ガンホー、「ラグナロクオンライン」RJC2010予選Tレポート
昨年の覇者Greensleevesほか、常連強豪チームが決勝戦へ出場


3月28日収録


 ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社は5月1日、MMORPG「ラグナロクオンライン」の日本最強ギルド決定戦「RAGNAROK ONLINE Japan Championship2010(RJC2010)」のトーナメント決勝戦を東京 ディファ有明にて開催する。

 これに先立ち、3月5日から3月28日の日程で、決勝戦の出場ギルドを決定するための予選トーナメントが行なわれた。予選トーナメントはA、B、C、D、E、F、G、Hの8ブロックにわかれて行なわれ、128ものギルドが参加した。

 「ラグナロクオンライン」は、日本国内で最も積極的に最強ギルド決定戦を行なっているタイトルといえる。プレーヤーの技量、モチベーションは高く、熱い戦いが繰り広げられる。特に今回は、「コスト制」という新ルールが導入され、プレーヤー達は新たな制限のもと、これまでと違う戦術で戦いに挑んだ。本稿では、3月28日にガンホーマーケティング部第一企画課主任の中村聡伸氏の解説の元で行なわれたE、F、Gブロックの3試合の模様から予選トーナメントの模様を紹介したい。




■ コスト制がもたらす新しいチーム構成。厳しい資金繰りにも悩まされることに

試合の解説を行なったガンホー第一マーケティング部第一企画課主任の中村聡伸氏

 今回の「RJC2010」の大きな変化は「コスト制」というルールが導入された点だ。職業ごとにコストが設定され、決められたポイント内でパーティー編成を考える必要が出てきた。パーティーメンバーは5~7人。高コスト職業の5人で行くか、低コストの7人で構成するか、参戦人数も変わってくるのだ。

 「ラグナロクオンライン」でのギルド戦の構成はこれまで6人がほぼ固定で、残り1人で個性を出すという構成がほとんどだった。「鉄板(確実な)」と言われるほど、戦い方戦術が固まってしまっていたのだ。しかし、今回の新ルールでは、前回までの鉄板構成はコストの上で不可能となり、新たな職業構成、戦術が求められるようになった。

 新ルールでのメンバー構成は、コストの関係で転生2次職は2人、他に4~5人のメンバーとなる。ハイプリーストの代わりにコストの安いプリーストにしたりと、職業を調整することで最大の効果を上げる構成を模索していく。メインの火力をどうするか、速攻型にするか、長引かせて戦うか、どんなチーム構成で行くかが課題となる。

 中村氏はこれまでの戦いを「役割がはっきりしすぎているチームは勝ちにくかった」と語る。阿修羅覇凰拳を撃つチャンピオン、アシッドデモンストレーションが強力なクリエイターなど火力が強力なキャラクターを入れそこに注力しすぎると、対戦相手はまずその要となるキャラクターをつぶそうとする。つぶされてしまった場合、次の手が打てないというパーティーはもろい傾向があったという。強いギルドは攻撃担当を複数入れることで役割の分担をすぐにわかりにくくしていた。

 このルールで脚光を浴びたのがロードナイトだ。ナイト系職業の転生2次職で防御力がある上、安定した攻撃力があり、今回のルールでの中心となる職業だ。この他に支援系としてバードが人気だった。今回はチャンピオンをモンクに変えても阿修羅覇凰拳にこだわるチーム、コストを抑えて7人で行くチーム、これまでのギルド戦のトレードマークとも言える「ストームガスト」をあえて使わないチームなど様々な戦法がとられた。

 今回のルールでは「資金」もプレーヤーを悩ませる。出場者は与えられた金額で、チームの装備品、消耗品をまかなわなくてはいけないのだが、ここがギリギリなのだ。しかもその金額で予選トーナメント全てを戦っていかなくてはならない。中には1度買った装備品を安くNPCに売り、なけなしの金で消耗品を買ったという場合もあったという。

 新ルールでもやはりこれまで戦ってきた古参ギルドは強い。リストを見ても見覚えのあるギルドがいくつもあり、その中の何チームかが決勝まで勝ち進んできた。今回見ることができた3戦は昨年優勝の「Greensleeves」の他、「☆★☆STAR DUST☆★☆」、「Forza Diabolica」といったこれまでも優秀な成績をおさめたチームが出場している。彼らの新戦法はどんなものだろうか。




■ 一気に襲いかかり、次々と仕留める強さと速さを見せつけた「Greensleeves」

Eブロック代表となった「Greensleeves」

 Eブロックの決勝戦は昨年のRJC優勝ギルド「Greensleeves」と「Precipice」がぶつかった。ロードナイトとクリエイターを中心にしている今回多く見られる構成だ。「Greensleeves」はクルセイダーを入れて、やや守りよりの構成にしている。対する「Precipice」はジプシーを入れてスクリームによるスタンと、運命のタロットカードによる大ダメージを狙う。

 どちらも6人の編成。このチームの激突は、定番のストームガストの撃ち合い、ランドプロテクターの張りあいから始まった。マップ中央で激しくぶつかりあい、お互いが位置をわずかに変えつつ攻撃を仕掛け合う。

 この勝負は瞬く間に終わった。「Greensleeves」のクリエイターのアシッドデモンストレーションと他のメンバーの攻撃の集中で「Precipice」のチームは次々と撃破されていく。「Greensleeves」の速攻に飲み込まれる形で「Precipice」は倒されてしまった。昨年の優勝ギルドの実力を見せつけられた試合となった。

 今回、観戦で気がついたのは「表示のわかりやすさ」である。どのキャラクターが倒れたか画面に大きく表示されるため、観戦者はどのチームの誰が倒されたかが把握しやすい。観戦システムを改良し、観客にわかりやすい方法を模索している姿勢には好感を持った。


「Greensleeves」対「Precipice」。一気に「Greensleeves」が攻め込み、次々と相手を倒し勝利をもぎ取った



■ ウィザードを入れずに戦いに挑んだ「☆★☆STAR DUST☆★☆」、相手をじりじりと追いつめ勝利

Fブロックで勝者となった「☆★☆STAR DUST☆★☆」

 「Greensleeves」の勝利が早かったため、Fブロックの戦いも見ることができた。こちらは「☆★☆STAR DUST☆★☆」と「スポーツはいいぞ」がぶつかった。どちらも6人編成で、「☆★☆STAR DUST☆★☆」はウィザードのいない構成、対する「スポーツはいいぞ」はハイウィザードによる魔法攻撃に注力した構成だ。

 観戦し始めたとき、「スポーツはいいぞ」はすでに5人で守りの要となるキャラクターを失っているようで劣勢に追いやられていた。それでもストームガストで相手を牽制、じりじりと後退しながらの戦いが続いていた。「☆★☆STAR DUST☆★☆」はウィザード系がいないため、「スポーツはいいぞ」にはストームガストがかかっておらず、新鮮な対戦風景だった。

 試合は一進一退という感じだったが、「スポーツはいいぞ」のクリエイターが倒されたことで攻撃力を失い、試合は大きく「☆★☆STAR DUST☆★☆」に傾いた。距離を開けまだ粘ろうとするが「☆★☆STAR DUST☆★☆」に踏み込まれ、残りのメンバーも倒されてしまった。


「☆★☆STAR DUST☆★☆」対「スポーツはいいぞ」。「☆★☆STAR DUST☆★☆」が攻め、「スポーツはいいぞ」が押されながら粘るという展開だったが、そのまま押し切られる形になった



■ 無理に攻めず、的確に相手の作戦をつぶして勝った「Forza Diabolica」

「Forza Diabolica」は今回見た中では珍しくモンクを投入
試合を見ることはできなかったが、Patissierを破って勝者となった放課後ティータイム

 Gブロックの戦いは「Forza Diabolica」が7人、「HYKW」は6人でスタート。「Forza Diabolica」はモンクを入れて阿修羅覇凰拳を狙う。この戦い方を選ぶ場合モンクはSPを大量に消費してしまうため、以前の戦い方でははプロフェッサーのソウルチェンジなどで補給していたのだが、コストに見合わないため、今回使うチームが少なかった。今回はポーションによる回復を選んでいた。これは決勝戦に残り資金を全てアイテム購入に回す判断のようだ。

 両チームのクリエイターのアシッドデモンストレーション、バードのアローシャワー等が飛び交う中、「Forza Diabolica」のモンクの阿修羅覇凰拳のエフェクトも出る。以前のルールでは一撃必殺の阿修羅覇凰拳だが、チャンピオンではなくモンクのため、攻撃力が足りないようだ。そんな中、「HYKW」のクリエイターが「Forza Diabolica」のプリーストを沈める。回復役を失った「Forza Diabolica」は一気にピンチになる。阿修羅覇凰拳がさらに攻撃を加えるが相手を沈めることができない。

 プリーストをやられながらも「Forza Diabolica」のクラウンが寒いジョークを連発し相手を凍らせる。プリーストがいなくても「Forza Diabolica」は積極的に相手に飛びこんでいく。お互いメンバーを失うことなく戦いが続ける。「HYKW」は距離を取りスフィアーマインで攻撃するが、「Forza Diabolica」のバードの弓が、スフィアーマインに状態異常を与え無効化する。

 事態を変えたのはやはり阿修羅覇凰拳だった。「Forza Diabolica」のモンクが「HYKW」のプリーストを沈め、一方他のメンバーは攻撃を集中させほぼ同時に 「HYKW」のロードナイトも沈めたのだ。一気に2人を失い「HYKW」は一時後退。「Forza Diabolica」は追わずに両者は膠着状態になる。「Forza Diabolica」はこのまま待っていても勝ちなのであえて攻めず、モンクが他に支援をかけるなど余裕を見せた。

 最後は「HYKW」の1人が無防備に近付き「仲良くしよう!」と発言、試合放棄ともいえる行動に、「Forza Diabolica」は攻撃を集中して撃破。さらにメンバーを失った「HYKW」はそのまま残ったメンバー全てが倒されてしまった。結果としては制限時間ぎりぎりまで長引いた戦いとなった。ちなみに同時に行なわれたHブロックの放課後ティータイムとPatissierの戦いは、放課後ティータイムの速攻勝ちだった。


お互いが隙を狙いつつ、対峙するという流れが多かった「Forza Diabolica」対「HYKW」。最初にプリーストが沈み「Forza Diabolica」はピンチになるが、「HYKW」はそこから押せず、逆に2人を失ってしまった



 中村氏は試合後、勝利者へ感想を聞いた。今回のコスト制の導入はプレーヤー達をかなり悩ませた。各チームとも練習を繰り返し、議論を繰り返しながらプレイスタイルを決めていったという。相性の問題もあり方向性に関してはなかなか決まらなかったとのことだ。「仲間とケンカをしました」と語るチームもいた。

 しかしこのコスト制はプレーヤー達には好意的に受け入れられたようだ。これまでと違うバランス、新しい戦法はギルド戦に大きな刺激になったという。「Forza Diabolica」のチームは「色々試せたのは楽しかった」と語る。

 一方でやはり資金の問題は「足りない」という意見が多かった。装備品を売って消耗品を取るようなギリギリの戦いが続けられたが、「不戦勝のギルドと大きく差がつくのは問題ではないか」という指摘もあった。相手のチームが出場しなかった場合、資金をそのまま持ちこせる。中村氏は「蓋を開けてみればそういった不戦勝で勝ったギルドはなく、実力の結果が大きく出た」とのことだが、今後の課題となりそうだ。

 予選の準備中、今回、何故こういったルールの変更を行なったかを中村氏に聞いたところ「ゲームをプレイしていない間にも、色んな事を考えられる要素を増やし、プレイしていないときにも『ゲームを考える楽しさ』を体験してほしかった。また、考え抜いた作戦が実際のゲームで結果に繋がったときの喜びも味わってほしかった」と中村氏は答えた。決勝トーナメントもまた今回と同じコスト制になる。各チームは構成を変えてくるか、それともそのままで行くか。予選トーナメントの結果を見て、また大いに談論風発されることになるだろう。

 また、予選トーナメント以上に予算も大きくのしかかる。決勝トーナメントは3回戦なので、できるだけ2セット連取した方が消耗品の消費は抑えられる。しかし倹約しすぎて負けてしまえば意味はない。どうペース配分していくかもプレーヤーの頭を悩ませるだろう。決勝戦は5月1日、東京・ディファ有明で行なわれる。どんな激戦になるか、注目したいところだ。


(C)Gravity Co., Ltd. & Lee MyoungJin(studio DTDS). All Rights Reserved.
(C)2010 GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.

(2010年 4月 2日)

[Reported by 勝田哲也]