「Dreams Universe」レビュー
Dreams Universe
難しいけど楽しい。作って遊んで、クリエイト欲が止まらない。
- ジャンル:
- シミュレーション
- 発売元:
- Media Molecule
- 開発元:
- ソニー・インタラクティブエンターテイメント
- プラットフォーム:
- PS4
- 価格:
- 5,390円(税込)
- 発売日:
- 2020年2月14日
2020年2月14日 00:00
ソニー・インタラクティブエンターテイメントとMedia Moleculeはプレイステーション 4用ゲームクリエイティブプラットフォーム「Dreams Universe」を2月14日に発売する。
本作は「リトルビッグプラネット」や「Tearaway ~はがれた世界の大冒険~」を手掛けたMedia Moleculeが制作しており、「ないならつくっちゃえ」をコンセプトに様々なコンテンツをプレーヤーの手によって、自ら想像していたものを作品として現実に生み出すことができるものとなっている。
本作の最大の特徴は、何でも作れてしまうということだ。「ゲーム」のみならず「アニメーション」や「3Dアート」、「音楽」、「キャラクター」などプレーヤーの直感で作れてしまう。ゲーム内にある素材を組み合わせてもいいし、ゼロから作り始めてもいい。作るものも作り方も様々選ぶことができる。プレーヤーが表現したいものを思いのままに作ることができる。
また、本作ではほかのプレーヤーが作ったものを、見て、聞いて、遊ぶことができる。そのうえ、ほかのプレーヤーが作った作品とコラボレーションすることもできる。ほかのプレーヤーの作品を見てインスピレーションを受けて手を加えてもっと良い作品にすることもできるので本当に自由度が高い。
プレーヤーは「チップ」と呼ばれるキャラクターを操作しながらいろいろな作品を作っていくことになる。しかし、本作の操作方法は少し変わっており、左右のスティックだけでなくコントローラー自体を動かすモーションセンサーも使って操作する。ちょっと操作に癖があるので、慣れるまでには少し時間がかかるかもしれない。
しかし、慣れると作品を作る際に感覚的な動きも可能になるので、よりこだわりを持って制作することが可能になる。
はじめのうちは、できることが多すぎる上に、操作も複雑なのでかなり苦戦する。しかし、苦戦すればするだけ本作はどんどん楽しくなっていく。できることが増えて、ハイレベルな作品を作れるようになればなおさらだ。
今回はアーリーアクセス版のみならず製品版のストーリーモードまで触ることができたので、本作の魅力をお伝えしたい。
充実したチュートリアル
本作は本当に何でも自由に作ることが可能だ。「ゲーム」はもちろん「アニメーション」や「音楽」などプレーヤーが思うままにその時作りたいものを制作することができる。
しかし、何でもできるということは、逆に言えばそれだけ使えるツールがあるということだ。そんなたくさんあるツールも使い方がわからなければ意味がない。
「ゲーム」1つ作るにしてもフィールドの作り方はもちろんトラップや障害、チェックポイント、回復ポイント、ガジェットのロジック、音楽などいろいろと必要になってくる。本作のチュートリアルではそれらが1つ1つセクション分けされており、事細かく説明をしてくれる。
チュートリアルの量がかなり多いので初めてプレイしたときは、正直どこまでチュートリアルがあるんだとちょっと嫌気がさした。しかし、チュートリアルで教えられたことをしっかり理解できていないと思ったように制作することができないので、少なくとも興味のあるジャンルのチュートリアルはしっかりやっておくことをおすすめしたい。
本作のチュートリアルは、はじめのうちにすべてやる必要はないと筆者は感じた。ただ、徐々にいろいろなものを作っていくうちに、各プレーヤーごとにこだわりが出てくると思うので、その時に必要なスキルのチュートリアルをプレイするのも良いと感じた。
まずは静止画を作って「コミュニティセッション」に応募
今回筆者はゲームステージを1つと、コミュニティセッションと呼ばれる1つのテーマを題材としたコンテストのようなものに出品する作品を1つ制作した。
制作したとはいえ、今回筆者はスターターキットの素材を中心にほぼ並べただけに過ぎない。それでもなかなか苦労してしまった。デザインや構成を考えるだけでいっぱいいっぱいになってしまい、筆者自身で新しくガジェットを組んだりすることはできなかった。
まずはコミュニティセッションにクリエイターとして出品する作品作りから始めた。コミュニティセッションに出品する作品はテーマに沿っていればゲームでも静止画でも大丈夫なので、筆者は今回静止画で出品することにした。
今回のテーマは「中世ファンタジー」ということで構成を練るも「城建てたいな……」、「いやどうやって建てればいいの?」の堂々巡りをしてしまい、城を建てるのを断念してしまった。今思えば素材を建てて使えばできたのではないか、なんて考えてしまうが、当時の筆者にはそこまでの発想力はなかった。こういうところも本作をやり込んでいくうちにスキルや発想力が養われていくのかもしれない。
仕方がないので、いったん平面なものを中心に制作を始めた。中世っぽいということで粗目の石畳を敷き詰め、周りにいろいろな種類の草のキッドをどんどん埋めていく。なんとなくそれっぽくなってきた。がまだ何か足りない気がしたので周りに若干背の高い木と池っぽいものを作ってみた。
それっぽくはなってきたが、まだ何か足りない……。ファンタジー感がない。スターターキットの中をくまなく探すとそれっぽいものを2つ発見した。二足で立っているネコ型のキャラクターと恐竜っぽい形の骨。これを加えればそれっぽい。ファンタジーっぽい。よし、これで完成としよう。
今回の作品は「冒険のはじまり」にした。ネコ型のキャラクターたちに主人公が出会うところから冒険が始まる感じに見えればいいかなと思う。
今回筆者がある程度で妥協したのには理由がある。このコミュニティセッションは募集作品のテーマが一定の期間で変わる。今回のテーマ「中世ファンタジー」の応募期限ギリギリだった。コミュニティセッションにクリエイターとして作品を応募する際には期限内にしっかり作り込む力が必要だと強く痛感した。
ゲーム作りにチャレンジ
次にゲームを作ってみることにした。しかし、何を作ればいいのかわからない。シューティングやカーレース、RPGもあるしアドベンチャーやアクションなどゲームはジャンルが多すぎる。
いろいろとこだわってもいいなと思っていたが、まずはチュートリアルでやったことを復習する意味も込めて障害物レースみたいなアクションゲームを作ることにした。
フィールドを作り、障害を1つ1つ考えながら設置していくうちに気が付いた。ゲームを作るのはとにかく難しい。障害1つ設置するたびにテストプレイをしてちゃんと超えられるバランスかどうかを確かめながら進めていかなくてはいけない。障害の緩急や同じような障害が連続していないかなど、かなり頭を使いながら作っていく。プレイ時間にしてほんの2分足らずのステージに3時間弱の時間がかかった。
もしこのゲームを公開したときに、しょぼいなりに少しでも楽しんでもらえたらなという思いもあり、ほんの少しだけこだわって作ってみることができた。
2つの作品を今回作ってみたが、かなり大変だった。本作のツールをまだ使いこなせていないというのもあるが、何よりもツールを生かせるほどの発想力が筆者には足りていなかった。しかしながら、完成したときの喜びはひとしおであった。またこうしたらおもしろいかな、ここに配置したら見やすいかななどといろいろ考えるのは非常に楽しい。
やっているのは画面の中だが、授業でやった図工の工作や技術の電気工作みたいな感じがしてわくわくした。もっといろいろなツールが使えるようになると今以上に楽しいのは確信が持てる。
作ったものをみんなで共有して楽しめる
プレーヤーたちが作った作品は、制作者が設定するとほかのプレーヤーたちに見てもらえたり、遊んでもらったり、聞いてもらうことができる。
ちなみに筆者も作品を作った後、ほかのプレーヤーが作ったゲームや作品をいくつも遊んだり、見たりしていろんな刺激を受けることができた。
ほかのプレーヤーの作品を見てから自分の作品を見返すともっと効果音を足せばよかったとか、後ろの風景を作り込めばよかったなど反省点も多く見えた。ちなみに公開した作品もいくらでも修正が可能なので、改善点が見つかったらすぐに修正することができる。
本作はアーリーアクセス版が2019年4月22日に発売されていたこともあり、ほかのプレーヤーの作品がすでにたくさん公開されているので、手始めにバンバンほかのプレーヤーの作品を見てみるのもおすすめだ。
また、ほかのプレーヤーが作った作品を、別のプレーヤーが手を加えて新しい作品を生み出すこともできる。自分が作った作品をリミックスできるようにしておいて、どんな進化を遂げるのか見届けるのも楽しい。
リミックスできるようになっている作品は、どういった方法でギミックが動いているのかも確認できるので、勉強にもなる。気になった作品でどうやって動いているのかわからないものは、リミックスから確認してみて真似してみるのもおすすめだ。
ストーリーモードから感じる無限の可能性
本作にはクリエイトモードだけでなくちゃんとストーリーモードも設けられている。このストーリーモードは本作のツールで作れる作品の一例であり、これから制作者になるプレーヤーのインスピレーションになってほしいという思いも込められているとのことだ。
ストーリーモードは「アートの夢」というタイトルがつけられており、「アート」という主人公の男性の夢の中の物語が主軸となっているが、ゲームのスタイルはアクションやアドベンチャー、謎解きなどステージごとに変わってくる。
本当に「こんなこともできるよ」、「あんなこともできるよ」とお手本のようにステージが組まれており、ストーリーモードを楽しみながらも本作の奥深さを感じられた。
ストーリーもかなり引き込まれる内容でがっつり作り込まれているので、是非ともプレイしてみてほしい。
ほかのプレーヤーの作品やストーリーモードをプレイしながら感じたのは、一体どうやったらこんな作品が作れるのかという疑問と、そしていつかは筆者自身も作ってみたいなという気持ちだった。
正直なところ今回筆者はまだまだ「Dreams Universe」の序盤に触れただけに過ぎない。本作は本当にやり込めばやり込むほど、こだわればこだわるほどできることが増えていく。できることが増るだけ、またこだわって作っていくことができる。ゲームクリエイティブプラットフォームというものがこんなに奥深いものだとは思わなかった。しかし、極めれば極めるだけ面白くなるのは間違いないと感じた。
操作の難しさやチュートリアルの多さなど、始めたときはちょっとハードルが高い気がしていた。しかし、実際に体験してみると次から次へとやりたい欲が出てきてだんだん楽しくなってきた。この難しさも楽しさも「Dreams Universe」の唯一無二の体験だと思うので、ぜひプレイして体感してほしい。