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【GDC 2019】「Dead Cells」爽快さを生む“操作にチャレンジは要らない”美学
会社が潰れる! Roguevaniaは「ラストチャンス」で生まれたジャンルだった
2019年3月23日 13:09
深く続くステージを探索し、敵を倒し、アイテムを取ってステータスを強化する。でも、死んだらリセット。特別な成長要素を除いて、スタート地点からやり直し。死を幾度も繰り返しながら、たどり着く風景とは……。
2018年8月にPC/プレイステーション 4/Nintendo Switchで発売された「Dead Cells」は、昨年のインディータイトルとして大きな成功を収めた作品の1つだ。GDC 2019ではフランスの開発元Motion Twinのゲームデザイナー・Sebastien Benard氏より、本作のゲームデザインに関する講演があった。
メトロイドヴァニアのゲーム進行に「死」を盛り込む
Sebastien氏は、子供の頃からゲーム作りが大好きだったというゲームデザイナー。一方のMotion Twinは、2001年からゲーム開発を始め、ウェブベースやモバイルのFree to Playゲームを作っている会社だ。
そんなMotion Twinにとって、「Dead Cells」は「最後のチャンス」だったという。当時、モバイルゲームの業績は悪く、会社はほとんど潰れかけていた。おそらく、次が最後の作品になる。ならいっそのこと、モバイルゲームよりも大きなプロジェクトにしようじゃないかと。
本作の開発期間は2年半。1年をゲーム作りにかけ、もう1年半はフィードバックへの対応とコンソール版の制作に時間をかけたそうだ。
当初は広大なマップを探索するようなタイトルも考えたそうだが、小さなチームでは時間がかかりすぎる。そこで開発の柱を、戦闘、進行、そしてリプレイ性の3つに絞り、総合して「Permadeath(死んだら最初からやり直しのゲーム)」というコンセプトが決まった。
「Permadeath」は開発当時の流行でもあった。死をゲーム進行の1つとして捉えるゲームデザイン。それをメトロイドヴァニアジャンルと融合するため、「ある程度の後戻りはしないこと」、「様々な数値をカウントすること」、「メトロイドヴァニア的能力の導入」といった要素を入れている。
「メトロイドヴァニア的能力」は、蔦のはしごを作るなど、入手することで新たな場所に行ける能力のこと。このシステムを取り入れることで、プレーヤーがどんな道を通ってもある程度は1本道にゲーム進行をデザインすることができたとした。
そして「Dead Cells」でもっとも力が入れられているのが操作性だ。本作では、崖際でのジャンプや着地において、何ピクセル足りなかったりはみ出していたりしても思い通りに動けるようになっている。言わば「甘い判定」が本作ではなされるのだが、これにははっきりとした狙いがある。
Sebastien氏はここで、「甘い判定」がある場合とない場合のアクションの比較動画を見せてくれた。判定あり版はいとも簡単に足場や壁を乗り越えていけるのに対し、判定なし版は何度かジャンプを繰り返したり、1度ほかの足場を経由したり、あと少しのところで壁に届かず死亡してしまったり、とてもストレスのかかるものになっていた。
つまり、「Dead Cells」の方針はこうだ。「操作に関してはどこまでも爽快に動かせる。操作にチャレンジは要らない」ということ。攻撃アクションについても振り返りが自由だったり、オートエイム機能があったり、操作そのものは「プレーヤーが思ったように動かせる」かなり快適なデザインになっている。
開発ではまず、かっちりと操作性の部分を作り上げたとSebastien氏は話した。その上で実際のゲームプレイ開発に取り掛かり、敵や地形を含めた「Dead Cells」ならではのチャレンジを盛り込んでいったという。こうして、「Dead Cells」独自のジャンル「Roguevania」ができあがっていった。
Sebastien氏は最後に、ゲーム開発者に向けて「チャレンジに関わらない部分ほど細かいところをケアすること」とアドバイスを送った。また子供の頃にプレイした「プリンス・オブ・ペルシャ」のセンスに感動したことを述べ、「子供のころ、こうしたタイトルに出会っているなら素晴らしいこと。その経験を活かすなら、実際にどうだったかよりも、記憶のままに作るといい」と語った。