インタビュー

シュールからシリアス&スタイリッシュへ!「CRSED」開発者インタビュー

あの異色作「Cuisine Royale」がさらなる進化を遂げた理由とは

2020年12月3日 配信開始

価格:無料(アイテム課金制)

 食器を身に着けて戦うおかしなバトルロイヤルゲーム「Cuisine Royale」が「CRSED(カースド)」と名前を変えて新しいゲームに進化した。日本ではプレイステーション 5/プレイステーション 4/Windows用バトルロイヤルとして、DMM GAMESから、12月に正式サービスが始まっている。

 「Cuisine Royale」がもともと第二次大戦を舞台としたシリアスなゲーム「Enlisted」のスピンオフだったこともあり、シリアスでクオリティの高いグラフィックスと、呪いを駆使しつつボウルをかぶって戦うシュールな光景が強くプレーヤーの心に突き刺さった。ゲームはその後も進化を続けたが、もはやスピンオフではなく本格的に一本のゲームとして進化していくためにタイトルを一新し、システムを改変した。

 その結果「CRSED」は、当初のギャグ要素は薄れたものの、第二次大戦当時のリアルな風景の中で、呪いというファンタジー要素を駆使して戦うという、他にはない異色のゲームとして正統進化を遂げている。

【キービジュアル】

 正式サービス開始に合わせて、新たに2人のチャンピオン「ルイス”ボコル”セリーヌ」と「シン”狐”ヨウビ」と新マップ「シベリア島」が追加された。さらに新武器として「重セミオートマチックスナイパーライフル」、ソ連の速射式サブマシンガン「PPS-42」、7連発のリボルバー銃「ナガン 1895」、そして新たな車両として、水陸両用オフロード車両とモーターボートも登場し、より複雑な戦術的立ち回りが可能になった。

 今回は、「CRSED」のゲームディレクターAlexander Polyakov氏に、タイトルが変わって、ゲームがどう変化したかについて、メールインタビューに答えてもらった。

【Alexander Polyakov氏】

――「Cuisine Royale(キュイジーヌロイヤル)」から「CRSED」にタイトルを変更した理由、そして「CRSED」というタイトルの意味を教えてください。

Polyakov氏:「Cuisine Royale」はもともとジョークとして始まりましたが、すぐに本格的なゲームとなり、ここ数年の間に多くの進化を遂げてきました。アップデートのたびに、より多くの魔法の要素がもたらされ、一方で、ユーモア要素の多くは、よりシリアスなものに置き換えられていきました。最終的に、ゲーム自体の変化を反映させるためにタイトルを変更する必要があることに気付いたのです。「CRSED」は「Cuisine Royale Second Edition」の略称であると同時にゲームキャラクターが持つ呪われた力(カース)のことを指しています。

チャンピオンはそれぞれ固有の能力を持っている

――「CRSED」としてリスタートしてから1カ月以上が経過していますが、プレーヤーからの反響はいかがですか?

Polyakov氏:一部の古参プレーヤーにとっては、タイトルを含むすべての変更に適応するのは簡単な事ではなかったと思います。本当にいろんな意味で新しく変わりました。しかし、全体的には、コンテンツやゲームプレイの変更に対して、コミュニティから多くの支持を得ることができました。実のところ、元々のゲームや原作を愛していた既存のプレーヤー層にとっては、名前の変更が一番の争点だったのです。しかし、新しいコンテンツやゲームのメカニックは明らかに多くのプレーヤーの心を掴んでおり、コミュニティは成長を続けています。その証拠としてDiscordやRedditにある、長い間存在していたコミュニティとは別に、ソーシャルネットワークでの活動とフォロワー数の増加が見られています。


――新たなタイトルやゲーム性が、古参のプレーヤーにも受け入れられているということですか。

Polyakov氏:慣れ親しんだゲーム名が新しいゲーム名に変わることを受け入れるのは容易ではありませんでした。それがきっかけで、公式サイトでのアナウンスを読んでいない人たちから、以前にインストールしたものではなく、突然「新しいゲーム」がダウンロードされたという反応もありました。しかし、私たちのアナウンスを読んでくださった方のほとんどが、ゲームの進め方や新しいコンテンツを気に入ってくださっていることを確認でき、今後もゲームを盛り上げていくためにプレーヤー層の拡大をお願いしたいと言ってくださいました。

――「Cuisine Royale」はその名の通り食器を装備して戦うというギャグテイストの濃い作品でした。「CRSED」のコンセプトはどのようなものですか?

Polyakov氏:「CRSED」は、世界中のチャンピオン(ヒーローと呼ばれることもあります)たちが、「F.O.A.D.」と呼ばれる残酷なトーナメントで最後の1人になるまで戦うゲームです。マジカルリアリズムゲームなので、キャラクターはリアルな武器と超能力を使い分けます。例えば、儀式で隠れている敵を洗い流したり、ジャンプ増幅アーテファクトを使って屋根の上までジャンプしたり、キャラクターの能力で時間を遅くしたり、第二次世界大戦の象徴的なボルトライフルを使って正確に撃ち落としたりすることができます。あるいは、アサルトライフルを持ったゾンビを召喚して戦闘をアシストすることもできます。このシリアスとファンタジーの融合は、他のオンラインシューティングゲームとは一線を画す「CRSED」のユニークな体験のコンセプトとなっています。


――キャラクターのスキル画面や成長システムに大きな変更が入っていますが、変更が入った理由と、新要素の見どころを教えてください。

Polyakov氏:名前の変更につながったゲームの進化は、メタゲームのメカニックの変更にも繋がりました。多くの新しい神秘の力や新しいチャンピオンを導入したことで、元々の成長システムが陳腐化してしまったので、まったく新しいシステムを作っていかなければなりませんでした。

 新システムでは、特定のチャンピオンをレベルアップさせることに重点が置かれています。プレーヤーは、好きなチャンピオンを戦いに持ち込み、戦うことによって、新しい力をアンロックします。これまでは巨大なスキルツリーを全キャラで共有していましたが、それよりは理にかなっています。

 もう1つの重要な変更点は、服の見た目とチャンピオンに与える効果を分けたことです。これによりプレーヤーは、服の効果を気にすることなく、自分の好きな服をチャンピオンに着せることができるようになりました。

――防具として使える食器は、今作ではまったく登場しないのですか?

Polyakov氏:キッチンアーマーはゲーム内に残っていますが、「Cuisine Royale」時代よりも、強力なリアルアーマーを多数追加しています。食器類は最弱の防具なので、やむなくという場合にしか使いません。食器を実際の防具として使用する感じに近くなっています。最近では、ホッケーヘルメットや工事用ヘルメットなど、最弱防具の種類も増えたため、ゲーム内でそれらの食器類に遭遇する確率が低くなっています。

【新たな武器】
重セミオートマチックスナイパーライフル
PPS-42
ナガン 1895

――運営・開発として、「CRSED」の注目してほしいポイントを教えてください。

Polyakov氏:プレーヤーのみなさんには、すべてのチャンピオンを試して、自分に合ったお気に入りのチャンピオンを選んでもらいたいと思っています。私たちは、世界中の異なる文化やヒーローのアーキタイプを研究し、「CRSED」の世界観にフィットするものを選んでいます。新チャンピオンの「シン」は、韓国の組紐伝説をモチーフにした、虫を操ることができる女の子です。空を飛んで、敵を空から叩きつけるネオパガンのモダンバイキング「エリック」もなかなか面白いです。

 また、初代チャンピオン「アニー」の時間の流れを遅くする能力は非常に誇りに思っています。シングルプレーヤーゲームには同様のタイムフリーズ機能は存在しますが、私たちはゲーム業界の歴史の中で初めてオンライン対戦型シューティングゲームで、この能力を機能させることに成功しました。その他のポイントとしては、地図のデザインにもこだわりがあります。新マップ「シベリアの島」の地図は非常に詳細で、面白いポイントがたくさんあります。実際にシベリアを訪問することなく、本物のロシアの農村風景を探索することができると思います。

【新キャラクター「ルイス”ボコル”セリーヌ」】
最大3体のゾンビアーマーを召喚することができる

【新キャラクター「シン”狐”ヨウビ」】
エリア内に広がり、敵を探す蛍の大軍を召喚できる

【新マップ「シベリア島」】
4km四方の広大なエリア。高低差が激しいため、ジェットパックやジャンプトラップ、ウサギのスリッパによるジャンプを駆使して戦術を立てる必要がある

――「Cuisine Royale」時代に寄せられた人気だったところ、逆に改善してほしいという意見が多かった部分はどこですか?

Polyakov氏:「Cuisine Royale」時代には、私たちが作った武器や、物理的な挙動のリアルさが人気でした。また、多くのプレーヤーがこのゲームのユーモアと自己愛のセンスを気に入っており、独善的なバトルロイヤルとは一線を画していました。プレーヤーはこのゲームがいかに創造的であるか、他人を殺して最後の1人になるための戦略がどれだけあるかについて議論を始め、その中で、マップの品質とビジュアルの忠実さが、このゲームの特徴的な機能であることがわかりました。

 改善点としては、「致命的すぎるMelee攻撃」という苦情が多かったので、フィードバックや統計に基づいてアップデートを続けています。また、新規プレーヤーの中には、まだミステリーパワーに慣れていない初期の段階では、ゲームが複雑すぎると感じている人もいます。そこで私たちは現在、ラーニングカーブを改善したり、マッチメイキングを微調整したりして、誰もがスムーズなプレーヤー体験を得られるような方法を模索しています。

――「Cuisine Royale」から削除された要素、新たに追加された要素を教えてください。また削除や追加をした理由も合わせて教えてください。

Polyakov氏:プレーヤーが新しい戦略を使えるように、常に新しいゲームプレイ機能を追加しています 例えば、新しいマップには水路がたくさんあるので、プレーヤーがより速く移動できるようにボートを追加しました。また、より多くのプレイスタイルを可能にするために、多くの新しいタイプの武器を追加しました。新しいメカニックを試すために、新しいイベントモードが追加され、古参プレーヤーのためにさらなる深みが追加されています。

【新たに追加された車両】
水陸両用オフロード車両
モーターボート

――正式サービスとタイトル変更に合わせて、PCに続きプレイステーション4/5でのサービスも開始されました。人気や反応はいかがですか?

Polyakov氏:PSプレーヤーからはゲームグラフィックスのクオリティーの高さや、他では味わえないゲームプレイ体験を褒めていただいています。「ゲームは(いい意味で)完全に狂っている!」と言っていただき、やり込んでもらえているようです。また、PSではラストマンスタンディングやバトルロイヤルというジャンルの無料ゲームであること、特にPS5版においては無料ゲームが数少ないこともあり、こういったことも多くの人に好評をいただいています。


――現在PC、PS4、PS5のプレーヤー比率はどのようになっていますか?

Polyakov氏:正確な割合は公表できませんが、最も人気のあるプラットフォームはPCです。しかし、コンソール版もかなりの人気があります。また、PS4とPS5のプレーヤーは同じサーバーで共闘しているため、区別はしていません。

――PS版の展開がPC版より遅かったのはなぜでしょうか?

Polyakov氏:PC版を先に出して、コンソール版を後回しにした感じです。PSではPCのベータテストやXboxのゲームプレビューのようなアナログなものがないので、PS版が最後になってしまいました。基本的には「正式発売」と言えるまでゲームを磨き上げて、それが終わって初めて、PSでの発売が可能になったという感じです。

――現状認識している問題点や、今後の改善予定について教えてください。

Polyakov氏:まだまだチャンピオンの数を増やす必要性を感じていますし、内部データやプレーヤーからのフィードバックをもとに、バランスの問題にも取り組んでいます。他のオンラインLiveOpsゲーム(運用しながらゲームを進化させていくようなゲーム形態)と同様に、「CRSED」は常に進化し、成長しているので、機能やコンテンツを追加し、データを監視しています。例えば、新しい儀式の効果が高すぎる場合は、その儀式のキャストコストを上げたり、動作方法を変更したりしています。また、動きやガンプレイの不便さも認識しており、パッチのたびに改善を続けています。

――今後のアップデート予定について、話せる範囲で教えてください。

Polyakov氏:今年はいくつかの大きなアップデートが予定されています。それぞれがプレーヤーの興味を引き続けるための新鮮なコンテンツをたくさんもたらし、「CRSED」で最後の1人になるための新しいオプションを提供します。今後のアップデートでは、アーティファクトアーセナルの拡張、ガンプレイの改善、正確な射撃のためのオプションの追加、秘密のミッションやイベントの追加などを予定しています。

――最後に、ファンに対するメッセージをお願いします。

Polyakov氏:実は、開発チームのほぼすべてのメンバーは、皆様と一緒にライブサーバー上のプレーヤーと常に対戦しています。私たちはファンの皆様と一緒にプレイすることがとても楽しいです。ゲームの新しいオプションや戦術を探求し、私たちが驚くような戦術や勝利を見せてくれるのを期待しています。壮大な瞬間をお友達や私たちと共有してください!