【特別企画】
アドベンチャー界の旗手 打越鋼太郎氏の作家性にフォーカス
「AI: ソムニウム ファイル」シリーズ最新作の発売前に「ZERO ESCAPE」など過去作たちを振り返る
2022年6月17日 00:00
- 【AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ】
- 6月23日 発売予定(Steam版は6月25日予定)
- 価格:7,480円
主人公とAIのバディが夢と現実を行き来し、近未来的な捜査方法を活用しながら事件の真相に迫る新作アドベンチャー「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」が6月23日に発売となる。
本作は2019年に発売された「AI: ソムニウム ファイル」の続編で、およそ3年の時を経てリリースとなるアドベンチャーゲームだ。第1作「AI: ソムニウム ファイル」では、主人公の伊達鍵とAIのアイボゥのコンビが難事件に挑むストーリーが展開された。今作では新たな主人公としてみずきが抜擢。彼女は前作でストーリーのカギを握る人物になっていたが、最新作では成長したみずきとAIのアイボゥによるバディが「ハーフボディ連続殺人事件」の解決を目指すことになる。
前作では真犯人が近くに潜んでいるかもしれないという不気味さがありつつ、伊達とアイボゥが展開する謎のノリでプレーヤーをすかさず笑わせるという盛りだくさんな内容になっていた。シリアスなストーリーかと思いきや笑えるポイントも満載で、ラストにはしっかりと伏線を回収し、様々な展開を入れつつも破綻しない作りになっている。
さて、本記事ではそんな「AI: ソムニウム ファイル」シリーズのシナリオを手掛ける打越鋼太郎氏にフォーカスしていく。打越氏は「ZERO ESCAPE」シリーズをはじめとする様々なアドベンチャー作品を手掛けるクリエイターで、もうすぐ発売の今作においても引き続きシナリオを担当する。緊張感あふれるシナリオや作中の設定など、本シリーズも“打越氏らしさ”が溢れるストーリーが展開される。そこで今回は過去に携わってきた作品から、「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ」までを紹介していく。
打越氏がこれまでに携わってきた作品たちに迫る!
現在、トゥーキョーゲームスに籍を置くシナリオライターの打越鋼太郎氏は、数々の作品を世に送り出してきた。シリーズ作品が多数展開されている恋愛アドベンチャー「メモリーズオフ(KID、現在はMAGES.)」の初期作品や、サスペンス要素を取り入れた「infinity(KID)」シリーズ、さらにはアドベンチャーゲームと脱出ゲームを組み合わせた「ZERO ESCAPE」シリーズなど、日本のアドベンチャーゲーム業界を牽引する人物だ。
最近の作品としては2019年に「AI: ソムニウム ファイル」、2020年にサスペンスパズルアクション「ワールズエンドクラブ(イザナギゲームズ)」が発売となった。
ここでまず紹介したいのは「Ever17 -the out of infinity-(KID)」についてだ。本作は2002年にドリームキャストおよびPS2用恋愛アドベンチャーとして発売された。前述した「infinity」シリーズの第2作で、ゲームとしてはテキストベースのアドベンチャー作品になっている。
本作の醍醐味はなんと言ってもシナリオが生み出すトリックにある。ストーリー上で主人公たちは「LeMU(レミュー)」と呼ばれる巨大海洋テーマパーク内に閉じ込められ、食料や酸素の減少、さらには水圧によって崩壊する施設など、限られた時間の危機的な状況に立ち向かうことになる。謎が謎を呼ぶ展開など、今なお非常に高い人気を誇るビジュアルノベルになっている。発売から約20年が経過したタイトルだが、プレーヤーをあっと言わせるトリックは今もなお色褪せない魅力がある。
打越氏のキャリアを代表する作品の1つ「ZERO ESCAPE」シリーズについて
そんな打越鋼太郎氏を紹介する上でハズせないのが「ZERO ESCAPE」シリーズである。3つの作品からなる本シリーズは、第1作となる「極限脱出 9時間9人9の扉」がニンテンドーDS向けに2009年に発売された。
「極限脱出 9時間9人9の扉」では、大型船に閉じ込められた9人のキャラクターが9時間以内に9つの扉を開けて脱出を目指す。登場人物たちは腕に数字が書かれたバングルがつけられており、これら数字の組み合わせによって扉の先へ進めるか否かが分かれるなど独自のルールが存在。閉じ込められた空間や時間制限といった要素など、緊張感を生み出す舞台装置やシチュエーションがプレーヤーを待っている。
「ZERO ESCAPE」シリーズ全体としては登場人物との情報共有など、物語が大きく進むアドベンチャーパートと、室内をくまなく探索し仕掛けを解く脱出ゲームパートが存在し、様々な手がかりを元に物語の真相に迫る。それぞれゲームとしてのジャンルが確立されている2つのパートを組み合わせた作品になっており、極限状況の中で仕掛けを解けたときの達成感はゲームならではだ。
これらの作品は打越氏が生み出すトリックが光る内容となっており、終盤にかけてあっと驚く展開が待ち受けている。「Ever17 -the out of infinity-」や「ZERO ESCAPE」シリーズのシナリオは、閉鎖された空間や制限時間などプレーヤーを焦らせる要素によって物語の中へと引き込む力がある。それによってまんまと打越氏の仕掛けに引っかかるのである。
進化しつつ打越氏らしさも持つ「AI: ソムニウム ファイル」シリーズ
「ソムニウム」シリーズのストーリーは、1作目、2作目共に奇抜な方法でターゲットを殺害する犯人を追う。AIの力を借りつつ状況証拠を探す「捜査パート」と、対象者の夢の中へ入り手がかりを見つける「ソムニウムパート」を中心としたゲームプレイで、これら2つのパートを行き来しながら事件の真相に迫る。
本シリーズの第1作目となる「AI: ソムニウム ファイル」はPS4やSwitch向けに発売され、全編なめらかな3Dで描かれるなどハードの性能を活かしたビジュアルになっている。さらに、「ソムニウムパート」では精神世界のような不気味な空間、さらには様々な選択肢の中から制限時間内に手がかりを見つけ出す必要があるといったルールは、打越氏ならではの要素になっているのではないだろうか。
また、「ダンガンロンパ」シリーズを手掛ける小高和剛氏との対談インタビューでは、ゲームシステムについてのこだわりに関して質問された際に「毎回新しいことを考えている」と回答。さらに、ゲームを作る際にはストーリー上のオチを最初から考え、そこに対しどう向かっていくかを考えているとした。発売を目前に控えた「AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ。打越鋼太郎氏が手掛ける今回のストーリーではどんな仕掛けやエンディングが待ち構えているのだろうか。
□「『ZERO ESCAPE』シリーズ×『ダンガンロンパ』シリーズ 2大クリエイターによる対談企画 第3回」のページ
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