「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」レビュー
Marvel's Avengers(アベンジャーズ)
ヒーロー達は必ず立ち上がる! スーパーパワーで大暴れできる“アベンジャーズゲーム”
- ジャンル:
- アクション
- 発売元:
- スクウェア・エニックス
- 開発元:
- Crystal Dynamics
- プラットフォーム:
- PS4
- Xbox One
- Windows PC
- 価格:
- 8,778円(税込)
- 発売日:
- 2020年9月4日
2020年9月4日 20:00
ついに発売された「Marvel's Avengers(アベンジャーズ)」。「トゥームレイダー」シリーズを手がけるCrystal Dynamicsが、マーベルコミックスのヒーロー達が集結する「アベンジャーズ」に挑むと言うことで筆者の中でもかなり期待の高かったタイトルだ。
弊誌では発売に先がけて行なわれたベータのプレイレポートを「インプレッション」、さらにヒーロー達の戦い方にフォーカスした「ヒーロープレビュー」で伝えている。本作はプレーヤーがヒーローになりきり、他のプレーヤーと協力して、あるいはソロで様々な戦場で戦うアクションゲームだ。ソーに、アイアンマンに、ハルクになりきって、彼らのパワーを思いっきり使って大暴れできるゲームである。
今回のレビューではこれまで体験できなかったストーリー部分の感想を語っていきたい。幾多のコミックで描かれ、映画では非常に壮大な物語が描かれた「アベンジャーズ」。本作ではヒーロー達がどのように描かれているかを紹介したい。多少ネタバレがあるので、前知識は欲しくないという人はぜひプレイしてから読んで欲しい。
結論から言えば「Marvel's Avengers」は、マーベルコミックでのヒーロー達の“人間性”に切り込む、グッと心を掴む物語が展開する。強大なパワーを持ち、人々から期待を一身に寄せられるヒーロー達でも思い通りに行かない、つらい現実に直面する時もある。しかしヒーロー達は立ち上がる。その心の強さこそが、彼らをヒーローたらしめているのだ。ぜひ多くの人にプレイして欲しい作品だ。
ヒーローへの憧れをたっぷり味わえ、ヒーローになりきれる作品
「Marvel's Avengers」では「ヒーロー達がいなくなる」という衝撃のオープニングからスタートする。作中ではヒーロー達はすでに有名な存在であり、「A-Day」というアベンジャーズが人々を招待するイベントが開かれる。ここでアイアンマンことトニー・スタークとジョージ・タールトン博士は新物質「テリジェン」を発表する予定だった。
テリジェンはその凄まじいパワーで空飛ぶ空母「キメラ」のリアクター(主動力)となっている。「A-Day」の会場はその空母の上だ。しかしそのイベントは最悪の悲劇を生んでしまう。何者かがテロ行為を起こし、キメラのリアクターを暴走させ、大爆発を起こしてしまう。そしてテリジェンが生んだ煙はサンフランシスコを覆い多くの死傷者が出ただけでなく、生き残った人々の中から突然変異体「インヒューマン」が生まれてしまうのだ
望まない特殊な能力を持った人々は社会に不安をもたらした。事故を生き延びたタールトン博士は「AIM(アドバンスド・アイデア・メカニクス)」を設立、機械の兵士達によってインヒューマンを管理しようとする。インヒューマンになってしまった少女カマラ・カーンは「A-Day」の秘密を入手したためにAIMに追われることとなる。インヒューマン達を狩り立てるAIMは間違っている! 彼女は事故の責任をとって社会から姿を消したヒーロー達を探し始める……。
「Marvel's Avengers」は“ヒーロー復活”の物語だ。鍵を握るのはカマラ。カマラはヒーローに憧れる女の子であり、彼女のヒーローへの想いがアベンジャーズの心に再び炎をともす。プレーヤーはカマラを通しヒーローが試練を乗り越える姿を目にしていく。この視点が「Marvel's Avengers」の物語に特別な楽しさをもたらしている。
ゲームは「A-Day」を楽しむカマラからスタートする。会場にはヒーロー達をモチーフにしたアトラクションがあり、カマラはそれを楽しむ。……そしてヒーローとの出会いがあるのだ。ソー、キャプテンアメリカ、ブラックウィドウ……カマラの前に現われる彼らの気取りのなさ、そしてカッコ良さ!
そしてヒーローが姿を消した後もカマラの想いは変わらない。「トニーのギターだ!」、「あのクインジェットに乗れるなんて!」……ヒーロー好きの、このゲームをプレイするプレーヤーとシンクロするミーハーぶりはとても楽しい。ゲームではプレーヤーはヒーロー達の力を思い切り使い敵と戦う。カマラもまた「ミズ・マーベル」となって戦うのだが、この「ヒーローファンの視点」が常にあるため、プレイしていてヒーローのカッコ良さだけでなく、いかにも言いそうな台詞や言葉のやりとり、ヒーロー達の過去のエピソードの断片など細かい部分でグッときてしまうのだ。「ああ、アベンジャーズのゲームって良いなあ」と思ってしまうのである。
こういった軽いノリはシリアスな物語に救いをもたらしてくれる。ヒーロー達は深い傷を負っている。彼らは社会に大きな被害をもたらし、自らの存在に疑問を持っている。その不安と怒りと戦いながら、自らの力を“良きこと”のために使おうとする。そしてカマラも心に葛藤を抱えている。彼女はヒーロー達の後ろ姿を追いながら「普通の人に戻りたい」とも思っている。AIMがもしそれを実現していたら……という想いを持ちながらもインヒューマンを弾圧する力に対し、“仲間を救うため”に戦うのだ。
「Marvel's Avengers」はその名の通り「アベンジャーズ」を満喫できる作品だ。ヒーローの力で思い切り敵と戦う爽快なゲーム性を軸に、ヒーローならではのエピソード、そしてインヒューマンとAIMという骨太のメインストーリーが味わえる。そしてさらにより深くヒーローを楽しみ、とことんまで楽しめる奥深さを持っているのである。
スキル、ギア、コスチューム。やりこむことで深く突き詰めていけるヒーロー
具体的なゲーム性を語っていこう。「Marvel's Avengers」は様々なミッションに多彩なヒーローで挑戦していく。メインミッションを進めていくことで、カマラ、ハルク、アイアンマンとプレイアブルなキャラクターが増えていく。
ゲームの根幹はミッションクリア型のアクションだ。プレーヤーはヒーローを選びフィールドに向かい戦いを繰り広げていく。カマラは手足を大きくして敵を弾き飛ばすし、アイアンマンはアーマーから様々な武器を出す。ソーは雷を身に纏い、ハルクは力任せにぶん殴る。「Marvel's Avengers」の最大の楽しさはここにある。プレーヤーは強力な力を持つヒーローを思いっきり大暴れさせられるのである。
ミッションは多彩だ。広大なフィールドを探索するもの。地下工場など施設内で展開するもの、目的のモノを壊すもの、巨大なボスと対決するもの……様々な要素が盛り込まれている。さらにミッションでは様々なサブミッションが用意されている。レジスタンスを救出したり、ギアやリソースを入手したりフィールドでやれることは多い。
ヒーローはそれぞれレベルがあり、ミッションをこなすことでレベルアップしていく。またヒーロー達はそれぞれ「スキル」がある。ヒーロー達には遠距離、近距離様々な攻撃方法がアリ、レベルアップすることで多彩な技が使えるようになっていく。
そして“ギア”である。各ヒーローは手や胴体など4箇所にギアを装着可能だ。ギアはミッション中の宝箱を開けることや敵などから入手できる。より良いギアを求めてミッションの難易度を上げて挑戦する、ということも可能だ。
さらにSHIELD.やレジスタンスの勢力ミッションやショップもあって、ヒーローのカスタマイズなど、最初は思わず目移りしてしまう。しかし「Marvel's Avengers」はメインストーリーを終えた後から本当のやりこみ要素が見えてくる。実は非常に奥深いコンテンツなのだ。
キャンペーンを終える前でも、その後の世界を描いた「アベンジャーズ・イニシアティブ」には挑戦できる。こちらはオンラインで様々なプレーヤーと共に戦えるコンテンツだ。ストーリーがキャンペーン後なのでできればキャンペーン終了後に挑戦したいところだ。そう、「Marvel's Avengers」は1つの物語で終わるのではなく、その後もアップデートが行なわれ、長くたっぷり遊べるゲームとしてデザインされているのだ。
ホークアイ、その弟子のケイト・ビショップ、さらにPlayStation専用にスパイダーマンと言ったヒーローの参戦はすでに予告されており、さらなるヒーローも参戦予定である。ミッションなども追加される予定だ。
「Marvel's Avengers」はオンラインで最大4人のマルチプレイができるが、プレーヤーが望むならとことんソロにもこだわることが可能だ。その場合は手持ちのヒーローがパーティーに加わる。戦っていると他のヒーローが様々なスキルを使って共に戦ってくれる。画面内でヒーロー達の共演を思いっきり楽しめる。「Marvel's Avengers」の魅力は、やはりここだろう。
今後さらに広がる「Marvel's Avengers」の世界
「Marvel's Avengers」はヒーロー達が“再集結”する物語だ。「A-Day」の後、彼らは世間からその身を隠している。カマラの想いがヒーロー達を再び立ち上がらせていく。ヒーロー達がどのように自分を取り戻していくかは見所の1つ。アイアンマンであるトニーはアーマーを破棄してしまっており、最初は間に合わせのアーマーで戦ったりもする。
そしてヒーローと対立するタールトン博士も大きくフォーカスされるキャラクターだ。彼もまたテリジェンの影響を受け新たな力を得ている。だからこそその力を制限し、ヒーロー達への憎しみを募らせているのだ。プレーヤーの立場から見れば彼は“悪役”ではあるが彼自身は悪人なのか? 物語の中で問われるところである。異なる正義のぶつかり合いという所も、今作では興味深いテーマだ。
筆者は「アベンジャーズ」は映画でハマったが、「Marvel's Avengers」は「アベンジャーズ」への愛に満ちた作品だと感じた。キャラクターの表現、セリフ回し、何よりストーリーからヒーローに憧れる気持ちが感じられる。マーベルコミックスのキャラクターを使ってオリジナルストーリーを紡げる、その開発スタッフの喜びが素直に感じられて、プレイしていて共感できる。とても楽しい作品である。
一方でちょっと荒削りかな、と感じる部分もある。敵の攻撃が激しくプレーヤーの視界外から撃たれることが多く、またキャラクターが入り乱れると状況がわからなくなりやすい。大きな体力の回復がアイテムからの取得というところも難易度を上げている。せっかくのヒーローなのに体力管理がシビアなのはバランスを調整して欲しいと感じた。
またアイテムボックスの取得など探索要素がヒントが少なく、わかりにくい。こういったバランスはオンラインマルチプレイを前提とし、わかっている人はすぐに解いてしまうだろう、と開発者が判断しているからかもしれないが、もう少しヒントを見やすくしたり、ゲーム内メッセージでわかりやすくして欲しいと思った。これらの点は今後のアップデートで改善されると思うが、本作は「アベンジャーズ」が好きなライトなゲームプレヤーも触るタイトルなだけに、難易度設定でもっと間口を広くしても良いのではないだろうか。
というのも「Marvel's Avengers」は多くの人にプレイしてもらいたいタイトルだからである。ミッションではオンラインで助っ人を頼むことも可能だ。ゲームが余りうまくない人でも心強いフレンドに助けてもらえれば進められるのではないだろうか。
「Marvel's Avengers」は発売して終わりではない。むしろメインミッションをクリアした後が本当の始まりと言える。「アベンジャーズ・イニシアティブ」に挑戦したり、ストーリーミッションを難易度を上げて進めたりすることでキャラクターを鍛え、より強力なアイテムを入手できる。そうしてとことんまでヒーローを育てていけるのだ。
本作ではやりこむことで特性を前面に出していける。とことんまで遠距離攻撃を強化する、というのは他のプレーヤーのフォローに最適のスタイルだ。接近戦特化のブラックウィドウなど、自分の思った方向性にキャラクターを育てることができる。そしてやはり今後続くこの世界に期待したい。すでにケイト・ビショップとホークアイはアナウンスされており、さらなるヒーローと、新しい物語は増えていく。
本作の開発はCrystal Dynamicsだが、オンラインゲームを多く運営しているスクウェア・エニックスのノウハウが活かされることも期待できる。どんな世界が広がるのか、本当に楽しみだ。
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