マイクロソフト、銀河を巡るSFRPG「Mass Effect」体験レポート
骨太のSF世界、独自のゲームシステムと自由度の高さを持つRPG
本作は、銀河宇宙を駆け巡るSF世界のRPGだ |
株式会社マイクロソフトは、遙か未来の宇宙時代を舞台に、銀河を巡りながら自由な宇宙探索が楽しめるRPG「Mass Effect」を5月21日に発売する。本作は、2007年11月に欧米で発売された海外製のタイトルで、開発元はPC向けのRPGシリーズ「Baldur's Gate」や「Never Winter Nights」といった人気作で著名な米BioWare。欧米での発売から実に1年半を経過しての国内版発売ということになる。価格は7,140円で、CEROレーティングはD(17以上対象)となっている。
本作の特徴とされているのは、ゲーム中に膨大な会話やシナリオの分岐パターンが存在し、プレーヤーの受け答えや行動の選択によってストーリー展開が変化していくという自由度の高いゲームデザインだ。現在、自由度の高いRPGタイトルとしては、2008年に発売された「Fallout 3」が最高峰に位置しているものの、「Mass Effect」は未来の宇宙空間というSF世界を舞台としている点で、ユニークな魅力を放つ作品となっている。
そして今回、マイクロソフト本社にて、本作を実際に体験プレイすることができた。独特の世界観とゲームシステムを備えた本作は、これまでにプレイしたどんなRPGとも違う、独自のプレイ感覚が提供されている。その内容をレポートしたい。
■ 遠い未来を舞台とするSF系RPG。独特のゲームシステムによる幅広い自由度がウリ
マイクロソフト社内のプレイルームで、2時間ほどのフリープレイを体験することができた |
本作の舞台は西暦2183年の銀河系宇宙。時間と空間とを支配する大いなる技術「Mass Effect」を発見し、遠い宇宙へ進出した人類は、異星人たちの形成する銀河社会の新参者として、自らの地位を確立しようと懸命の努力を続けていた。そんな中、主人公である連合軍のシェパード少佐は、5万年前に消滅した文明プロセアンの遺物「ビーコン」の回収任務で、全銀河を脅威に晒す陰謀に直面する。シェパードは、陰謀の手がかりを見つけるため、重大な任務を帯びて広大な銀河へと旅立っていく……。
というプロローグからスタートする本作は、独自のSF世界を冒険するRPGだ。銀河系全体がゲームの舞台であり、世界には人類だけでなく、遠い惑星をルーツとする様々な種族が混在し、複雑な社会を構成している。その中の人類は、意外にも軽んじられている存在であり、プレーヤーもまた、異星人との難しい関係の中で、多くの問題に直面することになる。その他、歴史、テクノロジー、社会構成など、本作の世界設定は緻密に形作られており、米国のSFテレビドラマシリーズ「スタートレック」的なムードと広がりを見せている。SFファンならば本作の魅力に強く惹かれることだろう。
ゲームシステムとしては、戦闘はFPSライクなシューティングアクションがベースで、そこに武器、防具、スキル、特殊能力といったRPG的な概念が組み込まれている。ゲーム序盤こそある程度固定的なルートに沿ってゲームとシナリオが展開していくが、序章を終えて本編へ突入すれば、プレーヤーは銀河を自由に探索し、様々な惑星を冒険したり、数々のクエストに挑戦することができるというものになっている。
様々な種族が混在する銀河社会。世界は「シタデル評議会」と呼ばれる統治機関により支配されており、その中において人類は、やや格の低い新参者扱いを受けている。人類に対する危機的な状況に直面した主人公と「連合軍」の将官たちは、評議会との関係において難しい立場に立たされるのだが…… |
キャラクターメイキングからゲームがスタートする。6種のクラスからひとつを選択したのち、キャラクターの外観を細かく調整できる |
戦闘はFPSライクに展開。とはいえ照準は「だいたいこのへん」という感じでも問題ないので、どちらかというと武器の選択や立ち回りが重要になる |
成長要素はレベルとスキルポイントで表現。スキルポイントが一定水準になると、自動的に他のスキルや特殊能力が獲得できるシステムだ |
今回、マイクロソフトのオフィスで行なわれた体験プレイはクローズドなもので、筆者は序盤を中心に2時間ほどプレイすることができた。本作は、構造的には典型的な海外製RPGで、ゲームはキャラクターメイキングから始まる。基本となるプレーヤークラスには「ソルジャー」、「エンジニア」、「アデプト」、「インフィルトレーター」、「センチネル」、「ヴァンガード」の6種類があり、武器の使用に長じた「コンバット」タイプ、特殊装置を活用できる「テクノロジー」タイプ、そして本作における魔法のような存在である特殊能力を駆使する「バイオテック」タイプ、というふうに基本クラスの性格がわけられている。
プレーヤーキャラクターには独自の名前をつけることも可能だが、初回のプレイではデフォルトのキャラクターであるソルジャーの「ジョン・シェパード」を使うと進めやすい。ソルジャークラスは銃の扱いが強みとなるため、本作に登場する様々な要素への知識がなくても迷うことなく戦闘を行なうことができるからだ。
プレーヤーが直面する最初のミッションでは、とある惑星で発見された古代文明の遺物「ビーコン」を確保するため、2人の兵士とともにパーティを組んで地上戦闘を繰り広げることになる。陸上マップ上の探索と戦闘は完全にシームレスで、アクションゲームそのままだ。プレーヤーはFPSのように銃の照準を合わせて、トリガーを押して弾を発射する。照準にはある程度の自動補正(自動照準機能)がかかるので、狙いをつけるのは不正確でもいい。ただ、敵の攻撃を回避するためには積極的に地形を活用する必要があり、この点は完全にアクションゲームだ。
成長要素はレベル制をベースとするスキルシステムがあり、レベルアップ毎に与えられるポイントを各スキルに割り振って強化していくというスタイルをとっている。面白いのは、各スキルの一定のスキルレベル毎に、他のスキルをアンロックしたり、特殊能力を獲得できるマイルストーンが設定されていることだ。例えばピストルのスキルレベルを3にすると命中率や連射速度を大幅に強化する「マークスマン」能力が自動的に獲得でき、さらにスキルレベルを4にすれば、「ショットガン」のスキルがアンロックされるという按配だ。
さらに、プレーヤーは常時2名の仲間を連れて冒険することができ、その仲間にも同様の成長要素が組み込まれている。プレーヤーは仲間のレベルアップについても同じ方法で成長を管理できるほか、アイテムや装備の管理も行なうことができる。これを自動化するゲームオプションもあるので、スピーディにプレイしたい人も、じっくり進めたい人も、両方が満足できる仕様になっている。
また本作にはRPG的なトレジャーハンティングの要素もあり、より強力な武器、堅固なアーマーを探して銀河を駆け巡る楽しみもある。各種装備には、ファンタジー系のRPGにおける「エンチャント」に相当する概念があり、冒険の途上で手に入る様々な強化パーツを装着することで性能を向上させることが可能だ。強化項目は命中率、連射速度、攻撃力など様々な属性にわたり、銃器ならではの面白みがある。また弾薬の種類を変えることで、特定の敵に対して大きな攻撃力を獲得するといった要素もあって、戦いの戦略性は幅広い。
ストーリーを展開させていくアドベンチャーパートも独特なものに仕上がっている。この世界には惑星や宇宙船、巨大宇宙ステーションといった様々な居住領域があり、プレーヤーは銀河を駆け巡る中で、大勢のNPCと出会い、数多くの問題を解決していくことになる。序盤に訪れることになる宇宙ステーション「シタデル」では、「スペクター」(世界の秩序を守護する特権的存在)のひとり、「サレン」が見せた不穏な動きの真意をつかむため、数々のNPCから情報を集めるという複雑なクエストをこなすことになる。
特徴的なのは、NPCとの会話にあたって、プレーヤーがどのような受け答えをするかによって、その後のシナリオ展開が分岐していくという部分だ。プレーヤーの会話パターンは、順応的、中立、攻撃的の3種に分類されており、それに応じて演出が変化するほか、選択はプレーヤー自身の性格や評価にも影響し、もしプレーヤーが非常に攻撃的な性格となれば、行く先々で相手を恐怖に陥れるような選択が可能になったり、逆に順応的な性格となれば、より平和的な手法で問題を解決することが可能になるなど、クエストの展開にも影響が及ぼされる仕組みだ。
今回のプレイで体験したゲーム序盤はチュートリアル的なつくりになっており、2時間ほどのプレイで本作のシステム全体を学ぶことができた。ただ本作は世界設定が複雑で、様々な特殊用語が頻繁に登場するため、初回のプレイでは知らない単語の応酬に面食らってしまう。冒頭からアクセル全開でストーリーの核心部分が進行していくというのがその理由のひとつだが、導入部分を終える頃にはプレーヤーを取り巻く状況、世界の構図といったものをすっかり理解できるので、まずは無心にゲームを進めていくというのが良いようだ。
武器、防具、カスタマイズパーツといった各種アイテムを集め、敵に合わせた最適な装備を選択するという要素も本作の面白さのひとつ。カスタムパーツは取り外しも可能でずっと使い続けられるので、非常にスムーズにプレイできる |
序盤、不穏な動きを見せるスペクター「サレン」の陰謀を追っていくことで、本作における冒険の糸口が明らかにされていく。それをクリアすると母船「ノルマンディー」を駆って銀河全体を探検できるようになる。各地でクエストを受けてから出かけるもよし、探索を先に行なうのもよしと、自由度の高いプレイを楽しむことができる |
■ もっと早く登場してほしかった国内版。それでもXbox 360を彩る骨太RPGの1本として価値ある大作
惑星探索は本作の大きな楽しみのひとつだ |
異星人との恋愛も可能という本作のシナリオは広く議論を巻き起こすこととなった |
以上のような骨組みを持つ本作は、2007年11月に発売された時点では非常に画期的な新世代のRPGと評価され、海外の様々なメディアにてGame of the Year級の賞を多数獲得している。ただ、国内版が発売される現時点においては、それをさらに超える評価を受けた「Fallout 3」が既に存在しているため、2007年末当時のインパクトはかなり薄れてしまっているのが現状だ。
もう少し速く国内版が発売されていれば……と思うのはとても自然なことだが、マイクロソフトで本作のPRを担当する岩崎桂氏によれば、国内発売にここまで時間がかかった理由として、「3万センテンスに及ぶ、膨大なテキストの翻訳」などを挙げている。本作の次回作である「Mass Effect 2」が、マイクロソフトからElectronic Artsに版権が移ったことも多少の影響を及ぼしているようだ。
発売が遅れた理由をあえて推測するとすれば、2008年初頭に話題となった騒動も多少の影響があったのではないかと思われる。本作「Mass Effect」は、欧米で発売された直後の2008年初頭、ゲーム中に存在する恋愛要素の一部の表現が槍玉に挙げられ、「ポルノのようなゲームだ」と謂れの無い批判を受けたことがある。それが「Mass Effect騒動」と呼ばれる一連の騒ぎに発展し、ゲームをプレイすらしていない層と、プレーヤー達との間で大議論が展開したのである。
最終的には、ゲーム内の表現にそのような悪質なものはなく、批判が的を得ていないことが明らかとなり(プレーヤーにとっては自明だった)、議論のきっかけを作ったブロガーが謝罪する形で騒動にケリがつけられたのだが、大手新聞まで巻き込んだ騒動は本作の扱いを難しくさせる要因となったと考えられる。そして今回、国内版が発売されるにあたって、様々な「配慮」からゲーム内の表現に影響があるかどうかが少々心配な点であった。ここで結論を言ってしまうと、喜ばしいことに、マイクロソフトの担当者によれば「コンテンツに変更はない」とのことで、本作は純粋なローカライズ版となっている。
というわけで、欧米で高い評価を受けるとともに、ゲーム業界全体の関心を呼ぶ一連の議論を巻き起こした話題作、「Mass Effect」は、ようやく国内版が発売される運びとなった。ローカライズは字幕での対応となっており、声優の演技はオリジナル英語版から変更されていないため、洋画を楽しむような雰囲気でプレイできることだろう。プレイボリュームも「全てを体験するには数十時間」という大きさであり、大作と呼ぶにふさわしい規模となっている。欧米版の発売時点から首を長くして待っていたXbox 360ユーザーだけでなく、SFファン、RPGファン、様々な人々にオススメできる作品だ。
□Xbox 360のホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
□「Mass Effect」の公式サイト
http://www.xbox.com/ja-JP/games/splash/m/masseffect/
(2009年 5月 11日)