インタビュー
承認欲求不足で死ぬパターンあり。ライフシム「inZOI」は3月28日EA版配信開始
300台の車をシミュレートして交通網も構築。ディレクターが現状を語る
2025年3月20日 09:00
- 【inZOI:早期アクセス版】
- 3月28日9時 配信予定
- 価格:39.9ドル(日本価格は未定)
KRAFTON JAPANが配信予定のPC用ライフシミュレーター「inZOI」。最新情報発表番組「inZOI Online Showcase」にて、アーリーアクセス版の配信日が3月28日となり、価格は39.9ドル(日本での価格は未定)になることなどが明かされた。
「inZOI」は、ゲーム内に住む「Zoi」と呼ばれるキャラクターの人生を観察・創造するシミュレーションゲーム。プレーヤーは「AR Company」という会社の社員として、「Zoi」たちの生活に関わるクリエーターの役割を担う。
このゲームはリアルなグラフィックだけでなく、四季や天気の概念も備えた本格的なシミュレーション機能を特徴としている。また、カスタマイズ機能も充実しており、「Zoi」のキャラクターや建築物、ファッションなどを細かく調整でき、1枚の画像から3Dオブジェクトを生成する機能も搭載されている。
今後のスケジュールとしては、3月20日から動画クリエーターなどによるプレイが始まり、3月23日にはデモ版の配布が開始、そして3月28日にアーリーアクセス版が発売される。アーリーアクセス中は全てのDLCやアップデートが無料で提供される予定で、5月と8月には新機能の追加を含むアップデートが予定されている。
今回は「inZOI Online Showcase」の内容と合わせて、Zoiの死のパターンなど興味深い内容が明らかになったQ&A、そしてメディア向けQ&Aセッションの内容をお届けする。
MOD制作、3Dモデルソフトのプラグインも対応予定
本作では、ゲーム内に住む人々を「Zoi」と呼び、プレーヤーは「AR Company」という会社の社員として、「Zoi」たちの人生を観察・創造するクリエーターの役割を担う。
「inZOI」はリアルなグラフィックスだけでなく、リアルなシミュレーション機能も備えており、四季や天気の概念もある。暑すぎたり寒すぎたりすると、風邪をひいたり、病気になって死んでしまうこともあるし、天気は「Zoi」たちの感情に影響を与えてより多くのイベントが発生する。
また、カスタマイズ機能も充実しており、「Zoi」自身やそのファッション、そして建築物などが細かくカスタマイズでき、1枚の画像から3Dオブジェクトを生成する機能もある。
一方で、未実装の要素として、家族写真、モーションキャプチャ、車のマニュアル運転、AIを使った建築、新しい街、高層階の建物、鏡などのゲーム内機能、そして13カ国語の完全なローカライズがある。これらの開発には時間を要するため、プレーヤーとコミュニケーションを取りながら段階的に実装していく予定だ。
まずは、3月20日から動画配信者などクリエーターのプレイが始まり、配信を見ると一般の視聴者にもデモ版のプレイ用のキーが入手できる可能性がある。続いて3月23日に「Zoi」や建造物のクリエイトができるデモ版の配布が始まり、3月28日にアーリーアクセス版が39.9ドルで発売される。アーリーアクセス中はすべてのDLC、アップデートが無料で提供される。
また、直近のロードマップも発表され、5月にはMOD制作の一部機能の解放、「Maya」や「Blender」といった3Dモデリングツール向けのプラグインの提供、チートキーの解放などが行われるという。
そして、8月にはネコをコンセプトとした都市の追加、建築物におけるプールや地下室の実装、死亡した「Zoi」を幽霊としてプレイすること、AIによる建築が実装される予定だ。8月以降もユーザーとコミュニケーションを取りながら、3ヶ月単位で継続的にアップデートしていく方針だ。
複雑かつ多層的な「inZOI」のシステムが明らかに
ここからはその後に行われたQ&Aセッションの模様についてお届けしていく。質問に答えたのは、「inZOI」のプロデューサー兼ディレクターのキム・ヒョンジュン氏だ。
――前回のプレイテストでは、ゲームの1日が96分かかり、睡眠時間がプレイタイムの多くを占めていました。睡眠時間を早送りできる機能を導入する計画はありますか?
キム氏:この点については機能を改善しました。技術的に難しい部分がありますが、シミュレーションを最適化してスピードアップさせる開発をし、プレイのスピードを3段階に調整できます。
また、最も重要な改善点として、寝ている間は30倍速でプレイすることが可能になりました。ただし、家族全員が眠っている必要があります。
――「inZOI」は初心者でも簡単に楽しめますか? それとも身につけなければならないチュートリアルが多い方ですか?
キム氏:難しい質問ですが、このジャンルは初心者に優しいジャンルではないと思います。ゲーム開発者として約25年になりますが、自分で作ったどのゲームよりも複雑だと思います。難易度を倍数で表すなら、10倍以上かなと思います。
シミュレーションゲームというものは、とても多くのシステムが組み合わせられています。ただ、それを1つの面白さと主張したいです。難しいですが慣れていくごとに、楽しくなっていくゲームです。
――「inZOI」はほかのプラットフォームやモバイル機器でゲームをリリースする計画はありますか?
キム氏:現在はコンソール版と他のOS版を開発中ですが、モバイルは開発していません。少し時間はかかると思うのですが、遅すぎないタイミングで完成させます。
――マルチプレイ機能をリリースする予定はありますか?
キム氏:マルチプレイについてはよく質問を受けます。早期アクセス段階でユーザーからの要望が強ければ開発したいと考えています。ただし、ただ、「inZOI」の何万もの相互作用を全てマルチプレイに対応させるのは難しいため、まずは限定的な機能から始めることになるでしょう。
例えば、自分の家を他のプレーヤーに見せるだけの機能や、チャット機能などは比較的早く実装できます。その他についてはDiscordチャンネルでユーザーからの意見を聞きながら方向性を決めていきたいと思います。
――「Zoi」たちにはどんな死のパターンがありますか?
キム氏:様々な死に方があります。トイレで足を滑らせて転んでしまったり、古い食べ物を食べて死亡したり、家電を修理している時に感電したり、車にひかれたりする可能性もあります。
また、承認欲求が満たされないことで命を落とすケースもあります。例えば、他の人と喧嘩すると噂になり、SNSで否定的なメッセージを受けると承認欲求が下がり、それが続くと死亡する可能性もあり、合計で16パターン程度の死に方があります。
――「Zoi」が同性の人と恋愛関係を結ぶことはできますか?
キム氏:「Zoi」を生成するところに行くと、自分の個人的なアイデンティティや性的指向を決められる欄がありますが、性的指向は流動的ではありません。本作はグローバルユーザーを顧客としているので、同性愛が可能になっています。
――AIでNPCと会話できる機能を搭載する計画はありますか?
キム氏:検討したことはあります。ハードウェアの性能に依存しますが、「スマートZoi」をテスト機能として開発中です。また、早期アクセスには含まれませんが、外部からの対話機能をテスト中です。本作には全ての要素に情報があるため、AIとの対話に適していると考えています。
――ユーザーが直接好きなお店を追加したり、配置できる機能を導入する予定はありますか?
キム氏:早期アクセスで最も自信がない部分は職業システムで、商店はまだ十分に実装できていません。ただし、ゲーム内には机のような家具があり、それを使ってゲーム内で集めた石や釣った魚などを載せて販売することができます。街中の群衆にそれを売ることも可能ですし、商店機能の追加の計画もあります。
――直接運転できる車についての実装過程における最も大きな課題は何でしたか? また、自動車をゲーム内に導入しようと決めた理由は何ですか?
キム氏:最も難しかったのは、300台の車が都市内でシミュレートされていることです。交通システムの設計が特に難しく、信号システムの調整に苦労し、1年間かけて交通システムを開発しました。今回のビルドでは、テスト機能として自動運転機能を提供します。オプションを有効にすると手動運転が可能になり、無効の場合は自動運転のみとなります。
――現時点では直接運転して移動できない理由はマップの広さが理由でしょうか? それとも調整中だからでしょうか?
キム氏:たくさんの「Zoi」が住む家があるので、本作のマップはレーシングゲームなどに比べるととても狭いです。ですが、デフォルトで手動運転をできないようにしているのは、私が26年ぐらい前に初めて作ったゲームはレーシングゲームで、その時に比べると「inZOI」の自動車はまだクオリティが十分に高くありません。
努力はしましたが、自分で完成度に満足できませんでした。オプションで自分で運転できるようにはなりますが、自動車に特化したゲームと比べると少しクオリティが低いかなと思います。
Unreal Engine 5を駆使する技術的挑戦
――今後、グラフィックのアップグレードを行う予定はありますか?例えば、DLSS4のような機能や、Unreal Engine 5の新しいライティング技術が追加される可能性はありますか?
キム氏:現在はDLSS3を使用しており、DLSS4は研究段階です。グラフィックの面では、ライトを設置すると影ができるようになりました。ただし、ゲームの最適化のため、室内では一部の影を消してあります。今回のビルドでは、影を生成できる光源を5つ追加しました。
――Unreal Engine 5を選んだ後、ゲームを開発しながら感じたこと、難しかったことがあれば教えてください。
キム氏:何か新しい商品を最初に導入する場合は、難点に直面することがあります。特にUnreal Engine 5は発表されてからあまり時間が経っておらず、私たちのゲームはUnreal Engine 5を使って発売される最初か2番目ぐらいのタイトルになると思います。
ですので、エンジンについての勉強もたくさんしましたし、最大限に利用するために研究がとても必要でした。絶え間なく研究を行い、Epic Gamesとも協力しながら開発を進めました。ただ、Unreal Engine 5はとてもいいエンジンで、この世代の頂点であると感じています。
――フェイシャルキャプチャ機能はウェブカメラで使用できますか?
キム氏:フェイシャルキャプチャー機能には100個以上のパラメーターがあり、表情が豊かに表現できますが、現在はiOS機器(iPhone)でのみサポートしています。体の動きのモーションキャプチャーはノートパソコンのウェブカメラでも可能です。完全に正確なモーションキャプチャーはできませんが、基本的な動きは捉えられます。
――マップ制作のためにロケハンをしたり、個人的に好きな空間をマップに取り入れたところはありますか? また、マップに隠されたイースターエッグやユニークな場所はありますか?
キム氏:「inZOI」の「ドゥオン」というマップは、私たちが実際に暮らしている近所をモチーフにしており、、実際の家もゲームのマップの端っこに再現されています。
またマップには多くのイースターエッグがあり、変わった看板やコレクションアイテム、ユニークな装飾品なども隠されています。ゲームの世界観を感じられるよう、1つ1つ丁寧に作り込んでいます。
――ゲーム内で刑務所に行くことはできますか?
キム氏:はい、刑務所はあります。悪いことをするとお巡りさんが来て捕まり、刑務所に収監されます。そこで食事や睡眠などの生活を送ることもできますが、完全に閉じ込められるわけではなく、一定時間後には出られます。また、脱走も可能です。
――飛行機など空を飛ぶ乗り物の実装予定はありますか?
キム氏:車だけでも実装が大変だったので、飛行機の実装は難しいです。ただ、高い建物から滑空やグライディングができる機能は追加できる可能性があります。以前に類似機能を開発した経験があるため、実現可能だと思います。
――ヴァンパイアなどのファンタジー要素のあるキャラクターに関するアップデート計画はありますか?
キム氏:内部テストとしてヴァンパイアバージョンを試作したことがあります。早期アクセス後には、ファンタジー要素も追加できる可能性があります。現時点でも一部は肌の色を自由に選択することは実現できます。
――早期アクセスから最終ゲームフルリリースまでの期間はどれくらいですか?
キム氏:正確には言いづらいです。「inZOI」にはまだ足りない部分が多いため、早期アクセスを真摯に考えています。ユーザーからのフィードバックを受けながら改善を続け、「これでフルリリースできる」という意見をいただけた時点でフルリリースを検討します。安定したコアファン層が形成され、ゲームの完成度に満足いただけた段階でフルリリースを行ないたいと考えています。
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