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潜在力はメインストリーム級!ブラウザ版「ドラゴンクエストX」βテストプレイレポート
ブロードバンド環境なら、クライアントレベルの美麗な画面でぬるぬるプレイ
2019年12月13日 12:00
- 2020年春 正式サービス予定
- CBT期間:12月2日12時頃~12月20日11時59分
ブラウザ版「ドラゴンクエストX」のベータテストが12月2日からスタートした。このブラウザ版はクラウドサーバーを使ったストリーミングによって、HTML5に対応したブラウザが動くすべてのプラットフォームでプレイすることができる。具体的にはGoogle Chrome、Safari、Microsoft Edge、Mozilla FireFoxなどのブラウザが動くスマートフォン、タブレット、PCが対象となる。
テストに参加できるのは、スクウェア・エニックスアカウントを持っており、Wii U/Nintendo Switch/PS4/Windows版のいずれかのレジストレーションコードやプロダクトコードを登録しているユーザー。当初は1,000人からスタートしたが、現在も追加当選で少しずつ人を増やしつつテストが続けられている。
今回触ってみた印象を一言でいうと、まだまだベータテストではあるが、ポテンシャルは非常に高く、今後ブラウザ版が主流になる可能性すら秘めていると思った。このレポートでは、そんな印象を受けたブラウザ版を、操作方法や通信量など様々な角度からじっくり紹介したい。
クラウドゲームの仕組みを改めておさらい
実は「ドラゴンクエストX」は2013年にNTTドコモが自社のスマートフォンとタブレット向けに提供している「dゲーム」用に、すでにクラウドでのゲームを提供している。2014年9月にスタートした3DS版も同様にクラウド経由でのプレイが可能だ。今回のブラウザ版はこれらのクラウドサービスとは別建てのサービスだ。
ここで改めてクラウドゲームの仕組みを簡単に紹介しておきたい。オンラインゲームは、テクスチャーやサウンドなどをクライアントに収納し画像のレンダリングなど、位置や戦闘のデータなどの数値データをサーバーに保存してやり取りしている。そのためデータのインストールや、それなりの処理能力も必要になる。
クラウドゲームは、これらすべての処理をサーバー側で行ない、その結果を動画として送ってくる。クライアント側にはその画像を表示できるだけのスペックがあればいい。ただし、音と映像をずっと送り続けることになるため、通信量は通常のオンラインゲームよりも大きくなる。
回線が不安定な時、オンラインゲームでは見えている操作とサーバーに送られるデータの間にラグが発生し、画面上では避けている技に当たったり、キャラがいきなりワープしたりといった症状が出ることがある。クラウドゲームでは、ラグは操作レスポンスの悪さに繋がる。この、レスポンスの悪さはクラウドゲームがなかなか解決できない課題でもある。
ブラウザごと設定ごとの通信量を比較
ブラウザ版「ドラゴンクエストX」は、既存のアカウントのキャラクターでそのまま遊ぶことができる。インストールの必要はなく、ログインページからログインするだけで、見慣れたキャラクター選択画面が現れる。特に特別な操作や設定も必要ない。
起動すると「PCおすすめ」、「モバイルおすすめ」といったように、自動的に環境にあったおすすめ設定がセットされる。この設定は「詳細設定をする」というボタンから、カスタマイズすることもできる。画面サイズは「高解像度」が1,280×720、「低解像度」が800×600の固定サイズ。当然画面が大きいほうが綺麗だが通信量は多くなる。
さらにゲームで右下に表示されるスパナのマークから、それぞれの解像度について「High」、「Mid」、「Low」の3段階から画質を選ぶことができる。サウンドはデフォルトでOFFになっており、こちらも同じ設定画面でON・OFFの設定を選ぶことができる。また、ブラウザのフルスクリーン設定もここでON・OFFを選べる。
どのブラウザでも基本的な画質や操作に差はないが、Google Chromeは、画像処理にGPUを使用するハードウェアアクセラレーションの設定がOFFになっていると、CPUの使用率が20~30%になり、移動時にやや引っ掛かりを感じることがあった。設定からONにするとGPUの使用率が上がる代わりにCPUの使用率は10%程度に下がり、動きもぬるぬるになったので、Chromeでプレイする場合はこの設定を一度確認しておいた方がいい。
Firefoxは「推奨パフォーマンス設定を使用する」にチェックが入っていればGPUが使える時には自動的に使ってくれる。Edgeはインターネットオプションでオンオフが可能だが、デフォルトでONになっているので気にしなくても大丈夫だ。
それぞれの設定でプレイしている時の通信量を3つのブラウザで比べてみた。それぞれのブラウザのバージョンは以下の通り。インターネット回線はNifty光のV6プラスで、おおむね240Mbps程度。すべて9サーバーのグレン駅前で計測している。
【ブラウザのバージョン】
ブラウザ | バージョン |
---|---|
Google Chrome | 78.0.3904.108(Official Build) (64 ビット) |
Microsoft Edge | 44.18362.449.0 |
Mozilla FireFox | 71.0 (64 ビット) |
・Chrome低解像度
Chromeは他のブラウザよりも高解像度での通信量が多かったが、その分安定していた。ハードウェアアクセラレーションをONにしていれば、CPUの使用率は低く、ブロードバンド環境であればクライアント版と変わらないプレイフィールだった。
・Firefox高解像度
Chromeに比べるとグラフが安定していないが、これは推奨パフォーマンスにチェックが入っていることで、最適な状態に常に自動調整されているから。プレイフィールはこちらも快適だった
・Edge低解像度
Firefoxと同じく状況に合わせて通信量が上下する。プレイに支障はないが、時々急に落ちてしまうことがあった。
・Chrome低解像度
SVGAサイズの画面。画面は少々狭いが、700kbps前後という軽さ。回線が悪い時は割り切って低解像度LOWでプレイすることを考えてもいいかも
・Firefox低解像度
高解像度の時に比べて通信が安定している。ただし下限はChromeよりやや高めだった。
・Edge低解像度
こちらもFirefoxと同じような結果となった。送信時の通信量がわずかにFirefoxよりも多め。とはいえ低解像度ではブラウザ間の差はほとんどない
Chromeでは高解像度では高画質で平均的に7Mbps程度だったが、ForefoxとEdgeでは3~5Mbpsと通信量自体は少ないがばらつきが大きく、その分多少挙動に安定感を欠いた。特にEdgeは唯一起動時に何度かエラーで落ちてしまうことがあり、まだ安定していない印象だった。
しかし低解像度や低画質になるとこれが逆転し、Chromeのほうがばらつきが大きくなり、FirefoxとEdgeは少ない通信料で安定した。ただ、低解像度、低画質で最も小さい通信量を記録したのもChromeで、相対的に見て、最も安定していたといえるだろう。
今後、調整によって平均化していく可能性は高いが、現状ではブロードバンド環境で接続できるならChromeの高解像度、高画質が最もおすすめだ。ただし、サーバーが混み合っている時にはどうしてももっさり感じる時もあったので、そんな時には画質や解像度を調整する必要があった。
モバイル用の操作はバーチャルパッドとバーチャルコントローラーの2種類
ブラウザ版には独自のインターフェースとして、バーチャルパッドとバーチャルコントローラーが用意されている。バーチャルパッドは、右側に操作ボタンを並べ、下側によく使う機能をまとめたもの。
バーチャルパッドはコントローラーと同じように左右に十字ボタンを並べ、右上に「L」、「R」ボタンと「オートラン」、「ジャンプ」がまとめられている。サイズは「大」、「中」、「小」の3つ。これらの表示はゲームパッドを接続してプレイする時には非表示にもできる。PCでプレイする時には、ゲームパッドやキーボード接続が前提となっているため、デフォルトで非表示になっている。そして画面の何もない場所をタップするとそこに白いサークルが表示され、そのまま進みたい方向に指を動かすと、白い矢印がキャラの進行方向を示す。カメラ操作は右手近くにある「L」、「R」ボタンでできるが、アナログスティックほど滑らかには動かせないので、スムーズな移動にはやや慣れが必要だ。
ゲームパッドでのプレイも可能
ブラウザ版はゲームパッドでもプレイすることができる。PCなら、ゲームパッドを接続するだけで、PC版と同じようにプレイすることができる。キーコンフィグはできないが、ゲーム内で設定できるカメラなどはクライアント版と同様に設定可能だ。
iOSは、2019年9月に実装されたiOS13から、Xbox One ワイヤレスコントローラーやPS4用ワイヤレスコントローラー(DUALSHOCK 4)に対応した。接続はUSBかBluetooth。Bluetooth接続。接続するとすぐに使えるようになる。現時点ではこちらもまだ挙動が充分とは言えず、今後の対応を待ちたいところだ。
PCブラウザ版はクライアント版と遜色なしの快適プレイ
今回は主にPCでブラウザ版をプレイすることにしたが、ブラウザ版「ドラゴンクエストX」は、インストールなしですぐにログインできる手軽さがなによりの魅力だ。冒頭に書いたような、クラウドゲームの弱点であるラグを感じたのも、全テストプレイを通じてほんの少しだけだった。
そもそもすでにサービスしているdゲーム版、3DS版のノウハウがあり、さらにMMORPG自体が回線状態の悪い場所でもパーティプレイができるように、ラグを前提とした作りになっていることなどから、PCのブラウザ版についてはもういつでも正式サービスを開始してもらって問題ないと思えるクオリティに仕上がっている。
欲を言えばキーコンフィグや、フルHD解像度への対応も欲しい所だ。ブロードバンド環境やマシンのスペックが整っているネットカフェや出張先のホテルでも家と同じように遊べるのはかなり魅力的だろう。
バーチャルコントローラーでのプレイは、現状では指で隠れてミニマップが見えにくかったりと、細かいストレスがたまるので、スマートフォン用の専用UIを用意する方向で考えてもいいのではないかと感じた。こちらは現状ではまだまだ開発途上というところで、今後の進化を待ちたいところだ。ブラウザ版の正式サービスは2020年春の予定。始まれば新規ユーザーを呼び込む強力な一手となりそうだ。
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