先行体験
常時400人の行動を計算! PC用新世代ライフシム「inZOI」先行体験
細部へのこだわり感じるZoiたちの世界
2025年3月20日 09:00
- 【inZOI:早期アクセス版】
- 3月28日9時 配信予定
- 価格:39.9ドル(日本価格は未定)
日常に疲れた時、「もし自分が別の人生を歩んでいたら」と想像したことはないだろうか。別の職業に就き、別の土地に住み、別の人間関係を築いていたら……。キャラクターの人生を通して、そんな“if”の世界を体験できるのが「ライフシミュレーター」だ。
画面の向こう側に作り出したキャラクターが、プレーヤーの選択や、自律的な判断によって人生を紡いでいく。その姿を見守り観察するのは、このジャンル特有の魅力である。
今回紹介する「inZOI」は、KRAFTON JAPANが配信するPC用ライフシミュレーション作品。早期アクセス版は3月28日9時に配信予定で、価格は39.9ドル(日本での価格は未定)。この作品では、プレーヤーは自分だけのキャラクター「Zoi」を作り出し、彼らが織りなす物語の観察者となる。
今回は早期アクセス版の配信に先立ち、本作をプレイする機会を得られた。そこで感じた本作の魅力や体験の内容、そしてライフシミュレーター自体の魅力についてお届けしたい。
ライフシミュレーターはなぜ面白い?
まず、ジャンル自体の魅力について語っていきたい。
「ライフシミュレーター」とは、端的に表現すると「もう1つの人生」を体験できる作品だ。その人生の大きな魅力は、現実では不可能な選択肢を気軽に試せることにある。
例えば現実では難しいような超大豪邸に住み、毎日パーティーを開くこともできる。創作活動に勤しみ、創作物を売って生きることもできるし、歌手のような華々しい職業に就くこともできる。現実世界ではリスクがあるチャレンジでも、ゲームという架空の世界なら、大胆な選択ができる。
逆に、この世界なら現実世界にいる他の人間に迷惑を掛けることもない。気の向くままにいたずらをしたり、あえて嫌われるような行動をすることも気兼ねなくできる。単なる1つの遊び方だけではなく、人生のifを体験できるという意味もあるのだ。
細かく行動を指示しプレーヤーの思い通りの人生を送らせることもできるが、介入を最低限にして自律的に行動させるのも面白い。広大な架空の世界で自分が生み出したキャラクターが自分の判断で動く。
ちゃんと職場に向かうこともあれば、家でだらだらと新聞を読んでいることもある。ほかの住人と仲良くすれば良いのに、周囲の人間に悪態をつき続けることもある。そういった自律的な行動を客観的に観察できるのもライフシミュレーターの魅力だ。
このジャンルの先駆者である「The Sims」シリーズが20年以上にわたって人気を維持している理由も、ここにある。そして本作「inZOI」も、こういったライフシミュレーションの伝統を受け継ぎながらも、いくつかの点で新しいアプローチを試みている。
細かすぎるカスタマイズとリアルなシミュレーションが魅力
本作の魅力の一つは、非常にこだわったカスタマイズ要素の豊富さだ。キャラクタークリエーションは驚くほど細かい。例えば顔のプリセットだけでも100種類を超え、眉間や頬、鼻筋、ほうれい線といった細部まで調整でき、思い通りのZoiを作り上げることができる。
衣装面を見ても、約80種類のコーディネートが用意されており、さらにはアウター、トップス、ボトムス、靴などを個別に組み合わせることもできる。これにより、プレーヤーは自分に似せた分身となるZoiを作ることも、自分自身が想像する理想のキャラクターを創造することも可能だ。
また、建築や家具面でも細かい調整やクリエイトが可能だ。あらかじめ用意されたパーツを組み合わせてオリジナルの家具を作成したり、手持ちの画像から3Dモデルを生成したりすることができる。圧倒的に高い自由度で自分だけの住居を作れるのだ。
本作はライフシミュレーターでありつつも、自由度の高いキャラクターメイキングと建築の両面でも創造性を発揮できる。そのため、クリエイティブな遊び方を求めるプレーヤーの欲求も満たしてくれることだろう。
また、本作の世界を成り立たせるシステムも特筆すべきポイントだ。開発者によるとプレイ中には常時300~400のZoiが計算処理されており、画面に映っていない場所でも彼らが生活を続けているという。この仕組みから、噂が広がるシステムも存在するという。
例えば、公園で歌を上手に歌えば、通りすがりのZoiがSNSに投稿し、それが評判となって広がっていく、といったことが起こる。こうした複雑なシミュレーションを実現するために、本作はやや高いスペックを要求するが、その分、生きた世界を感じることができるのだ。
何より魅力的なのは、これらの要素が組み合わさった時に生まれる体験だ。こだわり抜いて作成したZoiが、綿密に設計した建物の中で、独自の家具に囲まれて生活する様子を見守ることができる。そんな世界で彼らがどのように生き、他のZoiたちとどう関わっていくかを観察する。それは、本作ならではの楽しみだ。
もう1人の自分と出会い、観察したある日のレポート
早速にプレイフィールをお送りしていこう。今回は時間の都合もあり、Zoiのカスタマイズはそこそこに、住居もプリセットのものを使った。ここに時間をかければ、それだけで数時間から十数時間は使っていたことだろう。それは本作が発売された後の楽しみにしたい。
そして、筆者が作ったZoiが世界に降り立った。もちろん、彼女に行動に細かく介入し、「食事はこれを作って、その後片付けをし、トイレに行って、シャワーを浴びて、外に出かける」といったこともできる。
だが、筆者が本作をプレイするときは、Zoiの自律行動に任せることが多かった。というのも、1人のZoiがどのような生活を選び、どんな欲求を満たし、どう生きていくのかを見守ることに楽しみを感じたからだ。
筆者が作ったZoiを観察していると、社交性を高めたいのか、自宅では鏡の前で会話の練習をしていることが多かった。またHip-HopやR&Bなどの音楽を聴くことを好んでいた。このあたりは筆者自身の趣向とも近いものがあり、プレーヤーに似る部分があるのかなと勝手に親近感を覚えていた。
ただ、筆者と大きく違う点として、彼女はエンターテイナー的な特性を持っている。そのため、このスキルを活かしてアイドルになってほしいと思い、今はアイドル練習生として日々を過ごしている。こういったifの人生を過ごすのはやはり楽しい。
だが彼女には大きな欠点がある。それが無駄遣い癖だ。一人暮らしのアパートの公共料金が200~300ミャオ(本作でのゲーム内通貨)程度のところ、無駄遣いをすると1回で5,000ミャオも使ってしまう。財布事情を考えると、これはさすがに介入せざるを得なかった。
無駄遣いをさせないという以外にも、プレーヤーは様々な場面でZoiの行動に介入できる。家事をさせたり、設備のメンテナンスをさせたり、トレーニング機器で運動をさせたりすることも可能だ。また社交面では、街中で出会う人々に積極的に挨拶をさせることもできる。
Zoiの自主性に任せていると、こういった生活の質を高める行動を自発的にとってくれないこともあるため、時にはプレーヤーが介入した方が良い人生になることもあるだろう。
また、プレイしていると「音楽を聴きたい」「ダンスをしたい」といったZoiの希望が示されるので、これらを達成してあげてもいいかと思う。報酬としてミャオがもらえるなどのメリットがあるので、まずここから始めると、取っ掛かりとしてはわかりやすい。
とはいえ、個人的にはやはりZoiの自律的な行動を観察する楽しさこそが本作の醍醐味だと感じている。残念ながら今回は時間の都合で複数のZoiをプレイすることはできなかったが、各Zoiには固有の性格や人生の願望があり、独自の価値観がある。それぞれのZoiが自分の強みや弱み、特性を活かして、この仮想世界の社会で暮らす様子を見ることこそが、本作が“ライフ”シミュレーターである理由なのだろう。
「inZOI」は、ライフシミュレーターという枠組みの中で、世界の広がり、キャラクターの細かいカスタマイズなど、これまで以上にこだわった体験を提供している。ライフシミュレーターファンはもちろん、これから同ジャンルをプレイする多くのプレーヤーも新鮮な体験が味わえることだろう。
今回は限られた時間での体験だったが、それでも十分に本作の可能性を感じることができた。発売後には、さらに多くのZoiを作り出し、彼らの人生を見守り、時には介入しながら、この世界をより深く探索していきたい。
本作はライフシュミレーションとして、もう1つの人生、そしてもう1つの社会を体験できる場所だ。細かく作り込んだ自分のZoiが、自分が考えた理想の家に住み、自律した行動を取る。あるいはもっとゆるめにZoiと触れ合ってもいいだろうが、その結果、他のZoiと交流したり、SNSで社会全体に伝播する評判など、1つの行動が様々に波及する様が興味深い。楽しみな予感と期待を胸に、早期アクセス版の配信を心待ちにしている。
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