2017年7月31日 07:00
今回、「名作発掘」として取り上げたいのは、2013年発売(PS3版は2014年に価格改訂版も発売)の「ヒットマン:アブソリューション」だ。シリーズ最新作である「HITMAN」が発売される前に、ぜひ「ヒットマン:アブソリューション」の魅力をアピールし、そして「HITMAN」への期待を盛り上げていきたい。
本シリーズの大きな特徴はプレーヤーは伝説の暗殺者「47」になり、暗殺を行なうことである。47は様々な殺人術に長け、多彩な武器を使いこなし、多種多様な衣装を身にまとうことで、他の人に簡単に見破られない変装術を身につけている。ステージには様々な暗殺に使えるオブジェクトが用意されており、47は能力と周囲の状況を巧みに活用し暗殺を実行していくのだ。
「ヒットマン:アブソリューション」はシリーズの中ではストーリー要素を強調した“異色作”に当たる。47は彼が所属する組織「エージェンシー(ICA)」に、長年彼の任務をバックアップをしてくれた女性エージェント「ダイアナ」の暗殺を依頼されるのだ。そして彼自身が組織を裏切ることとなり、組織と対立することとなる。シリーズならではのシステムを活用しながら新しい面白さを追求した作品である。
筆者は発売時期に本作のレビューを執筆している。ゲームシステムの詳細はこちらを参考していただくとして、本稿では今一度「ヒットマン:アブソリューション」と、シリーズの魅力を紹介していきたい。
なお、最新作の「HITMAN」は、現在「プロローグ」を配信中である。本稿でシリーズに興味を持った人は、まずこの「プロローグ」を試してみてはいかがだろうか。
伝説の暗殺者47、組織と対立する新たな戦い
「ヒットマン:アブソリューション」では47はダイアナから託された謎の少女「ヴィクトリア」を組織から守るために戦っていくこととなる。依頼を受けて暗殺を行なっていくという従来のシリーズの面白さとは少しだけ異なる、ステルスアクションとしての面白さをより強調した作品と言える。
その部分がより強調されているのがダイアナを誘拐しようと企む軍需産業デクスター・インダストリーズのCEO「ブレイク・デクスター」に罠にはめられたシーン。47は燃えさかるホテルの1室から周りを警官に追われた状態で逃げなくてはならない。警官達が探索している中を巧みにすり抜けていく47、ヘリからの銃撃をくぐり抜けると言った派手なシーンも用意されている。
放棄された図書館に逃げ込んだ際は、警官達が電気を復旧させようと悪戦苦闘する中を進む。途中でいきなり明かりがついたり、再び消えたりとドキドキを味わえる。逃亡はさらに人でごった返す駅にまで続いていく。駅では電車が来る間警官達の見張りをやり過ごさなくてはならない。できるだけ警官の目にとまらないように人混みを利用するのはスリル満点だ。
この他にも孤児院を襲撃した悪党に対して容赦なく裁きの鉄槌を下すシーンもある。幸い子供達は外出していたものの、相手は職員や医師を容赦なく殺した悪党共であり、思わず敵を倒す際に力が入ってしまう。
また、「エージェンシー」が差し向ける暗殺チーム「セインツ」と戦う事もある。セインツは強力な火器でド派手に暴れ回る“壊し屋”で、修道女の恰好をしている女の戦闘集団だ。正面切って戦う事には慣れているが、47の卓越した隠密術と暗殺術の前には隙を見せる。全く性格の異なる暗殺者の“対決”が行なわれることとなる。力を前面に出すセインツ達に対し、47の“サイレントアサシン”としての能力をフルに活用できるところが楽しい。
このように「ヒットマン:アブソリューション」はこれまでの“ターゲットの暗殺”とは少し趣が異なる場面がふんだんに取り入れられている。ただ、こういったシーンでも活用するのはステルステクニックだ。従来のシステムを活用しつつ、新しい面白さを創り出そう、というところが、「ヒットマン:アブソリューション」の面白さなのだ。
物陰から物陰へ身をかがめて素早く移動するのは本作の基本動作だ。相手の背後を取ることで敵を瞬殺することができる。47は卓越した暗殺者だがスーパーマンではない。また、FPSのように正面からの銃撃戦で相手をなぎ倒すことはしない。隙をつき、速やかに暗殺していくのだ。
警官など敵を倒した後服を奪うことで“変装”ができる。こうすることで周囲の人物に警戒されることなく移動し、状況を確認することが可能だ。ただし警官仲間など変装と同じ立場の人には怪しまれてしまうので近づきすぎないなど注意が必要だ。さらに「インスティンクト(直感)」という能力を使えば、壁越しに相手の位置を読み取ったり、相手がどう移動するかなども把握できる。
「ヒットマン:アブソリューション」はこういった暗殺能力を駆使して敵を撃退したり、危機を逃れたりと幅広い活用を可能にしている。そしてもちろん、“暗殺”のためにも活用する。本作はユニークな要素を多く盛り込みながらも、本作ならではの醍醐味である“暗殺”もきちんと楽しめるのである。
卓越した暗殺者47の“仕事ぶり”を追求できる楽しさ
47は凄腕の殺し屋である。彼はまるで全ての事象がわかっているかのように行動できる。「ここをターゲットが通りかかる」、「ここが通れる」、「ここに爆弾がある」、「彼はここで食べ物をつまみ食いをするので毒を仕掛けていれば確実に殺せる」……全ての事象がわかっているかのように行動し、そしてターゲットを消していくのである。
今回はムービーを用意してみた。本作の中盤のミッション「レニーのカミソリ」だ。デクスターの息子レニーと彼の仲間達を1人1人倒していき、そして最後に情報を吐かせるためにレニーを生け捕りにする。流れるような手並みでターゲットを始末していく47の姿をまず見て欲しい。
ターゲットはレニーを入れて6人。47がまるで全てを把握しているかのように動き、ターゲットを始末しているのがわかるだろう。最初のターゲットはマーケットの2階に住んでいるタイラー。47はラジオで店員の注意を引き2階に潜入、ガス台のスイッチを入れてからそこにあった爆弾を起動、タイラーが来た瞬間を見計らって作動させる。
2人目のギャビンは警官に化けて隙を見てオイルタンクに突き落とす。入り口を警備している警官を電気ショックで始末すると、タイミングぴったりの所に3人目のターゲットランドンが目の前を通りかかる。警官の姿をしている47に気が付かないまま、ランドンは絞め殺されてしまう……。
なぜこのような暗殺ができるのか? それはプレーヤーが何度も試行錯誤し、ステージをプレイし直し、キャラクターの行動を覚え、そして暗殺方法を見つけ出したからだ。練習し、自分の中でのベストパターンを見出し実行する。そうすることで超人的暗殺者47ならではの暗殺シーンを楽しむことができるのである。
もちろん今回のムービーだけが正解ではない。難易度が高くなるが銃器をガンガン使って殲滅しても良いし、全員絞殺にこだわることもできる。途中で警官に使った電気ショックをターゲットに使っても良いし、クルマの下敷きにするなども可能だ。後半のメイソンは立ち小便をする場所に電線を落としておいて感電死させることもできる。様々な暗殺をいかに華麗にこなすか、そういったやり込みプレイが楽しめるのだ。
「ヒットマン:アブソリューション」はストーリー性と、シナリオに沿った戦いの多い作品であるが、このように自分なりの暗殺を楽しめるステージもきちんと用意されている。さらにオンラインの「コンストラクトモード」では、他のプレーヤーが考えた暗殺方法に挑戦するというユニークなプレイをすることもできる。このモードではプレーヤー自身も“お題”を出すことが可能だ。他のプレーヤーが考えつかないようなユニークな方法でターゲットを倒し、世界中のプレーヤーに「俺と同じ事ができるか?」と挑戦させることができるのである。
そして最新作「HITMAN」は、その名の通り“原点回帰”を目指している。サンドボックス型のフィールドで、様々な動きを見せるターゲットに対し、どうアプローチするかを試される。そのためにはターゲットや周りの状況をじっくり観察し、状況を調べていかなくてはならない。「ヒットマン:アブソリューション」はフィールドが細かく区切られていたが、最新作では広大なフィールドが用意されている。複数のターゲットを狙う場合はそれらの「組み合わせ」も求められるだろう。
「HITMAN」と「ヒットマン:アブソリューション」は同じ“暗殺”をテーマにしていながら面白さが異なる。どちらも非常に楽しい作品だ。シリーズに興味を持ったら、この2つの作品に挑戦し、47の世界に浸って欲しい。
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