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史上初の障碍者向けゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」を体験
早くも専用スキンが登場! 日本発売の予定は“今のところ”なし。
2018年6月13日 18:49
E3直前に正式発表され、日本でも話題を集めた障碍者向けゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」。E3では改めて9月発売予定と正式アナウンスされ、Microsoft Storeで予約受付が開始された。対応ハードはXbox OneおよびWindows 10 PC。販売地域は米国、英国、フランス、ドイツ、イタリアなど21カ国で、日本は含まれない。価格は99.99ドル。今回、E3で「Xbox Adaptive Controller」のデモ機が出展され、実際に触ることができたので、インプレッションをお届けしたい。
「Xbox Adaptive Controller」は、デジタル分野のアクセシビリティの長年に渡って支援しているMicrosoftが、その取り組みの一環として開発した肢体に障碍がある人向けのゲームコントローラー。
サイズは11インチのノートPCのキーボードほどで、重量は500gほどと据え置き型のデバイスとしては非常に軽い。背面にはしっかりグリップするゴムが四方に取り付けられており、テーブルに置いてプレイすることもできるし、背面のネジ穴に専用の器具を取り付け、テーブルやベッドに固定して使うこともできる。
本体には通常のゲームコントローラーと同様に、リチウムイオンバッテリーが内蔵され、ワイヤレス環境でプレイすることができるほか、USB-CケーブルをXbox OneやWindows 10 PCに接続して有線環境でプレイする事もできる。
「Xbox Adaptive Controller」を特徴付ける2つの大きなボタンは、わずかな圧力で反応するようになっており、その左側にまとめられたデジタルパッドや、その他のボタンは、誤動作を防ぐためにやや固めになっている。標準仕様では、「太鼓の達人」などのいわゆる“音ゲー”を楽しむのにもってこいのデザインとなっている。
ニュースでもお伝えしたようにその最大の特徴は、奥側面に設置された19個の3.5mmジャックだ。その1つ1つにXboxコントローラーの各キーが割り当てられており、必要なキーの3.5ジャックに、ボタンデバイスを繋いで機能を拡張していく仕組みになっている。両側面のUSBポートにジョイスティックを接続することもでき、専用のソフトウェアでボタン配置をコントロールできる。
試遊エリアでは、代表的な3.5mmジャック用のデバイスが参考出展されていたが、単純なボタンから、フットペダル、ラダー、ジョイスティック、ワンハンドスティックなど、実に様々だ。アイデア次第で健常者でもユニークな遊び方ができそうだ。
担当者の説明を聞いていてわかったのは、「Xbox Adaptive Controller」は、基本的に単体で遊ぶデバイスではなく、利用者のニーズに応じて追加デバイスを接続し、機能を拡張して使う“プラットフォーム”だということだ。通常のコントローラーでは、誤操作を防ぐために排他処理が行なわれ、コントローラーに新たなコントローラーを接続することはできないが、「Xbox Adaptive Controller」では自由にいくつでもデバイスを追加できる。わかりやすくいえば、Aボタンが一杯あるデバイスとして設定することもできるわけだ。
従来のXbox Oneコントローラーと重複して登録する形になるため、障碍者が「Xbox Adaptive Controller」を使い、もうひとりがXbox Oneコントローラーを操作して、一部操作をサポートするという遊び方も可能となっている。デザイン、機能、拡張要素と様々な面でよく考えられており、あらゆる意味でスペシャルなゲームコントローラーだ。
日本発売について日本マイクロソフトの担当者に訪ねてみたところ、一般流通を行なうデバイスではないため、構造的に日本の技適の承認が下りない可能性があり、現時点では販売は考えていないという。「Xbox Adaptive Controller」のセールスポイントである3.5mmジャックを使うデバイスが日本であまり流通していないこともネガティブな要因だという。ただし、日本マイクロソフトがデジタル分野のアクセシビリティについて重視しているため、何らかの形で扱うことができないか検討しているという。
ちなみにカラーは、Xbox One Sと同じオフホワイトのみだが、スキンメーカーのController Gearから早くも専用スキンが発売される予定となっており、これを使えば「Xbox Adaptive Controller」を好みのカラーに彩ることができる。中にはユーモラスなデザインのスキンも用意されていて、見ているだけで楽しくなってくる。
最後に、筆者が「Xbox Adaptive Controller」出展コーナーでしばらく来場者の反応を観察していると、体験した人ほとんどすべてが、このコントローラーの存在自体を絶賛していた。“アクセシブルゲーミング”は、米国でもまだこれからの分野で、日本では名前すら一般的ではないレベルだが、ゲームが全人類の娯楽として認められるために、ゲーム業界が積極的にチャレンジすべき課題のひとつだと思う。この「Xbox Adaptive Controller」を機にアクセシブルゲーミングの考え方が変わり、障碍者にとってゲームがより身近なものに変わっていくことを期待したいところだ。