レビュー
「Goat Simulator 3」レビュー
前作から魔改造的な進化を遂げ、笑えてちゃんと遊べる作品だ!
2022年11月17日 00:04
- 【Goat Simulator 3】
- 開発元:Coffee Stain Studios
- 販売元:PLAIO
- 11月17日 発売
- 価格
- 通常版:4,378円
- 限定版「GOAT IIN A BOXエディション」:10,670円
無敵のヤギがフィールドを所狭しと暴れまくり、時にはラグドール化してぐったりと転がりまわる。さらにその辺りにいるNPCやオブジェクトを舐めたり、舌で引きずり回すこともできる。ついでに発電機に体当たりして感電することも、ガソリンスタンドをド派手に爆発させて吹き飛んでいくことも、花火と共に遠くに発射されることもあるが、無敵なので全く問題なし……。
それが今回ご紹介する伝説の「ヤギ」シミュレーター「Goat Simulator」の続編「Goat Simulator 3」だ。プラットフォームはプレイステーション 5、Xbox Series X|S、PC。ちなみにGoat Simulator “2”は存在せず、なぜ存在しないかも本当のところは明らかになってない……が、多分深い意味はなく単なるジョークなのだと思う。そう、本作はタイトルからしてジョークの塊なのだ。
筆者も発売直後に前作をプレイし「これはゲームというよりもジョーク作品だな」と思ったので、本作もきっと「新しいアクションができるようになった、新しいエリアが追加されてフィールドが広くなった、そういったジョーク作品なのだろうな」とある意味で油断して本作のレビューを引き受けたのだ。
だが本作をプレイして感じたのは「意外とまともにゲームになっている……?」ということだ。これは素直な褒め言葉である。筆者も様々なゲームのレビューをしてきたが、「どうかしている!」方面ではなく「むしろ真っ当」というある意味ダイナミックすぎる期待の裏切られ方をしたのは正直はじめてである。
本稿では、期待通りの部分は残しつつ、期待以上の傑作(奇作?)になっていた本作のレビューをお届けしたい。
なおPS5パッケージ版については製造スケジュール遅延のため発売日未定となっている。ご注意いただきたい。
ハチャメチャなヤギアクションで遊べ!
「Goat Simulator 3」は伝説のヤギシミュレーター「Goat Simulator」の(言ってみれば)正統続編だ。無敵かつ、運動能力が非常に高く、現実世界のあらゆるヤギの常識から外れている、伝説のヤギ「ピルゴール」が主人公のヤギシミュレーターである。つまりはヤギのシミュレーターという公式のジャンル名そのものがギャグなのだが、本作に真面目にジャンルをつけるならオープンワールドのサンドボックスアクションゲーム、といったところだろうか。
前作の「Goat Simulator」はゲームジャムという短期間でお題に従ったゲームを作る、という社内イベントで作られたゲームを元に開発されており、ゲームボリュームはそれほどではない。そもそもがゲームジャムという即興開発なので非常に粗があるが、その粗が面白いゲームだった。
前作をプレイしてから本作に関する一切の情報を遮断していた身としては、今作も「同様のボリュームは少ないが、ハチャメチャなヤギのアクションが楽しめる、ギャグ要素メインのゲームだろう」と高をくくっていた。その甘い予想を良い意味で裏切られたのが本作だ。
プレイして最初の感想が「あれ、普通にオープンワールドのアクションゲームになっているのでは……?」という印象だ。ワールドはかなり広くなっており、ちゃんと「マップ」を開く機能もある。マップを開くとフィールドはいくつかの島に分かれており、のどかな牧場から、ハイキングを楽しめそうな山岳部、イベントが行われているビジネス街もあれば、超巨大な人物像があるエリアまでバリエーション豊かな姿を見せてくれる。
広大なマップには様々なクエストが用意されており、クエストを達成すると新しい装備やポイントが獲得できる。ポイントを集めるとアンロックされる要素があったり、収集アイテムを集める遊び方や、ミニクエストのようなものでポイントを獲得し、そのポイントで装備を買うこともできる。装備にはアビリティが付与されているものもあり、獲得すると新しいアクションが可能になり、別のクエストなどでも役に立ったりする。
アビリティがない状態でも様々なアクションが可能で、3段ジャンプのようなアクロバットや、車や自転車に乗ること、電線やフェンスの上をグラインドして移動などができ、広大なマップでも移動に対するフラストレーションは一切感じることはなかった。ちゃんとオープンワールドゲームらしくファストトラベルもある。よくできているなぁ……って、そんなに真面目でいいのか「Goat Simulator」よ。
その上マルチプレイにも対応しており、今回は試せていないが最大4人で街を暴れまくる機能も搭載されていると聞く。あれ、「Goat Simulator」ってそんなゲームだっけ……?
パロディとジョークの山を見て笑い飛ばせ!
律儀に本作のプレイサイクルを伝えるなら、「オープンワールドを探検してクエストをクリアし、要素をアンロックしていくのが目的のゲームだ」となるのだと思う。意外とちゃんとゲームしてるじゃないか、という印象はここから来ているのだが、本作の真髄はそこではない。
プレイを進めていくと、本作の真髄はやっぱり「笑う」ことにあると思う。ハチャメチャなクエストでも笑えるし、パロディとジョークの山でも笑える。笑った点を挙げるとそれだけでかなりの数になるのだが、たとえば以下のような感じだ。
最初に笑ったのは、ゲームのイントロ部分。カートに載せられ他のヤギと共に運ばれながら、運転手はブツブツと主人公に話しかける。……状況的に「どことなく『The Elder Scrolls V: Skyrim』のような印象を受けるな」とは正直思ったが、ベタベタすぎてさすがに考えすぎだろうと筆者は考えていた。だがシーンの最後に、この運転手が「このスカ○リムカートから降りろ」とあからさまなパロディであることを打ち明けてきたとき、そのベタ具合に思わず笑ってしまった。恥も外聞もない「Goat Simulator 3」に対して、「初っ端からやってくれるじゃないか」とむしろ尊敬の念を抱いたのが筆者のストレートな印象だ。
またNPCが砂浜で作っている砂の城を壊し、新たな城を作るというクエストがあった。目的そのものがすでに非道で笑ってしまったが、さらに笑ったのがその後だ。クエストをクリアすると新たな城が出来上がり、その入口から謎のエリアにワープにできるのだが、どう見ても「カウンターストライク」シリーズに登場するマップ「DE_DUST2」だったのだ。
しかもそのまま、「Aサイトを守れ」というクエストが発生。実際には敵キャラクターがポップアップするだけで、銃撃戦が始まったりFPS化することがなかったのは残念だが、往年のFPSゲーマーならこのマップを見ただけて笑ってしまうと思う。FPSネタで言えば「Wolfenstein 3D」のようなエリアもあったりして、その仕込み具合からして筆者が気づいていない(細かすぎる)パロディ要素は相当にあるのだと思う。
ほかにも、プレイ中はNPCが乗っている車を強奪することが可能だ。もうこのプレイ感はGTA(Goat Theft Auto)と言っても差し支えはないだろう。車に乗ってジャンプできるスロープもあり、そういったレース的やりこみ要素&小ネタは随所に仕込まれている。グラインド移動も様々なゲームに登場するアクションではあるが、そのスピード感から筆者は「Sunset Overdrive」のようなフィールを感じた。
進化はしているが「Goat Simulator」らしさは健在なのだ
「Goat Simulator 3」は色々なゲーム要素を取り入れて意外なほど“ちゃんとしている”が、「Goat Simulator」ではなくなっているかというとそうではない。ちゃんとファンの期待を“分かっている”印象だ。
まず主人公のヤギは不死身である。何をしてもゲームオーバーにならない。燃えても、感電しても、溶岩の海に落ちても全く問題ないし、すごく強いて言えばなんらかの理由で動作不能になったり、マップの外に出てしまうとゲームが進行できなくなったりするが、メニューからワンボタンでリスポーンできるので動作不能バグも一切問題ない。このゲームオーバーを徹底して排除するストイック(?)な仕様は前作と変わらない。
またワンキーでラグドール化してグッタリもできるし、そのまま地面をゴロゴロしたり、坂を転がり落ちることもできる。人やオブジェクトを頭突きして吹き飛ばしたり、舐めたり、吸引力抜群の舌で引っ張ることもできるし、「Goat Simulator」らしさは健在なので、前作ファンでも安心して遊べる。
頭をハシゴに突っ込んだまま登っていくという前作にあったシュールなモーションなどがなくなっていたのは残念だが、そのくらいは些細な事だ。とにかく「笑える」という点に関しては正当進化とも言えるし、変にまともで魔改造的な進化とも言える。
今年のGOTY(Goat of The Year)を総ナメ(ヤギだけにね!)すること間違いなしの本作。ぜひ飲み物を口に含みながら、プレイして欲しいと思う。
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