PS3/Xbox 360/PCゲームレビュー
ヒットマン アブソリューション
人々の何気ない会話まで作り込まれたステージ
格闘、狙撃、偽装、多彩な方法でターゲットを暗殺せよ!
- ジャンル:
- ステルスアクション
- 発売元:
- 開発元:
- IO Interactive
- プラットフォーム:
- PS3
- Xbox 360
- WIN
- 価格:
- 7,980円
- (PS3 / Xbox 360)
- 79.99ドル
- (WIN)
- 発売日:
- 2013年1月24日
- プレイ人数:
- 1人
- レーティング:
- CERO:Z(18歳以上対象)
(2013/1/24 10:00)
伝説の暗殺者エージェント47が帰ってきた! 「ヒットマン アブソリューション」は特にヨーロッパで人気が高い「ヒットマン」シリーズ最新作だ。本シリーズは“暗殺”をテーマに自由度の高さ、仕掛の面白さ、ストイックな雰囲気で人気を集めた。
「ヒットマン」シリーズは2000年に第1作「Hitman: Codename 47」が発売され、これまで4作が発売された。2007年にはゲームを原作とした映画も製作されている。「ヒットマン アブソリューション」はシリーズ第5弾に当たる。ゲームエンジンを一新し、更なる自由度と、快適な操作性、そして美しく迫力のある“場面”を作りだした、注目の作品だ。
いかに他の人に気づかれず、巧妙に、ターゲットのみを暗殺し、そしてスマートに現場から脱出するか。“サイレントアサシン”とまで呼ばれる“殺しの手口”を実行することができるか。「ヒットマン」シリーズの楽しさはここにある。本作ではさらに“1人の少女を救う”という目的と、個性的な悪役達という濃密なストーリー要素が加わっている。レビューでは作品の魅力に迫っていきたい。
暗殺者47唯一の理解者の裏切り。少女ヴィクトリアの秘密とは?
「ヒットマン アブソリューション」最初のミッションは、「ダイアナ・バーンウッドの暗殺」である。シリーズのファンにとって、とてもショッキングなミッションだ。ダイアナは暗殺組織「エージェンシー」のオペレーターであり、これまで47のバックアップを行なうだけでなく、47の唯一の理解者として、シリーズのプレーヤーにとってもかけがえのない存在だ。いままで秘密だった素顔も今作で初めて明らかとなる。
彼女は突然エージェンシーを裏切り、全ての記録を抹消、組織の貴重な“資産”である「ヴィクトリア」という少女を連れ去り行方をくらました。数カ月後、エージェンシーはシカゴのミシガン湖のほとりで厳重な警備の元潜伏しているダイアナを発見。47にダイアナの暗殺と、ヴィクトリアの奪還を命じてきたのだ。何故ダイアナは裏切ったのか、ヴィクトリアの秘密とは何か? ゲームの冒頭でプレーヤーの前にいきなり大きな謎が提示される。
そして、ヴィクトリアが持つ“ある秘密”のために、47もまたエージェンシーを裏切ることとなる。エージェンシーは47に刺客を差し向ける。さらに軍需産業デクスター・インダストリーズのCEO「ブレイク・デクスター」がヴィクトリアの情報を掴み、その手を伸ばしてくる。47はヴィクトリアを守るために戦っていく。
これまでの「ヒットマン」は多彩なステージを舞台に、いかに対象を暗殺していくか、という要素がメインのゲームだった。「ヒットマン アブソリューション」はここに、“逃亡劇”という要素を加え、バラエティ豊かな作品とした。劇中、デクスターの罠にはめられた47は、警官が集まっているただ中に放り込まれてしまう。いかに逃げるか、緊張感の高いステルス戦が楽しめる。
もちろん、“暗殺”要素もたっぷりだ。序盤の「キング・オブ・チャイナタウン」は特に開発スタッフの気合いを感じられるステージだ。群衆とやかましい屋台でごった返すチャイナタウン。ここであたりを取り仕切る“キング・オブ・チャイナタウン”を暗殺するのが目的となるが、暗殺方法は非常に多彩だ。つけ回して人気の無いところで襲うというオーソドックスな方法はもちろんのこと、スナイパーライフルを入手して狙撃したり、車に爆弾を仕掛けておびき寄せたり、さらには屋台のつまみ食いを利用してフグのキモを食わせるという奇抜な暗殺もできる。
見事な暗殺やスニーキングを実現させるには、プレーヤー自身の観察力と、様々な方法を試せる柔軟な思考力が求められる。トライアンドエラーを繰り返し、成功のための方法を見つけたとき、パズルの答えを発見したような爽快感が味わえる。この楽しさこそが本作の大きな魅力といえるだろう。「次は誰にも発見されないでやろう」、「直接手を下さずオブジェクトを使って事故に見せかけよう」、「変装を使わず初期の黒いスーツで乗り切ろう」などなど、自分のチャレンジを実現させてより完璧なゲームプレイを目指すのが本作の醍醐味である。
こう書くとかなり難しいゲームであるように思われるかもしれない。実際、過去の「ヒットマン」シリーズは難易度の高いゲームだったが、今作では詳しくは後述するが「インスティンクト」というシステムで難易度を下げ、かつ47とプレーヤーの一体感を強めている。このシステムにより、プレイ中様々なヒントが提示され、プレーヤー自身が熟練の暗殺者になったような観察力と直感力を得られるのだ。またチェックポイントも細かく、敵に警戒されても逃げることができる場面も多い。最初は強引にクリアし、後からより完璧な方法を求めてトライする、という方法もありだ。
なお、ゲームの難易度は5段階から選ぶことができる。難易度を上げることで、敵が増え、インスティンクトやヒントも少なくなる。初心者から、高い難易度を求めるこだわりのプレーヤーまで様々なプレイスタイルに対応している。ステージごとのリプレイも可能なので、難易度を変えてより高みを目指すようなプレイも可能だ。
さらに「コントラクトモード」というユニークなゲームモードがある。これはゲームのステージをストーリーとは関係無しに“暗殺マップ”として使用し、ターゲットを指定した方法で倒すというやり込みプレイ用のモードで、プレーヤー自身がエディットして、全世界のプレーヤーに挑戦することも可能だ。これまでの「ヒットマン」ファンを喜ばせ、さらに新しい楽しさに目覚めさせてくれるモードである。
熟練の暗殺者と直感と分析力をプレーヤーにもたらす「インスティンクト」
次に、「ヒットマン アブソリューション」のゲームシステムを紹介していきたい。本作の基本はステルスアクションだ。人から見られず、物陰から物陰に移動していく。さまざまな人がいる場所では47の基本的な服装である黒いスーツでも注意を惹かないが、警備が厳重なところでは呼び止められ、さらに警戒させると銃を突き付けられてしまう。できるだけこういう事態は避けたい。
47の行動に注視しているキャラクターがいると、画面に黄色いゲージが出る。これが一定量を超えると呼び止められてしまう。またレーダーには周囲の人物の位置と向きが表示されるので、これらを読み取り、できるだけひと目につかないルートを探すのが得策だ。周囲を歩き回ったり、インスティンクトでチェックすることで、抜け道が見つかることも多い。
「ヒットマン」シリーズの大きな特徴として“変装”がある。警官の制服や、コックの服装、ガードマン達が着ている服など、これらを奪って身につけることで、47は他のキャラクターの目を欺くことができるのだ。服を奪うには誰も見ていないところで対象をノックダウンさせるのがポピュラーだが、更衣室などには着替えの服がある場合もある。
変装で注意したいのは、例えば警官の格好をしているときに、他の警官に会うと注意を惹いてしまうことだ。調理場に侵入するとき、警官の格好をしていれば調理師達は偽警官だと気づかないが、調理師の格好をしていれば同僚ではないことにすぐ気づかれてしまう。短時間ならばインスティンクトを使うことでごまかせるが、状況に合わせた服を選ぶことで、周囲から全く警戒されなくなる。変装は相手を欺いて目的地に進む緊張感と楽しさを感じさせてくれるシステムだ。
インスティンクトは「インスティンクトゲージ」がある限り使用できる。使用することでネガフィルムのように視界が変わり、47は壁の向こうの人を感知できたり、注視している人が進んでいく方向を炎のような線で確認できる。また、変化を起こせるオブジェクトや、通り抜けできる通路などがハイライトされる。インスティンクトは暗殺者ならではの直感をプレーヤーに視覚化させるシステムだ。ゲームにおいては大きなヒントとなる。インスティンクトゲージは使用する度に減少し0になると使えなくなる。暗殺したり、目的を達成することでゲージは回復する。
また、インスティンクトゲージを大量に消費することで、「ポイントシューティング」がつかえる。これは時間の流れをスローモーにし、敵をポイント、解除と同時に瞬時に射撃を加える。数人の敵をポイントしておけば、敵の全てを一瞬で撃ち倒すといった事も可能だ。非常に派手で、47の超人的な能力を実感できるシステムだ。
もちろん、ステルスだけでなく、全ての敵を倒すような進め方もできる。正面から突破するような方法をあえて試すのも面白い。警官隊や、追っ手のエージェント相手に1人も逃さない決意で戦うというアプローチもありだろう。プレーヤーの思うまま試し、そして実現する方法を模索していく、それこそが「ヒットマン アブソリューション」の楽しみ方なのだ。