「マフィア コンプリート・エディション」レビュー
マフィア コンプリート・エディション
“マフィアの時代”を男はどう生きたか。深いドラマを満喫できるクライムアクション”
- ジャンル:
- クライムアクションアドベンチャー
- 発売元:
- 2K
- 開発元:
- Hangar 13
- プラットフォーム:
- PS4
- Xbox One
- Windows PC
- 価格:
- 4,950円(税込)
- 発売日:
- 2020年9月25日
2020年9月25日 14:15
「マフィア コンプリート・エディション(以下、「マフィア」)」は、2002年に発売された「マフィア(Mafia: The City of Lost Heaven)」のリメイクである。グラフィックのテクスチャーを変更した“リマスター”ではなく、1から全てを作り直したリメイクである。
「マフィア」の舞台は1930年代、第2次世界大戦前のアメリカの都市・ロスト・ヘイブンである。禁酒法時代、禁じられた酒は闇世界の大きな資金源になった。潤沢な資金で武装したマフィアは、豊富な武装を得て、警察や政治家まで抱き込み大きな勢力を持った。そしてその力をさらに増すために他のマフィアと激しい抗争を繰り広げたのだ。
本作はそのマフィアをテーマにしたクライムアクションアドベンチャーだ。ロスト・ヘイブンの広大なマップを3Dグラフィックスで再現、プレーヤーは主人公・トミーとなってマフィアの一員として生き抜いていく。18年の年月が経っても、本作のストーリーは素晴らしい。生まれ変わり、より雰囲気の増したロスト・ヘイブンにぜひ旅立とう!
彼はなぜマフィアに入り、決別を願ったか……“マフィアの時代”を描く!
「マフィア」は、1人のマフィア・トミーが主人公である。彼はしがないタクシーの運転手だったが、怪我をした2人の構成員が無理矢理タクシーに乗り込んだところから彼の人生は変わる。いきなり追っ手との銃撃戦に巻き込まれ、必死にハンドルを握ることになる。
命からがら2人を送り届け、口止め料として大量の金をもらったトミー。しかしそれだけでは終わらなかった。追っ手がトミーの顔を覚えており、トミーのタクシーを壊し、彼自身も殴られる。必死に逃げた先はマフィアのドン・サリエリの拠点である「サリエリのバー」。トミーはサリエリに復讐を望む。……そしてトミーはマフィアとなった。
最初に出会った2人のマフィアはトミーの頼もしい仲間となる。お調子者のポーリー、冷静だが敵に捕らわれたり、怪我することが多い不運なサム。彼らと“仕事”をこなしていく中でトミーは頭角を現わしていく。みかじめ料の取り立てはもちろん、銃弾の雨をかいくぐり、暗殺を請け負い、裏切り者を追い……トミーの手はドンドン血に染まっていく。
筆者はインプレッションもレポートしたが、本作は冒頭に「トミーが裏切りを決意する」という衝撃的なオープニングから始まる。「マフィア」は彼がいかにマフィアとなり、裏切りを決意するかの物語である。「マフィア」は犯罪組織である。敵対マフィアとロスト・ヘイブンの支配権を争って抗争を繰り広げる。その戦いは市民も巻き込み、激しく、陰惨になっていく。
ただ、もちろん「マフィア」は暗いだけのゲームではない。ポーリーとサム、3人との友情が良いのだ。任務の前の軽口のやりとり、無事に仕事をやり遂げた後の会話。彼らは若く、命がけの仕事をくぐり抜け絆を強めていく。残酷性と気の良さが同居しているポーリー、真面目で情に厚い反面、冷徹さも感じさせるサム。彼らは友達であると共に、マフィアでのし上がるライバルでもある。この緊張感も、マフィアという世界を実感させる。
数あるエピソードの中で特に楽しいのが、「レース出場」のシーンだ。レース場で行なう賭けレース。サリエリのライバル・モレロはヨーロッパからレーサーを雇って出場する。トミーは前日にそのレースカーに細工をしたのだが、モレロはこちらのドライバーを傷つけてしまう。代わりのドライバーはすぐには見つからない!……トミーはサリエリの指名でレースに出場する。
「マフィア」の舞台は1930年代、クラッシックな街並みをクラッシックな車で走るのが楽しい。昔の車だけに操作性はわざと重くなっている。レースカーはスピードは出るものの最初はうまく制御するのも難しい。しかもコースもいくつか難しいコーナーがある。このレースミッションをクリアするには何度かやり直しをしなくてはならないが、かなり楽しいミッションだ。1930年と言えば車が大量生産されるようになってから十数年ほどしか経っていない時代だ。極めて初期のレースを体験できるのはとても楽しい。
「マフィア」はやはりその雰囲気が良い。ラジオから流れるのは当事のヒットソング。ゆったりとしたリズムの音楽に身をまかせ、レトロな街並みを進んでいくのがとても楽しいのだ。1から作り直されたグラフィックスは美しく、実際に1930年代の世界にタイムスリップしたような気分にさせられる。もちろんこの世界は筆者が生まれるよりずっと前の時代だか、どこか懐かしい、“郷愁”を感じさせられる。ここが本作の最大の魅力だろう。
レガシーさを感じるシンプルなゲーム性
「マフィア」のゲームシステムを紹介していこう。本作の基本はミッションクリア型のクライムアクションアドベンチャーだ。冒頭にゲームの目的が提示され、車に乗り様々な任務をこなしていく。サリエリの拠点にはトミー達のような“実働部隊”の他にも彼らをバックアップするスタッフがいる。
ちょっとノロマだが車両の知識と整備の腕はピカイチのラルフィー。野球バットからナイフ、ハンドガンにショットガン、さらには火炎瓶やダイナマイトまで準備するヴィンチェンツォ。彼らの元を訪れ、任務に必要な道具を受け取り、目的地へ赴くのだ。
任務は様々敵対ギャングの所に向かったり、ターゲットを尾行したり、暗殺のために建物の中に侵入したりもする。トミーは高い身体能力は持っているがその力は常人レベルのため、壁を上れたり驚異的なジャンプ力などは持っていない。アクションとしては比較的シンプルだ。
戦闘も基本は物陰に隠れて隙を狙って敵に弾を撃ち込むタイプ。ゲームの感触としてはレガシーな感じもするが、2002年版「マフィア」へのリスペクトとも言えるだろう。フィールドには体力が回復できる「救急箱」がありこれをこまめにとっていくことが重要となる。敵のダメージは大きめで、油断するとあっという間に倒されてしまう。照準を補助してくれる「オートエイム」をオンにすると、ゲームの難易度は下がる。この機能はオンにしておくことをオススメしたい。
車の運転では「速度リミッター」が重要な要素となる。敵の追跡や警察からの逃亡以外、例えば目的地までの移動するなど通常の運転の際には速度リミッターをオンにしておくことをオススメしたい。「マフィア」では警察は速度超過に厳しく、スピード違反をしていると目をつけられ任務に支障をきたす。車に乗ったらまず速度リミッターをオンにする、ということは心がけたいところだ。
「マフィア」は広大なロスト・ヘイブンを3Dグラフィックスで再現している。中華街やダウンタウン、郊外などもあり、路面電車や高架鉄道も走っている。こういった場所を細かくチェックするのも楽しいのだが、残念ながら「オープンワールド」としての楽しさはあまりない。
メインミッションはまさにストーリーをこなしていくだけでドンドン進行してしまう。ミッション以外の要素は後述する「フリーライド」の部分で、“寄り道の楽しさ”がないのは昨今のオープンワールドゲームと比べると寂しい。街の施設で食事したり、ミッション以外でポーリーやサムと遊んだり、デートをするなど「トミーの日常」を体験する要素も欲しかったところである。
ストーリーこそ最大の魅力。街中で様々なミッションに挑戦する要素も
繰り返しになるが、「マフィア」の最大の楽しさはストーリーにある。トミーはなぜマフィアを裏切ることを決意するのか、それをきちんと共感できるのは、やはり本作が犯罪者組織であるマフィアの恐ろしさをしっかり描いているからだ。
頼りがいがあり、魅力的な人物であるサリエリがふとしたことで見せる恐るべき凶暴さと酷薄さ。繋がりが深く見えながらも命の危険と不振が垣間見えるマフィア達の関係。それは絆を深めたトミーとポーリー、サムの3人の間ですら忍び寄る。
そういう緊張感と恐ろしさをしっかり書き、ラストに向かって突き進むストーリーはぜひ体験して欲しい。やはり「マフィア」は名作である。今回のリメイクで、本作がゲームの歴史に埋もれず、新しいプレーヤーが手にできるようになったことは1ファンとして喜ばしい。
本作ではメインストーリーの他、「フリーライド」と「カー・サイクロペディア」という要素がある。「フリーライド」はサリエリのバーで様々なミッションが提示されるゲーム性に特化したモード。ヒントが書かれたメモを頼りに目的地の「電話」を探し当てるとゲームスタートだ。
操作性のシビアな車を制限時間までの運び届けるミッションや、バスに仕掛けられた爆弾を作動させないために一定のスピードを保ち続けなくてはいけないミッションなど、ストーリーの枠を超えた様々なミッションが用意されている。バスのミッションの場合、車体の重いバスのことを考え、上り坂はさけなければならないなどかなりやりこみがいがある。
「カー・サイクロペディア」は、「マフィア」に登場するクラッシックな車のモデリングを楽しめる。車は車体や内装の色を変えたり、天井の幌を取り外したりとバリエーションもカバーしている。タダできればモデルとなった車の細かいストーリーなども読みたかったところだ。
ろうか。
生まれ変わった「マフィア」はキャラクターの表情や、セリフが豊富になり、ストーリーの味わいが一層増した。アウトローとしての楽しさ、マフィアの怖さ、そしてあの時代マフィアがどう生きていたかなど、様々な時代の流れを学ぶことができ、その世界にどっぷりと浸り込むことができる。ただやはり全体としてストーリーのボリュームが小さめなのは賛否両論だろう。
物語は全体として駆け足で、もう少し各キャラクターのエピソードや、ゲームとしての幅を見せて欲しかったと正直思う。しかし一方で不用意に新要素を足してこの味わい深いストーリーや、前作が持っていた良さを壊してしまうのかもしれない。開発スタッフが前作を大事に思っているからこそのボリュームだろうなとも感じる。
「マフィア」のストーリーと雰囲気はやはりとても素晴らしい。ぜひラストまでトミーのの決断まで物語を見届けて欲しい。そして本作を皮切りに、価格改定された「マフィアIII」、リマスターとなった「マフィアII」もプレイして欲しい。筆者は「マフィア」シリーズ」が大好きだ。ファンが増えてくれることを願っている。
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