2018年6月7日 12:00
ペルソナシリーズの人気作「ペルソナ3」と最新作の「ペルソナ5」がリズムゲームになった「ペルソナ3 ダンシング・ムーンナイト(P3D)/ペルソナ5 ダンシング・スターナイト(P5D)」が5月24日にPS4とPS Vitaで2作同時リリースされた。
今ではアトラスの看板タイトルとして絶大な人気を博している「ペルソナ」シリーズ。もとは「真・女神転生」シリーズの派生作品として登場したタイトルだ。「ペルソナ1・2」までは「真・女神転生」の要素を色濃く残していたが、2から6年の沈黙を破って登場した「ペルソナ3」は様々な面を一新させたものとなっていた。日にちの経過でストーリーが進む「カレンダーシステム」。仲間との絆を深める「コミュシステム」。そして当時においては非常に珍しく、ゲーム業界に革命を起こしたとも言えるのが、ゲーム内サウンドにボーカル曲を取り入れたことだ。
オープニングやエンディングにボーカル曲が挿入されていた作品は数あれど、ゲーム内の随所にボーカルサウンドを取り入れた作品は見たことがなかった。ゲーム業界の古くからある常識“ゲームサウンドとはかくあるべし”という固定概念をぶっ壊した作品でもある。「ペルソナ3」リリース後には、アトラス作品以外にもボーカルサウンドを取り入れたゲームを数多く見るようになった。
筆者は気に入った作品のサウンドトラックを延々流しているほどゲームサウンドが好きで、サウンドの良し悪しでプレイのモチベーションが変わってくる程だ。RPGならばプレイ中1番長く聴くであろう戦闘曲は1番重要で、最も注目するサウンドなのだ。そして「ペルソナ3」の戦闘曲を聴いたときは衝撃が走った。こんなポップでスタイリッシュなラップ曲を戦闘に持ってくるという斬新さ。テンションが上がらないわけがない。
鬼才のサウンドコンポーザー目黒将司氏をはじめとしたアトラスサウンドチームの生み出した楽曲により、ペルソナシリーズは新作が発表されるたび、ゲームの内容もさることながらそのサウンドも注目されるようになる。ここからはそんなポップでスタイリッシュなサウンドが凝縮された本作のプレイレビューを書いていこう。
最高のダンスナンバーでレッツダンシング!
「P3D」、「P5D」2作品ともにゲームの基本となる音ゲー部分は2015年に発売された前作「ペルソナ4 ダンシング・オールナイト(P4D)」を踏襲した作りになっている。メインモードである「DANCING!」ではペルソナシリーズの様々な楽曲でダンスを楽しむことができる。曲に合わせてタイミング良くボタンを押していき「ノリノリ・ゲージ」を一定以上溜めた状態で曲を終えればステージクリアとなる。難しい操作も必要なくスタイリッシュなペルソナサウンドをバックにキャラクターが華麗なダンスを決める。原作でお馴染みの楽曲を取り揃えており、ボーカル入りのものからBGMまで様々。そしてアトラス社内外の著名なコンポーザーによるリミックス楽曲も注目ポイントだ。
今作では前作にあったストーリーモードが廃止され、リズムゲーム部分をじっくり遊べる作りになっている。しかしストーリー性が0になった訳ではない。ストーリーモードに替わりキャラクターごとの固有イベントが楽しめるモード「COMMU」が新たに追加された。楽曲のプレイ回数やMAXコンボの累計数など様々な条件をクリアすることでコミュが開放され、キャラクター同士の掛け合いや物語の本筋が楽しめる。
RPG本編では見られないキャラクターたちのダンスシーンやコミュでのイベントシーンなどファンならニヤリとする要素が詰まっている。筆者が特に感動したのは「P3D」のキャラクターモデリングだ。「P5D」の方は原作の「ペルソナ5」がPS4/PS3ということもあってモデリングは本編のものを元に制作されているが、「ペルソナ3」はもともとがPS2の作品なのでキャラクターモデリングは全て新規に作り直されている。デフォルメされていて低かった頭身もスマートに生まれ変わり、キャラクターデザインの副島成記氏のイラストが忠実に3Dモデルになっているのだ。筆者が好きだったキャラクター「山岸風花」も本編とはまた違う可愛さで楽しむことができた。
リズムゲームというとどうしても人を選ぶジャンルではあるのだが、本作のゲームバランスは簡単過ぎず難し過ぎずの絶妙な難易度に設定されている。リズムゲームがさほど得意ではない筆者も難易度「NORMAL」では引っかかることなくスイスイ進むことができた。とはいえあくまでNORMALの話であって、HARD以上はかなり歯ごたえのある高難易度となっている。
筆者が思うリズムゲームの良さとは、プレイしていて感じる爽快さだ。稀に音楽とボタンを押すタイミングがめちゃくちゃで、適当にノート(音符)を並べましたというのが丸わかりのゲームもある。その手のものはプレイが完全に目押しになってしまい音楽の意味が全くなく、プレイしていてもどうにものめり込めないのだ。
本作はそんなモヤモヤを感じないバランス調整で、音楽とボタンを押すタイミングがしっかりとシンクロしている。耳で感じたまま音楽にノってプレイできる直感的操作感が最高に気持ちいい。ダンスを成功させていきフィーバーマークが溜まれば仲間が駆けつけ、ステージを大きく盛り上げてくれるのだ。ゲームを進めていくとフィーバー時に参加するメンバーも任意に選べるようになり、いろいろなキャラ同士の組み合わせでダンスデュオが見られるのもファンにはたまらない。
プレイ中は操作に忙しくてダンスを見る余裕があまりないが、じっくり見たい人向けにオート操作の「パーフェクト鑑賞モード」がある。このモードでダンスを観察してみると、振り付けがキャラクターの特徴をうまく捉えていることに感心した。中でも面白かったのが「ペルソナ5」のキャラクター「新島真」のダンスだ。頭脳明晰で生真面目、絵に描いたような優等生の彼女が見せるのは格闘技の型のような舞いだ。合気道経験者という真の設定を活かしたパワフルなダンスを見せるのだ。もちろんほかのキャラクターたちのダンスも持ち味が出ているので鑑賞モードで延々見ているだけでも楽しい。
本作のリズムゲームはキャラクターのダンスだけではない。アニメーションや原作の映像を使ったミュージックビデオ、さらには実写のペルソナミュージックライブの映像なども使用されている。バラエティに富んだ映像でゲームをいっそう盛り上げる。ゲーム開始時は選べる楽曲は少ないがクリアしていくことで次々と楽曲が解放される。そのため、プレイしていて止めどきを見失い何度朝まで没頭したことか。
ファンディスクの域を越えた、底までやり込みたくなるゲーム性!
シリーズのファンなら飛びつかずにはいられない要素――それは、キャラクターの衣装を自由に着せ替えられるシステムだ。好きな見た目にカスタマイズし、その姿でダンスを踊ってくれるというまさに夢のシステム。替えられるのはコスチュームだけではなく、アクセサリーや髪色など細部までカスタムすることができるのだ。
衣装やアクセサリーはコミュを解放していくことで手に入る。ゲームを飽きさせず、とことんやり込ませてくれるなかなかにニクイ作りである。ゲーム内で解放される衣装とアクセサリーだけでも膨大な数があるのに、それに加え後日配信予定のDLCでその数はさらに増えていく。これは着せ替え遊びが止まらなそうである。
難易度問わず全ての楽曲をクリアするとHARDを越える最高難易度の「ALL NIGHT」がプレイできるようになる。ここまでプレイしてきて筆者のウデでは正直HARDですらもかなりの苦戦をしてきた。すなわち最高難易度などプレイする前からクリアできないことは明白である。
絶対クリアできないとわかっていても、ゲーマーとしてプレイしないでは終われない。どの曲にするか迷った末、「ペルソナ3」と「ペルソナ5」の中で最もお気に入りのキャラクターである風花の楽曲「Time」に挑戦することにした。
楽曲のBPM(テンポ)は固定なので、難易度が上がっても流れてくるノートの速度に変化はない。なので始めはハードよりもノートの数が多いだけという印象を受けたが、先へ進むと最高難易度の鬼門が顔を覗かせた。
ボタンと方向キーを同時に押さなければいけない「ユニゾン・ノート」という種類のノートがあるのだが、これがALL NIGHTの最大難関であった。ユニゾン・ノート自体は他の難易度でも出てきたのだが、今までは△ボタンと方向キーの上や×ボタンと方向キーの下など、ボタンと方向キーを同時に押すのが必ず対称の位置だった。しかし、それがALL NIGHTからは△ボタンと方向キー下を同時押しなど、バラバラの位置の同時押しを要求される。
文章だけではあまり伝わらないかもしれないが、とっさにバラバラの位置のボタンと方向キーを同時押しするのは想像以上に難しい。流れてくるユニゾン・ノートに脳と手が全くついていけなかった。プレイを始めて数10回はこいつのおかげでクリアのノルマが達成できないばかりか、曲を最後まで完走するところまでもいけなかった。
半ば意地になりつつプレイにプレイを重ねていると、少しずつではあるがユニゾン・ノートに反応できるようになり、ギリギリではあるが曲の最後まで到達するようになってきた。後はいかにミスを減らしてノリノリ・ゲージを溜めていくかだ。
ALL NIGHTでの減点は手痛く、1回のミスでノリノリ・ゲージがごっそり減ってしまう。なので曲の後半部分でミスをしてしまうと巻き返しが効かず、曲が終わるまでにノルマを達成することができない。
途中でカウントするのをやめたので何度リトライしたか定かではないが、プレイしている内に慣れてきたのか段々とミスも減っていき、ユニゾン・ノートにも対応できるようになってきた。そしてついにはノリノリ・ゲージをMAXの状態で曲の完奏に成功した。夜から挑戦して外が明るくなるまでプレイの末のクリアだ。誰かに自慢したいくらいの達成感である。
プレイしている内に少しずつ上達していく感覚が肌で感じることができ、どんどんこのゲームが面白くなってくる。筆者同様にリズムゲームに自信がない人にもこの面白さを味わってもらいたい。
普段はリズムゲームをあまり遊ばない筆者だが、「ペルソナ」シリーズということもあってか今回はかなりのめり込んでプレイした。まだ最高難易度の曲はほどんど手付かずなので少しずつクリアしていきたいところである。
衣装だけではなく、キャラクターと楽曲もDLCで続々追加していくようなので簡単には遊び尽くせないボリュームだ。グラフィックや音楽、そしてリズムゲームとしての面白さはファンディスクにとどまらない高いクオリティに仕上がっている。シリーズのファンなら2タイトルとも間違いなくおすすめできる作品だ。
話は少し脱線するのだが、今作の進化したグラフィックを目にするとシリーズファンとしてはこのグラフィックスで「ペルソナ3」本編をプレイしたいと思ってしまうところだ。今後リメイクされることを願いつつ、当分はダンスを堪能していきたいと思う。