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Xboxのフォーカスはコンソールからプレーヤーへ。「ID@Xbox」が早5周年

Xboxの未来はクラウドベースの「Project xCloud」に。Xbox Game Passの日本展開は2019年以降に

11月20日発表

 日本マイクロソフトは11月20日、Xboxのインディ向け支援プログラム「ID@Xbox」が、2018年8月で5周年を迎え、同プログラムを通じてリリースされたタイトルが1,000タイトルを突破したことを記念してプレスセミナーを開催した。

セミナーを行なうID@Xbox担当シニアディレクターChris Charla氏
漢字の五で5周年をアピール

 今回行なわれたプレス向けセミナーは、ID@Xboxを担当するディレクターChris Charla氏が主催しているグローバルツアーの一環として行なわれたもので、ID@Xboxの現状と、今後の展望が語られた。

 ID@Xboxは2013年8月13日に発表された、独立系開発者を対象としたXbox OneおよびWindows 10向けのデジタルパブリッシングプログラム。法人格の持つクリエイターが申請し、審査を通過することで、2台の開発キットの無償提供や、世界に向けてリリース可能なプラットフォームの提供など、Xboxチームから様々な支援を受けられる。

 Charla氏からは、2018年8月をもってID@Xboxの発表から5年が経過し、この間、60を超える国で3,000以上のデベロッパーに向けて開発機が提供され、これまでに1,000以上のタイトルがリリースされたこと、そしてデベロッパーに支払ったロイヤリティは10億ドル以上に達することなどが報告された。ちなみに日本からも100以上のデベロッパーから登録があり、数多くのタイトルが生み出されたという。

【ID@Xboxの歩み】

 今回は最新作として国内で開発された7タイトルがプレイアブル出展されたほか、Charla氏がMicrosoftに入る前、インディ時代からの盟友であるSWERY氏をゲストに招き、今回新たにID@Xboxプログラムを利用してXbox One版のリリースが決定した「The Good Life」のデモンストレーションが行なわれた。7つの出展タイトルや「The Good Life」については後ほど別稿にて詳しくお伝えしたい。

【新たな国産ID@Xboxタイトル】
「La-Mulana 2」や「ドラゴンファングZ」など、新たに7つのID@Xboxタイトルがお目見えした
「The Good Life」(White Owls)

 Charla氏の話はID@Xboxのみに留まらず、Microsoftのエンターテインメントビジネス全体におよび、Xbox One(ゲームコンソール)、Xbox LIVE(オンラインサービス)、Windows 10(PC向けOS)、Microsoft Store(オンラインストア)、Azure(クラウドプラットフォーム)、Project xCloud(クラウドベースのゲームプラットフォーム)、mixer(ライブストリーミングサービス)、PLAYFAB(クラウドゲーミングサービス)といった、ゲームに関連したMicrosoftのポートフォリオを総覧しつつ、Xboxの担当として「Xbox Oneを愛しており、コンソールゲームの未来を信じている」と語った一方で、Microsoftのフォーカスは“コンソール”から“プレーヤー”に移っていると告白。

【Microsoftのビジョン】
Microsoftが持つゲーム関連サービス
遊びたいゲームを、遊びたい人と、遊びたいデバイスで
コンソールからプレーヤーへ

 Chris氏は「プレーヤーが何を求めているのか、何が必要なのかが意思決定の中心」と語り、Xbox OneとWindows PCの両方でプレイできる「Xbox PlayAnywhere」や、「Fortnite」におけるクロスプラットフォームプレイなどを例に挙げながら、Microsoftのエンターテインメントビジネスの未来のビジョンのひとつが「Project xCloud」だとした。

 「Project xCloud」は、Microsoftが10月に正式発表したクラウドベースのゲームプラットフォーム。スマートフォンやタブレットなど手持ちのスマートデバイスを通じて、Xboxタイトルがプレイできるというもので、2019年テスト開始予定となっている。

【Project xCloud: Gaming with you at the center】

 余談だが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントがE3 2019への出展を見送るアナウンスを行なった同日、Xboxの公式Twitterが「E3でみんなに会うのが待ちきれない」とつぶやき、海外で大きな話題となった。

 この発言自体は、北米ではありがちな“コンソール戦争”的なノリの一種のネタツイートで大した話ではないが、重要なのは半分は本音が混じっていることだ。実際、Microsoftは、プラットフォームやハードウェアに依存しないクラウドベースのエンターテインメントサービスを全社を挙げて開発を進めており、Xbox PlayAnywhereとXbox Game Passなどは、すべてProject xCloudに向けた布石だ。

 Xbox Game Passは、サービス開始当初「Xbox One向けのサービス」であることをアピールしていたが、このアナウンスを額面通りに受け取る関係者はいなかった。実際、10月にMicrosoft CEOのSatya Nadella氏がXbox Game PassをPC向けにも計画していることを明らかにした。当然のことながらXbox OneとPCに限る必要もないため、将来的にはスマートデバイスも対応してくるはずだ。手持ちのスマホで、「Halo」や「Forza」の最新作が、1カ月9.99ドルのサブスクリプションモデルでさくさく遊べる。これがMicrosoftが考えているエンターテインメントビジネスの未来像の一端だ。

【Project xCloud】

 Microsoftはそれを実現するだけのバックグラウンドをすべて持っており、なおかつロケットスタートを切るためにファーストパーティタイトルを揃えるため、2018年に入ってゲームデベロッパーの買収を急ピッチで進めている。Microsoftのエンターテインメントビジネスにとって、2019年は決戦の年になるはずだ。

 ちなみにXbox Game Passについては、日本はXbox One Xを展開している国の中で唯一の未展開地域となってしまった。対応が遅れている理由は、グローバルサービスの中で、CEROレーティングへの独自対応をする必要があるためで、その特殊実装に時間が掛かっているという。今年最大のタイミングだった「Forza Horizon 4」の発売のタイミングも逃してしまったため、サービスを始める時期を見失っている雰囲気もあり、開始時期はまったく見えないままだ。

 次のビッグウェーブとなるのが2019年2月の「Crackdown 3(ライオットアクト3)」となるが、まだシステム自体が完成していないため何とも言えないという。こうなってくると、PCへの対応まで引っ張る気もしなくもないが、Xbox Game Passは、Xboxのベースとなるサービスとなってくるだけに「対応しない」という選択肢はない。引き続き対応する日を首を長くして待ちたいところだ。