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新進気鋭の韓国産カードゲーム「DICETINY」を遊んできた
見た目は「カルドセプト」、ゲーム性は「ハースストーン」のパロディゲーム
(2015/11/15 00:00)
今年のG-STARでは、BtoCフロアの一角にインディゲームばかりを集めた「G-STAR 2015 BIC SHOWCASE」が設置された。ここには独立系のインディデベロッパー20社以上が集められ、インディタイトルばかりが出展されていた。本稿では、その中も楽しめたFAKEDICEの「DICETINY」を取り上げたい。
「DICETINY」は、元NCSOFTやBLUESIDEのメンバー達が7人ほどのゲーム会社FAKEDICEが開発しているカードゲーム。2Dベースのゲームにも関わらず、「Unreal Engine 4」を採用しており、苦難の末に、2Dゲームの開発に成功。「Unreal Engine 4」の採用理由は、過去に使ったことがあったためという。このあたりはいかにもインディ的だ。
最初に驚かされるのはその見た目。驚くほど大宮ソフトの「カルドセプト」シリーズにそっくりなのだ。てっきりインスパイア系のゲームかと思いきや、存在すら知らなかったという。10月23日に、Steam Early Accessを介してテストリリースしたところ、同じような声を聞き、最近初めてプレイしたという。
しかし、ボードゲーム状のステージに、サイコロを振って進むルール、クリーチャーやインスタントのカードを駆使してフィールドの支配エリアを増やして行くゲーム展開など、基本的な仕様は本当によく似ている。
実際に試してみるのが一番早いというわけで、プレイしてみたところ、「カルドセプト」とは似て非なるまったく別のカードゲームだった。ボードゲーム状のステージをサイコロを振って進むところまでは似ているが、その先に広がるゲームデザインはWizardsの「マジックザギャザリング」やBlizzardの「ハースストーン」だ。
プレーヤーの分身には、HPとアタック値が設定されており、お互いのヒーローのHPを削り合い、先に相手のHPをゼロにしたほうが勝ちとなる。よく見るとフィールドには、中立のクリーチャーが点在しており、そのマスに進むと強制的に停止させられる。中立クリーチャーに対しては、戦うか、お金を払って雇うかの2択が用意されており、戦う場合、自らが戦うことになる。
敵か中立のクリーチャーがいると、その都度止まることになり、ヒーローを直接攻撃したり、ラインのヒーローやクリーチャーに対してダメージを与えるインスタントなど、ダメージ系のカードが数多く取りそろえられているため、今回プレイした感じでは、1周回るぐらいでだいたい決着が付くという印象だ。時間にして10分足らずで、1プレイはかなり短い。しかし濃密なゲームプレイで、かなり楽しめた。
ゲーム性としてもサイコロ自体はあまり重要では無く、1ターン毎に上限が増え、全回復するマナを使ったカードの使用やスキルが重要となる。ゲーム性的には「ハースストーン」にそっくりで、クリーチャーを置くフィールドがあるかないかぐらいの違いしかない。
では、「ハースストーン」のインスパイア系のゲームか? というと、それもまた違う。というのは、このゲーム、属性としては、ファンタジーでもアメコミでもなく、“パロディ”なのだ。たとえば「Arena Spectator」と名付けられたクリーチャーは、いわゆる“外人4コマ”のネタで世界的に話題になったReaction Guysをパロディ化してカード化したものだ。そのほかにもダブルラリアットをするザンギエフや若い頃のアーノルドシュワルツェネッガーなど、ゲームに限らず、様々なネタがパロディ化されている。
このパロディという柱は、作品全体に貫かれていて、オープニングの見せ方は「スター・ウォーズ」のパロディで、ストーリーは「指輪物語」のパロディだという。そのモチベーションについては「面白いと思ったから」ということで、あまり深い理由はなさそうだが、スタッフ全員であれこれネタを出し合いながら考えていくという。
カード総数は現時点で100枚以上。「ハースストーン」と同様に、ヒーローによってある程度カードが紐付けられ、誰でも使えるニュートラルなカードも用意されている。デッキは15枚構成で、カードが溢れて捨ててもまた山に戻る仕組みとなっている。
さて、この「DICETINY」、ゲーム性的にも、ビジュアル的にも光るものがあり、正式リリースを楽しみにしたいところだが、そこはインディらしく、コマーシャルリリースをするにあたり、実は色んなものが足りない。
まず、AIが弱い。現在は自分とAIの2人でしかプレイできず、AIの挙動も、最善手を打てず、自爆したりする。一応、ヒーローによってAIの性格付けはあるものの、3人や4人といった複雑な状況にはまだ対応していないということで、このあたりは必須条件として改善が望まれる。
そしてマルチプレイ機能がない。パロディを主体に、遊び手が楽しめるゲームを作るためにシングルプレイのゲームにしたというのは理解できるが、だからといってマルチプレイが無くていい理由にはならないと思う。
Steam Early Accessでは、すでに2,000本ほど販売し、韓国語/英語版であるにも関わらず、日本のユーザーが1割程度いるという。2016年6月の正式リリース時には、韓国語、英語に加えて、日本語にも対応する予定。Free to Playではなく、20ドル前後の有料タイトルを検討しているという。筋は良いだけに、これからの磨き込みに期待したいところだ。