レビュー
「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」レビュー
不思議な世界観から目が離せない! 現実世界と夢の世界から真相に迫るアドベンチャー
2022年6月22日 00:00
- 【AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ】
- 6月23日 発売予定(Steam版は6月25日 発売予定)
- 価格:7,480円
スパイク・チュンソフトによる新作アドベンチャー「AI(アイ): ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」が6月23日に発売となる。本作は現実世界と夢の世界を行き来しながら、右半身と左半身に分けられた遺体が突如としてなぜ現われたのかについて迫っていく。不可解なストーリーは捜査の過程を踏むことで段々と明かされることになるが、その道中には新要素の「鍵則(きそく)」や「抗性意識体」など様々な壁が待ち受けていた。
また「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」は、2019年に発売された「AI: ソムニウム ファイル」の続編にあたるタイトルとなっており、今回筆者は前作を未プレイの状態で本作をプレイした。前作のストーリーなど事前情報なしで何も知らない状況からプレイしている。今回はその世界観と感じたことなど魅力をお伝えしたい。
不可解すぎる事件を追うストーリー
本作の主人公は「みずき」と「龍木」の2人だ。2人は警視庁の特殊捜査班「ABIS(アビス)」に所属する捜査官を務めている。みずきは前作にも登場する人物で、今回は主人公の1人となっている。
本作のストーリーは6年前に現われた遺体の右半身、そして現代に突如として現われたその遺体の左半身の謎を中心に展開していく。現代と6年前の事件があまりにも不可解な状態でつながっている。その不思議な事件を現代と6年前の両方から解いていく。
序盤は2つの時間軸をベースに物語が進む。6年前の主人公が龍木、現代の主人公がみずきとなっている。2人にはパートナーの眼球型AIの「アイボゥ」と「タマ」がともに捜査をしてくれる。
リアルの世界と夢の世界(ソムニウム)を行き来して真相に迫る
本作では現実世界での「捜査パート」と、怪しい人たちの夢の世界に潜入して真実を探り出す「ソムニウムパート」を行き来しながら事件の真相に迫っていく。
主人公たちは参考人など怪しい人たちの夢の中に入れる「Psyncer(シンカー)」という特殊な能力を持っている。これにより、Psync(シンク)装置を使って夢の中を探ることで、より正確な情報を手に入れることができる。
捜査パートでは現場にいた人たちに聞き込みをしたり、現場検証をしている捜査官たちに状況を教えてもらうことで、情報をどんどん集めていく。また現場に足を運び周りを調べることで、状況をより掴むことができるようになっている。
時には「アイボゥ」や「タマ」の能力を使って現場や人物をX線で透過したり、ズームして調べたり、嘘発見器のようにサーモグラフィを使う。さらには、怪しい人を瞬間的にPsyncして、相手の思考を読み取る「Wink Psync(ウィンクシンク)」を駆使してより綿密に捜査を進めることができる。
捜査パートと対をなすソムニウムパートは、前述したPsyncという装置を使って参考人たちの夢の中に入り重要な情報を探しだすことになる。こちらのパートでは主人公のみずきや龍木ではなく、2人のパートナー「アイボゥ」や「タマ」といったAIたちを操作することになる。
ソムニウムパートでは6分間という制限時間が設けられており、移動や調べることや選択肢を選ぶと時間がどんどん消費されていく。ただ、選択肢を選ぶ際には「Timie(タイミー)」というアイテムを消費することで時間消費を抑えることもできる。「Timie」は3つまでしかストックすることができず、別の人物のソムニウムパートに持ち越すこともできない。うまく「Timie」を使いながら捜査を進めていく必要がある。選択肢ごとに消費される時間も異なるので、どの「Timie」を使うかよく見極める必要がある。
また、参考人の夢にはさまざまな仕掛けが用意されている。ここには参考人が重要なことを思い出すことを邪魔している障害「メンタルロック」が存在。さらに今作からの新要素として、参考人それぞれの夢の中だけで成立するルールの「鍵則(きそく)」、参考人が絶対に触れられたくない記憶をガードする「抗性意識体」などがプレーヤーに立ちはだかる。
「メンタルロック」は何重にもかかっていることが多く、1つ解いては次のロックを解くために進むという形になっているため、制限時間を確認しながら解いていくのはドキドキする。
また「鍵則」は、序盤においてはほぼ伏字の暗号文のような状態で表示される。このソムニウムパートをクリアするのに重要な情報がたくさん詰まっているのだが、いろいろなものを調べたり選択肢を選ぶことで公開されていくので、あまりに時間が切羽詰まった状態の時は、思い切ってスルーして何とか進めるのも1つの手だと感じた。
「抗性意識体」は解除しない状態で触ってしまうと制限時間をゴリゴリと削られてしまう存在だ。そのため、解除するまでは絶対に触らないことをお勧めしたい。
そしてソムニウムパートでは「深行度」が表示されている。こちらは「メンタルロック」を解除したり、新しい発見をするなどプレーヤーの行動によってどんどん進んでいき、最深部まで進行することでその人物の真相にたどり着くことができる。制限時間を気にしながらもいろいろ調べたり、最適な選択肢を選んで「深行度」を進めてほしい。
ストーリーと捜査とソムニウムが絡み合う不思議だけど目が離せない世界観
本作をプレイしていて感じたのは、ありそうな日常とあまりに奇怪な事件という温度差がプレーヤーに対し困惑とわくわく感を与えてくれることだ。
捜査パートでは自身で調べて聞いて情報を集めていく。その情報を「アイボゥ」や「タマ」とともに整理して1つ1つ真相へとたどり着いていくのは、普通の捜査ゲームとしても十分すぎるほど楽しい。
そこにソムニウムパートで参考人の夢の中に入ることでより確定的な情報を得て前に進むという行程がとてもおもしろいと感じた。
そして何より夢の中に入る人物によって、その世界の構造もルールも何もかも違うというのが新鮮だ。当たり前と言われるとそうなのかもしれないが、実際目の当たりにすると非常に興味深い。
捜査パートやソムニウムパートだけでなく、本作はストーリーが特に練り込まれている。事件発生時には「どう頑張っても無理ではないだろうか」と思うことも、様々な人たちの話を聞き、実際に調べることでキチンと謎が解けていくのがとてもおもしろい。そして1つ謎が解けたと思ったらまた新たな謎が出てくる。その緩急がとても絶妙で止め時がわからなくなってしまうほどだった。
そして登場人物たちのキャラクターの多彩さもストーリーを際立たせていると感じた。事件関係者だけでなく、一緒に捜査をしている上司や鑑識官、ほかの刑事に至るまで、全体的にユニークなキャラクターが数多く存在する。ちなみに筆者が特に好きなのは怖い顔と色白さと、ぼそぼそとしたしゃべり方がミスマッチすぎて印象に残った刑事の「牛寺」さんだ。
今回は途中までしかプレイできなかったが、とにかく続きのストーリーが気になる。また今回の体験では2人ほどしかソムニウムパートで夢の中に入ることができなかった。これから見る人たちの夢の世界は一体どんな世界なのかもとても興味がそそられる。
本作はとにかくそのストーリーと捜査パート、ソムニウムパートから織りなす世界観から目が離せない。新しい感覚を味わうことができるゲームと言っていいと感じた。また、筆者は前作を未プレイだったがキャラクターや世界観をしっかりと説明してくれるため物語に没入できた。むしろ前作にも非常に興味が沸いてきている状態だ。この世界観と新しい感覚は是非とも一度味わってほしい。
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