2017年10月24日 12:00
ゲーミングPCのG-Tuneブランドでおなじみのマウスコンピューターから、VR向けグラフィックスチップを搭載した小型マシン「NEXTGEAR-C」シリーズが発売された。一回り大きめのNUCのような出で立ちの本機は、バッテリは搭載しないがACアダプタで駆動し、持ち運び用途も考えられる軽量でコンパクトな設計だ。試用機をお借りすることができたので使用感やベンチマーク結果などを交えて紹介しよう。
持ち運びできるVR向けPCを意識しているマウスコンピューター
9月13日にマウスコンピューターから発表された「G-Tune NEXTGEAR-C」シリーズは、同社のゲーミングブランドに誕生した新コンセプトのコンパクトPCだ。NVIDIAのグラフィックスチップも搭載しており、持ち運びも可能なサイズと重量でゲームもバリバリプレイできる上VR向けを謳っており、昨今急増するVR需要にこたえる製品だ。
以前にノートPCから液晶モニタとキーボードなどを排除した超スリムPCである「NEXTGEAR-SLIM」を発表しているG-Tuneブランド。「NEXTGEAR-C」のキューブタイプと「NEXTGEAR-SLIM」のスレートタイプ(とでも呼べばよいだろうか?)の違いはあるが、ここ最近は、持ち運びを意識したコンパクトPCの開発にチャレンジしているようだ。
性能の指標となるCPUとGPU
G-TuneシリーズはBTOに対応しており、メモリサイズやストレージの構成など細かいカスタマイズも可能だ。シリーズ内には、何製品かのグレードが用意されており、それをさらにBTOでカスタマイズすることもできる。今回お借りした「NEXTGEAR-C ic100GA1」は「NEXTGEAR-C」シリーズの中でも最上位機種になる。それでは、試用機である「ic100GA1」を軸にほか3製品のスペックもあわせて見ていくとしよう。
【G-Tune NEXTGEAR-C】
NEXTGEAR-C ic100GA1 | NEXTGEAR-C ic100SA1 | NEXTGEAR-C ic100BA1-SP | NEXTGEAR-C ic100BA1 | |
---|---|---|---|---|
CPU | Intel Core i7-7700HQ(4コア8スレッド、2.8GHz、TurboBoost時最大3.8GHz) | |||
GPU | NVIDIA GeForce GTX 1060(GDDR5 3GB) | |||
チップセット | Mobile Intel HM175 Express | |||
メモリ | PC4-19200 DDR SO-DIMM 32GB(16GB×2) | PC4-19200 DDR SO-DIMM 16GB(8GB×2) | PC4-19200 DDR SO-DIMM 8GB(8GB×1) | PC4-19200 DDR SO-DIMM 8GB(8GB×1) |
ストレージ(システム用) | 512GB M.2 SSD(Intel 600p、NVMe) | 512GB M.2 SSD(Serial ATA 6Gbps) | 256GB M.2 SSD(Serial ATA 6Gbps) | 480GB 2.5インチSSD(Serial ATA 6Gbps) |
ストレージ(データ用) | 1TB 2.5インチHDD(Serial ATA 6Gbps、5,400rpm) | - | ||
主なインターフェイス(ディスプレイ) | HDMI×2、DisplayPort×1 | |||
主なインターフェイス(USB 3.0) | Type-A×2(前面)、Type-A×2(背面)、Type-C×1(背面) | |||
主なインターフェイス(USB 2.0) | 4(背面) | |||
主なインターフェイス(イーサネット) | 1000BASE-T | |||
主なインターフェイス(無線機能) | IEEE802.11a/ac/b/g/n(IEEE802.11acは433Mbps)、Bluetooth v4.2+LE | |||
サイズ(W×D×H) | 158×143×87mm | |||
重量 | 約1.6kg | |||
OS | Windows 10 Home 64bit | |||
税込み価格 | 215,784円 | 194,184円 | 172,584円 | 172,584円 |
まず、CPUだが、IntelのノートPC向けであるCore i7-7700HQが採用されている。モバイルラインのメインストリーム向けとしてはハイエンドの製品で、4コア8スレッド、Turbo Boost時には3.8GHzで動作するという高性能CPUだ。「NEXTGEAR-C」にはCPUに合わせてチップセットにIntel HM175 Expressが採用されており、メモリもPC4-19200 DDR SO-DIMMと広帯域なDDR4メモリが搭載されている。試用機のメモリサイズは16GBモジュールが2枚で32GBとかなりの大容量だ。
GPUにはNVIDIAのGeForce GTX 1060が搭載されており、これは、NVIDIAの製品としてはアッパーミドルにあたるクラス。現行のゲームなどをフルHDでプレイする際にはほぼ支障なく楽しめる性能を持っており、VR ReadyとNVIDIAからも謳われている。ちなみに本製品の場合、厳密にはモバイル向けの製品が採用されているが、現在NVIDIAはデスクトップとモバイル向けの製品に同じ製品名を付けている。これは双方に大きな性能差はないとしているためだ。
実際、デフォルトのデスクトップ版のコアクロックとブーストクロックはそれぞれ1,506MHz、1,708MHzだが、モバイル版は1,404MHz、1,670MHzとなっており、コアクロックこそ100MHz以上の差はあるが、ブーストクロックでは38MHzとそれほど大きく差がない。演算処理を行なうコアの数(CUDA)は、NEXTGEAR-Cに搭載されているGeForce GTX 1060 3GB版ではデスクトップ版が1,152個に対して、モバイル版は1,280個だ。ベンチマーク時など数値化した結果を出せば多少の差は出るものの、ゲームプレイ時などに大きな差として体感できないレベルだろう。
ゲーミングPCのキモと言われるCPU・GPUともに高性能なチップが搭載されている。スペックだけを見れば負荷の高い3Dゲームの4Kでのプレイは、多少設定を低負荷にしなければならないかもしれないが、フルHDやVRでの使用に支障がないという印象だ。
使い勝手を考えた装備
次にスペック表のストレージを見てみよう。試用機の「ic100GA1」では、システム用に512GBのIntel SSD 600p、データ用に1TBの2.5インチHDDが搭載されている。Intel SSD 600pはM.2 SSDで高速なNVMe接続に対応している。
「ic100GA1」以外では、M2 SSDの採用もあるものの基本的にはすべてSerial ATA 6Gbpsでの接続となり、その差は大きい。具体的にはIntel SSD 600pの公称値での読み出し速度は1,775MB/s、一般的なSerial ATA接続のSSDでは500~600MB/sなので、歴然とした速度差だ。この点は購入時に注意が必要なところで、場合によっては自分にとって都合のよい形にBTOで対応するほうがよいだろう。
筆者としては、普段よくプレイするゲームは高速なストレージに、あまりプレイしないゲームをHDDにインストールするのがお勧めだ。なんにせよ、M.2と2.5インチの2つのストレージを搭載できるため、使い方の選択肢が増えるのはうれしいところだろう。
次に、インターフェイスだが、小型筐体としては豊富に揃っていると言える。たとえばUSBポートだが、USB 3.0が合計5つ。うち1つはType-Cコネクタだ。USB 3.0 Type-Aは、前面と背面に2つずつ配置されているので、設置時でも簡単にアクセスすることができる。USB 2.0ポートも4つ用意されているので、キーボードやマウスなどを接続しても、まだ余ることになる。
また、スペック表には入れなかったが、前面にSDメモリーカード用のスロットが用意されているため、いろいろと重宝しそうだ。通信インターフェイスに関しては、最新のIEEE802.11ac(433Mbps)にも対応したBluetooth一体型モジュールを搭載。当然1000BASE-Tのコネクタも用意されている。特筆すべき点は、ほかのインターフェイスと引けを取らない映像出力の豊富さだ。HDMIポートが2つにDisplayPortが1つ用意されており、これはVR向けを意識しているためだろう。
サイズは幅が158mm、奥行きが143mmのほぼ正方形。高さは87mmとだいぶコンパクトだ。重量も約1.6kgと、グラフィックスチップを搭載したノートPCと比較しても軽量な部類に入る。
ちなみに、冒頭で一回り大きめのNUCという言葉を使ったが、インターフェイスの数においてはかなり豊富だ。「一回り大きめ」だが、内蔵できるストレージや搭載しているインターフェイスに関しては、VR向けのものも含めて使い勝手が重視されており、充実した機能を持つモデルということがわかる。サイズと重量を考えれば、モニタのある所に持ち運んで使うといった用途も考えられるため、VRのデモで社内から持ち出す場合などでも使えそうだ。
ベンチマークで実力をチェック
せっかく実機をお借りすることができたので、ここからはベンチマークソフトを使った性能のチェックをしていこう。試用機は「NEXTGEAR-C」の最上位機種となる「ic100GA1」であることを重ねて伝えておく。
PCMark 10
Futuremarkが提供する定番ベンチマークソフト。日常的なPC作業やデジタルコンテンツを扱う性能を調べることができる。具体的にはアプリケーションの起動速度やWebコンテンツの表示、ビデオ会議、ワープロ・表計算・画像編集・動画編集ソフト、3Dレンダリングなどをどれくらい快適に扱うことができるかを調べている。
筆者は、ここ数カ月、この「PCMark 10」を利用しており、どのようなPC構成だと、どのくらいのスコアが出るということはだいたいつかめてきているが、初めてや利用し始めたばかりの読者の場合、「PCMark 10」のスコアの意味は掴みにくいかもしれない。結果として総合スコアは4,996と約5,000という結果になったが、詳細はベンチ結果にあるリンク先の「SHOW RESULT DETAILS」をクリックすれば確認可能だ。
総合得点についてのみ言及しておくと、この4,996というポイントは現行のPCとしてはかなり高めの数値だ。詳細の傾向から言うとCPUはもちろん、高速なストレージと大容量メモリの影響を大きく感じられる。
PCMark 10 | |
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測定数値 | 4,996 |
3DMark
こちらもFuturemarkが提供する定番ベンチマークソフトだが、「PCMark 10」がPC全体の性能を測るのに対し、3Dゲームに特化したベンチマークを行なっている。Time SpyはDirectX 12を利用したベンチマークで負荷がとくに高い。結果は約3,500ポイントとなっており、そこそこの数値だ。ただし、3D処理の負荷の大きなゲームの場合、フルHDなら高品質な描画設定でも問題なくプレイできそうだが、4Kでは難しそうな数字と言える。DirectX 12の機能を駆使した美麗な3D描画でゲームを楽しみたいのなら、モニタの解像度はフルHDにとどめておくほうがよいだろう。
ところでこのTime Spyは、DirectX 12に対応するため、リリース当時にはなかったテスト項目だ。長く「3DMark」を利用しているのであれば、以前から利用できたFire Strikeの結果のほうがピンと来るかもしれないので、そちらも参考にしてほしい。
3DMark(Time Spy) | 3DMark(Fire Strike) | |
---|---|---|
測定数値 | 3,486 | 9,215 |
VRMark
ここから2つほど、VRの性能をチェックするためのベンチマークソフトを使ってみよう。「VRMark」は「PCMark 10」や3DMarkと同じく、Futuremarkが提供するベンチマークソフトだ。VRMarkでは、VR対応のヘッドマウントディスプレイを所持していなくても、VR環境を想定したテストを行なえるBenchmark Modeと言うものが用意されているのでそちらを利用した。
結果は約6,000ポイントとなっており、VRを利用する上では、十分な性能を持っていることがわかる。これは、「VRMark」でのVR Readyの性能を備えているかの指標のボーダーラインが5,000に設定されているためだ。
VRMark | |
---|---|
測定数値 | 5,944 |
SteamVR Performance Test
結果は6.0(高い)となっており、VRレディと言う結果。SteamVR Performance Testでも、VR Readyを証明することができた。
CINEBENCH R15
「CINEBENCH」は3DレンダリングでCPUの性能を測るのに特化したベンチマークソフト。マルチコアマルチスレッドの「CPU」とシングルコアでシングルタスクの性能を見る「CPU(Single)」2つを計測した。CPUの結果は728とモバイル系のCPUの値としてはトップクラスの値だ。現在のデスクトップのメインストリーム向けのハイエンドモデルCore i7-7700Kが970前後、Core i7-7700が860程度であることを考えると、十分な結果だ。
テスト項目 | 測定結果 |
---|---|
CPU | 728 |
CPU(シングルコア) | 151 |
SuperPosition Benchmark
「Unigine」の開発したゲームエンジン、「UNIGINE2」を利用したベンチマークソフト。8Kの超高負荷テストも行なえるが、今回はフルHDのみをテストした。結果は7,410ポイントで、平均フレームレートが55.43fpsと60fpsには少し届かない。FPSなどのアクション性の高い3Dゲームでは、60fpsが快適と言われているため、少し目標に届かなかった結果だ。ただし、このベンチマークは比較的新しく、フルHDでもかなりの負荷がかかることを追記しておく。
SuperPosition Benchmark | |
---|---|
測定数値 | 7,410 |
フレームレート | 55.43fps |
CrystalDiskMark 5.2.1
「CrystalDiskMark 5.2.1」はストレージの性能を見るためのベンチマークソフトだ。本機ではCドライブがNVMe接続のM.2 SSD、Intel SSD 600p(512GB)と1TBのHDDが搭載されているので両方計測した。SSDの結果は見てのとおり、かなりの好結果で、Sequential Readで1,800MB/sをオーバー。ライトでも600MB/s近く出ている。HDDはこのSSDと比較してしまってはかわいそうだが、Sequential Readで110MB/s強。2.5インチの5,400rpmの製品ということで、HDDの中でも遅いのは仕方ないが、Writeもほぼ同様の約110MB/sが出ている。
「バトルフィールド 4」
さて、これ以降は、実際のゲームなどを想定したベンチマークを行なってみよう。「バトルフィールド4」は、すでに最新タイトルとなる「バトルフィールド1」が発売され古くなってしまったが、それでも重量級の3D FPSゲームだ。ベンチマークの機能はないのでFrapsという、平均フレームレートを計測できるユーティリティを利用した。また、テストではキャンペーンのTASHGARを開始し、主人公たちが車で移動しているシーンの1分間平均フレームレートを計測した。描画負荷はプリセットがあるため、フルHD、フルスクリーンの状態で「最高」、「高」、「中」の3つを利用している。
結果は、すべてのプリセットでアクションゲームを快適に遊ぶことができる60fps以上をマーク。設定を最高にしても、平均82.95fpsという数値をマークした。4Kの最高設定で60fpsをとることはできなそうだが、フルHDでプレイするには十分なフレームレートだ。
最高 | 高 | 中 |
---|---|---|
82.95fps | 113.283fps | 159.75fps |
「『ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター』ベンチマーク」
「ファイナルファンタジーXIV」の公式ベンチマークソフト。ゲームの動作環境に問題ないかをインストール前にチェックできるだけでなく、ゲームエンジンを使ったベンチマーク機能を備えている。描画負荷はプリセットを利用して「最高設定」、「高品質(デスクトップPC)」、「高品質(ノートPC)」の三つを利用して測定した。本ベンチマークでは7,000ポイント以上が出ればゲームを非常に快適にプレイできるという結果になるのだが、1番負荷の高い最高設定でも8,300ポイントを上回る結果となった。
最高品質 | 高品質(デスクトップPC) | 高品質(ノートPC) |
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8,340 | 9,055 | 10,316 |
非常に快適 | 非常に快適 | 非常に快適 |
ゲーマーになら問題なくお勧めできる
小さな筐体にパワフルなCPUとGPU。VRデバイスを使いやすい豊富なインターフェイスを備える「NEXTGEAR-C」は、独り暮らしやPCの置き場所に困っているゲーマーにお勧めだ。小さな筐体は、必要であればVRのデモのような持ち出し用としても利用できるだろう。4Kモニタのフルスクリーンで、バリバリ最新のゲームを美麗なグラフィックスでプレイするのは難しいが、ヘビーユーザーのセカンドマシンとしても使うことができる。コンパクトでシックなデザインの筐体は、リビングなどに置いても目立たないので、家族で利用するPCとしても活躍することができるだろう。「NEXTGEAR-C」はさまざまなシーンで活躍できるコンパクトゲーミングPCだ。