PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー
トゥームレイダー
多彩な武器を使いわけ、様々な状況を戦い抜け!
(2013/4/24 12:00)
「新たな漂着者の中に凄腕の女がいる」。先住者の中にこういった声が広がり始める。敵の警戒は厳しくなっていくが、ララは恐れない。そして次々と彼らを倒し、目的を達成していく。ララは弓に加え、拳銃、アサルトライフル、ショットガンを使いこなしていく。素材を集め武器を強化していくと、戦いは有利になるが、ゲームが進んでいくと敵も手強くなる。
武器は様々な能力を付与できるようになる。火矢を撃てるようになったり、原始的なオノがピッケルになり、格闘武器として使用可能になる。ピッケルを入手するとタイミングを合わせれば強力な近接攻撃ができるようになる。銃器と接近攻撃を組み合わせるようになると、かなりエキサイティングな戦闘が楽しめるようになる。
単純に物陰に隠れて撃ち合うというだけでは本作の戦闘で勝つのは難しい。なぜならば、敵はララの行動によって攻撃方法を巧みに変化させてくるからだ。同じ場所にとどまれば攻撃の精度があがり、隠れていてもダメージを受けることになる。まずは弓での奇襲や、敵が1人の時を狙って背後からの近接攻撃を行なうなど敵に気づかれない方法で数を減らしていくのがいい。また動き回るのも有効だ。建物を上り、高台に移動すると敵は追いかけてくる。こちらを追って上ってくる無防備なところをショットガンで仕留めるといった戦い方も有効だ。
また、弓は今作におけるララを象徴する武器で、火矢を放って様々なものに火をつけたり、矢の後方にロープをつけて撃ち、そのロープを伝って移動したりと戦闘以外のツールとしても頼もしい。ゲームが進むと移動の幅も広がっていく。マップも複雑になっていくが、ララの能力をフルに使って走破していくのが楽しい。
時には崩れる足場を駆け抜けるなど素早い判断を求められる時がある。アクションゲームだとこういった場面では難易度がかなり高くなり、何度も失敗を繰り返すことになることも多い。しかし、「トゥームレイダー」はプレーヤーの心に焦りを生じさせながらも、しっかりと先に進むためのヒントも与えていくところに、かなりゲームバランスを調整していると感じた。
巨大な岩が崩れたり、渡っている橋がどんどん崩れたりと、地形がダイナミックに変わるなど演出も派手で、危機を乗り越えた時大きな安堵感と達成感が得られる。冒険活劇に欠かせない要素をとてもうまく表現している。
歴史ロマンたっぷりの探索要素。これこそが「トゥームレイダー」!
トレジャーハンターの気分を満喫できるのが「シークレットトゥーム」の存在だ。本作には直接ストーリーに関係ないが、島の謎に深く関わる遺跡が存在する。ゲームを進めていると、「近くにシークレットトゥーム」というメッセージが出る。また、遺跡の入り口には注意を惹く壁画が描かれている。その奥を進んでいくと遺跡にたどり着く。
シークレットトゥームは1つの大がかりなパズル要素が鍵となっている。嵐が吹き荒れる場所での強風を利用したパズルや、重いオブジェクトを使って“てこの原理”を利用するものなど様々なものがあるが、それらの仕掛けをクリアすると宝物に到達できるのがいい。
こういった仕掛けを利用した謎解きは、これまでのゲームでは同じような仕掛けを何度もクリアさせたり、ゲームの中に強制的に組み込んだりして変に時間をかけさせるものも少なくなかった。本作は、特にこのシークレットトゥームの“謎を1つに絞る”という割り切り方は新鮮に感じた。もちろん提示される謎は簡単ではない。インスティンクトでアクセスできるオブジェクトを探し、試行錯誤して解いていく。解いた時の達成感は大きい。
各エリアには収集できるアイテム数があらかじめ表示されており、「トレジャーマップ」を見つけることができればその位置もわかる。宝物(レリックなど)を地図でマーキングすればインスティンクトで正確な位置もわかるので、次はそこに行くにはどのルートをたどればいいかを探していくこととなる。
レリックなどのアイテム収集は本作のやりこみ要素であり、ララの能力をフルに使うための“目標”でもある。ストーリーをクリアしてからも挑戦できるので、じっくり取り組んでいきたい。「印籠」や「中国の壺」などこの島に漂着した人達のドラマを感じさせるものが多く、島の歴史や、持ち主達のその後を考えさせられる。
宝物を前にした時のララの表情や、考古学者ならではの考察は、生き残りを賭けて戦うララとは少し違った雰囲気がある。歴史のロマンに思いを馳せ、宝物が発見できた喜びと歴史の真実に近づいていく興奮を感じさせる。ララは間違いなく「考古学者」なのだとプレーヤーに感じさせるところが楽しい。
もちろんメインのストーリーも多彩なシチュエーションが盛り込まれており、ぐいぐいと引き込まれる。シークレットトゥームや宝物に目もくれず一気にストーリーを進めるという人もいるだろう。ララは漂着した先住民達の正体を知り、彼らがどのように暮らしているかを知ることになる。そして、彼らの“本当の目的”が明らかになっていく。また、卑弥呼の謎にも深く切り込んでいくことになる。そして島の恐ろしい秘密が明らかになっていく。
個人的には満足感のある作品だが、シングルプレイに関してはボリュームが足りないと感じる人もいるかもしれない。これは極力引っかかったり、プレイが止まったりすることのないヒントの出し方と、丹念にバランスを取った結果だとも感じる。ボリュームと快適さのバランスは個人によって大きく異なるところもあるだろう。
また、演出というところでAAAタイトルとしてみると少しだけ地味かもしれない。画面に釘付けになる、ストーリー展開で激しく感情が揺さぶられ、のめり込むというところで、もう1歩踏み込めるのかなとも感じた。あえて加えるなら、ララのモデリングは開発者が意図しているのはわかるのだが、もう少しかわいらしさを強めても良かったのではないかなあと感じた。
気になる部分を上げてみたが、筆者は本作が大好きだし、開発者の制作姿勢に共感している。エキサイティングなアクションとコンバット、極限状態に置かれた人間達のドラマ、独特の考察による世界の形成と、様々な要素で練り上げられている作品である。何よりも丁寧にララの人物像を構築しているのが楽しい。多くの人に本作をプレイして欲しいし、「トゥームレイダー」の今後の展開にも大いに期待したい。