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「FFXIV」パッチ5.2「追憶の凶星」吉田直樹氏インタビュー

ハイデリン、ガイウス、ダラガブ、10年の因縁がついに語られ、いよいよクライマックスへ!

【パッチ5.2「追憶の凶星」】

2月18日実装予定

 プレイステーション 4/Windows/Mac用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ(以下、FFXIV)」のパッチ5.2「追憶の凶星」が2月18日に実装される。

 パッチ5.2では、いよいよメインストーリーが「漆黒のヴィランズ」としてのクライマックスに差し掛かっていく。また、「希望の園エデン:共鳴編」や「ルビーウェポン破壊作戦」などのバトルコンテンツや、「漆黒」での装備強化コンテンツとなる「セイブ・ザ・クイーン」、漁師の新コンテンツ「オーシャンフィッシング」、「イシュガルド復興」のアップデートなど多彩なコンテンツが実装される。

 今回は、パッチ前に恒例のインタビューで、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏にパッチの見どころなどを聞いてきた。「FFXIV」の今後の予定からゲームの将来像まで、興味深い話を聞くことができたのでぜひ読んでみて欲しい。

4つのロールクエストをクリアしておくとメインクエストが更に楽しいかも

――お正月はどう過ごされましたか?

吉田氏:  もう記憶が曖昧です(笑)。年末27日まではフルに仕事をして、夜は開発チームの何人かを連れて小忘年会をして、28日から年末年始休暇でした。

――今年は、世間では最長9連休の正月休みでしたが、きちんと休みは取れたのですか?

吉田氏:  自宅でもノートPCで仕事ができますから、会社にはほぼ出てなかったです。出たのは2日間くらい、どうしても集中したかったので。開発チームは全休にしていたので、休みはキチンと取れたと思います。スケジュール的にも問題ないです。僕は「FFXIV」以外にも全社案件をいくつか抱えているので、家でちょこちょこ仕事をしていました。遠出できる感じではなかったですね。

 これは愚痴ですが、今シーズンはとにかく雪がなさすぎて、大好きなボード(スノーボード)も全く行けない状態で……。ですので、ひたすら「FFXIV」をプレイしていました。日中は仕事をして、仕事に飽きたら「FFXIV」を起動して、吉P散歩のキャラで結構色々なワールドに行ったりしていました。12月31日の夜にはラムウワールドにいて、年越しの瞬間はバハムートワールドにお邪魔しました。みんなで年始のカウントダウンをして「あけおめー」と。色々なワールドからパーティ募集を眺めて、適当に零式に飛び入りしたりして、ワーワーしてましたよ。こう書くと、ここ数年は毎年そうですね(笑)

――今年の新年の挨拶には「驚きの詰まった年にする」と書かれていましたね。いったいどんな年になるのかチラッと教えていただけないですか?

吉田氏:  「FFXIV」も長くやってきていて、パターン化したところもあれば、新しくチャレンジしている事もあります。普通に期待してもらっているところは期待に添うようにしつつ、ちょっとそれを外すというか、「よくやるよなあ……」と言っていただけるように、新たな試みも意図的にやっていこうと思っています。

――それはストーリー的なことですか?

吉田氏:  ストーリーもそうですし、コンテンツタイプもそうです。5.2Xシリーズ、5.3もそうだし、コンテンツとしてもまたいろんなチャレンジをしていこうと思っています。そういう意味で驚きが詰まった一年になると思うので、ぜひ楽しみにしてください。

【メインビジュアル】
光の戦士と共に、アルバート、アシエン・エリディブス、惑星ダラガブが描かれている

――新しいパッチのメインビジュアルが先日発表になりました。イラストではクリスタルの中にアシエン・エリディブスと闇の戦士、若かりし頃のアルバートらしい男性、そしてダラガブが描かれていましたね。最近のパッチアートの中ではずいぶんおとなしい印象を受けましたがどういう意図があるんでしょうか?

吉田氏:  いつもならなぜこのデザインにしたかなど、パッチのテーマについてお話しできるんですが、今回はそれを言ってしまうとネタバレが強く、ちょっと困っています。プロデューサーレターLIVE(PLL)でも少しお話ししましたが、パッチ5.2とパッチ5.3は前後編のようなイメージになっています。5.1を割と閑話休題のようなストーリーにしたこともあって、今回と次回のストーリーは「漆黒のヴィランズ」クライマックスパート1とパート2というイメージでいます

 ですので、単純にパッチイラストにある、「このクリスタルって何のクリスタルだろう?」など、推測していただけると嬉しいです。エリディブスがクリスタルの中央に描かれていることにも意味があります。追憶の凶星というもののわかりやすい例としてダラガブが描かれていますが、例えば古代人やアシエンたちにとっての凶星とは多分ダラガブではないと思うし、色んなキャラクターたちにとっての凶星が存在しているはずです。「旧FFXIV」から数えて10年が経ちましたが、また種明かし的というか、古い伏線にも踏み込んでいるので、その驚きを感じてもらいたいというアートのつもりでご用意しました。

【メインストーリー】
第一世界と原初世界両方でストーリーが進んでいく

――ダラガブがどうこうという話ではないわけですね。

吉田氏:  そうですね。凶星を指し示すものは何か、ということを色々妄想しておいていただければ、より楽しめるのかなと思います。

――前後編と言うことですが、今回でストーリー的には核心に近いところまで進むんでしょうか?

吉田氏:  パッチ5.1は光が払われた後の第一世界の人たちが、冒険や世界の真相とは関わりないところで、どうやってこの世界を再び前へ進めて行くのかというエピローグ的なお話しだったと思います。これでエピローグは終わったので、再び本筋が動き出します。賢人たちは原初世界に戻らなければならないし、最後に残ったアシエンは世界統合を諦めていないので、それを止めていかなくてはならない。託されたというか受け継いだものもあるはずなので、それらも飲み込みつつ、最終的にどうアシエンと決着をつけるのかというところが描かれていきます。

【メインストーリー】
トレーラーでエメトセルクの最後の言葉に言及していたヤ・シュトラ。その意図は?

 5.0のストーリーで、「ゾディアークとは何なのか」は、ある程度語られてきましたが、ハイデリンは大きくは語られていないと思います。今後はこちらにもご注目ください。パッチでここまで踏み込んでいくのかというくらい、メインシナリオ全体のボリュームもあります。カットシーンが長いというよりは全体のゲーム体験としてのボリュームが大きいので、たっぷりとお話に没頭できると思います。よくできているので、ぜひどっぷりと1日かけて、いろいろな考察をしながらメインシナリオを進めて貰いたいです。また、できれば4つのロールクエストを全てやっておいていただけると、よりお話が楽しめるかなと思います。

――4つのロールクエストとその後のおまけクエストまで全て見ておくほうがいいと言うことですか?

吉田氏:  そうですね。アルバートという存在にもある程度光が当たってくるので、彼らの旅の過程を知っていることで、また思い入れが変わってくると思います。メインストーリーをしゃぶりつくしたいという方は、パッチ直前でも構いませんので一通りやっておいていただけると、より楽しめるかなと思います。クリアした後零式ばかり行っていたので、ロールクエストの存在を忘れてたという人もいるかもしれませんので。ぜひやってみてもらえると嬉しいです。

【メインストーリー】
ロールクエストと4つのクエストクリア後に受けられるサブクエストを見ておけば、物語がより楽しめるかも

「ウェルリト戦役」ではガイウスと共闘して帝国と対峙する

――新しいクロニクルクエスト「ウェルリト戦役」についてお伺いします。今まではギムリトで戦いが続いていましたが、この新しいウェルリト戦役が始まることで、帝国との戦いは今後こちらのクエストの中で語られていくんでしょうか?

吉田氏:  今回、もう1つ帝国が大きく関わってくるストーリーが存在しているので、必ずしも全部がここでというわけではありません。パッチ5.1の最後の方で、帝都ガレマルドに侵入したガイウスとエスティニアンが、脱出するエピソードを描きました。二手に別れた後、エスティニアンが魔導兵器を1つ破壊したのですが、それが「ウェルリト戦役」の序章になっています。

 なにやらアルテマウェポンをベースにした魔導兵器の開発が進んでいる、ということをエスティニアンから聞いたガイウスは、そもそもアルテマウェポンは自分たちが起動したということもあり、過去との決着を付けねばならないと動き出します。「ウェルリト戦役」は、そんなガイウスが引っ張っていくストーリーになっています。帝国将軍たちが今、何を考えていて、どんな行動を起こそうとしているのか。そこにガイウスの過去がどう絡んでくるのか。そういった所が「ウェルリト戦役」の見どころになります。

【ウェルリト戦役】
ガイウスと2人で進めるストーリーとなる

――前回はエスティニアンとガイウスが2人で行動していましたが、今回は光の戦士も一緒に動くことになるんですね。

吉田氏:  エスティニアンには別の役割があるので、光の戦士とガイウスの2人ということになります。

――そういえば、ガイウスとは何度も邂逅しましたが、一度もしっかりと絡んだことはないですね。

吉田氏:  そうなんです。かつては敵同士、今回はきっちりと絡みができています。

――「紅蓮のリベレーター」終盤辺りから帝国が人体実験など危うい研究をしているなという話がちらほらと出ていて、前回のアーチアルテマにも人間が融合しているような表現がされていました。「ウェルリト戦役」は結構ダークな話になるのですか?

吉田氏:  ヴァリスが人造人間の研究に着手していてというのは、「紅蓮のリベレーター」でも語られています。パッチ4.5でソル帝が出てきた時に、「この身体を量産してくれていて楽だったよ」と、ヴァリスがソル帝の身体を生体複製技術の実験体として使用したエピソードが語られます。彼らは魔法が使えないので、そのぶん倫理的に答えがないところに踏み込んでいこうとしている、というところが描かれていくかなと思います。

【ルビーウェポン】
今後、他のウェポンシリーズも続々登場しそう

――「ウェルリト戦役」では今回ルビーウェポンが敵として登場しますが、今後「FFVII」に登場する他のウェポンも登場すると思っていいんでしょうか?

吉田氏:  「ウェルリト戦役」という正式名称ではありますが、開発中の名称としてウェポンシリーズと呼んでいるので、まあそうなるかなと思います。生体兵器好きが喜んで作っています(笑)。

日本人はレイド好き「絶アレキ」も「零式」もダントツ

――「絶アレキサンダー討滅戦」について現在のクリア率は教えていただけますか?

吉田氏:  クリア率は今までも発表したことがないので、今回も伏せさせてください。でも、これまでに比較すると、クリア率は非常に高いです。簡単になった、というお声もみかけますが、プレーヤーの皆さんの練度が成長し続けていることと、5.0でどのジョブもかなり取り回しがしやすくなったからではないかと考えています。ジョブを使う難易度が下がっているので、クリアしやすくなっていると感じるんだと思います。絶アレキサンダーについては、やはり初期攻略か、そうでないかはかなり差が大きいですね。今回は特に過程を重視したレイドでしたので、ワールドファーストレース終了後に攻略し出した固定は、早期クリアとは難易度が格段に異なります。クリア率は、相変わらず日本がダントツのトップです。日本の方はみんなものすごくレイドが好きですね。

【絶アレキサンダー討滅戦】
まだまだ多くの人が挑戦している絶アレキ。クリア率は日本がダントツらしい

――日本が一番多いんですか?

吉田氏:  零式踏破もそうですが、びっくりするくらい国別比率が高いですね。

――そんなに差があるんですか?

吉田氏:  あります。

――どうして日本人はそんなにレイドが好きなんでしょうか?

吉田氏:  買ったゲームは隠しボスまでやる!という文化が元になっている気がしますが……。海外の人たちは、買ったものや遊んでいるものに対する価値は自分で決めるという感じですが、日本ではほかの人達もやっているなら自分もやらないと損をした、という気分になるという傾向があります。これは良し悪しではなく、そういう生活習慣というか、風土だと思います。あの人がここまでやれているなら、自分もそこまでやりたいという風になるし、そこに面白さがあるから、一緒にやろうぜと周りを誘うんです。アメリカなどでは、俺は俺、あなたはあなたという文化ですから、やりたいのでヘルプしてくださいと言うとすごく丁寧にサポートしてくれるけれど、向こうから熱心に誘うということはあまりやらないので、そこの差かなと思います。

――“ギスギスする”と良く言われますが、やってみると意外と面白いということでハマる人も多いんでしょうか?

吉田氏:  零式なんかはもうギスギスしてないと思いますが……。僕はしょっちゅう野良で参加しますが、今は3滅解散(3回全滅したら解散しましょうの意)なのでむしろサバサバかなと。「予定の3滅したので解散しますねー」と。

――ギスギスする余地がないわけですね。

吉田氏:  あれだけ多くの人がやっていると、もめているよりも次のパーティに入ったほうが早いですからね。

――データセンター単位でパーティが組めるようになってから、零式パーティを組む時間も格段に短くなりましたしね。

吉田氏:  そうですね、とても良かったと思います。

「希望の園エデン:共鳴編」ではいよいよガイアが活躍

――新しい「希望の園エデン:共鳴編」ですが、どんな話になるのでしょうか?

吉田氏:  「エデン」のストーリーは、リーンの成長物語でもあります。5.0の本編では覚醒するところまでしか描けていないのですが、ようやく彼女は、彼女自身の人生を歩み始めたところです。これまでリーンの周りは大人ばかりだったんです。外出を禁止する厳しいおじいちゃんから、外に連れ出してくれたけれど、何をするにも禁止してくる怖い父親とか。前回の覚醒編でヴォイドウォーカーとして出てきた少女ガイアが、今回目を覚まします。ガイアにも色々な境遇があるのですが、2人はある意味同年代で、リーンの境遇に似たところもあります。この2人の少女がどういう関係性を築いていくのかという事に加えて、世界を活性化させていった先に何があるんだろう、という所が今回のストーリーのポイントかなと思います。

――ガイアはイラストではゴスっぽくて怖そうに見えたんですが、そういうタイプではないんですか?

吉田氏:  結構キャラが立っているというか……好き嫌いが分かれそうです(笑)。今回はかなり目立ちますので、これまでの「FFXIV」にいなかったタイプのキャラを楽しんでください。

【希望の園エデン:共鳴編】
今回から本格的に登場するガイア

――どんな疑似蛮神が出るのかも気になるところですね。

吉田氏:  今回今回トレーラーに、1層と2層の映像を入れています。1層は疑似蛮神ラムウ。ラムウを想像したのですが、「雷……、雷といえば……」とイクシオンと混じってしまって、下半身が馬で上半身がおじいちゃんというケンタウルスみたいなラムウが出てきます。

 2層はストーリーの進行上、炎と風を同時に励起させた方が、効率が良いということで、これは実際に属性相関図的にそうなんですが、疑似蛮神イフリートとガルーダを同時に相手にしていただきます。3層はまったく毛色が違っていてナイショで、4層は更に違っていてこちらもナイショです。

【希望の園エデン:共鳴編】
下半身がイクシオンのラムウ

――今回は1、2層に疑似蛮神が登場するわけですね。

吉田氏:  どうでしょうか……。そこから先は観ていただいた方が。特に4層は、なるほどそうきたんだと思っていただけるのではないかと。これを言ってしまうと面白みがなくなるので伏せておきます。

――1、2層の見どころはどういったところですか?

吉田氏:  ラムウということで、玉を拾うギミックや、避雷針という概念が入っていたりもします。1層ですので、そこまで凶悪にはならないと思いますが、覚醒編よりは難しくなります。2層は敵が2体いるので、使ってくる技が全然違っています。1つのタイムライン上でループされるというよりは、イフリートの技、ガルーダの技それぞれの対処法を覚えておかなくてはならないし、当然コンビネーションもあるので、覚えることとニュアンスで避けること、双方が要求されるバトルになります。

 まだ最終調整を始めたばかりなので、落としどころは言えないですが、少なくとも「覚醒編」よりは歯ごたえがあると思います。「覚醒編」では最終調整で必要DPSを15%削っていますが、今回はいつも通りの数字の付け方をするつもりです。

【希望の園エデン:共鳴編】
2層ではガルーダとイフリートの2体と戦うことになる

――「覚醒編」の時にはまだ新しいスキル回しに慣れていないからということでしたね。

吉田氏:  そうですね。どうしても人によって火力のばらつきが大きいと思っていたからです。今回はいつも通りの値付けをするつもりです。充分5.0の各ジョブにも慣れたと思いますので、ここからが本番かなという感じです。とはいえ、めちゃくちゃ難しくなるということではなく、いつも通りの零式だと思って挑んで頂ければと思います。

装備強化コンテンツ「セイブ・ザ・クイーン」。今回は武器を手に入れるところまで

――新しい装備強化コンテンツについてお伺いします。正式名称は決まりましたか?

吉田氏:  「セイブ・ザ・クイーン」というシリーズになります。今回新しいチャレンジの1つでもあるのですが、パッチ5.25では「セイブ・ザ・クイーン」の第1弾がリリースされます。名前が伏せられている討滅戦は、実はここに絡んでいます。ですのでパッチ5.25が来るまでは、あれが何なのかは分からないです。

――どんなストーリーになるのですか?

吉田氏:  「セイブ・ザ・クイーン」シリーズは、帝国のもう1つの側面を語るストーリーでもあります。シタデル・ボズヤという、もともとはロスガルたちが多く住んでいた地域があって、現在は帝国に占領されて帝国第IV軍団の支配下にあります。東方連合の盟主であるドマが、帝国に対してレジスタンス活動をしている人たちをまとめようとしていますが、その中にはボズヤを奪還しようとしている人たちもいます。そこから、解放者光の戦士に、ボズヤ奪還のための助力をして欲しいという依頼が舞い込んできます。そこから物語が始まるわけです。

 ガレマール帝国に対して、ガイウスと一緒にアルテマウェポンシリーズの暗躍を阻止すること。そして、帝国の手からボズヤを解放するという、この2つは相対する軍団が違うので帝国はこの2ラインで描かれていきます。

【セイブ・ザ・クイーン】
ロスガルの故郷、ボズヤ地方をガレマール帝国から奪還するために武器を作る

――ではボズヤでも最初は帝国兵と戦うことになるんですか?

吉田氏:  ナイショにしておきます……。ただシドの父親のミドが絡んでいるという、『シタデル・ボズヤ蒸発事変』の真相が描かれることになります。

――その真相解明のストーリーも同時に描かれるわけですか。あの蒸発にはメテオ計劃が絡んでいましたね。

吉田氏:  「旧FFXIV」から話だけは出てきていたものが、どんどん解消されていくことになります。詳しい方だと、もう「FFXIV」に伏線は何も残らないんじゃないかというくらい、色んなものを畳みかけにいっています。パッチ5.2シリーズは、全体的にすごいボリュームなのでじっくり遊んでいただければと思います。

――強化させる武器はどのようなものなのですか?

吉田氏:  ボズヤ地方には第三星暦の頃に強大な国があったのですが、その女王の旗印のもと、人々は「グンヒルドの剣」と呼ばれる伝説の武器を掲げて戦ったという伝説があります。剣という名前ですが、一連の武器を指しています。レジスタンスたちは、このグンヒルドの剣たちを復活させて、その御旗の基に人心を1つにして、ボズヤを帝国から奪還しようとします。

 このグンヒルドの剣を復活させていくことが、武器の強化要素になります。5.25では強化の素体となる武器が手に入ります。「新生」でいうと、レリック1が手に入るところまでです。これは単純にストーリーを進めていって、最後にちょっとしたボスをクリアすればもらえます。本格的な強化はパッチ5.35からになります。

【セイブ・ザ・クイーン】
武器強化コンテンツとなると、当然この人が登場する

――ということは、今回の5.25ではコンテンツ用のフィールドは実装されないわけですか?

吉田氏:  実装されません、ただ、シナリオ用の非常に凝った専用マップがあります。

――5.35からの育成コンテンツはどのようなものになるのですか?

吉田氏:  武器の育成は基本的にストーリーをクリアすることから始まります。5.35のコンテンツの部分は、そのストーリー後に開放され、広大なマップを使った新しい遊びになっています。最低限のストーリーをクリアするだけならコンテンツは少しだけやればよくて、武器強化のための素材は、別の場所からでも入手可能になっています。この新しいフィールドを使ったコンテンツは結構時間を食う遊びになっているので、こちらをやりたい人はこちらに入り浸ってもらって、こちらで強化することもできます。もうこのコンテンツはいいやという人は、別の方法で武器を育てることも可能にするつもりです。

 「禁断の地 エウレカ」ではソロで強化できないのが辛いというフィードバックを多くいただいたことから、今回はストーリーだけはここでやってください。でもその先からの強化は、必ずしもこのコンテンツをやらなくてもできますので、好きに選んでくださいということにしました。

――「エウレカ」的な遊び方もできるし、そうではない方法でも強化ができるということですか?

吉田氏:  そうです。ただ「エウレカ」的な遊び方と言ってしまうと、どうしても「エウレカ」の次と思えるかもしれないですが、また違った遊びになっています。専用エリアと専用レベルはありますが、じゃあ「エウレカ」かと言われたらそうではなく、また新しいものです。これはまたパッチ5.3が近づいたら、色々とお話しようと思っています。今回の「セイブ・ザ・クイーン」の後にそういったコンテンツが続いていって、それが5.35、5.45、5.55と続いていくと思ってください。

今回のイシュガルド復興は20段階以上、高難易度レシピも登場

――「イシュガルド復興」のアップデートについて、前回はあっという間に復興が終わってしまいましたが、今回はどうなりますか?

吉田氏:  すごかったですね……。今回は復興の段階が相当ありますので、一瞬では終わらないかなと思います。ただランキングも同時開催するので、その人たちが寝ずにやっていると……割と進行するかもしれない(笑)。

――高位のクラフターでなければできないことはあるのですか?

吉田氏:  ランキング争いのポイントは、当然ポイントが高いものを納品していた方が有利なので、ランキング争いに挑む方は、それを狙って高難易度レシピに挑んでいただくことになると思います。今回実装される高難易度レシピと呼ばれるものは、ゲームの中でも明確に、「これは高難易度レシピです」というカテゴリわけがなされます。そのレシピの制作を開始すると、ほぼ1ターンごとに何かの状態変化が起きます。その状態変化に合わせてどのスキルを使うべきかを一手ずつ考えながら完成させていくイメージです。

――経過観察しながら完成させていくのではなく?

吉田氏:  ほぼ毎回、何かしらの効果が発生するので、それに適したスキルを使って完成を目指すという遊びになっています。ガチ禁断した人たちが、完全な能力と自分のプレーヤースキルを使って詰め将棋をやっていくようなイメージです。ただ自分で計算しなければならないのはしんどいと思いますので、今回からスキルシミュレーターが実装されます。

 このシミュレーターを使うと、今の状態でこのアクションを使ったらどうなるということが自動計算されて未来が見えるようになります。シミュレーターに自分が実行したいアクションを入れると結果を出してくれるので、いくつかのアクションを試しつつ「これだ!」というもので詰めていきます。

――そのシミュレーターは製作中にも使えるんですか?

吉田氏:  もちろん使えます。この状況で使ったらこうなりますという結果が出ます。このアクションを使えば100%だけどここまでしか進まない、このアクションなら成功率は70%だけどここまで進むということが分かります。ただし、シミュレーターはあくまで成功した場合こうなりますという結果を表示しているので成功するかどうかは実際に試してみなければわかりません。

――成功するかどうかは分からないのですね。

吉田氏:  確実性を取るなら、もちろん成功率が高いアクションを使ったほうがいいと思います。そういう上級者の遊びにしています。では新式を作るためにそれをしなければいけないのかというと、そんなことはないです。新式は高難易度レシピではないので。

――ライト勢については、前回はF.A.T.E.への参加でしたが、今回もああいった形になるのですか?

吉田氏:  全員で復興してねという状態の時には、スキルの差もなく全員で同じ作業をして、みんなで復興させていくことになりますが、それを発生させるための段階では各レベルに見合ったものが要求されるところは同じです。今回からディアデム諸島が開放されて、ギャザラーの本格的な復興参加が始まります。ギャザラーの皆さんはディアデム諸島で取れるものをがんがん納品していただければ、復興ポイントが貯まるようになります。

 レベル10から参加できるので、こちらもレベリングに使っていただくことができます。ディアデム諸島で採集しているとゲージが溜まっていって、MAXまで貯まると「エーテルオーガ」という、ぶっちゃけるとロケットランチャーが使えるようになるので、そのあたりにいるモンスターを爆発させるとそこからも素材が取れるのでそういう風に遊んでいただければ嬉しいです。

――ディアデム諸島はイシュガルド復興の専用エリアになるのですか?

吉田氏:  そうです。完全にそれ専用になります。

オーシャンフィッシングはリアル2時間おきに2コースが交互に出発

――「オーシャンフィッシング」ですが、「旧FFXIV」にあった定期船のようなものなのですか?

吉田氏:  厳密には定期船とは違います。もちろん、それを作ることはできるんですが、でもおそらく、それだとみなさん一回乗ったきり、プレイしなくなると思うのです。リアルタイムに進む定期船は、旅情感は出ますが、実距離をそれで移動するのは時間がかかりすぎるのです。

――そうなんですね。ではどのようなシステムになるのですか?

吉田氏:  現実時間の2時間おきに受付が行なわれます。15分間の受付時間内に受け付けた人を24人ごとに区切って出港させていきます。今回は2ルートがあり、船は2時間おきに交互に出航します。それぞれ3つずつ海域が存在していて、カットシーンでその海域にたどり着いたら、停泊している状態で一定時間釣り放題になります。その海域に見合ったエサやアクションを使うことで、より大物を釣り上げることができます。当然そこでしか釣れない魚もいます。一定時間が経過すると、船長が船を移動させて、次の海域で釣りをしてという感じです。誰かが一定条件を満たしてトリガーを引くと「爆釣タイム」に入って全員が釣りまくる状態になったり、大物が出たりもします。最後にそのクルーズ全体で自分が釣ったポイントが何ポイントになったので、これだけリワードを差し上げますという感じです。

――リワードとしては何がもらえるのですか?

吉田氏:  経験値が一番大きいです。あとは漁師なので、当然釣りたい魚が手に入るということです。

――ヌシも釣れるんですか?

吉田氏:  伏せておきますが、一流の漁師さんたちで挑むフィーチャーも存在しています。

――参加できるのは漁師だけですか?

吉田氏:  漁師だけです。レベル1から参加できるので、これまで漁師をやっていなかった人でもサクサクとレベルが上がります。ちょっと時間がある時に乗って、釣っているだけでも気楽にレベリングが可能です。このコンテンツは、生活必需品としては作っていないんです。あくまで、存在していて意味がある、というものです。

 今回システムができたので、今後は航路の数を増やしていこうと思っています。あとはハプニング要素などをさらに足していくことになるかなと思います。先週末に開発のチェックがありましたが、楽しかったですよ。みんなでものすごい勢いで竿を垂らして、チャットも普通にできますし。FCのイベントに使っていただいたり、固定の待ち時間にクルージングしたり。そういうところにも手が回せるようになったのが今の「FFXIV」の強みかなと思っています。

クラウドゲーミングがハード戦争を終結させる

――CES2020でプレイステーション 5のロゴが発表されましたが、PS5に期待することなどあれば教えてください。

吉田氏:  どちらかというと、PS5というよりも、これから出てくるNEXT Genのコンソールについてですが、”コンソール”という言葉は、次世代で終わりになるのかもしれない、と個人的には予想しています。もうクラウドゲーミングの流れは止められないと思っています。ただ、現時点ではラストワンマイル(ユーザー個人のネットワーク通信環境)問題があって、5Gが普及しない限り、本当の意味でのクラウドゲーミング体験にはならないと予測しています。セッション数が少ないうちは良いですが、セッション数が増え、かつネットワーク全体が重くなるピークタイムには、まだ本当の意味で耐えられないだろう、と。回線がまだ細い、莫大なレンダリングコストがかかる、この2つが現在のボトルネックで、後はもう時間の問題かなと思っています。

 ドコモのFOMAが出てきたときに、FOMA対応携帯を持っていても、全然電波が捕まえられなくて……というのに似た状況ですね。5Gも初期にはそうなると思います。アンテナの敷設料金が高いし、基地局のアップデートも必要なので、中国のように国が補助している所は普及が早いと思いますが、日本だと土地問題もありますから結構大変だろうと思っています。ただ、いずれにしてもあと8年くらい、長くても10年もすればすべての携帯が5Gになって、日本中が5Gになります。そうなったらもうたぶん、家にハードはいらないという状態になるので、そうなるともしかすると次の世代で最後かもなと。

【PS5のロゴマーク】

――1つのプラットフォームの寿命が10年程度と考えると、次が最後になるかもということですね。

吉田氏:  そうなのかなと考えています。ただいち早く今クラウドに取り組んでいるところでも、今すぐにクラウドがすべてにとって代わるとは当然思っていないでしょうし、ユーザーを増やせば増やすほど品質が悪くなるというジレンマも抱えています。ただ、将来的には間違いなくそうなってくるからこそ、今は逆にどのプラットフォーマーさんもハイエンド、ハイスペックで最高のものをという部分に集中されていると思います。そこは楽しみですね。

 もう1つ、ハード戦争がなくなることは目に見えているので、次世代中に垣根はできるだけなくしてほしい、と個人的には思います。Microsoftのフィル・スペンサーさんと以前色々とディスカッションをしたんですが、フィルさんは「ゲームはゲーマーのものだ。それはハードメーカーが決めることではなく、我々はゲーマーが最高のゲーム体験をするための手伝いをしているんだ。だからどんなプラットフォームで遊んだっていいじゃないか。ゲームをたくさんの人が遊んでくれることが、最終的には自分たちの利益になるんだ」とおっしゃっていて、その通りだと思います。時代も変わりました。

 フィルさんのこのセリフは、現世代の苦境があったから言えるセリフなのかもしれないですが、先の世代が明らかにハード戦争ではなくなるのは目に見えているのだから、今からそうしたほうがいいんじゃないかなと。だから次世代ハードでは、ローンチから少し経ったらもうどのプラットフォームからでもゲームがスムーズにクロスプレイできるということに期待したいです。

――少しずつハードの壁が崩れてきている感じはありますが、まだ特定のハード限定というものは多いですね。

吉田氏:  同じゲームで遊んでいるのに、ハードの垣根があって一緒に遊べないというのを、とにかく全部のゲームでなくして欲しいです。

――「ドラゴンクエストX」のブラウザ版が開発中です。先日CBTに参加したところ、ブロードバンド環境ならコンソール版と遜色ないレスポンスでプレイすることができました。クラウドゲーミングサービスに参加するMMORPGも増えていますが、「FFXIV」もいずれはクラウドゲーミングタイトルとして配信される日がくるのでしょうか?

吉田氏:  MMORPGの場合、ゲームサーバーとレンダリングサーバーという、2つのサーバーを介さなければならないので、普通のクラウドゲーミング以上にハードルが高いんです。コンマ何ミリsecが命取りになります。それに僕らはユーザー環境を指定できないですから、4G以上でしか遊ばないでくださいと書いたとしても、かならずしもそうはならない。そうなると、レイテンシが悪い人がいた時に、動きが悪く見えてしまいます。実際には、単に通信環境が悪いだけでも、違いがわかりません。そうなると、「やっぱりクラウドで遊んでいるプレーヤーがいると迷惑だ」という人も出てきてしまいます。今はもう少しだけ、テストしながら我慢かなと。

 もしかすると中国版の方が先にクラウド化するかもしれないですね。向こうは5Gの普及がとても速いので、今運営してくれている盛趣遊戯とテンセントで大掛かりなクラウドゲーミングのベータテストをやろうとしています。向こうの結果が良好であれば、中国版の方が先にクラウド化する可能性は高いです。

――日本にも頑張ってもらわないとですね。

吉田氏:  いまでも日本の通信環境は非常によく、動画視聴では全く問題がありません。きっと5Gの速さが想像つかないんだと思うんです。まだ日本は5Gでわかりやすいコンテンツを創れていない、こんな未来が待っているよ、という分かりやすいイメージを創れていないせいで、資金投入に際して、ポジティブではない人たちを生んでいるのだと。でも時間の問題ではあると思います。

 クラウドゲーミングは、ちゃんと視野に入れているつもりですが、焦ってはいません。我々は結局ソフトメーカーとしてどこかのプラットフォームにソフトを提供していくことになるので、どこが世界で一番早く安定して、どこが世界中に数多くサーバーを置いて、どこと良いビジネスができるか、というところから広げていくべきかなと思っています。

「漆黒」ではヒルディは強い心で一回休み

――NETFLIXで「ウィッチャー」のドラマ版が始まりましたね。

吉田氏:  それが、まだ観れていないのです……。お正月に観ればよかったんですが、「FFXIV」ばっかり遊んでいたら忘れて、よし観なきゃと思ったらこのパッチ5.2のP/Dチェックに突入して。今日たまたま別件でアメリカとの会議で、「ウィッチャー」の映像を作っている関係者と話をする機会があったんですが「大ヒットおめでとう」としか言えてなくて。まだ観てないんですか?と聞かれて、観なきゃなと。

――ファーストシーズンの視聴者数としてはNETFLIXの過去最高だそうですね。「FFXIV」もNetflixでドラマ化が決まっていますが、脚本家の方がTwitterで何が見たいのと問いかけると「ヒルディ」という意見が多かったそうです。ヒルディは「漆黒」にはまだ出ていませんが、登場予定はあるのですか?

【NETFLIXドラマ「ウィッチャー」】

吉田氏:  実は、いまのところ登場予定がないのです。

――そうなんですか? 絶対に出てくるだろうなという感じの終わり方だったので、第一世界にいるんだろうなと思っていたんですが。

吉田氏:  どうにでもできるようにしておいたんです。でも今は各パッチのシナリオボリュームがすごくて。メインストーリーを押し進めていくということと、「ウェルリト戦役」も「セイブ・ザ・クイーン」もしっかりとお話が設定されているんです。翻訳とカットシーンのコストがもう限界に来ていて、翻訳者を増やそうとはしているんですが、対応しきれない状態です。やるとしてもパッチ5.2からかな、という話はしていたんですが、この状態でヒルディを作ったとしても、すごく薄い話になってしまって、大立ち回りが作れないので中途半端かなと。

――単純にコストが足りなくて作れないということですか?

吉田氏:  はい。 例えばオーシャンフィッシングにしても、やはり新しいものを作るとテキストゼロということはないんです。そうなるとぜんぜん余裕がなくて。この先5.3でも、 “牧場”みたいなものとか、色々やっているのでテキストコストに余裕がありません……。だからヒルディは1回お休みしようかと。ちょっとマンネリも感じていて、パターン的な面白さもわかるんですが、強い意志で1回お休みしてもいいんじゃないかと。3.0の時にも1回お休みしようとしたけど、結局お休みできなくて帰って来ちゃったので、さてどうなりますか(笑)。今回はもしかすると強い意志でお休みするかもしれないです。

――最後に5.2の見どころなども含めて、ファンへのメッセージをお願いします。

吉田氏:  パッチ5.2は、5.2と5.21、5.25に分かれています。今日お話できていないシステム系のアップデートもありますし、グループポーズのアップデートとか、どこまでやるんだよと言うくらい機能が山盛りなので。繰り返しになるかもしれませんが、全方向に遊べるものを目指してチャレンジもやっていこうと思っています。

 すでにパッチ5.3の開発もやっていて思うんですが、本当にどうしようと思うくらいボリュームが大きいです。ですからぜひゆっくり見ていただきたいです。特に「オーシャンフィッシング」は焦ってやるようなものではないので、空気のように存在していればいいと思っています。せっかくみんなで釣れる機会なので、その場にいる人たちと声を掛け合って行っていただきたいです。今後は更にハプニング要素を色々入れていって、アトラクション的に遊べるようにしていこうと思っています。物語は、「FFXIV」が終わるんじゃないかと危機感を感じるくらい核心に迫っていきます。ぜひ隅々まで楽しんでいただけると嬉しいです。

――ありがとうございました!