ガンホー、「『ラグナロクオンライン』ファン感謝祭2010」を開催
「RJC2010」は新ルールの元、強豪を破った「放課後ティータイム」が栄冠


5月1日開催

会場:ディファ有明


 ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は5月1日、東京ディファ有明においてMMORPG「ラグナロクオンライン」のオフラインイベント「『ラグナロクオンライン』ファン感謝祭2010」を開催した。日本一のギルドを決めるトーナメント大会「Ragnarok ONLINE Japan Championship(RJC)2010」決勝トーナメントをメインイベントに、ユーザーが参加するコスプレイベントやクイズ大会など様々なイベントが開催された。

 本稿では「RJC 2010」にスポットを当て紹介していきたい。先日の予選トーナメントレポートでも紹介したが、今年のRJCはこれまでの大会とは違い、コスト制、資金制という2つの新要素を導入し、ユーザー達は新しいパーティー編成、先を見越した戦い方という新しいアプローチを求められた。優勝候補を破る大番狂わせや、ギリギリの戦いなどいくつもの名場面が生まれた、非常に盛り上がった大会だった。なお、当日行なわれたステージイベントの模様については別稿にてお伝えしたい。




■ 会場に入りきらないほどの観戦者、観戦システムも進化し、大きく盛り上がったRJC2010

実況を担当したガンホーマーケティング部第一企画課の佐久間将太氏(右)、解説を行なったゲームサービス部一課の山本兼寛氏が担当
左右のモニターはエフェクトを切ってメンバー動きが見やすくなっている
会場一杯の観戦者。この後さらに来場者は増え、全員が立って間隔を詰めることに

 今回の「RJC 2010」は“コスト制”、“資金制”という新しい要素が導入された。コストとは「ラグナロクオンライン」の各職業にコストを設定し、決められた数値まででメンバーを構成するというものだ。「ラグナロクオンライン」のトーナメントではこれまでほとんどのメンバーが固定されているという“鉄板構成”以外では勝つことが難しかったが、コスト制ではこの鉄板構成がコストの問題で不可能になったのだ。

 試合に出場できるメンバーは5~7人と幅を持たせ、どうコストを割り振るか、プレーヤー達は大いに議論を重ねた。今回が初めての試みであるため、予選では各ギルドが様々な組み合わせを行なった。また、資金制も参加者達を悩ませた。これはトーナメント終了までの金額が設定されており、その資金で各キャラクターの装備やカード、消耗品までまかなわなくてはいけなかった。従って全体のペース配分を考えなくてはいけないが、かといってケチって負けたら元も子もない。予選では後半は装備を売って消耗品を得るというまさにギリギリの戦いを繰り広げたギルドもあった。

 こういったこれまでと違った新ルールで決勝に勝ち進んだギルドが「Latency」、「+Nirvana+」、「Rampage...」、「くまー将軍」、「Greensleeves」、「☆★☆STAR DUST☆★☆」、「Forza Diabolica」、「放課後ティータイム」の8チームだ。決勝もトーナメントで行なわれ、資金は25,000,000Zeny。各試合は最大3試合を行ない、先に2戦先勝したギルドが勝利となる。

 決勝トーナメントは開会式直後のくじ引きによって組み合わせが決定した。1回戦第1試合は優勝候補の「Greensleeves」対「Rampage...」、第2試合は「Forza Diabolica」対「+Nirvana+」、第3試合は「Latency」対「☆★☆STAR DUST☆★☆」、第4試合は「くまー将軍」対「放課後ティータイム」となった。

 今回、実況解説を担当したのはガンホーマーケティング部第一企画課の佐久間将太氏とゲームサービス部一課の山本兼寛氏。佐久間氏は「さすが王者の余裕というところでしょうか」など軽い口調で実況をしつつ、初心者に配慮して基礎的な質問を解説に求めるなどキャラクター性の強い実況を展開した。会場のコアプレーヤーは佐久間氏の実況に突っ込みを入れたりと、来場者同士の会話を誘う楽しい雰囲気を演出していた。

 試合は中央と各チームのモニターで表示され、各チームのマップはエフェクトが消えており、メンバー達の立ち位置がはっきり見えるように工夫されている。また中央では誰が倒れたかはっきり大きな文字で表示される。さらに各チームには数字の札が表示され残りメンバーがわかりやすくなっている。試合の合間にはマップの解説や職業ごとの特色が解説され、来場者に観戦を楽しんでもらおうという工夫が感じられた。

 驚かされたのは来場者の熱意である。ディファ有明のホールが完全に一杯になり、全員が立って詰めなくては入れないほどのユーザーが試合を観戦した。声援を送り、試合を真剣に見つめるユーザーも多く、会場中が「RJC2010」を楽しんでいた。この会場の盛況さの理由の中には、イベント終了まで会場にいるとゲーム内アイテムがもらえるという要素のおかげもあったのだが、それを差し引いてもユーザの試合への関心は毎年開催を実行しているからこそだと感じた。

 試合の内容、観客の熱中、そして実況体制と「ゲーム大会」というジャンルにおいて、ガンホーの「ラグナロクオンライン」ほどのクオリティを持つタイトルはそれほどないのではないだろうか。会場ではRWC2010のインドネシアでの開催も発表され、これからもさらに盛り上がりそうである。今後に注目していきたい。


試合場の解説から、各キャラクターの役割の解説など試合の合間に様々な知識を紹介。右はくじ引きで決められたトーナメント表



■ 第1試合から大番狂わせ、優勝候補を破って「Rampage...」が勝ち進む

優勝候補「Greensleeves」と1回戦でぶつかった「Rampage...」

 さて、決勝トーナメント第1回戦で最も注目のカードは優勝候補である「Greensleeves」対「Rampage...」だ。「Greensleeves」は昨年のRJCの覇者で、今年も決勝トーナメントに出場を果たした。「Greensleeves」はRJCに出場する全てのギルドの目標だったギルドだ。対する「Rampage...」は昨年のRJCでは予選2回戦で敗退という実力は全くの未知数のギルドである。

 「Greensleeves」はロードナイト、ウィザード、セージ、アルケミスト、バード、モンク、ハイプリースト、「Rampage...」は拳聖、ハイプリースト、ナイト、セージ、クリエイター、バード、クラウンという構成で7対7での試合となった。

 中央で激しくぶつかり、「Rampage...」の拳聖が倒されるが、その後敵に突っ込んだ「Greensleeves」のモンクが倒され、バードも倒される。「Greensleeves」は立て直しを図るがハイプリーストも倒され、第1試合を落としてしまう。まさかの展開に、会場からは驚きの声が上がった。

 第2試合は積極的に「Greensleeves」が攻め、その後自軍の陣地に引くという作戦で「Rampage...」のメンバーを次々と撃破する。モンクの阿修羅覇凰拳が決まる度にメンバーが倒されるという形で「Greensleeves」の強さを見せつけた。しかし、第3試合で再び大番狂わせが起こる。「Rampage...」が押し込む勢いに「Greensleeves」のロードナイトが倒れ、続いてウィザードも倒される。そのままクラウンとバードの連係攻撃に動きを止められた「Greensleeves」はまさかの敗退となってしまった。

 今回、「Rampage...」は“攻め”の姿勢を重視した。多くのギルドが「Greensleeves」タイプの様々な攻撃を可能にするメンバー構成をしているのに対し、「Rampage...」はクラウンとバードでお互い「ブラギの歌」でスピードアップをし、「寒いジョーク」で敵を凍らし、さらにクラウンの「運命のタロットカード」で大ダメージを狙う。トリッキーな戦いを心がけたという。さらに優勝候補の「Greensleeves」との戦いのために、資金をかなり投入した。その気合いが勝利に繋がったようだ。


第1試合、激しくぶつかりあう両者。攻撃重視の「Rampage...」が次々と「Greensleeves」のメンバーを倒していく
第2試合は積極的に「Greensleeves」が攻める。「Rampage...」は押し込まれて倒されてしまう
第3試合は中央付近で位置を変えながら攻防を繰り広げる。勝利をもぎ取ったのは「Rampage...」だ



■ 袂を分かったかつての仲間との対決に勝利した「放課後ティータイム」

因縁の対決が実現した「☆★☆STAR DUST☆★☆」対「放課後ティータイム」

 トーナメント2回戦は、「Rampage...」対「Forza Diabolica」、「☆★☆STAR DUST☆★☆」対「放課後ティータイム」との戦いになった。「☆★☆STAR DUST☆★☆」と「放課後ティータイム」は因縁浅からぬ関係にあるという。「放課後ティータイム」のメンバーはかつて「☆★☆STAR DUST☆★☆」に所属していたプレーヤーが、求める戦いのスタイルなどからわかれ作ったギルドなのだ。

 「放課後ティータイム」は予選の時から「☆★☆STAR DUST☆★☆」との戦いに意欲を燃やすコメントをしており、運営側も注目のカードだった。その戦いが決勝トーナメント2回戦で実現した。「☆★☆STAR DUST☆★☆」はダンサー、バード、拳聖、セージ、アサシンクロス、クルセイダーの6人。プリーストがいない構成だ。対する「放課後ティータイム」はモンク、プリースト、アルケミスト、ウィザード、クラウン、セージ、ロードナイトの7人構成だ。

 第1試合は「☆★☆STAR DUST☆★☆」は自軍の陣地を中心とした守りの姿勢で迎え撃つ。「放課後ティータイム」のクラウンが沈むが、そこから攻めあぐね、両者は攻撃を繰り返しながら引き、押して激しくぶつかりあう。しかし一瞬の隙から「☆★☆STAR DUST☆★☆」は攻めの要を次々と失ってしまった。それに対し「放課後ティータイム」は戦力を温存、通常攻撃でじわじわと体力を減らす方法に移行し、「☆★☆STAR DUST☆★☆」はギブアップした。

 第2試合、「☆★☆STAR DUST☆★☆」はソウルリンカーを投入、クリエイター、セージ、バード、プリースト、モンク、拳聖と7人の構成に変えた。ソウルリンカーは「魂」を味方に宿らせてパワーアップさせる職業だ。バードのスピードを増し、クリエイターの「ポーションピッチャー」の威力を増す作戦だ。これがうまくはまり、前回同様待ち受ける作戦でクリエイターを失うも、その後次々と「放課後ティータイム」のメンバーを倒し、勝利をもぎ取った。

 第3試合、待ち受ける「☆★☆STAR DUST☆★☆」に対して、「放課後ティータイム」は距離を保ったまま攻撃を繰り返す。「☆★☆STAR DUST☆★☆」のクリエーターが倒されてから、混戦に、両者は目まぐるしく位置を変えるが続いてモンクを倒され一気に不利となる。そのままバラバラで戦いが繰り広げられ、決定打が出ないまま、「☆★☆STAR DUST☆★☆」は4人、「放課後ティータイム」は6人で時間切れとなり「放課後ティータイム」の勝利となった。


トーナメント2回戦の戦場はカジノ。障害物が多く、どこで戦うかが重要になる「☆★☆STAR DUST☆★☆」は守りの姿勢で迎え撃つが「放課後ティータイム」に攻めきられる
ソウルリンカーを投入し、2試合目は「☆★☆STAR DUST☆★☆」が勝利
3戦連続で待ちの姿勢の「☆★☆STAR DUST☆★☆」。距離を取りながらの戦いを制したのは「放課後ティータイム」だ



■ 激戦を勝ち進み、優勝を果たした「放課後ティータイム」

見事優勝を果たした「放課後ティータイム」
強豪を次々と破ったものの、「Rampage...」は2位となった

 決勝戦に勝ち進んだのは、「放課後ティータイム」と「Rampage...」。「Rampage...」は決勝トーナメントの常連である「Forza Diabolica」も破り決勝まで上ってきた。両者とも相手チームにプレッシャーをかけ、ぐいぐい押す戦いの得意なギルドだ。戦法の似ている両者がどうぶつかるか、注目の最終決戦となった。

 しかしこの最終戦で、「Rampage...」は意外な戦法に出る。いつものように中央の広い場所に向かわず、上の狭い空間に逃げ、「放課後ティータイム」を迎え撃つ作戦に出たのだ。「放課後ティータイム」が追えば「Rampage...」は引くという逃げの作戦に出たが、クラウンが捕まったのを皮切りに、どんどんメンバーを減らされ負けてしまった。

 第2試合では「Rampage...」も果敢な攻めの姿勢を見せる。グッと中央に踏み出すが、クラウン、ハイプリーストを倒され、逆に大きく踏み込まれ、そのまま追い回される形でメンバーを失ってしまい、負けてしまった。快進撃を続けていた「Rampage...」にしてはあっけない敗北だった。

 最終試合の解説に参加したマーケティング部第一企画課主任の中村聡伸氏は「放課後ティータイム」は複数のキャラクターでいくつかの目標に向かって同時に攻撃を仕掛け、回復役が追い付かない戦い方が巧みだった、と語る。速いペースでメンバーが倒されていく様は「同時攻撃」の連携のうまさを実感させられた。「放課後ティータイム」のメンバーはこの戦い方を「レインボーサイクロン」と名付けたという。“七色の勝ち方がある”というわけだ。

 試合後、両チームに話を聞いてみたが、最終戦「Rampage...」は資金がほとんど無かった。「放課後ティータイム」もそれがはっきりとわかったとのこと。「Greensleeves」、「Forza Diabolica」の連戦でほとんどの資金をつぎ込み、なんとか進んできた。一方の「放課後ティータイム」はまだ資金に余裕があった。「放課後ティータイム」がモンクを攻撃の要にしたのは資金に余裕を持たせるための作戦だったという。

 優勝した「放課後ティータイム」だが、新ルールのためにチーム構成にはもめにもめ、決まったのは予選トーナメント開始数日前だった。社会人が中心のため練習量にも不安があり、議論を繰り返し、他ギルドの戦い方も参考にして自分たち戦い方を編み出していった。一方の「Rampage...」は他ギルドのやっていないこと、攻撃に特化したメンバー構成を考え、クラウンとバードの2枚看板による戦い方を編み出していった。2位という成績は「自分でも信じられない」という感想だが、やはり決勝戦は悔いが残ったという。

 両チームとも今回会場で発表された「RWC2010」に関してはまだこれからという感じで、具体的な意気込み、というのは聞けなかったが、7月から行なわれる代表決定戦でどんな活躍をしてくれるか期待したいところだ。今回の会場の盛り上がりからユーザー間での対戦熱も聞いてみたが、これまで以上にあるとのことで、「RJC2010」の予選でも当日の不参加による決着というものが少なかったという。トーナメントへの応募も増加しているとのことだ。

 今回、決勝を観戦して、ガンホーのアプローチがユーザ達に新しい動きをもたらしていることを実感できた。一方で試合後半は資金温存を考え消極的な戦いが見られるなど、まだまだルールを煮詰められる部分も感じた。「RWC2010」のルールがどうなるかなど、今後の情報を待ちたい。


ガンホー取締役の越知政人氏。入賞者に賞品を渡し記念写真にも参加した。「RWCに続き、今回これだけの盛り上がりを見せることができ、大変うれしく思います」とコメントした。中央と右はインタビュー時の両ギルドの撮影
決勝戦。これまでとは違う距離を取った戦い方をしようとする「Rampage...」だが、「放課後ティータイム」に捕まってしまう
2試合目は両者がぶつかるが、回復アイテムなど消耗品の差か、「放課後ティータイム」が一気に押し切った

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(2010年 5月 2日)

[Reported by 勝田哲也]