る前に、DLCに関する事前情報をあらためてチェックしておきたい。本DLCの解放条件は、本編の中で「星砕きのラダーン」と「血の君主、モーグ」を撃破していること、となっている。特に周回プレイヤーの場合、1周目で倒していても、プレイしている周回で倒していなければ条件を満たしたことにならないので、注意が必要だ。
DLCエリア「影の地」へは、「血の君主、モーグ」を倒した後、モーグと戦った場所にある、繭から伸びた腕を調べる事で転送される。
DLCを適用していると、繭の前にレダというNPCが現れている。このNPCがいるかどうかで、「影の地」へ行けるかどうかが判断できるかと思う。なお「星砕きのラダーン」と「血の君主、モーグ」を倒しているのにレダがいない場合、パッチがきちんと当たっていないことなどが考えられる。その際は、マシンの再起動やダウンロードリストなどを確認してほしい。
今回はPS5版でプレイしたが、筆者もこの現象が起きた。PS5版の場合、ホーム画面の「ELDEN RING」を選択してオプションボタン→ゲームコンテンツ管理→「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」インストール→ゲーム再起動で解決したので、参考にしていただきたい。ちなみに、DLCのサイズは16.51GBだった。
「SHADOW OF THE ERDTREE」は、「ミケラ」の足跡をたどる物語が中心となっている。また時間軸は本編と同じであり、影の地の過去、そして女王マリカの過去が描かれる。
下記には、「SHADOW OF THE ERDTREE」公式サイトに掲載されている文章を引用しておく。なお、ミケラがどんな人物であるかは過去記事でも紹介しているので、合わせて参考にしていただきたい。
影の地
黄金樹の影に隠された地
神たるマリカが、降り立った場所
そして、謳われぬ戦い、粛清の地
メスメルの火に焼かれた場所
だから、ミケラは影の地に向かった
その黄金の身体も、力も、宿命も
全てを棄てた
ミケラは待つ
約束の王を
これらを踏まえたうえで、さっそく「影の地」へと足を踏み入れてみよう。
DLCエリアを探索開始、そして即訪れる死
影の地へと向かった、筆者の褪せ人。目の前に広がるのは、以前公式から公開されたスクリーンショットと同じ、ヴェールのようなものを纏った黄金樹だった。
そして筆者の画面に表示されたのは、「墓地平原」の文字。なるほど、白くふわふわとした何かが描かれていると思ったが、これは”墓”だったのだ。
とりあえず、すぐ目の前にあった祝福に光を灯す。周囲に無数にあるこの墓は、「メスメルの火に焼かれた」者たちの墓なのだろうか……。
――と、そんな感慨に耽るのも一瞬。いきなり筆者は死んだ。そうだ、このゲームはそんな物思いに耽っている時間など、許されていなかった。いつどこから、強敵が襲い来るかわからないのだ。
この時も、周囲の景色にふらふらと見惚れながら歩いていたら、いきなり襲われた。どこから現れたのかもわからない、そしてこちらの体力を一瞬で奪ってくる、凄まじい強敵だ。
影の地には、初めて見る敵ばかりがいる。改めて気を引き締めて進まなければならない。
そんな風に誓ったばかりでありつつ、見つけた小さな霊廟らしき場所にふらっと足を踏み入れたところ、今度はボス戦「孤牢の騎士」との戦いになってしまった。
今回、ひとあし先にプレイさせてもらったということもあり、当然ながらソロプレイである。しかも「孤牢の騎士」戦では、遺灰も使用できなかった。まったくの1対1の戦い。なかなかに厳しい戦いが、褪せ人を待ち受けていた。
ちなみに、この「孤牢の騎士」は完全スルーも可能なボスだと思われる。筆者もたまたま見つけたといったところで、DLCのメインストーリーからは外れたところにいる。
しかし、こういういきなり出会う謎のボスなどを一体ずつ地道に倒していくのが、本作の楽しさである。「ここはなんだか怪しい」と思った場所は探索してみたり、マップの隅々まで回ってみる。まさに「ELDEN RING」のプレイ感だ。
また、影の地ならではの探索要素として、「ミケラの十字」がある。ミケラの十字とは、ミケラが影の地に残した足跡のようなものであると思われる。近寄ってミケラの十字を調べてみると、「我が肉体を削り、ここに棄てる」と刻まれていた。
基本的にミケラの十字はメインストーリーを進めていけば見つかるように見えたが、DLCエリアはかなり広いため、筆者の探索が行き届いていないだけのことも十分有り得るだろう。本作の世界観を深く知るためにも、ミケラの十字の箇所には気を付けておきたいところだ。
串刺し公、メスメルとの戦いでは心が折れかけた
DLCエリアに入ってしばらくして、筆者は自分がこれまで愛用してきたキャラクターを棄てた。正確には「産まれ直し」でステータスを再振り分けして、装備を全面的に見直したのだ。
まず、ボスだけに留まらず、雑魚敵も凄まじい勢いでこちらのHPを削ってくるため、生命力の値を上げた。そしてどの敵もこちらの強靭をゴリゴリ削ってくるので、強靭度が大きく上がる「大山羊」シリーズの防具を一式着込んでも中量になるくらいまでに、持久力を上げた(攻撃力に関しては、筆者の場合、技量をメインに上げているのはそのままである)。
これは筆者の腕前が明らかに足りていなかったせいでもあると思うが、ソロで進めていくためには大山羊シリーズの強靭度をもってしても、相当に厳しい戦いを強いられたためである。後述するが、影の地では2つの「加護」が適用され、攻撃力やダメージカット率が上がっているはずだが、それでも厳しい戦いとなった。
もちろん、ソロプレイヤーのためにNPCの召喚キャラクターは存在する。遺灰もある。しかし、必ずボスの前でNPCが呼べるとは限らないし、ボスエリアで遺灰が召喚できるとは限らない。
そして、NPCが呼べても、遺灰を召喚できても、エリア攻略の難易度及びボスの難易度はいずれもなかなかに鬼畜で、相当回数死ぬことになるだろう。
特に筆者を苦しめたのは、前述の通り大山羊シリーズの強靭度すら玩具のような、敵の強靭削りである。闇雲にガードしていても勝てない。回避すべき攻撃と、ガードで受け止めるべき攻撃を、うまく見定めなければならないと感じられた。
その一番のお手本になるようなボスが、途中で待ち受ける「串刺し公、メスメル」であろう。トレーラーなどでは大きくフィーチャーされていたが、メスメル公はラスボスではなく、道中で立ちはだかる大きな壁のような存在だ。
メスメル公にたどり着くまでにもたくさんの強敵が筆者の前に立ちはだかってきたのだが、言ってしまえば筆者の貧相な腕前でもいずれも10回程度死んだらやがては勝てた敵だった。しかし、メスメル公はそうはいかなかった。
メスメル公の火が影の地を焼いた、とあるように、彼は炎の使い手だ。この炎系攻撃の範囲が、とにかく広い。筆者は刀での出血をメインに戦っていたので、遺灰を呼び、NPCも呼び、とにかく出血を狙って手数を稼ぐのが主な戦い方となるのだが、俊敏な動きで隙の少ないメスメル公を前に、「心が折れそうだ……」と呟かずにはいられなかった。
実際に彼をどのように攻略していくのかは、各プレーヤーのプレイスタイルによっても変わるだろう。それに、ここで本作の軸を担うメスメル公の攻略を語るのも無粋なので今回は割愛させてもらうが、もちろん大山羊シリーズの装備が必須、というわけではないはずだ。
ただ、メスメル公は本作のメインストーリーを進めていくにあたって、絶対に超えなければならない壁のひとつで、DLCという新たなコンテンツを攻略していくためにも様々な学びを得る場なのだと感じられた。
メスメル公相手に死んだ数を正確には数えていないが、20~30回くらいは死んだように思う。霧を抜けた直後にいきなり死んだこともあった。筆者が開幕直後にすぐ写し身の遺灰を呼ぶせいもあったと思うが、ここで呼ばないと呼ぶ隙を作りにくいのである……。
その他の箇所でもゴリゴリに削られるメンタル
先日公開された、先行体験会のレポート記事では「神獣獅子舞」や「双月の騎士レラーナ」についても紹介されているが、もちろんこれらのボスも一筋縄ではいかない。
しかし神獣獅子舞はひとつひとつの動きがとても大きい反面、攻撃のタイミングも比較的見極めやすい。
それよりも筆者が苦戦したのは、「双月の騎士、レラーナ」だった。この戦闘ではNPCが2人も召喚可能で、そこに写し身の遺灰もプラスして、合計で3人もの助っ人を呼べるので、最初に対峙するまでは「余裕じゃん」と鼻歌混じりの筆者であったが、こんなにたくさんの味方がいても、全然削れないボスのHP。出血が入っても入っても、終わらないバトル……。二刀流から繰り出される剣戟、中距離~遠距離を維持していても魔法で範囲の広い攻撃をしてくる、隙らしい隙がないなど、「ザ・騎士オブ騎士」といったタイプのボスだった。
もちろん、メンタルを削ってくるのはボスだけではない。
先程雑魚敵も強いという話を少しだけしたが、今回特に厄介だと感じたのは「メスメル兵」だ。いわゆる普通の兵士なのだが、凍結こそ付いて来ないものの、戦技「霜踏み」にも似た地面を踏むような範囲攻撃をしてくる。これがこちらの強靭をごそっと削ってきて、食らったらほぼ怯んでしまう。そこに致命を入れられてしまうなど、雑魚が全然雑魚ではないのである。
またメスメル兵は2人組などで行動していることが多く、これもまた厄介。しかも、ローリングしたら落下死するようなところに2人組で巡回していたりする。筆者はこのDLCをプレイし始めて15時間ほど、一度も落下死をしたことがなかったのだが、まさかメスメル兵2体を相手に突如落下死の罠に陥るとは思わなかったというくらい、何度も落下死する羽目になってしまった。
だが、複数で登場する厄介なメスメル兵を相手に、あの戦技が再び最強の座に還りついた。そう、もちろん「霜踏み」である。
メスメル兵に地面を踏まれる前に、まず霜を踏む。一気に複数の敵にダメージを入れられるし、数回当てれば凍結が入りゴリっとHPを削ることができる。余裕があれば神獣獅子舞から手に入れた神獣霜踏みを使いたいところであるが、通常の霜踏みでもなんら問題はない。
ここにきて再び霜踏みにこんなにも感謝する日が訪れるとは……。ありがとう、霜踏み。筆者は永遠に霜踏みと共に生きていきたいと思う。もちろん、あくまで筆者の場合なので、霜踏み以外の戦技を使っていっても良いだろう。
厄介な雑魚敵は、まだまだ他にもいる。
見ただけで「あー、これは強そう……」とわかる、少々大き目サイズな雑魚敵などがそれだ。この大き目サイズな雑魚敵らは、ボスと同じような強さを誇る。何回も死ぬだけではない。一体倒すだけで「緋雫の聖杯瓶」が底をついてしまうくらいだ。しかも、そんな大き目サイズの雑魚が、祝福から祝福までの間に何体も出てきてしまうのだから、時には泣きながらダッシュして、次の祝福まで駆け込むことも考えなければならない。戦略的強行進軍である。
筆者が今回DLCに挑んだデータはレベル165(武器は+25まで強化済み)ほどなので、火力によってもまた変わってくる部分はもちろんあるのだろうと思うが、ヒリついた難易度を楽しむにはちょうど良いレベルだと感じられる。
DLC発売までもうあまり時間がないが、DLCエリアはルーンも稼ぎやすいので、無理に急いで既存エリアでレベルを上げようとするよりも、DLCエリアで稼ぐのも良いのではないだろうか。
黄金樹の輝きが失われた世界を彷徨う
影の地では、新たな強化要素として2つの「加護」を見つけることができた。「加護」は、「影樹の破片」と、「霊灰」のふたつで、これらのアイテムを祝福から使用すると、影樹の加護はキャラクターの、霊灰の加護は各種霊灰及び霊馬の攻撃力・カット率を高められるのだ。しかしどちらも影の地でしか効力を発揮しないため、どんなに強化をしてもDLCエリア外では適用されない。
まずはこれらのアイテムを積極的に探し、影の地での探索を少しでも楽にしていきたいところだ。と言いつつ、実際のところ影樹の加護をかなり強化しても、露骨に強くなったという感じはあまりしていない。実際、DLCエリアに降り立ってから、まだまだ探索が行き届いていないとはいえ、影樹の加護も霊灰の加護も、見つけられるものは見つけて進めてきたが、雑魚敵相手にも死ぬし、ボス相手にも死ぬ。
雑魚とは呼べないくらい強い雑魚敵もいる。現時点の筆者の力では倒せなかったので、雑魚に分類されるのかがわからないような敵もいる。そのひとつが、火を操る巨人だ。
この巨人は、主にオープンワールド型フィールドの様々なところに出現する。なんなら、影の地に足を踏み入れた途端から、いる。なので何回か挑んでみたのだが、全くHPを削ることができず、足で踏まれたり、とんでもない威力の炎攻撃を食らって即死したりと、全然敵わないのが現状だ。
果たしてこの巨人こそ、一度倒したらもう復活しないタイプの強敵なのか? はたまた、おまえも復活するのか? そもそもこの強敵に手を出したところで、それに見合うだけの報酬があるのか? そんなことすら、まったくわからない。
この巨人に関しては、例えばマルチプレイで複数人で挑めば倒せるのかというと、そういうレベルでもないようなほど絶望的な強さだった。でも、影の地にあるのは絶望ばかりではない。影の地は全体的に陰鬱な雰囲気漂うエリアが多いのだが、例えば、「ラウフの古遺跡」というエリアでふと空を見上げてみると、浮かぶ月と、どこか儚げな色の青空が広がっている。
黄金樹から発される黄金の輝きは素晴らしいし、まさに「ダークファンタジー」というジャンルに相応しいおどろおどろしい空気にも惹かれるのだけれど、空に青があるとどうしてこんなにも胸を打たれるのだろう。
影の地の青空は狭間の地で見る青空よりも、どこか心細いような寂しさを感じさせられる。それでも、すっきり綺麗に「わぁ!」と手を打つ青空ではなくとも、「苦労してここまで進んできたなぁ」という感慨に耽ることができた。
そして本作で、月はしばしば象徴的に登場する。レナラの満月。ラニの暗月。筆者個人的には、これを「生」と「死」の象徴と考えている(「双月の騎士、レラーナ」の名前にも月がある)。空に浮かぶ月を見て、影の地でもまたこのような考察を進めていければ嬉しいな、とぼんやりと思いを馳せた。
ついつい、心が折れそうなところにばかり気が行ってしまう作品だが、景色を楽しんだり、考察を楽しんだりと、様々な楽しみ方をしたいところだ。
DLCエリアでは、新たに登場するNPCたちも多くいる。彼らは一癖も二癖もありそうな上に、「きっと何か分岐するに違いない……」と感じるような場面も見受けられ、2周、3周と楽しめそうな雰囲気を感じられた。
新たな地での物語も、また我々を虜にするのは間違いない。筆者もまだまだ広大な影の地の一端に触れただけに過ぎないのだろうと思う。実際、ほぼ新作をプレイしているのと変わらないようなボリュームを感じた。この地でどんな出来事が待ち受けているのか、楽しみに待っていてほしい。
最後になるが、「久しぶりにプレイする」という人は、配信日の前に操作感を思い出しておくといいだろう。加えて、筆者のように「産まれ直したい……」と感じる場合もあるので、「雫の幼生」は念のため用意しておくと安心かと思う。それでは、良い旅を……。
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