「Cuisine Royale」レビュー

Cuisine Royale

あれ? おもしろいぞ! ワッフルメーカーやフライパンで身を守るバトルロイヤルはテンポ抜群のTPSシューティングだった

ジャンル:
  • バトルロイヤル
発売元:
  • DMM Gmaes
開発元:
  • Gaijin Entertainment
プラットフォーム:
  • Windows PC
価格:
基本無料
発売日:
2020年8月20日

 DMM GAMESでなんだかすごいゲームがサービスを開始しようとしている。その名も「Cuisine Royale(キュイジーヌロワイヤル)」。

 本作はプレイステーション 4/PC用の、いわゆるバトルロイヤルTPSシューティング……なのだが、公式ホームページを見るとなんだか様子がおかしいぞ、と気づくだろう。

 「Cuisine Royale」の「Cuisine」は料理を意味する単語。その名の通り、本作は料理をモチーフにしたバトルロイヤルゲームなのだ。

 公式サイトにデカデカと書かれているコピーは「最後の1人を目指し、銃とキッチン用品で戦い抜け!」。説明書きには、「銃を拾い、お鍋やフライパンを身にまとって戦いましょう」。「不思議なスプレーで文様を描くことで罠を設置したり、ゾンビを召喚したりと様々な現象を引き起こすことができます」と書かれている。

「え? え? なんだこのゲームは!」

 これが一般人のごく普通の感想だろう。そして、あまりの訳のわからなさに興味を惹かれるはずだ。今回は、この謎のゲームが一体本当はどんなゲームなのかを、レビューしつつ紹介していきたい。

【Cuisine Royale Gameplay Trailer】

もともとはエイプリルフールに作られた嘘ゲーだった

 本作はもともと「War Thunder」のGaijin EntertainmentがDarkflow Softwareと共に開発している第二次大戦を舞台にした本格シューティングMMO「Enlisted」のスピンオフ作品として4月1日に発表された。そう、エイプリルフールだ。だが、予想を裏切る出来の良さに評判が評判を呼び、ついに単体のゲームとして発売。順当にアップデートを重ねていった結果、わりと面白いゲームとして世界的な地位を築きつつある。

変な装備で戦うバカゲーは、エイプリルフールに生まれた

 「Enlisted」は一人称視点でNPCやプレーヤーと戦うMMOFPSだが、「Cuisine Royale」はTPS視点の、最大40人で戦うバトルロイヤルであり、最後の1人(チーム)まで生き残るのがゲームの目的となる。Gaijin Entertainmentが独自に開発したDagor Engineで描かれる風景は美しくもリアルで、空気を裂いて響く銃撃音や、不気味に振動する車両の音など戦場の緊迫した空気感が音からも伝わってくる。ただ、そこに降り立つプレーヤーは、パンツ一丁なのだが。

美麗なグラフィックスで描かれた風景は、思いのほか軽い

予想を裏切るクオリティの高さにかなり驚く

 しかし、遊んでみると意外なくらい丁寧に作られていることに気付く。ゲームをスタートすると、ロビーはなく、すぐにマップ中のランダムな場所に出現する。全員揃ってから一斉に出現するのではなく、数名集まった時点でとりあえずマップに移動して、装備を整えている間に席が埋まっていく。全員揃うと、「ゾーン」というエリアが狭まり始めるというシステムなので、マッチングは深夜でもほとんど待ち時間がなく快適だ。

円形のゾーンが一定時間ごとに迫ってくる

 キャラクターの動作は、歩く、ダッシュ、しゃがむ、匍匐前進、身体を傾けての射撃など多彩で、射撃の時にはサイトをのぞき込むだけでなく、息を止めることで射撃の精度を上げることができる。マウスのホイールボタンを押し込めば、銃を持ったまま柄の部分で相手を殴りつける。

 建物はドアだけでなく窓を開けて出入りすることもでき、車の運転も可能だ。また、マップ上には、トーチカや高射砲台などもあり、設置型の機関銃を使うこともできる。

窓やドアはすべて片側ずつ開けることができる

 敵の位置は足音や銃撃音で知ることができるが、水たまりではパシャパシャ大きな水音がたつし、雪の上だとくぐもった雪を踏みしめる音になったりと、ネタゲーとは思えないリアリティがある。この辺りは、元となった「Enlisted」のクオリティが高いということだろう。

 グラフィックの品質も高いが、動作は非常に軽く、Ryzen 5 3600XにNVIDIA GTX 1070という筆者のミドルレンジ環境でも、常時120fps程度のフレームレートで動作していた。

 それと、本作には、全体を通して流れる謎のメキシコ感がある。待機画面のデザインからして、メキシコを感じるのだが、他にも装備できるマスクの大半がルチャリブレ風マスクだったり、最初にアンロックできるエモートが「アミーゴ」だったり、墓石のデザインがサボテンやアステカ文明風だったりと、ちなみに選べるマップもメキシコとノルマンディーだ。

画面全体からあふれるメキシコみ

パンツ一丁キャラとは思えない細かい設定

 本作の舞台は、敗者が神に生贄として捧げられるサバイバルゲーム番組。それがどういう趣旨で、主催者は誰なのかといったところは不明だが、とにかく、キャラクターたちは様々な理由でここに生きる道を見つけて参加している。例えば、最初から使える男性キャラクター「クライド・’ダース’・ムリカン」は多重人格者。彼の中に眠る人格の1つである凶暴だが優しい殺戮者、ビーストの活躍の場としてサバイバルゲームに参加している。

 同じく最初から使える女性キャラクター「アニー・’ピンナップ’・アシュリー」は、天才的な射撃の腕を持ち、殺し屋からタレントまで多彩な才能を持っている。CIAのエージェントとして特殊任務をこなした後、セラピストで出会ったクラウドの助けを借りて番組に出演する。これらの設定は、メイン画面のキャラクターアイコンの「!」マークから読むことができる。

【クライド・’ダース’・ムリカン】
【アニー・’ピンナップ’・アシュリー】

 それ以外にストリングビキニ一丁のマッチョなハゲ男「イッツ・オセロトル」、タトゥーを入れたカルトな元バンドマン「エリック・「ト―デン」・ソーソン」、復讐のため潜伏する黒髪の女性「バレンタイン・”バイパー”・チェイス」という3人のキャラクターがいる。これらのキャラは課金やゲームを進めることでアンロックすることができる。

エリック・「ト―デン」・ソーソン
バレンタイン・”バイパー”・チェイス
イッツ・オセロトル

キャラクターには固有のヒーローアビリティがある

 キャラクターはそれぞれ固有のヒーローアビリティを持っている。筆者が今回使ったクライドは、武器が使えなくなるかわりに猛烈にパワーアップする「ビースト」という能力が使える。クライドは多重人格者で、ビーストは彼の人格の1つという設定だ。発動させると「うぉー!」という雄たけびと共に画面が赤くなり、十数秒間は弾を受けても平然と戦い、ジャンプ力や移動能力、素手での攻撃力が上昇する。

 使用するには「罪人の魂」が60個必要だ。このアイテムは、敵を倒すと手に入る。ほかにも、装備品の持つ能力で獲得したり、「墓石」というアイテムを持っておくことで、死んだときに次のゲームスターと時にボーナスとして獲得できたりと、多彩な入手方法が用意されている。

 罪人の魂は「神秘のスプレー」でのトラップや儀式の発動にも使うため、所持している個数は、かなり重要な要素となる。

本作の独自要素「神秘のスプレー」

 「神秘のスプレー」は、ゲーム中に起動するとトラップや儀式を発動できるマーク。一度のセッションにセットできるスプレーは3つまで。カスタマイズ画面から、どのマークを使うかを選択できる。

 トラップは効果によって、必要となる「罪人の魂」の個数が違っている。当然だが、強力なものほどたくさんの魂が必要となる。トラップはそのマークを描いた場所から一定距離が有効範囲となり、効果が発動する。儀式は、制限時間の間プレーヤーキャラクターの能力を上昇させることができる。

 使用するには、「キッチン」画面で調理(アンロック)する必要がある。「キッチン」はメインメニューの1つで、スキルやアイテムをアンロックするツリーになっている。ロイヤルバックスというゲーム内通貨を使って、ツリーに従ってアンロックしていけば、できる事や装備品が増えていく。大半は無課金でも遊べるが、一部のエピック要素は材料に課金アイテムのレシピブックが必要だ。

第二次大戦中の実在の武器が多数登場

 セッションが始まると、初期状態ではパンツ一丁で武器はナイフだけなので、近場にある家で装備品を探す。武器はほとんどが第二次大戦中に実在したもので、ピストルやライフル、サブマシンガンなどかなりの種類がある。持てる武器は、ライフルやマシンガンなど長銃が2種類と、ピストルが1種類、グレネードが1種類と近接武器。遺跡探索もできる懐中電灯もある。第二次大戦時代が舞台なので、アイアンサイトが基本だが、中にはスコープを付けられる銃もある。武器に関しては特におふざけはなく、いたって真面目だ。

第二次大戦中に実在した武器が多数登場する

 銃と一緒に置いてあるマガジンは、銃ごとに種類が異なっているので、弾切れしてしまうと補充が難しい。また、リロードはリボルバーなら一発ずつ丁寧に弾を込めたりと、リアルなアニメーションでそれなりに時間がかかるため、残段数を意識しながら戦わなくてはならない。

見た目のインパクトからは想像できないがかなり挙動はリアルだ

装備品はおおむね調理器具、更にスぺシャルなアイテムも

 武器とは逆に装備品は、かなりスゴイ。装備できる箇所は頭、背中と腹部、両肩、腰、脚部、足に加え、所持量を増やすためのバッグも、彼女へのプレゼントのリングがはいってそうな小さな手提げ袋から、スポーツバッグっぽいものなど数種類がある。

 装備できるのは、フライパン、ボウル、水切りザル、普通の装備品もあるのだが、圧倒的に調理器具が多い。もちろんちゃんと防御力は上がる。だが、その代償として変態度がかなり上がってしまう。

空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の信者風ザルをかぶって戦う

 さらに、特別な能力を持つ装備品を2つまでセットすることができる。例えば、スタンドにぶら下がった点滴袋「再生の点滴バッグ」は、1秒あたり0.7ヒットポイントを回復してくれる。輝く天使のリング「闇の力から護るニンバス」は、ゾーンに呑み込まれた時のダメージを軽減してくれる。「スピードのヘルメスニーパッド」は翼の生えた黄金のニーパッド。ギリシア神話の神ヘルメスにちなんだアイテムだ。「息止めの酸素ボンベ」は、照準を合わせるために息を止めている間の能力が向上し、スタミナ低下を抑えることができる。見た目はそのまま腰にぶら下げる酸素ボンベだ。「セブンリーグブーツ」はジャンプ力が3倍になる。「オグンのタフなキューバ産葉巻」はヒットポイントが+40%になる。

背中に点滴スタンド、足にはヘルメスのニーパッドを装着した姿

 これらの特殊装備は、強力だが目立ちやすいというデメリットもある。闇の力から護るニンバスは暗闇でもキラキラ輝いているし、点滴バッグはスタンドが長すぎてブッシュに隠れている時にはみ出してしまう。セブンリーグブーツは楽しいが、高く飛び過ぎて目立ちまくる。2つしかセットできないことに加えて、そういう目立ちやすいというデメリットも考慮に入れて、使いどころを考える必要がある。

HPが上がる葉巻はもくもくと立ち上る煙で目立つ

アイテムは冷蔵庫とスロットマシンからゲットしろ

 たまにマップ内に冷蔵庫やスロットマシンが置いてある。冷蔵庫はアイテムボックス、スロットマシンは、マップ内のあちこちに落ちているアステカ金貨で回せるガチャだ。冷蔵庫にはランクがあり、柄もののハイグレードな冷蔵庫からは、かなりレアなアイテムが手に入る。また、冷蔵庫からはやたらクオリティの高い美味しそうな料理が出てくるのだが、冷蔵庫のランクで出てくる料理の豪華さも変わる。

冷蔵庫にはグレードがあり、出てくるアイテムが変化する

 スロットマシンは、通常は1度に1つアイテムが出てくるのだが、一度だけ大当たりして、コインが大量に出てきたことがあった。ほくほくで拾ったが、よく考えると拾っている間は全くの無防備になるので、トラップかもしれない。

スロットマシン。大当たりすると、大量のアステカ金貨がでてきた

調理器具をかぶるだけのゲームではなかった

 本作でエリアを制限してくる「ゾーン」は、パルス攻撃とか台風とかではなく、黒い不気味な靄がうごめく悪魔的な空間だ。1度のセッションで1回だけ使える「巻物」というアイテムの中には、ゾーンからゾンビを召喚できるものもあるので、そういう死が渦巻く空間なのだろう。ちなみにゾンビは、うかつに攻撃すると召喚者でも容赦なく襲ってくる。

 ゾーンが狭まってくるスピードはかなり速く、一度呑み込まれると脱出するのが大変になるので、早めの移動を心がけた。そんなこともあり、ゲーム展開はかなりスピーディだ。

車に乗ることもできる
懐中電灯を持って、メキシコのピラミッドを探索

 攻撃された時にはその方向に赤いマークが出てくるが、小さいマークでかなりわかりにくい。そのため、相手を見つけられないままキルされることはしょっちゅうだ。遮蔽物がかなり多いので、どこに敵が隠れているのかわからず、緊張感はなかなかのものだ。

 遊ぶほどにじわじわと面白さが増してくるようなゲームをスルメゲーと呼んだりするが、本作はその呼称にぴったりだ。調理器具を身にまとって戦うというネタっぽさは、本作のごく一面でしかなく、そんなバカゲーの裏には、公務員的真面目さで作られたハイクオリティなゲームが隠れている。

 DMM GAMESからのサービスはWindows版が8⽉20⽇より、PS4版は少し遅れるが夏の間にスタートする予定とのこと。ぜひ自分で実際に触ってみて、この何とも言えない謎空間をたっぷり味わって欲しい。

遊んでみると見た目とは裏腹(?)にテンポがよく、クオリティの高いゲームだ