PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー

トゥームレイダー

ララの“強さ”に導かれ、邪馬台国の謎に迫る
継承と新生、宝探しの楽しさに満ちた痛快アクション

ジャンル:
  • サバイバルアクション
発売元:
開発元:
  • CRYSTAL DYNAMICS
プラットフォーム:
  • PS3
  • Xbox 360
  • WIN
価格:
7,980円
発売日:
2013年4月25日
プレイ人数:
1人
レーティング:
CERO:Z(18歳以上対象)

 待望の「トゥームレイダー」がついに明日発売される。シリーズの“新生”をコンセプトに、ララ・クロフトの“目覚め”を描いた作品だ。筆者は2011年のE3ではじめて本作に触れ、これまでと全く異なる、血と泥に汚れ、もがき苦しみながら生き抜いていくララの姿に衝撃を受けた。そして2年間、新しい情報が出るたびに「早く本作をプレイしたい」と強く願ってきた。その思いがようやく叶った。

 実際にプレイしてみると「トゥームレイダー」はシリーズの魅力を色濃く受け継ぎ、そして快適にプレイできる、とても楽しいアクションアドベンチャーであることが実感できた。ララのアクションが楽しい。襲いかかってくる敵に様々な武器で立ち向かうのが楽しい。そして探索と発見が楽しい。なにより「トレジャーハンター」気分をたっぷり味わえるところがたまらない。シリーズファンにも、初めての人にも強くオススメしたいタイトルだ。

 「トゥームレイダー」は弊誌ではファーストインプレッション発売直前体験レポートでゲームの基本要素と感触をお伝えしている。そこで今回はさらに踏み込んだ形でプレイで得た感触や、ゲーム要素を伝えていきたい。

姿を現わす卑弥呼の力。この島からは逃げられない!

ララは仲間を助けるために自ら危険に飛び込んでいく
サムは日本人の血を引いており、卑弥呼に強い興味を持っている
浮世絵風の壁画。ちょっと“卑弥呼”とは合わない雰囲気だ

 「トゥームレイダー」は後に世界的な女冒険家として知られるようになるララ・クロフトの最初の冒険を描く。彼女は邪馬台国と卑弥呼の謎を解き明かすため、常に嵐が吹き荒れるという日本近海にある魔の海域「ドラゴントライアングル」を目指す。しかしそこで嵐によって船は真っ二つに裂け、ララと仲間達は島に漂着する。

 その島は太古の昔から様々な船や飛行機が漂着する場所だった。その島は先に漂着した者達が独自の社会を築いており、組織と暴力で島を支配していた。彼らは漂着したララの仲間に襲いかかってくる。過去に捕らえられた者達は謎の儀式で生け贄にされるなどむごたらしい目に遭わされていた。彼らの目的がわからないまま、ララは先住者達と戦い、生き残る道を探していく。

 武器を取り、先住者達を撃ち倒しながらララは進んでいく。ララはこれまで父親のように彼女を助けてくれていたロス船長さえも守り、彼の代わりに敵が占領している電波塔を目指す。この島は日本軍のものと思われる軍事施設などもあり、電波塔で無線を増幅すれば救助が呼べそうだ。

 敵を排除し、SOSを発信することに成功すると、それに応えて海域を捜索していた飛行機がくる。しかし次の瞬間、黒雲が突如現われ、飛行機に雷を浴びせる。そして飛行機は墜落してしまう。ララは確信する。この島には何か超自然の力が働いており、島に近づく者に害をなし、そして漂着した者達は出られなくなるのだ。伝説では卑弥呼は太陽の女王であり、「嵐の防人」と呼ばれる者達に守られ、嵐を操る力もあったという。この島の超自然の秘密は卑弥呼の謎に繋がっているのだ。

 この“超自然的な存在”がほんの少し、しかし決定的に姿を現わす演出にはぞくぞくさせられた。この後も日本人プレーヤーならば思わず声を上げてしまうような、日本の伝説的存在も出てくる。今回の「トゥームレイダー」では、日本の伝説や歴史を独特の解釈で取り入れており、しかもオカルト的味付けを“隠し味”で効かせている。超自然的存在を前面に出すと何でもありの荒唐無稽なものになってしまうが、本作は超自然要素は最小限にとどめている。しかし確実に“ある”ところが、物語に独特のロマンを与えている。

 この謎の島は日本の“裏の歴史”を物語る存在となっている。細かくは語られないが、島の遺物や様々なメモからも島の歴史が断片的に描かれている。島は外界から隔絶しているが、漂着者として様々な時代の人達が流れつき、その時代の影響を島に与えていることもわかるのだ。「この島は現在の日本人にとって、歴史の中で忘れ去られてしまったか、ひょっとしたら現在の日本政府も認識しているが隠しているのかもしれない」。こういった想像も楽しい。

 たしかにツッコミ所はある。卑弥呼の姿を象徴する像が、ずっと後の時代の仏像だったり、伝説を物語る壁画が浮世絵のタッチだったり、日本人だからこそ感じる違和感もある。本作のプレーヤーは、あくまでも架空の日本を舞台にした「ファンタジー」であることを念頭に置いて欲しい。しかしファンタジーである点を差し引いても、開発者が日本に興味を持ち、膨大な資料を集め、自分たちのストーリーにできるだけリアリティをもたらそうとしてくれていることはうれしく感じた。本作をプレイする人は、厳しく差異を指摘するのではなく、開発者の“努力”を評価して欲しい。日本をテーマにストーリーを組み上げたところは筆者はとても感心させられた。

 また、以前はララの感情表現に目を奪われ気がつかなかったが、今回じっくりプレイすることでララの強さに気がつかされた。ララは危険な状況に悲鳴を上げ、己の境遇に嘆き、冒険中に見せる表情は明るくないが、それでも“前進”をやめないのだ。気の弱い人ならば全てをあきらめうずくまってしまうような状況も、「オーケー」といって受け止め、何とか前に進む方法を見つけ出していく。

 やがて仲間を助けるため、謎の集団に立ち向かう意思をララが見せた時、プレーヤーはララの中の“ヒーローの資質”に気づかされるだろう。ララはこれまでも逃げるために戦っていたのではなく、生きるため自らの意思で前進していたのだ。だからこそ立ち止まることなく、自分だけではなく、仲間をも救おうとしている。

 プレーヤーはこれまでララの危機に対応して彼女を操作していたのではなく、生きようとするララの意思を応援していたのである。ララは変わるのではなく、目覚めていくのだ。ララは最初から決してか弱い存在ではなかったと気づけるこのストーリーと演出の手法には感心させられた。この気持ちは、ぜひ体験して欲しい。

【スクリーンショット】
突然の嵐に爆発する飛行機。超自然の存在を実感するシーンだ
様々な困難を経て、ララはその内なる強さを輝かせていく
様々なドキュメントから歴史の断片が見えてくる
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(勝田哲也)