「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」レビュー

RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ

独特のアレンジで2つの形態を表現、差し替えなしの完全変形を実現!

ジャンル:
  • アクションフィギュア
発売元:
  • 千値練
開発元:
  • 千値練
価格:
21,600円(税込)
発売日:
2018年5月6日

 「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」が発売された。千値練が販売する、“完全変形”のアクションフィギュアだ。バイク形態である「アーマーサイクル」から、装甲をまとった「ライドアーマー」に差し替え部品なし、余剰パーツなしで変形する。

 今回は両形態と、変形プロセスを写真と共に説明しながら感触を語っていきたい。今回のモスピーダはオリジナルをデザインした荒牧伸志氏監修の元、アレンジが加えられており、両形態に強いこだわりが込められている。注目の商品である。

【RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ】
バイク形態である「アーマーサイクル」。これまでのアクションフィギュア以上にしっかりとライディングポーズが決まっている
バイクをアーマーとして装備する「ライドアーマー」。このコンセプトは多くのファンを獲得した

“バイクに乗る”というコンセプトに、強いこだわりを持ってデザイン

 「モスピーダ」は、1983年に放映されたTVアニメ「機甲創世記モスピーダ」に登場するメカだ。バイク形態から体にまとう装甲に変形するメカであり、敵の追跡をかわしながら目的地を目指すという「ロードムービー」の要素を持つ本作で効果的に使用された。

 番組内では敵である「インビット」は強力で、モスピーダの武装ではあまり対抗できず、戦闘で活躍するのは3形態に変形できる宇宙戦闘機「レギオス」が中心となっていたが、モスピーダは様々なバリエーションがあり、随所でバイクアクションも見せた。特にオープニングで軽快な主題歌と共に高速で走り抜けるモスピーダの姿に多くのユーザーが魅了された。

 モスピーダをデザインした荒牧伸志氏は、その後アニメ「メガゾーン23」でバイクからロボットに変形する「ガーランド」をデザインしこちらでも人気を集めた。モスピーダ、ガーランドは様々なメーカーから現在でも関連商品が出る。“変形メカ”の歴史を語る上で、欠かせない存在なのである。

実写も参考にしたというアーマーサイクル。よく見るとエンジン部分に“隙間”が見えるが、ライドアーマーとノバランスを考えればこれはアリだと思う

 「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」は、4月に発売された「RIOBOT 1/12 VR-052F モスピーダ スティック」とほぼ同一規格の商品だ。「機甲創世記モスピーダ」はレイとスティックという2人が主人公であり、スティックは指揮官型の「VR-052F」を、レイは一般兵士用の「VR-052T」を使う。今回筆者が購入したのはレイが使うモスピーダで、フィギュアのバイザーを跳ね上げるとレイの顔が現われる。

 スティック版との違いは前輪部、ライドアーマーでは両腕に搭載される武装が大型のミサイルから、40mmビーム機銃となっている。この機銃は取り外してハンドガンとしても使用可能だ。また、フィギュアのスーツが赤から青になっており、スティックは部隊名などのマーキングがあるのに比べ、レイのスーツにはない。また、スティック版には付属している手持ち武器がレイ版にはない。値段は同じなため、比べるとちょっとレイ版の方が割高かもしれないが、筆者は“一般兵士用”というところにも魅力を感じ、こちらを購入した。

スティック版と大きく異なるのが、前輪部分の武装。レイ版は40mmビーム機銃を搭載している
フィギュア。関節を布で隠し、人間らしいシルエットを実現している。バイザーを跳ね上げるとレイの顔が現われる
バイク乗りらしい手つきを再現した握り手。製作者のこだわりが楽しい

 それでは実際の商品を紹介していこう。筆者は以前ワンフェスで本商品の開発者に話を聞いたことがある。「RIOBOT 1/12 VR-052 モスピーダ」は、“ライディングプロポーション”に特にこだわった商品だという。バイクに乗ったときのフィギュアとバイクのバランス、ここに注力したという。実際、モスピーダにフィギュアを載せてみて、調整すると非常にしっくりくる。商品の説明書にはフィギュアのライディングポーズまできちんと指定してあり、そのこだわりが感じられる。

 フィギュアは関節部分が布で覆われている。このためアクションフィギュアとしてむき出しの関節が隠れ、人間らしい雰囲気を増している。説明書には布を取った状態の写真があるので、それを参考にフィギュアを動かすことができる。ライディングポーズを自然に取ることができ、可動範囲は広い。

 モスピーダは、アニメ版と比べるとデザインもアレンジが加えられている。本商品のベースとなっているのは、2009年に発売された設定資料集向けに荒牧氏が描いたモスピーダのイラストだが、それ以外にも荒牧氏がデザインし、実際に企画で実車バイクの改造車が製作されたという「プロトモスピーダ」なども参考にしているとのこと。実在するバイク、そして無骨な軍用車両を思わせる雰囲気もあり、バイクフィギュアとして楽しい。横から見ると隙間が見えてしまうところがあるが、「変形のためのデザイン」としてアリだと思う。

 うれしくなってしまうのが、人差し指と中指でブレーキ(クラッチ)レバーを握る手が用意されているところ。「バイク乗りの人がこういうやり方で乗っているのを見たことがある!」と感心させられた。筆者の友人のバイク乗りに話を聞くと「微妙な操作をするときに使う」とのことだ。ちなみに、この握り方は教習所では怒られてしまうとのことだ。この握り手を用意しているところも、本商品のこだわりを感じさせる部分だ。

フィギュアにはヘルメットなしの頭部も。機銃は取り外して手に持たせられる
バイクアクションをさせるのが楽しい。1/12サイズなので、他の商品と組み合わせるのも良いだろう。スタンドも用意されており、立てかけることも可能だ

“バイクを着込む”という驚きのギミックを実現

 そして変形である。本商品の変形は複雑で、部品が細かく、緊張させられる。慣れてくると機構がわかってくるのだが、折ってしまいそうな部品もいくつかあるので慎重さも求められる。

 最初に前輪と後輪に付属している4つのアームを取り外す。モスピーダの車輪はシリンダー状の2つの太い支柱で固定されているので、アームを外してもバイク形態のままだ。次に前方のカウル左右に開き、タンク部分を持ちあげ、シートを押し込む。

 ここからロックを外し前面を覆うアーマー部分と、背面部分を分離させ、フィギュアにまたがらせる。車体そのものは金属パーツで接続されているので、分離させてもバラバラになることはない。本商品はアーマーの力がかかる部分や、タイヤを支える太いアームなど要所に金属パーツが使われており、耐久度もきちんと考慮されている。

4つのアームを外し、カウルを変形させる
タンクを持ちあげ、車輪を側面に移動させる

 フィギュアの首をうつむかせて、タンク部分をくぐらせ、背中に回して固定する。ハンドルやライトの部分を調整し、カウルをボディ側面に配置、さらに4つのアームの基部を動かしフィギュアの側面を覆うように配置する。脇腹部分は金属製のアームの基部がしっかりとハマリ、変形したボディをしっかり支えるような場所で固定できるのが面白い。

フィギュアを挟みこむ。側面のアームの基部など、本体をしっかり包み込む“演出”が楽しい

 そしてここからが本商品の面白いところなのだが、腰部分のアーマーは、足の側面にジョイントされる。そして腕のアーマーは本体に接続されたアームを取り付けたまま、フィギュアの腕に接続されるのだ。この要素はオリジナルのモスピーダにはない。オリジナルのモスピーダはバイクが乗り手を挟みこみ、着ているスーツに接続されるのだが、本商品は“外骨格”のように、操縦者を包み込むフレームが存在するのだ。

 モスピーダのデザイン上、膝より下はライディングスーツのままなのだが、商品のデザインではこの足と、腰と腿をガードするアーマーが足の装甲に接続されることで、ライドアーマーの重量が生身にかからないようになっている。腕部分はシャフトで接続されることで、装甲板の重さが腕にかからないようになり、逆にパワーアシストを受けられるようなデザインになっている。

 このように「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」のライドアーマー形態は米軍が研究しているパワードスーツや、介護の現場で使われるアシストスーツの意匠を組み込んでいる。このデザインはモスピーダという「長距離を移動できる変形パワードスーツ」のコンセプトにぴったりとはまる。今回遊んでみて、大きく感心させられた部分である。

オリジナルだと腰に接続される側面アーマーが、足に接続されることで、荷重が人体にかからず、足アーマーに逃げる設計になっている
腕部分はシリンダーアームで支えられ、パワーアシストを感じさせるデザインに
バーニアの噴射ノズルもアレンジが強い。横移動ができる感じに

パワードスーツとして説得力を増したライドアーマー

 ライドアーマーをもっと見ていこう。車輪の部分の中心部が盛り上がりスラスターになる。ライドアーマーではこのスラスターで体を浮かし、常に浮遊しているかのように地上を動く。このスラスターでまるで月面にいるかのように高く飛び上がり、高速で移動できる。モスピーダはこの機動性を活かし、インビットの弱点を狙うのである。

 「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」は、デザインのアレンジがポーズ付けに大きく影響している。手足が本体に接続されているため、可動範囲がかなり制限されるのだ。特に腕は、両脇に曲げて構えており、まっすぐ伸ばせない。右手の機銃を腕をまっすぐ伸ばして構えることもできないのだ。原作ではタツノコアニメらしい軽やかなアクションも見せるモスピーダだが、本商品ではそういうポーズは難しい。これはファンにとって賛否分かれるところだろう。

アレンジにより、可動は制限されている。一方で、「パワードスーツ」としての説得力は大きく増したと感じる

 筆者自身は、このデザインならではの“リアリティ”が好きだ。バイクを体に着けて戦うという、SF兵器ならではの“説得力”がこのデザインで増した気がする。手や足は力が増幅され、しっかりと自重を支えるだけでなく、アシストされた筋力を活かして、左手のアーマーを打突武器として使ったり、障害物を取り除くのに変形してその力を使うなどできるかも? などなど設定をふくらました活躍シーンを想像するのも楽しい。「パワードスーツ」というコンセプトから見てみれば、本商品のアレンジは納得度が上がったと思う。宇宙で使う船外活動用装備の雰囲気もあって、「宇宙でも使われていたかも?」など想像するのもいいかもしれない。

 「RIOBOT 1/12 VR-052T モスピーダ レイ」はかなり満足度の高いアイテムだ。これまでモスピーダの商品は気になっていたが手を出せなかった。今回が筆者にとって変形するモスピーダの初めての商品だが、バイク形態、ライドアーマー形態、どちらも眺めていてとても楽しい。

 一方で、本商品の変形は慣れないとやはり難しい。説明書を見ながらでも壊してしまいそうな部品がある。特にカウルとライトを接続するパーツはきゃしゃな上に動きが複雑で怖い。力任せに扱わないよう、注意して欲しい。

 劇中、モスピーダは様々なバリエーションがある(厳密にはモスピーダは第2世代のライドアーマーを指し、他のアーマーは別な名前がついている)。本商品とスティック版はユーザーにとても好評であり、今後のバリエーション展開も期待したいところだ。一方で人気のため転売屋の標的にされてしまっている部分もある。難しいかもしれないが商品の再販も希望したいところである。

かなりのボリュームがあるライドアーマー。浮遊したイメージで飾るのが楽しそうだ