Electronic Entertainment Expo 2010現地レポート

セガ、「VANQUISH」の秘密を三上真司に聞く!
主人公サムのモデルはキャシャーン? 裏話満載のインタビューをお届け


6月15~17日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 セガとプラチナゲームズが開発中の、PS3/Xbox 360用シューティング・アクション「VANQUISH」がロサンゼルスで開催されたE3にプレイアブルで出展された。

 残りわずかな資源をめぐる争いの中、プレーヤーは主人公サムを操って、敵を倒していく。E3の会期中、ディレクターの三上真司氏を囲む合同インタビューが開催された。インタビューでは、今回のプレイアブルでは公開されていないステージを使ったプレイデモを見ながら、三上氏自らゲームのポイントを説明してくれた。その後、質疑応答で思わぬ裏話も飛び出した。




■ 「ブースト」と「スロー」、緩急組み合わせた動きが爽快感を生み出す

ブーストを使うと、高速で移動できる
ステップとジャンプを組み合わせて、かっこよく「スローシステム」を使いこなそう

 「VANQUISH」は欧米市場を意識して作られた本格的なサードパーソンシューティング(TPS)。「BAYONETTA(ベヨネッタ)」でトリッキーな格闘を見せてくれたプラチナゲームズが、セガとタッグを組んで海外市場を狙う野心作だ。舞台は資源が枯渇し、わずかに残った資源をめぐって世界中が緊張に包まれている近未来。プレーヤーは、バトルスーツに身を包んだ政府機関のエージェントサムを操って、ミッションを遂行していく。

 サムは同時に3つまで武器を持つことができる。武器は十字キーでリアルタイムに変更可能。4つめの武器であるグレネードは十字キーの左を押して使う。グレネードは2種類ストックしておける。今回、三上氏がお勧めするのは、ロボットの敵をしばらく動けなくさせる特殊なグレネード。開発内部では「しびれグレネード」と呼ばれていたそうだ。

 本作の特徴は、ブーストを使った高速移動と、ステップから始まるスローモーションの戦闘。ブーストを使った移動は、カバーからカバーへ素早く移動するためのもの。「できるだけアクティブに動いて欲しい」(三上氏)という意図のもとに導入された。前方にいる敵と戦う普通のシューティングゲームと違い、四方八方から弾が飛んでくる。「慣れるまでは大変だが、慣れると快感になります」というのはいかにもハードゲーマーの三上氏らしい意見だ。

 「スローシステム」はステップして銃を構えると敵の動きがスローモーションになってゆっくりと狙いを定めることができる便利なシステム。ジャンプ中にも使用できるので、カバーを飛び越えたタイミングでスローを使用して前方の敵を撃つなど、かっこいいプレイが可能だ。ただし、エネルギーを消費しきってしまうと、オーバーヒートの状態になってしばらくはスローもブーストも使えなくなるという弱点もある。

 ステージの中で弱っている仲間を助けると、弾薬をもらえる。何度も助けると、何回でももらえる。ただし、そこまで弾に困ることはなさそうだ。「今回弾の補充をほとんどしていないですが、弾切れ自体はあまり起きないようにしています。僕が作るとすぐに弾がない弾がないと言われるので、今回はそういうことがないようにしました。今回はたんまりありますから」(三上氏)。マガジンを拾っていると、たまに武器をグレードアップするアイテムが出ることがある。

セガブースの「VANQUISH」コーナーはいつも盛況だった

 また、マガジンが満タンの時にさらにマガジンを拾うと少しだけ武器が強化される。「武器をレベルアップさせたい人はずっとその武器を使わずに、マガジンを拾いまくっていればいいわけです」(三上氏)。こうして強化した武器は、ノーマル以上の難易度の場合、そのステージで最初に死んだ時にレベルが1つ落ちてしまうから要注意だ。「何回も死んでしまうと、どんどんレベルが下がって辛かったので、マスター直前に修正しました」(三上氏)。

 難易度は、「イージーオートマ」、「イージー」、「ノーマル」、「ハード」、「ゴッドハード」の5段階。「ノーマルはやや難しめになっています。ゲーマー寄りですね」と三上氏。「イージーオートマ」はゲームに慣れていない人向けのモードで、一度敵に照準を合わせると、その後は近くの敵に自動的に合わせてくれる。「ゲームとしてたぶん、自分でやっている感がないからいまいちかなと思っていたのですが、実際に組み込んでみると意外と楽チンで気持ちいいのです」と三上氏。

 デモプレイに使われたのは、瓦礫が転がる荒廃した都市だが、他に移動車両に乗って戦うステージやずっと坂道が続くステージもある。坂道が続くステージは「見ただけでしんどいステージが欲しいと思って、ずっと上り坂にしました」(三上氏)ということなので、プレイをする際には三上氏の意地悪もたっぷり味わって欲しい。

 また、今回はおまけとして、スコアが導入されていて、自分のプレイに点数がつけられる。ハードゲーマーに点数を競って遊んで欲しいという配慮からだそうだ。




■ 質疑応答では、意外な事実が続々判明!

四方八方から弾が来るので、位置取りが重要だ

Q: 海外市場を見据えての企画と言うことで、日本クリエイターの意気込みみたいなものを聞かせてください

三上氏: 単純に僕の好きなゲームが海外よりのゲームと言うこともあって、今回ワールドワイドに売れるものでということでたまたまマッチしたのです。意気込みはあえて言うなら、売れてほしいということです。

Q: 最近遊ばれて面白かったゲームのタイトルや、参考にされたタイトルはありますか?

三上氏: 参考にしたタイトルは「Gears of War」や「Call of Duty」ですね。アニメで言えば「キャシャーンですね」

Q: そういうタイトルに負けないものを作りたいということですか?

三上氏: そうですね、今回シングルプレイしかないので、シングルプレイの作りこみや、やりこみみたいなところは自信を持って送り出せると思っています。

Q: 海外ではマルチプレイが主流になっているところがあると思いますが、マルチプレイを入れなかった理由はなんですか?

三上氏: 入れなかった理由は、いままでノウハウがなかったので。今回プラチナゲームスとしては初めてPS3を自社でやるということで、まずはシングルでクオリティの高いものを作って、それからオンラインへということです。両方やっちゃうと、両方中途半端になってしまいますからね。とりあえずプレイステーション 3で最高のグラフィックスを目指そうというところです。無理だなと思った時点から、シングルプレイに特化した形にしているので、これを途中からオンラインプレイのマルチにするというのは逆に非常に難しいというか、プレーヤーのアニメーションから効果とか当たりの取り方とかが全部破たんするので1から作り直した方が早いくらいですから。

キャシャーンがモデルだというサム。言われてみれば似てなくもない?

Q: シングルプレイということもあるとおもいますが、今回かなり主人公の装備がヒロイックですね

三上氏: キャシャーンですから。本当にキャシャーンだったのですよ。だから本当は銃ではなくて殴ってました。でもそれは海外では厳しいですよね(笑)。もともとシューター時々キャシャーンというコンセプトだったのですよ。「時々」が、「もっとたまに」くらいになって、シューター、たまにキャシャーンになりました。そういうヒロイックなものをしたいというコンセプトに、主人公は白に黒いラインをいれたいとか、ヘルメットはあまりデカくしたくないとかいうところがあります。

Q: それでもシューターの方に寄っていたのは、キャシャーンにするのをあきらめたからですか?

三上氏: 格闘部分はほとんど前作そうだったので、逆にいやだったのです。ただキャシャーンはもともとスリムですから、あまりごつくしたくないというのがあって、もともとデザイナーが細いキャラクターしか描かないので、実際にはデザインしたキャラクターよりもかなり肉厚が太くなっているんですよ。

Q: ゲームの世界観ですが、今まで登場しているステージはどれも都市でしたが、ジャングルのようなステージはないのですか?

三上氏: 森っぽいところはあります。ただすべてが有機的なものを詰め込んだステージは、簡単に言うとこれだけのボリュームを期間内に作れないと。ただ、都市だけでは辛いので、「スター・ウォーズ」みたいな森のステージがあったり、ダムのステージがあったりといろいろはあるのです。ただ基本はだいたいこういう都市ですね。

Q: 公開されたデモで、主人公が敵にミサイルをねじ込むようなコンボを決めていましたが

三上氏: あそこは、QTシステムです。当初はもう少したくさんQTを入れる予定だったのですが、作り手側からみて費用対効果が薄いということで、かなり削りました。基本的には最初のボスの辺りにあるだけで、それがメインと言うわけではないです。おまけの中のおまけです。全体ではほとんどQTのシステムを使うところは最初にしかありません。最初に割と強い大きいボスが出ちゃったので、あれを派手に倒したいと思った時、そこには入れてもいいんじゃないかと。他にもアイデアはたくさんあったのですけどね。

Q: 破片や瓦礫の動きは物理エンジンを使っているのですか?

三上氏: そうです。今回は物理エンジンにHavocを使っています。主人公の動きに直結するクオリティにかかわる部分はアニメーションをつけていますが、そこから先が物理です。

Q: 部位破壊で、スコアを獲得するような要素はあるのでしょうか?

三上氏: 中型の敵以上のボス系の敵では、部位破壊で点数が稼げるようになっています。ただ、中型の敵は1番きついので、やっているとやられるかもしれません。雑魚に関しては普通にヘッドショットをするとボーナスこみこみの点数になります。

Q: 難易度は高めですか?

三上氏: 高めに、わざとしました。簡単にプレイするよりも、難しめに設定したほうがこのゲームには向いているかなと思いました。そもそもこれだけ動くゲームだと見た目が難しそうにみえます。一瞬の判断でたくさんの情報をとって動かないといけない。そういうマニアックなゲームなので、中途半端に難易度を低く設定するよりは、ゲームをたくさん遊ばれる方が楽しめるようなゲームにしたほうがいいと。そういうところから始めて、これはまずいぞという状況になったので、イージーオ-トが入りました。ノーマルもアップ直前に2段階くらい簡単になりました。ノーマルは皆さん頑張ればクリアできるような難易度になっていて、ぜひ試して欲しいのです。イージーのオートはおすすめです。ぜんぜん狙っていなかったのですが、たまたま面白い。棚からボタ餅です。雑魚ではヘッドショットばかりを狙ってくれるので、とても気持ちがいい。その代わりプレイボリュームは半分になります。簡単に倒せちゃうので。

Q: 総プレイ時間はどのくらいを想定していますか?

三上氏: ノーマルでやれば7時間くらいだと思います。

Q: 1人用ということで、ストーリーは泣けるのか、感動系なのかどういったものなのでしょうか?

三上氏: 基本的にはスカッと派でいきたいのですが、シナリオの終わり方はあんまり……言えません。途中途中にちょっと重たいシーンがありますけれども、最終的にはヘンテコなエンディングで笑っていただければ。

Q:主人公がガードで隠れた時に、煙草をスパスパすっているんですが

三上氏: 主人公が待機モーションに入った時に、何か特徴を出そうとおもいまして、僕がたばこを吸っているので、たばこだなと。バトルスーツを着ているので、ケツをかくとか髪の毛をかき上げるとかできないので、やっぱりたばこかなと。煙草を入れて、何も機能がないのはさびしいので、たばこを吸って敵ロボットに命中すると、熱に反応して一瞬そちらを見てくれるのです。その間に自分が撃つと。でも実際にプレイするとほとんど使わないですけれど、据える本数は1つのエリアで3本と決まっています。

Q: 最後に、ファンにメッセージを願いします

三上氏: 人以外のものを撃ってこれだけの快感が味わえるゲームはそれほどないと思います。あとはスピード感、爽快感があるので、体験版にも触って面白かったら買ってください。


(C)SEGA

(2010年 6月 19日)

[Reported by 石井聡]