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プレイステーションのリモートプレイが進化! KDDI×ソニー「5G SA ゲームストリーミング技術検証説明会」をレポート

【5G SA ゲームストリーミング技術検証説明会】

3月23日開催

 KDDI並びにソニーは、2月28日に発表した「5Gスタンドアローン」(以下、5G SA)環境下でのゲームのストリーミング技術を説明する「5G SA ゲームストリーミング技術検証説明会」を3月23日に開催した。

 5G基地局と5G専用のコア設備(5GC)を組み合わせ、5G技術のみで通信を可能とした5G SAのシステムのもと、論理的にネットワークを分割する「ネットワークスライシング」を活用し、プレイステーション 5やプレイステーション 4をゲームストリーミング専用のネットワークスライスに接続することで、遅延や映像劣化のない快適なリモートプレイを行なえることを実現。説明会の終わりには実際に5G SAを用いた実演も行なわれた。

KDDI 事業創造本部 次世代基盤整備室長 泉川晴紀氏

 昨今のコロナ禍において、自宅でのリモートワークなどによりデジタル需要が一気に加速し、「体験」と「場所」の密接な関係が切り離される結果となった。これからは場所に縛られない新しいライフスタイルが定着していくことを見越し、KDDIとソニーは昨年より共同で「どこでもエンタメ体験」の検討を推し進め、動画のストリーミングやライブのサテライト会場や家庭用のVRへの配信といった取り組みを積極的に行なっている。その新たな取り組みとして、PS5やPS4などの家庭用ゲーム機を、場所に縛られず、なおかつ臨場感を伴って外出先で楽しむという新体験を5G通信のもとに行なうというものだ。

 PS5やPS4では、専用のアプリを経由することで、別の場所から自宅のゲーム機にアクセスしてプレイする「リモートプレイ」が可能だ。昨年秋よりこのアプリがLTEにも対応し、家の外からでもゲームをプレイすることが可能となったが、回線の混雑時などに遅延や解像度の劣化などが発生することもあった。そこで5G SAによるゲームストリーミング専用のスライス(論理ネットワーク)を介すことで、ゲームを高精細な画面で安定してプレイできるというのだ。

ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部 第1ビジネス部 統括部長 木山陽介氏

 KDDIでは現在、鉄道や商業施設など、ユーザーの生活導線に即したエリアを構築しているが、現行の5G NSA(Non Stand Alone)から5G SAに進化することで、サービスに合わせたネットワークスライシングが可能となる。KDDIの泉川氏はネットワークを道路に例え、従来のネットワークには様々な目的の車両が混在していて、その流れが悪くなることで、全ての車両に影響が出るということが発生していた。5G SAのネットワークスライシングでは、目的の異なる車両ごとに専用の道路をオーダーメイドで設けられる。例えば遠隔操縦や自動運転などの産業向けのスライス、オンライン学習など教育向けのスライス、遠隔診療など医療向けのスライスなど、サービスに合わせたネットワークをオーダーメイドで分割することにより、他のスライスの影響を受けることがなくなるのである。

 ゲームの場合、データをある程度先読みして流す映像のストリーミングとは違い、プレーヤーのコントローラー入力に反応する必要があり、通信の影響によってデータの到着が遅れるとそれが反映されず、フレームが抜けてしまい、快適なプレイがそがれてしまう結果に繋がる。5G SAでは、高精細な映像とデータをゲームストリーミング専用のスライスを用意することにより、外出先でも安定したゲーム体験が可能となるのだ。

KDDI 技術統括本部 モバイル事業本部 次世代ネットワーク開発部長 渡里雅史氏

 ソニーはデバイスやエンタメを、KDDIはネットワークやサービスを提供し、場所に縛らないエンタメ体験ができるビジネスの共創に向けた技術検証を行なっていくことを約束した。今後KDDIは、2024年度を目処としたネットワークスライシングの本格的な展開に向け、この2022年夏より、一般に向けた5G SAの展開を進めていくそうだ。

 説明会の会場となった東京国際フォーラムの屋外広場には専用の体験会場が設けられ、5Gの通常のスライスとゲームストリーミング専用のスライスにそれぞれ接続したXperia端末が用意され、対戦格闘ゲームの「ストリートファイターV」を使用して、リモートプレイを体験することができた。なおこの検証では、リモートプレイ用のPS5は、虎ノ門のKDDIに評価用サーバーとXperiaを経由して接続されていたそうだ。

当日の技術検証のネットワーク構成。通常スライスと専用スライスにそれぞれ接続したゲーム機と端末が用意された
【G5 SAゲームストリーミング技術検証動画】
上がゲームストリーミング用スライスで、下が通常スライス。上側は滑らかに動いているが、下側ではところどころでフレーム飛びが起きているのがわかる
【G5 SAゲームストリーミング技術検証動画(実機によるゲームプレイ)】
こちらは実機によるゲームプレイ。左がゲームストリーミング用スライスで、右が通常スライスだ

 ともに映像は非常に高精細で、実機では秒間60フレームの動きが出ていた。しかし検証用動画と実機の動画を見ていただくとわかる通り、通常のスライスの端末ではフレーム飛びが発生していることがわかる。一方ゲームストリーミング専用スライスの端末では一切そのようなことはなく、もちろん映像の解像度が劣化してぼやけてしまうこともなかった。リモートプレイなので、当然ながらフレーム単位の入力ラグはあるのかもしれないが、筆者のレベルではそれを体感することはできず、何も知らされずにプレイしたら、この端末でゲームが直接動いているように感じるほど快適であった。

ゲームストリーミング専用スライスに接続された端末実機。なお体験時に用意された2代は対戦モードではなく、個々にシングルプレイモードをプレイしていた

 なお、現状は技術検証を行なっている段階であり、具体的なサービスや仕様などに関してはまだ全くの未定とのこと。使用するアプリケーションや端末、料金、移動時の使用、またパケットの通信量など、ユーザーとして気になる点はたくさんあるが、まだそれを発表できる段階ではないとのことだ。

 実現すればこれまでに体験したことのないような、快適な外出先でのプレイが約束される5G SAを介したゲームストリーミング体験。今後の検証結果報告や、具体的なサービス内容の発表などには大いに注目しておきたい。