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Genvid Technologies、GDC 2019でインタラクティブストリーミングの新システムを発表

実況しているゲーム画面に直接ユーザーが参加できる新たなストリーミング体験

3月19日 発表

 米ニューヨークに拠点を置き、インタラクティブ・ストリーミング用エンジンを開発しているベンチャー企業Genvid Technologiesは、米Limelight Networksと共同開発しているインタラクティブ・ストリーミングのソリューションについての詳細を、3月18日から3月21日までサンフランシスコで開催される「Game Developer Conference2019(GDC 2019)」でのセッション「Interactive Streaming and the Future of Media」で公開する。

 Genvid Technologiesは、元スクウェア・エニックスのメンバーを中心に2016年に設立された会社で、元スクウェア・エニックス代表取締役社長の和田洋一氏もアドバイザーとして参加しており、今回のセッションにも登壇する。Genvid SDkはすでにeスポーツの分野などで活用されており、世界最大のeスポーツ大会の1つでもある「Counter-Strike Majors」などで採用されている。

 両社は大手テクノロジー企業のdirect-toconsumer(D2C)プラットフォームによらない、独自のD2Cを構築することができるソリューションを提供する。このソリューションを使用することで、ストリーミングでありながら、まるでローカルでアプリケーションが動作しているかのようなストレスのないゲーム体験が可能になるとうたっている。

 さらにGenvid SDKを使用することで、実況されているゲームに視聴者がリアルタイムに参加することができる。視聴者はTwitch.tvやYouTubeのようなストリーミング上で配信されるゲームプレイをただ見るだけではなく、そこに直接かかわっていくことが可能になるのだ。

【Genvid TechnologiesのCEO Jacob Navok氏のコメント】

 GenvidのSDKは、ゲーム開発者やメディア事業者の双方向ブロードキャストのニーズにお応えしていますが、彼等の多くはストリーミングを念頭に置いて、ゼロから新しい体験を産み出そうとしています。我々は、ライムライト・ネットワークスと共に、5Gの未来に向け、破壊的価値のあるソリューションが提供できる事を非常に楽しみにしています。

【ライムライト・ネットワークスのシニア・ディレクター Stephanie Gaines氏】

 ゲームとメディアが融合していく未来には、真にライブでインタラクティブな体験を提供できるか否かが決定的に重要になってきます。弊社のリアルタイム・ストリーミングは、この分野で最も品質が高く世界中でサービスを提供しており、標準のウェブ・ブラウザを使用していても1秒未満の超低レーテンシーを実現しています。Genvidのゲームエンジンと協働する事で、ゲーム開発者や放送事業者による次世代コンテンツの創造をサポートしていけることでしょう。

「GDC 2019」にて様々なコンテンツを発表

 「GDC 2019」のセッションはこのソリューションの詳細に加えて、Genvid TechnologiesのCEOであるJacob Navok氏が、Genvid SDKを採用して開発されたインタラクティブ・ストリーミングを念頭に開発された複数のゲームタイトルも発表される。これらのゲームはGDCのGenvidブースでもプレイアブルに出展される。

【Genvid GDC 2019 Trailer】

Pipeworks StudiosとGenvidによる、革新的なインタラクティブ・ストリーミング・コンテンツ「Project Eleusis」を発表

 「Project Eleusis」は、AIとインタラクティブ・ストリーミング技術を駆使した孤島が舞台のサバイバルシミュレーション。Twitch上でライブストリーミングを見ている視聴者がそのままゲームに参加することができる。

 参加者がどのような反応をするかでゲーム世界の流れが変わっていき、各セッションが毎回予測のつかないユニークなものとなる。サバイバー達はこの孤島でユートピアを作り上げることができるのだろか、それとも不幸な結末を迎えるのだろうか。

【Pipeworks CEO Lindsay Gupton氏】

 Superfightで革新的なストリーマー/視聴者の体験を産み出して以来、5年間インタラクティブ・ストリーミングゲームを模索してきました。エンタテインメントの未来は、観客が望むのであれば、ただ鑑賞する以上のアクションが起こせるようになる点にあると確信しています。ストリーミングゲームの視聴者が、より積極的な参加者となることができれば、遥かに素晴らしい体験を味わえると思います。

 「Project Eleusis」は観客が最大限に参加できるように設計されたゲームであり、この新たな分野の可能性を実感いただけるでしょう。そしてそれはGenvidの画期的な技術によってはじめて実現しました。

Katapulg StudioによるCHKN Arenaのデモンストレーション

 Katapult Studioは、現在Steam Early Accessで公開している「CHKN」にストリーミング拡張機能を実装した新コンテンツ「CHKN Arena」を発表する。

 「CHKN Arena」はAIのクリーチャーが一騎打ちをするコロシアムバトル・ゲームで、ストリーマーが実況中継してリードしていく。インタラクティブなライブストリーミングとしてゼロから構築された「ポケモンスタジアム」と「BattleBots」が融合したようなコンテンツ。

 GenvidのTwitch ExtensionによってTwitch.tv上で配信することで、「CHKN Arena」は、ストリーマーとそのファン達とのコミュニケーションを実現している。視聴者は、ストリーマーのクリーチャーに声援を送ったり、ラウンドの合間には餌を与えたり復活させたりすることもできる。しかも、この全てをリアルタイムで行なうことが可能だ。

【Katapult Studio CEO Kyra Reppen氏 コメント】

 「CHKN Arena」は、インタラクティブ・メディアと視聴者の参加こそがエンタテインメントの未来であるという私達の信念から産まれた、全く新しいコンテンツです。

 Genvidの技術によって、Twitchのストリーマーとその視聴者達に新しいコンテンツ体験を提供する道が開けたことを大変嬉しく思っています。YouTube版も開発予定ですが、そちらも楽しみにしています」

中嶋謙互氏、初のネイティブクラウドゲーム+Genvidインテグレーションでデビュー

 コミュニティ・エンジンの元代表取締役で「クラウドゲームをつくる技術―マルチプレイゲーム開発の新戦力―」の著者である中嶋謙互氏は、「Space Sweeper」にGenvidを実装し、「GDC 2019」においてTwitch.tv上で初公開する。

 「Space Sweeper」はマルチプレーヤー・アクションゲーム。プレーヤーは無限に湧いてくる危険なクリーチャーや敵を破壊しながら、さまざまなリソースを集め、高度なテクノロジーを獲得して、惑星改造を試みる。これには、視聴者の関わり方が重要になってくるという。

 視聴者は、Twitchで配信されているゲームに直接働きかけていく。武器や回復薬などのアイテムを送ってプレーヤーを助けることができるほか、敵を送り込むことによってプレーヤーの邪魔をしたりすることもできるようになっている。単なる「ゲーム内環境」対「プレーヤー」ではなく、「気分次第で支援者にも敵対者にもなり得る全てのTwitch視聴者」対「プレーヤー」となる。これは「pay2trollシステムの実験(troll:荒らし行為)」と呼ばれている。

 プレーヤーにアイテムや敵を送るためには、怒りポイント(AP)と呼ぶパーティクルが必要だが、これはプレーヤーが敵を倒した際に生成され、視聴者は、各々のTwitchスクリーン上で集めることができる。タイムアタックモードを入れることで、プレーヤー数が増えれば増えるほど、ゲームはよりスピーディかつ難しいものになっていく。

 「Space Sweeper」は、最初は今年後半にSteamで、ローカルな4人用協力モードとしてリリースされる予定。膨大な量の動的スプライトを考えると通常のネットワーク技術では同期できないが、中嶋氏は、代わりに「Parsec」などのクラウド技術を利用して、最大32人の協力プレイを可能にしている。

【中嶋謙互氏 コメント】

 「Space Sweeper」はストリーミング用に構築されました。プレーヤーと視聴者との関わりを探求することは、ゲーム業界にとって新たなフロンティアです。私は、新たな可能性の最前線にいることをとても嬉しく思います。

【Parsec CEO Benjy Boxer氏 コメント】

 このゲームはクラウドをベースとした、わくわくするコンテンツです。私達は、斬新な試みであるクラウドゲームとインタラクティブ配信をサポートできることを嬉しく思っています。ParsecとGenvidを使ってコンテンツを模索する開発者は、インタラクティブ体験の共有という新地平を実現させていく事でしょう。

「Counter-Strike: Global Offensive」が大会配信にインタラクティブ・チアリングを導入

 2018年9月のFACEITのLondon Major、2019年3月のESL Katowice MajorでのPremium Twitch.tv Channel向けのコラボレーションに続き、StatsHelixとGenvidは、「Counter-Strike」のインタラクティブな視聴エクスペリエンスに対する大きな機能追加を発表する。

 新しいeスポーツエクスペリエンスには、既存の「CS:GO」チャンネルの機能であるリアルタイムマップや、プレーヤースタッツ、および複数プレーヤーのPOVが含まれている。

 それらに加え、視聴者間のTwitch Extensionでのライブ応援(チャットによる混沌とした応援を減らすことが可能)、StatsHelixの「CS:GO」マップ内でのより詳しいプレーヤーデータの表示など、新たな視聴者間インタラクションが追加される。

【FACEIT CBO MikAttisani氏 コメント】

 前回の大会でのStatsHelixとGenvidとFACEITの取り組みで、視聴者がいかに豊かでインタラクティブなeスポーツ体験に飢えているかがわかりました。新しい機能が未来の配信に何をもたらすのか非常に楽しみです