2018年6月6日 13:06
VRゲームタイトルが持つ魅力の一つは、体を動かして仮想のオブジェクトに直接干渉する体験だろう。ことにリズムゲームのジャンルでは、「Audioshield」や「VRリズムアクションSEIYA」、「初音ミクVR」のように、前方からプレーヤー側へ高速で向かってくるスコアブロックや歌詞の文字などに対してアクションを行なうスタイルのタイトルがリリースされている。
今回紹介する「Beat Saber」も、リズムに合わせてオブジェクトにアクションを起こす作品のひとつ。両手に持ったライトセーバー(的なもの)で押し寄せるスコアブロックを次々に斬り捨てるアクションが爽快なタイトルだ。
開発元はチェコのインディーゲームスタジオHyperbolic Magnetism。発売は5月2日で、本記事執筆時点では早期アクセス期間中。Steamにおける日本円の価格は2,050円。対応プラットフォームはHTC Vive、Oculus Rift、Windows Mixed Realityの3つ。操作にはOculus TouchやViveコントローラー等のVRコントローラーが必須となる。
シンプルなルールと、柔軟な難易度設定
プレイの流れはいたってシンプルで、曲選択画面からプレイしたい曲を選び、4段階ある難易度からひとつを指定すればステージが始まる。左右に持ったコントローラーはゲーム内で赤青2色のライトセーバーにそれぞれ対応しており、対応するセイバーでスコアブロックを斬りつけるとスコアが加算され、コンボカウンターとスコア倍率が増加する。要は色や方向を間違えずに斬りつけられれば得点が増えるというルールだ。
スコアブロックには色のほかに斬りつける方向も設定されており、斬り方をミスするとコンボカウンターがリセットされるほか倍率が減少し、一定以上ミスが続くと曲の進行が中断され、やり直しとなる。またスコアブロックのほかプレーヤー自身が動いて避ける必要のある壁や天井などの障害物もあり、単調さの緩和に一役買っている。
難易度はEasy、Normal、Hard、Expartの4つで、難易度が上がるほどにブロックの数が増え、プレーヤーの運動量も大きく増える傾向がある。続けて失敗しても曲が中断されない「No Fail」オプションも用意されており、普段リズムゲームを遊ばない人にもとっつきやすい設計になっている。
ゲームモードは1人で遊ぶ「Solo」と、ローカルでスコアを競う「Party」の2種類があり、このうちSoloモードでは先に説明した通常ルールの「Standard」、ブロックを斬る方向が指定されない「No Allows」、片方のセイバーだけでプレイできるかわりに難易度が高い「One Saber」の3つのモードが遊べる。
具体的なゲームプレイの一例として、主観でのプレイの様子を動画にしてみた。VR HMDで見ている画面を16:9のアスペクト比でキャプチャしたものだが、VR HMD上の視界の一部を切り取る形でキャプチャしているので、画面がブレて少々見にくくなってしまっているがご容赦いただきたい。
ちなみに冒頭で紹介した動画は、早期アクセス開始に先立ち、アメリカのVRクリエイティブ集団LIVによってアップされたものだ。プレイしている人物とゲーム画面を合成して、ゲームプレイの様子が非常にわかりやすくまとまっている。動画は古いバージョンの「Beat Saber」なので一部形状の異なるブロックがあるようだ。
プレイ感覚は抜群に良いが遊べる曲数は物足りない
リズムに合わせてブロックを次々に斬り捨てる感覚はクセになるものがあり、繰り返しプレイしたくなる中毒性はかなりのものだ。これまでクリアできなかった難易度を完走できたときや、一度もミスをせずにフルコンボを決めたときの達成感は音ゲーならではのものだが、VRタイトルの本作では体全体を使ってプレイする必要があるため、自分なりの目標を達成したときの感動もひとしおだ。筆者は特に高難易度をクリアした際、「やってやったぜ」と自然にガッツポーズが出てしまった。
本作は音ゲーにしては難易度設定が比較的やさしいものの、遊べば遊ぶほどに上達が実感でき、そのうちに高難易度でないと物足りなくなってくる。最高難易度のExpartは、初見では「こんなの無理では」と思うほどの難しさだが、Hardを楽勝でクリアできるようになると、決して無理な難易度ではなくなってくるように思えてくるし、実際、練習すればなんとかクリアできる程度の難易度に調整されている。このあたりは上手いつくりになっていると感じた。執筆時点で遊べる曲は10曲と少ないのが気になるところだが、本作はまだ早期アクセスということもあり、今後のアップデートで楽曲が追加されることにも期待したい。
ユーザーコミュニティによるMod開発も活発
先の段落で述べた通り、本作は遊べる曲が10曲と少ないことがリリース当初より指摘されている。この問題を解決する方法は現在のところ公式には用意されていないが、Modコミュニティ「BeatSaver」(BeatSaberではない)において、有志による追加楽曲の配信が行なわれている。
楽曲のプレイデータは曲本体のoggファイルとJavaスクリプトのjsonファイルで構成されており、テキストエディタなどで開くことによって、ブロックを斬るタイミングや斬る方向の記述を参照できる。難易度は全体的に極めて難しい傾向で、Expart以外の難易度を用意していないファイルも多い。
このほかにも、セイバーのスキンやプレイ画面のカスタマイズなど、ゲーム内のいくつかの項目についてModの開発が進められており、3Dアバターの表示機能を追加することもできるようだ。Modの詳細についてはSteamのコミュニティガイドのほか、Beat SaverのDiscord(英語)でも入手できるので、気になる向きは覗いてみても面白いかもしれない。
なお、見たところ楽曲データやスキンなどについては権利的にアウトなファイルもあるので、Modの入手と使用は自己責任でお願いしたい。
課題もあるがVR体験としては非常に秀逸
流れくるスコアを叩く伝統的な音ゲーの様式に爽快な斬撃の要素を組み合わせた本作は、VR世界で体を動かして遊ぶ楽しさを存分に味わえるタイトルに仕上がっており、初めてVRのゲームを遊ぶ人にも安心しておすすめできる作品だ。
だがひとつ留意しておいてほしいこともある。動画で見て薄々お気づきになっているかもしれないし、実際にプレイすればわかることだが、このタイトルは長時間遊んでいると非常に疲れる。特に高難易度のプレイには激しい動きが伴うので、真剣にクリアを目指して遊んだら、十曲も遊ばないうちに汗だくになってしまう。この辺りはプレーヤーの基礎体力にも依存すると思うが、なるべく水分を補給しながら、小休止をはさみつつ遊ぶことをおすすめしたい。
また、内容の是非はともかく、早期アクセス開始わずか1カ月にして、Modコミュニティの活動が活発化しており、その熱気は、本作の世界的な人気と、今後に関する期待値の高さを伺わせる。「Beat Saber」はバニラの状態(MOD未導入の状態)でも十分遊べるタイトルだが、Modまわりの今後の盛り上がりに関しても、個人的に注目したい。