「ダイキャスト プロトガーランド」レビュー
1/24スケール ダイキャストモデル プロトガーランド
巨大なバイクがロボットに! 驚異の変形システムを練り込まれた機構で再現
- ジャンル:
- アクションフィギュア
- 発売元:
- アルカディア
- 開発元:
- アルカディア
- 価格:
- 29,480円(税込)
- 発売日:
- 2020年1月31日
2020年2月17日 11:10
バイクという極めてパーソナルなメカが変形し、ロボットになる。バイク+ロボットというコンセプトは、スピード感とアクション性を活かしたシーンが創造できそうな素材ではないだろうか? しかしロボットアニメの歴史においてこのコンセプトをうまく活用したロボットは少ない。やはりバイクはロボットにするのは小さすぎて、デザインが難しいのだろうか?
今回紹介する「プロトガーランド」は、モスピーダを作り上げたメカデザイナー・荒牧伸志氏がデザインしたバイクから変形するロボットだ。1985年のOVA「メガゾーン23」に初登場、プロトガーランドは続編である1986年の「メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い」に登場する。30年以上前に作られたロボットであるが、その人気は今でも高い。ロボット史に残るメカなのだ。これまでも様々な立体物が発売されている。
そのプロトガーランドの魅力を余すことなく再現したのが1月31日に発売された「1/24スケール ダイキャストモデル プロトガーランド」である。劇中同様差し替えなし、余剰パーツなしでの完全変形を実現。両形態のデザインも優れており、メカ感溢れるディテール表現がなされレ、遊びやすさ、耐久性も兼ね備えている極めてクオリティの高い商品だ。
筆者にとってこのプロトガーランドは「どうしても欲しいアイテム」の1つだった。高価なアイテムだが実際に手に入れ極めて高い満足感を味わっている。バイク形態、ロボット形態のカッコ良さとアクションフィギュアとしての楽しさ、変形玩具としての完成度の高さはぜひ紹介したい。商品の魅力を紹介していこう。なお、本レビューはアニメのネタバレをかなり核心的な部分まで行なうので、注意して欲しい。
ロボット史に残るバイク変形ロボの魅力を余すことなく再現
プロトガーランドは、アニメにおいて「世界の秘密の鍵」となるアイテムだ。前作「メガゾーン23」において主人公・矢作省吾は偶然ものすごいポテンシャルを持つバイク「ガーランド」を手に入れ、警察に追われる身になってしまう。ガーランドは省吾の住む1980年代のテクノロジーを遙かに超えるスーパーバイクであり、そのパワーは行く手を防ぐパトカーを易々と吹っ飛ばし、全くダメージを受けない。しかもロボット形態に変形してしまうのだ!
省吾はガーランドをきっかけに人気アイドルである時祭イヴが、CGで作られた現実には存在しない人物であること、自分の住む1980年代の世界は“作られた世界”であることを知る。この世界は巨大な宇宙船の中に作られた人工都市であり、人類は戦争によって破壊された地球から逃れ、いくつもの巨大宇宙船の中で現実を知らされずに偽りの平和の中で生きていたのである。イヴはこの世界の秘密の鍵を握る人物であり、ガーランドはそのイヴの秘密にアクセスするために、宇宙船のコンピューターデータから作られた端末だったのだ。
省吾は、この世界の秘密を独占しイヴを通じて宇宙船を自分達のものにしようとする軍に抗うことを決意する。しかし軍のリーダーであるB.D.にガーランドを破壊され、たたきつぶされてしまう。省吾は命からがら逃れ、姿を隠す。それから半年、軍は街や宇宙船の支配を強めているが、そのシステムの根幹には到達できずにいた。イヴは省吾を探していると直感したB.D.はガーランドを修理し、省吾を捕らえるため罠を張る。省吾は世界を支配しようとする“大人達”に対抗するため、暴走族TRASHの助けを受けて、ガーランドを取りかえし、イヴに再会するため戦いを挑む……。
プロトガーランドは、軍がイヴにコンタクトするため大破したガーランドを修理した機体だ。名前に“プロト(プロトタイプ:試作品)”がついているのは、軍がガーランドのデータ解析を進めた結果、ホバーで地上走行する量産機「GRII ガーランド」の開発を実現し「GRII」こそが軍の正式なガーランドであるため、差別化するためにつけられた名前である。プロトガーランドはGRIIのパーツを使っているため足部分など以前と変わっており、カラーリングも落ち着いたものとなっている。アニメの設定画としてもより情報量が増している。
「1/24スケール ダイキャストモデル プロトガーランド(以下、「ダイキャスト プロトガーランド」)」は、現代の技術で変形システムを再現したアクションフィギュアである。商品としても2018年7月に発売された「1/24 ダイキャストモデル ガーランド」からフィードバック、各種機構の見直しも行なわれているという。フレームなどは共有だが、外装は新規設計だ。
まずはバイク形態である「マニューバクラフト」の「プロトガーランド」を見ていこう。ものすごくデカイバイクである。設定上の大きさは全長3.85m。750ccの大型バイクでも2.5mだから、それよりさらに1m以上も大きい。バイク本体の大きさに含め、両脇の足ユニットがその大きさを主張している。
このデザインだと足ユニットに車輪がある三輪バギーっぽいが、ユニットは走行中は地面に接触せず、後輪はボディ中央にある。カラーリングや前のカウルの大きさと長さからコミック「AKIRA」に登場する「金田のバイク」を感じさせるところもある。前輪の付き出し方は「ブレードランナー」の「ポリススピナー」の雰囲気もあるような気がする。
情報端末の役割を持つプロトガーランドはセンサー機能などが充実しており、大型のモニターで情報を見ることができる。「ダイキャスト プロトガーランド」ではこのモニターを出す機能も再現されている。バイクとしてのメーターもきちんと確認でき作りの細かさを実感できる。ランディング状態の矢作省吾フィギュアの作りの細かさにもぜひ注目して欲しい。
足部分はGRIIの意匠を受けて複雑なメカがむき出しになっている。カバーを上に上げて“エアブレーキ”も可能だ。ガーランドは現用車を軽々と吹っ飛ばし傷もできず、最高時速320kmというスーパーマシンだ。いかにもSFメカ的なデザインのプロトガーランドだが、2つのタイヤで走っている「バイク」であるところがやはり面白い。
複雑な変形をしっかり行なえる練り込まれた変形システム
それではロボット形態「マニューバスレイヴ」に変形させていこう。アニメのプロトガーランドはパイロットが搭乗したまま変形が可能だが、「ダイキャスト プロトガーランド」ではパイロットのみ差し替え変形になる。設定上もコクピットは非常に狭く、機械に押しつぶされそうになる非常に小さいスペースだが1/24スケール、全長約19cmの大きさではパイロットフィギュアの収納は難しく、この部分だけ差し替えとなる。
変形ではまず本体から両脇の足ユニットを外す。足ユニットを繋いでいる細いパーツはダイキャスト製で強度的にしっかりしている。後部のカバーを跳ね上げ座席も上に上げる。底面部分のカバーを引き出してから、ガソリンタンク状のパーツを跳ね上げ、後輪を含むユニットを下に下げ、後輪の中心部分に足ユニットのアームを接続させて固定し、足を伸ばせば、ロボットの下半身となる。
次は上半身だ。アームのロックを外してから前輪を2つに割る。こちらも細い金属パーツで接続されている。カウルのパーツを開いて可動域を広げ頭パーツをくぐらせる準備をするのだが、ここは部品パーツが細かく、こすれるところも多いので注意が必要だ。
上半身の基部パーツを回転させ、カウルに頭部をくぐらせる。開いたパーツを閉じ、頭部の基部を動かしてコクピットハッチを閉める。前輪の溝を合わせて固定。腕が接続されている外側を回転させ、肩の位置を決める。腕を引き出し拳を出せば変形完了だ。
改めて非常に複雑な変形システムだと思う。荒牧氏がどうやってバイクから変形させるか、もしくはロボットをどうバイク形態にするかを考えたのが伝わるデザインだ。そしてやはり絵としての説得力はあるがそれをきちんと立体物として実現する苦労は大変なモノだと遊んでいて実感する。
「ダイキャスト プロトガーランド」はとても練られた“遊ぶことの耐久度を考えた商品”だ。BANDAI SPIRITSの「DX超合金マクロス」シリーズと比べると部品の堅牢さより、エッジの立て方、繊細さを感じる部分はあるが、とてもしっかりしていて遊びやすい。製作者の経験が充分に活かされた、「遊びやすい変形」を実現しているのがわかる。つくづくスゴイアイテムである。
無骨なプロポーションがカッコイイマニューバスレイヴ
そしてロボット形態「マニューバスレイヴ」である。ガーランドは特に第1作ではスーパーロボット的描かれ方をしており、コンクリートも体当たりでたやすくぶち抜くし、軍がガーランドより早く実用化したロボット兵器「ハーガン」も寄せ付けないようなパワーを発揮する。……それでも結局B.D.のハーガンに敗れてしまうわけだが。
映画2作目では敵は後継機の「GR2」になりドラマの比重も世界の尾秘密に尺が多く削がれるため、プロトガーランドの強さを見せつける描写は少ないが、それでも要所要所でカッコイイアクションを見せてくれる。
「ダイキャスト プロトガーランド」は拳が大きめでいかついプロポーションだ。背中はコクピットブロックなため大きく、ちょっとずんぐりした印象がある。このシルエットも開発者のこだわりだという。足の付け根はボールジョイントであり、腕も基部が回転するため武器の両手持ちも可能。可動カ所も多くアクションフィギュアとしてもかなり優秀だ。
プロトガーランドとしてふくらはぎのパネルの可動とバーニアノズルのせり出しはメカ的な説得力を増し非常にカッコイイ。武器として「レーザーオーブライフル」が付属、可動する指でしっかり握らせることができる。ライフルは銃身を交換し捕獲目的のネットランチャーをつけた状態にすることも可能だ。
そして「ダイキャスト プロトガーランド」ではマニューバスレイヴ時のパイロットフィギュアも用意されている。このフィギュアは下半身がないが、変形途中にコクピットに収納できる。ハッチを開けることで搭乗状態を再現できるのだが……フィギュアが暴走族のリーダー「ライトニング」なのである。ドラマのネタバレだが、クライマックスシーンライトニングは省吾を逃がすために自分がガーランドに乗り敵を引きつけるのだ。
……このシーンはカッコイイシーンであることは否定しない。開発者がライトニングのフィギュアを乗せたいという気持ちもわかる。しかし、ふつうは矢作省吾のフィギュアではないだろうか? ライトニングはボーナスパーツだと思うのだが、ここでライトニングのみ、と判断できるところも開発者の“情念”を感じる。
アルカディアは毎年ワンフェスに出展しているが、「ダイキャスト プロトガーランド」の開発者がどうしても商品化したいと情念を燃やしているのが「ハーガン」である。ハーガンはガーランド同様バイクからロボットに変形するのだが、ガーランドのように単機で変形できるのではなく、専用のトレーラーに収納後手足を取り付けて変形するのだ。
このハーガンは筆者が取材した2017年にはすでに試作品ができており、今回の「ダイキャスト プロトガーランド」に付属している冊子にも書いているように何としても商品化したいという想いが伝わってくる。しかもハーガンをバックアップするトラックも売りたいとのこと。これは応援したい。
何度も繰り返すが、「ダイキャスト プロトガーランド」は本当に良い商品だ。さらにアルカディアは前作に当たる「1/24 ダイキャストモデル ガーランド」の再販も考えているという。少数生産であり、高価なアイテムであるが、ファンならずともこのアイテムは高い満足度をもたらしてくれる。この機会を逃さないようにしたいところだ。
(C)AIC